苦手な役
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季節は梅雨に入って、毎日雨ばかり。練習教室から見える裏庭には紫陽花が咲いてる。その紫陽花があまりに大きくて、ボーッと立っている海坊主みたいで怖い。そんな時は台本の世界へ逃げ込めばいい。今回は女の子5人組の部活や恋愛の悩みを解決していくお話。
今日は配役が決まる日だ。誰がどの役になるのか楽しみ!嫌いな筋トレも難なくこなせる。私が筋トレに励んでいると、部長がふと思い付いたように訊いてきた。
「ひらり、最近彼来ないね。」
彼?きっと春壱の事だろうな。
「あー、DVDの貸し借り教室でやってますから。まぁ、そろそろ貸すDVDもないんですけど。」
「それじゃ、もう来ないの?今度はひらりが借りればいいじゃん!」
「あはは部長、春壱狙ってるんですか?」
部長には彼氏がいる。わかってて茶化してみたら
「狙ってるよ?」
「ええっ!!」
普通に返された。
「演劇部に是非欲しい人材だもん!」
「あ、そっち………。」
「あのアンケートは台本が読める人のアンケートだからね。彼がいてくれたら、戦力になると思うんだけどなぁ………。」
部長は台本をめくりながら、チラッとこっちを見る。それは、私に演劇部に誘えって事なのかな?
「じゃあ、一応口説いておきます。」
「頼むね!ひらり!」
部長に気に入られたら最後、根負けして入部してくれた人がたくさんいる。
「じゃ、そろそろ。はーい、みんな一回集まって~!何度か台本呼んでみて、今回の配役が決まりました。今から配役を発表するよ~!夏休み開けに定期公演としてやるからそのつもりで!」
次々と配役が読まれ、私も呼ばれた……!でも、奈々子は……奈々子だけは……
「部長……この役……私が一番苦手な役…………。」
「ひらり、この役は実際に恋してみたらいいんじゃないかな?春壱君とか春壱君とか春壱君とか!!」
ひぃいいい~!部長の押しが強すぎる!!
「む、無理ですよ~!」
「役作りのためだから!!」
「じゃあ……いい男子がいないか……相談してみます……うう……。」
役をもらえるのは嬉しい!でも……もらえた役がどうにも好きになれない。
どうにかしなきゃ……どうにか……先が不安だなぁ…………




