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一緒にお弁当を

24


お昼休みはいつも非常階段前に行って1人で食べていた。今までは何故か教室に居づらい感じがしてたけど、今日は勇気を出してクラスの女子に声をかけてみようと思う。


「あの、一緒にお昼…食べてもいいかな?」

女子三人組は一瞬驚いて箸が止まった。

「…………。」

そうだよね……。突然驚くよね……。

「私は、全然かまわないけど……」

「私もいいよ?」

「うん、一緒に食べようよ!」


三人はもうひとつ机をくっつけてくれて、私は4つ目の席に座る。

「あのさ、突然で申し訳ないんだけど…恋について教えて欲しいの!」

「はぁ?!」

見事に三人の言葉は揃った。

「えっと……何?相田さん恋に悩んでるの?」

「でも、この前舞台に恋してるって言ってなかった?」

ちゃんと覚えててくれたんだ。この子は確か、この前見に来てくれた莉奈ちゃんだ。


「そうなんだけど、人じゃなきゃダメだって部長が…」

「人じゃなきゃダメって?」

「今度やる役が、先生に恋する役なの。」

私はお弁当を広げて食べ始める。

「それって、実際に恋しなきゃいけないの?」

「恋する気持ちが理解できて、それを表現できれば問題ないんだろうけど……恋なんてしたことないし……色々少女漫画とか読んで想像してみたんだけど……もっとリアルな意見が欲しくて。」


そう、キュン……!とか、トクン……。じゃ、全然理解できなかった。

「さっき、先生に恋するって言ってたよね?じゃあ、実際に先生好きになればいいんじゃない?」

「いくらなんでも無理じゃない?若い男の先生って言ったら数学の杉本先生くらいしかいないし……杉本先生結婚してるし」

実は結婚してる云々の話じゃないんだよ……。

「杉本は勘弁して……劇部の顧問だし。」


「杉本先生って演劇部の顧問だったんだ~!知らなかった。」

そうだよね。私も入部してしばらく知らなかったよ……。

「一度も練習に来ない幽霊顧問だけどね。」

「好きになるだけなら、そんなの関係ないよ。」

え、まだ杉本案は消えてなかったの?

「ダメだよ~万が一発展したら不倫だよ!?」

いや、だから……………。


「どうすればいいんだろう……。」

「壱君は?壱君と仲いいよね?」

守山さんだっけ?やっぱり学級委員長はクラスの事よく見てる。

「春壱に相談したら、晴君を好きになれって。」

「壱~!」

何故三人が春壱の名前を呼んだのかはわからなかった。

「じゃ、晴を好きになればいいんじゃない?晴なら誰でもいいだろうし。」

莉奈ちゃんの晴君の評価ってそんな感じなんだ……。


「いや、でも恋はするものじゃなく落ちるものでしょ?」

「出た!名言!」

落ちる?どこに?地獄?地獄に落ちれば理解できるの?

「好きになれば?って言って好きになるもんじゃないんじゃない?」


「あ~あ!いっそのこと目がハートになればいいのに!」

「あははは!そんな漫画みたいにいかないでしょ~!」


しばらくお昼を食べながら談笑していると、晴君がやって来た。

「いた!ひらりちゃん、一緒にご飯……て、もう食べてるんだ。」

「?何?」

晴君は購買に行って来たのか、ビニール袋を下げていた。


「珍しいね。今日は教室で食べてるんだ。」

「うん。今日は三人に混ぜてもらったの」

「じゃあ、明日。明日一緒に食べようよ。」

え…………?

「うん……。」

「じゃあ、明日。約束だね!」

そう言って晴君は嬉しそうに教室を出て行った。


すると、三人は小声で話はじめた。

「なんか……春壱が晴と付き合えって言ったのがわかった気がする。」

「確かに。」

「え?」

もう1人の女子だけはわかっていなかった。

「やっぱり真理は鈍いな~」

この子真理ちゃんって言うんだ。


「晴は相田さんの事好きだと思う。」

口を挟んでいいのか迷ったけど、思わず口にしてしまった。

「え?そうなの?」

「そうなの?って………相田さんはどう思ってるの?」

私は小さな小さな声で言った。

「え?」

三人には全然聞こえなかったようで、みんなは耳を傾ける。私は小さな小さな声で…………

「むしろ…………ちょっと苦手かも。」

と、言った。その瞬間、

「えーーー!!」

三人同時に驚きの声をあげた。


「あの、ルックス、あの優しさで好きにならないの!?」

莉奈ちゃんと真理ちゃんは信じられないと驚いた。

「ま、まあ、人には好みがあるしね!」

学級委員長は動揺しつつフォローしてくれた。そんなに驚く事なの?


「なんか……晴君の優しさって、うさんくさくて生理的に無理。」

「晴がうさんくさい?」

真理ちゃんは理解できずに首をかしげていた。莉奈ちゃんだけは、理解を示してくれた。

「ちょっとわかる。女子に無駄に優しい所がうさんくさいよね。」

「まぁ、確かに、誰にでも優しいのは逆にマイナスではあるよね。」

委員長もいつの間にか賛同していた。


そこへ春壱が教室へ帰って来た。

「あ!春壱!昨日のアドバイス通り、みんなに意見聞いてるの!」

「…………。」

また無視か……。今日は機嫌が良くないみたい。


「壱~!ひらりに晴は無理じゃない?」

莉奈ちゃんが話かけても、春壱は話に入ろうとしない。

「そろそろ机戻そうか。」

「そうだね。色々相談に乗ってくれてありがとう。」

机を戻すと、三人はこう言ってくれた。

「また一緒に食べようよ。」

「うん。」

「コイバナ大歓迎だよ!」

嬉しい……。何だか、心強い気がした。その後、三人はそれぞれの席に戻る。


午後の授業が始まるか始まらないかくらいに、私は昨日忘れて行った台本を取りに春壱の席に行った。

「何怒ってるの?」

「は?忘れたのか?昨日……」

昨日?

「へ?何?」


春壱はしばらく私の顔を見て、ため息をつく。

「もういいよ……。」

何だったんだろう?

「それより、台本返して。」

「お前が勝手に置いて行ったんだろ!?」

え?そうだっけ?

「これ、読んだ。」

「一晩で読んだの?」


台本って読むのに慣れないと、時間かかるから大変なのに……

「これくらい一晩で読めるだろ。お前の役、恋に恋する役って解釈もできる。」

「え?」

春壱、私のために台本読んで、アドバイスくれたんだ……。


「だから、恋に恋する空回りする役にすれば、別に実際に恋しなくてもいいだろ?」

「そっか……そっか!恋に恋する役か!それなら恋に憧れる気持ちだけでいい!春壱!ありがとう!」


やっぱり、口説いてみよう。

「な、何だよ?まだ何かあるのか?」

私は思いきって誘ってみた。

「あのさ……春壱、劇部に入らない?」

「はぁ?」

「だって春壱、私より台本が読めるし。部長が来て欲しがってたよ?たまには遊びに来てよ!ね!」

最後はごまかして終わらせたけど……

「ああ……まあ、気が向いたら」

春壱は気を使って、そう言ってくれたんだと思う。やっぱり春壱はいい奴かもしれない。


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