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恋の相手

23


やっと春が終わって、もうすっかり雨の季節だ。雨ばかり降っている。片付けをして剣道場前の廊下に出ると、あいつが待ち構えていた。

「はぁ~る~い~ち~!」

「俺はドラ◯もんじゃない!」


今度は何なんだ?何の用で待っていたんだ?

「だって、だって、これ、これ見て!私、今回この役だって!どうすればいい?どうしたらいい??うわ~!!」

「ちょっと、待て。少し落ち着け。」

ひらりは俺に台本を渡してきた。


「い、いや、俺にこれ渡されても……どうゆう役なのかすら……」

表紙をめくると、配役の所に奈々子の所に蛍光マーカーで線がついていた。

「先生に恋する役だよ……。恋って?恋ってしたことないんだよ!」

「こ、恋ぃ~!?それこそ俺の所に持って来るなよ!!」

「じゃあ誰に相談すればいいの!?友達いないのに!!」

おい、さらっと色々カミングアウトするな!


「そうゆうのはクラスの女子に相談すればいいだろ?」

クラスの女子なら喜んでその手の話をするだろう。

「クラスの女子……恋について教えてくれるかな?あ、先生!先生に教えてもらおう!」

「待て待て待て。手当たり次第に聞いてまわるつもりじゃないだろうな?」

嫌な予感がする。このままこいつを放っておいたら、いずれ晴の所に行くはずだ。それだけは避けたい。


「え……?そのつもりだけど……」

「それで役がつかめる訳ないだろ?」

「え……それじゃ……どうすればいいの?」

どうすればいい?適役は確実に晴だ……だけど……

「適役を知ってる。お前も知ってるはず。」

「それってまさか…………晴君?晴君に恋しろって事?」


晴が近づこうとしてる時点で、こいつはいずれは晴の所に行く。それならいっそ、こっちから利用させればいい。お互いに利用し合えば、フェアだ。


「それが一番手っ取り早いだろ。」

「うわ~ん!春壱のバカ~!」

「はぁ?」

相談に乗ったのにバカ扱いか?何様だよ!もう知らね~!あいつは台本を残して、バカと捨て台詞を吐いて去って行った。


ふと、人の気配に気がついて、後ろを向くと、二人の剣道部員が残って話を道場の中で聞いていたらしい。二人は鍵を持って廊下に出て来る。

「あーあ。劇部の子フラレちゃったな~。」

「須藤~勿体ない。可愛い子なのに。」

「いや、ふってないし。コクられてもないのに、何でふった事になるんだよ!」

どこが告白だった?どこに俺の勘違いがあった?

「いや、今の相談は確実、須藤が相手になる流れだろ?」

「はぁ?何で俺が!?」


あいつは晴の……好きな女だ。晴の?晴は………好き?なのか?…………全然わからない。


晴の本当の心の中は…………あまり見た事がない。


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