一緒にお弁当を
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お昼休みはいつも非常階段前に行って1人で食べていた。今までは何故か教室に居づらい感じがしてたけど、今日は勇気を出してクラスの女子に声をかけてみようと思う。
「あの、一緒にお昼…食べてもいいかな?」
女子三人組は一瞬驚いて箸が止まった。
「…………。」
そうだよね……。突然驚くよね……。
「私は、全然かまわないけど……」
「私もいいよ?」
「うん、一緒に食べようよ!」
三人はもうひとつ机をくっつけてくれて、私は4つ目の席に座る。
「あのさ、突然で申し訳ないんだけど…恋について教えて欲しいの!」
「はぁ?!」
見事に三人の言葉は揃った。
「えっと……何?相田さん恋に悩んでるの?」
「でも、この前舞台に恋してるって言ってなかった?」
ちゃんと覚えててくれたんだ。この子は確か、この前見に来てくれた莉奈ちゃんだ。
「そうなんだけど、人じゃなきゃダメだって部長が…」
「人じゃなきゃダメって?」
「今度やる役が、先生に恋する役なの。」
私はお弁当を広げて食べ始める。
「それって、実際に恋しなきゃいけないの?」
「恋する気持ちが理解できて、それを表現できれば問題ないんだろうけど……恋なんてしたことないし……色々少女漫画とか読んで想像してみたんだけど……もっとリアルな意見が欲しくて。」
そう、キュン……!とか、トクン……。じゃ、全然理解できなかった。
「さっき、先生に恋するって言ってたよね?じゃあ、実際に先生好きになればいいんじゃない?」
「いくらなんでも無理じゃない?若い男の先生って言ったら数学の杉本先生くらいしかいないし……杉本先生結婚してるし」
実は結婚してる云々の話じゃないんだよ……。
「杉本は勘弁して……劇部の顧問だし。」
「杉本先生って演劇部の顧問だったんだ~!知らなかった。」
そうだよね。私も入部してしばらく知らなかったよ……。
「一度も練習に来ない幽霊顧問だけどね。」
「好きになるだけなら、そんなの関係ないよ。」
え、まだ杉本案は消えてなかったの?
「ダメだよ~万が一発展したら不倫だよ!?」
いや、だから……………。
「どうすればいいんだろう……。」
「壱君は?壱君と仲いいよね?」
守山さんだっけ?やっぱり学級委員長はクラスの事よく見てる。
「春壱に相談したら、晴君を好きになれって。」
「壱~!」
何故三人が春壱の名前を呼んだのかはわからなかった。
「じゃ、晴を好きになればいいんじゃない?晴なら誰でもいいだろうし。」
莉奈ちゃんの晴君の評価ってそんな感じなんだ……。
「いや、でも恋はするものじゃなく落ちるものでしょ?」
「出た!名言!」
落ちる?どこに?地獄?地獄に落ちれば理解できるの?
「好きになれば?って言って好きになるもんじゃないんじゃない?」
「あ~あ!いっそのこと目がハートになればいいのに!」
「あははは!そんな漫画みたいにいかないでしょ~!」
しばらくお昼を食べながら談笑していると、晴君がやって来た。
「いた!ひらりちゃん、一緒にご飯……て、もう食べてるんだ。」
「?何?」
晴君は購買に行って来たのか、ビニール袋を下げていた。
「珍しいね。今日は教室で食べてるんだ。」
「うん。今日は三人に混ぜてもらったの」
「じゃあ、明日。明日一緒に食べようよ。」
え…………?
「うん……。」
「じゃあ、明日。約束だね!」
そう言って晴君は嬉しそうに教室を出て行った。
すると、三人は小声で話はじめた。
「なんか……春壱が晴と付き合えって言ったのがわかった気がする。」
「確かに。」
「え?」
もう1人の女子だけはわかっていなかった。
「やっぱり真理は鈍いな~」
この子真理ちゃんって言うんだ。
「晴は相田さんの事好きだと思う。」
口を挟んでいいのか迷ったけど、思わず口にしてしまった。
「え?そうなの?」
「そうなの?って………相田さんはどう思ってるの?」
私は小さな小さな声で言った。
「え?」
三人には全然聞こえなかったようで、みんなは耳を傾ける。私は小さな小さな声で…………
「むしろ…………ちょっと苦手かも。」
と、言った。その瞬間、
「えーーー!!」
三人同時に驚きの声をあげた。
「あの、ルックス、あの優しさで好きにならないの!?」
莉奈ちゃんと真理ちゃんは信じられないと驚いた。
「ま、まあ、人には好みがあるしね!」
学級委員長は動揺しつつフォローしてくれた。そんなに驚く事なの?
「なんか……晴君の優しさって、うさんくさくて生理的に無理。」
「晴がうさんくさい?」
真理ちゃんは理解できずに首をかしげていた。莉奈ちゃんだけは、理解を示してくれた。
「ちょっとわかる。女子に無駄に優しい所がうさんくさいよね。」
「まぁ、確かに、誰にでも優しいのは逆にマイナスではあるよね。」
委員長もいつの間にか賛同していた。
そこへ春壱が教室へ帰って来た。
「あ!春壱!昨日のアドバイス通り、みんなに意見聞いてるの!」
「…………。」
また無視か……。今日は機嫌が良くないみたい。
「壱~!ひらりに晴は無理じゃない?」
莉奈ちゃんが話かけても、春壱は話に入ろうとしない。
「そろそろ机戻そうか。」
「そうだね。色々相談に乗ってくれてありがとう。」
机を戻すと、三人はこう言ってくれた。
「また一緒に食べようよ。」
「うん。」
「コイバナ大歓迎だよ!」
嬉しい……。何だか、心強い気がした。その後、三人はそれぞれの席に戻る。
午後の授業が始まるか始まらないかくらいに、私は昨日忘れて行った台本を取りに春壱の席に行った。
「何怒ってるの?」
「は?忘れたのか?昨日……」
昨日?
「へ?何?」
春壱はしばらく私の顔を見て、ため息をつく。
「もういいよ……。」
何だったんだろう?
「それより、台本返して。」
「お前が勝手に置いて行ったんだろ!?」
え?そうだっけ?
「これ、読んだ。」
「一晩で読んだの?」
台本って読むのに慣れないと、時間かかるから大変なのに……
「これくらい一晩で読めるだろ。お前の役、恋に恋する役って解釈もできる。」
「え?」
春壱、私のために台本読んで、アドバイスくれたんだ……。
「だから、恋に恋する空回りする役にすれば、別に実際に恋しなくてもいいだろ?」
「そっか……そっか!恋に恋する役か!それなら恋に憧れる気持ちだけでいい!春壱!ありがとう!」
やっぱり、口説いてみよう。
「な、何だよ?まだ何かあるのか?」
私は思いきって誘ってみた。
「あのさ……春壱、劇部に入らない?」
「はぁ?」
「だって春壱、私より台本が読めるし。部長が来て欲しがってたよ?たまには遊びに来てよ!ね!」
最後はごまかして終わらせたけど……
「ああ……まあ、気が向いたら」
春壱は気を使って、そう言ってくれたんだと思う。やっぱり春壱はいい奴かもしれない。




