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11 次のダンジョンへ
「ようし・・・じゃあ、先へ進むか・・・。おっとその前に・・・。」
恐らくもうここには戻らないだろうから中継ボックスの入ったリュックを背負い、おもむろに冒険者の袋をまさぐり、クエスト票を取り出してみる。
「あれ?クエスト票が変わっていない・・・パラボラアンテナ施設最深部にある受信装置の奪回・・・クエストレベルがAU・・・、ギルドで受け取った時と同じだ・・・。
すると・・・この先は、このクエストダンジョンへ続いているといったわけではないのか?
もしかすると出口に続いていて、一旦表に出て別の建物に入っていくのかな?」
ううむ・・・このまま最終ダンジョンに向かうのだと思っていたのだが、とんだ見当違いという事か?
「先のことは分かりませんから、とりあえず進みましょう・・・、ツバサさんも加わったし、4人いれば何とかなりますよ。」
源五郎が先へ進むことを示唆する。
確かにここで考え込んだところで何も浮かぶものではない・・・なにせ先の見通しが立たないわけだからな。
「分かった・・・まずは進んでみよう・・・、ただし、罠に落とされないよう注意しながらね。」
『はいっ』
ツバサが先頭で通路を先へと進み始める・・・通路は少し斜め傾斜で、更に地下へと向かっているようだ。
ううむ・・・やはりパラボラアンテナ施設最深部・・・へ向かっているのに間違いないのではないか?
やがて通路の先が明るくなってきて、着いた先は広いドーム状空間だった。
「ふっふっふっ・・・どうやらここまで辿り着いたようだな・・・、中央のアホどもではお前たちを押さえきれなかったという事だ・・・、まあ、予想はしていたがな・・・。
だが、お前たちの冒険もここまでだ・・・、魔戒四天王の親犬様直々に相手をしてやる。」
着いた先で待っていたのは・・・5つ頭の犬の魔物・・・だがでかい・・・、上の階で戦っていた魔物の数倍の大きさがある・・・体高7、8mはあるんじゃないのか?まさに見上げるほどの怪物だ。
「こんなでかいの・・・、ひと噛みどころかひと飲みにされてしまいそうだな・・・。」
でかい頭のこれまた大きな口を開けると、本当に丸呑みされてしまうような脅威を感じる。
「行ってみます・・・とうっ!」
『タタタッ・・・シュタッ・・・・ズゴッ・・・』魔物の巨大さに口をあんぐりと開け見とれていたら、ツバサが果敢にも攻撃を仕掛けていった。
華麗に中空へと舞い上がり、前列真ん中の頭に強烈なキックがさく裂。
「ちいっ!」
『ブンッ・・・・ドガッ』「きゃあっ!」
『ドッゴォーンッ』魔物が大きな左前脚でツバサを払いのけると、ツバサは十メートル以上も吹き飛ばされてしまった。
「ツバサだけを戦わせるわけにはいかない・・俺たちも行くぞ!
源五郎援護を頼む!レイは・・・そうだな・・動きを封じるために、冷凍の魔法を唱えてみてくれ。」
『ダダダダダッ』リュックを置くと、源五郎とレイに指示をしてすぐに駆けだす。
『シュシュシュシュシュシュシュシュ・・・グザザザザザァッ』すると俺を追い抜いて援護の矢が飛んでいき、巨大な魔物にすさまじい速さで突き刺さっていく。
「絶対零度(ゼロK)!絶対零度(ゼロK)!絶対零度(ゼロK)!」
『ピッキィーンッ』一瞬で周囲は白い靄に包まれ、空気が凍り付いた。
「おりゃあっ!」
今がチャンスとばかりに鋼鉄の剣を振りかぶり、思いきり斬りつけていく。
「馬鹿め・・・」
『ゴォッ・・・ピッキィーンッ』ところが左の頭が突然冷気を吐き出し、足元を凍りつかされ斬りつける寸前で足が止まってしまう。
『ブンッ・・ドッゴォーンッ・・・ドガッ』次の瞬間、魔物の右前足で払われ、俺の体は大きく後方に飛ばされ、入ってきた側の壁にたたきつけられた。
油断した・・・よく考えてみたら、炎も水流も冷気も雷も・・・あいつの得意魔法だった・・・効くわけがない・・・。
「きゃああっ・・」
「うわあっ!」
『ブンッ・・ドッガァーンッ、ブンッ・・・ガッガァーンッ』魔物は一歩前に出ると右前足でレイの体をはじき飛ばし、更に反対方向に大きく振って今度は源五郎の体を突き飛ばした。
2人とも横方向に十メートル以上は飛ばされたようだ。
「全回復!」
『ダダダダッ』とりあえず自分に回復魔法をかけ、源五郎の方へ駆け寄っていく。
「源五郎・・・大丈夫か?全回復!」
源五郎にも回復魔法をかけてやる。
「はい・・・なんとか・・・、ですが・・・強力な魔物ですね・・・。」
源五郎も元気を取り戻し立ち上がる。
「全回復!全回復!」
向こう側ではレイがツバサと自分に回復魔法を施しているようだ。
「ようし・・・もう一度行くぞ・・・、レイッ・・・光の魔法だ・・・。
念のために鏡を出して置け!」
『ダダダダダッ』すぐに駆け出し、レイに指示を出す。
『タタタタタッ・・・シュタッ』途中から並走していたツバサが俺を追い抜き、宙へと華麗に舞い上がる。
「光攻撃!光攻撃!光攻撃!」
『ぺっかーぺっかーぺっかー』『シュシュシュシュシュシュ・・ズザザザザザッ』前方の魔物にはレイの光攻撃が降り注ぎ、さらに源五郎の矢が射かけられ始めた。
2人とも姿見の鏡を盾のようにして、体の前に立てかけているようだ。
『シュパパッッパンッ・・シュパッ・・・パンッ』遥か上の方ではツバサの攻撃が始まったようだ。
『ダッダッダッダッ・・・シャキィーン』冷気攻撃を食らわないよう、ジグザグに進みながら剣を抜く。
『シュッパァーンッシュパンシュッパパンッ・・・シュッパンパンッ』巨大な左前足を袈裟懸けに斬りつけ、返す刀で右前足を水平切りし、そのままつきあげる。
「うががっ・・・」
『ブンッ・・・ドッゴォーンッ・・ズザザザザッ』何とか斬りつけられたが、右前足に先ほど同様弾き飛ばされた。
弾き飛ばされる瞬間、大きく後方へ飛びのき、何とかダメージは和らげることが出来た・・・。
『ドーォーンッ・・・・ズザザザザッ』すると隣にツバサも飛ばされてきた・・・ううむ・・格闘技世界一でもダメなのか?
「全体回復!」
すぐにツバサと自分に回復魔法を唱える。
「きゃあっ!」
レイの悲鳴が上がる・・・先ほど同様魔物が立ち上がり、レイと源五郎を狙っているようだ。
「だありゃあっ!」
『ダダダッ・・・シュッパパァーンッシュパッパンッ・・・シュッパンッ』すぐに駆け寄り、魔物の左後ろ足めがけて剣を何度も振り下ろす。
「ぐわぁおー・・・」
『ブンッ・・・ドッゴォーンッ・・・ズザザザザッドガッ・・・ドンッ』思い切り後ろ足でけり上げられ、宙高く飛ばされた俺の体は、途中から地面を勢いよく転がり続け、壁にぶち当たるとそのまま跳ね上がり落下してようやく止まった。
『ピッキィーンッ』そうして俺の左手で指輪が砕け散る・・・、ううむ・・・半端ない攻撃力だ・・・念のために指輪をしていてよかった・・・。
「大丈夫ですか?」
すぐにツバサが駆け寄ってくる。
「ああ・・・、だが指輪はまた一つ砕け散ったよ・・・。
ツバサも気を付けてくれ・・・。全体回復!」
指輪に救われたがダメージが残っていると困るので、回復魔法を唱えておく。
「恐らく、あの頭の数だけ魔物としてカウントするのだろう。
ツバサの世界最強は1対1の場合に限られると聞いたから、十分に注意してくれ。
それと、攻撃は効いているようではあるのだが、しばらくすると魔物の傷も消えてしまう・・・。
無敵とも違うようだが・・・これではらちが明かないな・・・。」
恐らくツバサの世界最強が効かないわけは、あの頭の数に起因するものと推定される。
更に魔物を見ると先ほど斬りつけた後ろ足の傷も、すでに回復しているようだ。
「そうですか・・・個別の頭と対決していくしかないですかね・・・。
恐らくあの魔物も回復系の魔法を取得しているのでしょう・・・なので、個別に戦っているとすぐにダメージを回復してしまうでしょうね。
奥義は高度な精神集中が必要なので日に何度も使えないのですが・・・、一気に片を付ける必要があるようです、仕方がありません。」
『タタタタタッ』ツバサは意を決したように頷くと、そのまま勢いよく駆け出して行った。
『ダダダダダッ』ツバサ一人に任せられないので、俺も自然と駆け出す。
「とうっ!」
『タタタッ・・・シュタッ』ツバサは先ほどよりもさらに高く舞い上がった・・・。
だが・・・あまりに高く舞い上がってしまうと・・・、5つ目の頭のレーザー砲の餌食になってしまうぞ・・・。
「ぐわぉっ・・・」
案の定、5つ目の頭が口を大きく広げる。
「ツバサっ・・・よけろ!レーザー砲を食らうぞ!」
遥か上空のツバサに叫ぶ・・・、だがしかし空中でどうやって体をかわすというのだ?
はっ・・・源五郎は・・・?横を見ると源五郎は姿見を頭上に掲げて投げる準備をしていたようだが、あきらめたようだ・・・無理もない・・・開けた口があまりに巨大すぎる・・・。
『ゴワッ・・・』何もできぬまま5つ目の口から、閃光が発せられた。
「奥義・・・真空の壁!とうっ!」
ツバサの手刀が宙を切ると、なんとそこを足場にしてジャンプした・・・、さらに高く舞い上がったツバサは・・・
「奥義・・・鷲撃泰覇斬!」
両手を横に大きく広げて滑空の体勢に入ったツバサはそのまま重力加速して行き、狙いをつけると頭上で両手を合わせ、そのままきりもみ状に回転しながら突っ込んでいく。
『ズッゴォォーンッ』すさまじいまでの爆音と衝撃波が伝わってきて見上げると、ツバサの両腕が魔物の背中に突き刺さっているではないか。
魔物は背骨があらん方向へと曲がり、背中がV字に変形してしまったようだ。
「今だっ・・・レイッ源五郎っ・・一斉攻撃だ!」
『ダダダダッ』さらに加速しながら叫ぶ。
「光攻撃!光攻撃!光攻撃!」
『ぺっかーぺっかーぺっかー』『シュシュシュシュシュ・・・ズザザザザザザッ』レイたちの一斉攻撃が始まる。
「どりゃあっ・・・」
『シュパパァーンッシュパンッ、シュパパンッシュパッ、シュッパンシュッパパンッ』あとはもう、無我夢中だった・・・、ここで止めを刺さなければ、また回復されてしまう。
ツバサの奥義も何度もは使えないといっていたし、今回が最後のチャンスのつもりで、遮二無二鋼鉄の剣を振り下ろす。
『シュッパパンッパンッ・・・ブンッブンッブンッ・・・』なおも振り下ろす・・。
「・・ダー・・リーダー・・・、魔物は消滅しましたよ・・・。」
うん?後方から声が聞こえてきて、ふと手を止める・・・と、目の前にいたはずの巨大な魔物の姿がない。
「おお・・やったのか?」
「はい、そうです・・・、やはりツバサさんの一撃が効いたようです。
背骨が折れ曲がってしまい、腹が地面についていましたからね、僕の矢も当たりましたし、リーダーの攻撃も直接腹を狙えていました。」
そうか・・・やっぱりツバサだ・・・。
「宝箱が出て来たな・・・。」
魔物の姿が消えたせいか、ドーム中央に宝箱が出現してきた。
『カチャッ』すぐに源五郎が駆けより宝箱を開ける。
「何かの機械のようですね・・・。」
数十センチ角の長方形の箱のようなものを源五郎が取り出す。
「それが受信装置なのだろう・・・、これで全てのクエスト完了だな・・・。」
「やりましたね・・。」
「やったぁー・・・」
すぐにレイとツバサもやってきた。
「ツバサお姉さんは全回復の呪文を2回もかけたんだよー・・・、1回かけても目が覚めないもんだから、魔法を間違ったのかと思っちゃったもの・・・。」
レイが頬を膨らませる。
「ごめんなさい・・、多分・・・今のあたしは2人分だからだと思います。」
ツバサがちょっぴり舌を出して笑う・・・、ふむそうか・・・2人分か・・・まさにそうだな。
『ガチャッ』しばらくすると、ドームの向こう側のドアが開いた。
「じゃあ、行くとするか・・・。」
再び中継ボックスの入ったリュックを背負い歩き出すと、ドアの向こう側は、見上げるほどに延々と折り返しが続く階段だった・・・。
確かに・・・落とし穴に落とされ更に下へと下って来たわけだからな・・・、そりゃそうなるわな・・・。




