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レーザーのステージ

8 レーザーのステージ

「そんな・・・だって・・・4つ目と5つ目の頭が消滅していたぞ・・・だから思い切り突っ込んでいけたんだ。」

 源五郎の攻撃でなかったのなら、あれはいったい何だったんだ?

 魔物の頭が一瞬で吹き飛んだんだぞ!


「ああそうですか・・・大口を開けたところまでは見えていたのですが・・・、その後はリーダーの体が影になってしまって、魔物の姿は確認できませんでしたからね・・・、そうなるとなんでしょうかね?」

 源五郎も首をひねる・・・。


「いや・・鏡が通った瞬間すごい光を放っていた・・・、そうか・・・あれは魔物の攻撃だったのか・・・。

 5つ目の頭はレーザーか・・・しかも大出力のレーザー砲と言ってもいいくらいの・・・、だからそれを鏡で反射されて、自分の頭が消滅してしまったという訳だ。


 雷のダンジョンで4つ目の頭が高出力の、しかも横向きに狙える雷攻撃だったわけだから、このレーザーステージでは5つ目の頭がレーザー砲という事は十分考えられる。


 しかし、たまたま源五郎が鏡を投げたからよかったものの、あのまま5つ目の頭に攻撃されていたら、レイは恐らく消滅していたぞ・・・、身代わりの指輪も役に立たなかったかもしれない・・・。」

 背筋が寒くなってきた。


「えーっ・・・、あたしやられちゃってたの?」

 レイが不満そうに頬を膨らませる。


「ううむ・・・、ここではなんだから・・・、また落ちるぞ!」

 すぐに光で示されているステージから足を踏み外して落ちていく。


『スタッ』『ストッ』『ザザッ』またまた地下へと落ちてきた・・流石に3度目だとレイも何とか着地できたようだ。

 案の定、レイの姿見も落ちてきていた。


 ガラスに銀鏡反応で作った鏡ではなく、金属鏡のようなので割れずに済んだといえる・・・大きな傷もなく十分使えそうだ。


「またクエスト票を見てみるか・・・。」

 恒例となったクエスト票の確認を行う。


「5つ頭犬・・・ああやっぱりだ・・・、レーザー砲・・・攻撃力AA。

 そのほかは4つ頭犬と変わらないな・・・、そりゃあ・・・AAの攻撃を跳ね返されれば吹き飛ぶわな。」

 ううむ・・・予想通りと言えば予想通り。


「レーザー砲ですか・・・射程はそう長くはないのでしょうね・・・、あれだけ引き付けてから撃ってきたわけですからね。


 そうなると・・・、僕とレイちゃんの2人がかりで遠距離から攻撃して倒しましょうか?

 下の階でもそうでしたが、恐らく僕とレイちゃんの攻撃の方が、射程距離は長いと思いますよ。」

 すぐに源五郎が提案してくる。


「いや・・・2人だけの攻撃だと・・・、恐らく魔物は無敵状態だから、倒せないだろう。

 さっきの攻撃で感じたんだが・・・、魔物は俺たち冒険者側が同じサークルに上がるまでは無敵なんじゃないかな。


 鏡の反射で自爆した頭は本来なら再生するはずだったんだろうが、すでに俺がサークルに達していたから無敵は解除されていた。

 だからこそ少し遅れて俺が攻撃を仕掛けても、倒せたのだろうと考えられる。


 そうなると、なにがなんでもサークルに到達してしまえばいいのだとも考えられるのだが、射程距離は短いがレーザー砲のほかにも強烈な雷攻撃があるし、前方の3つの頭の炎や水に冷気の攻撃だってそれなりにダメージを負ってしまうから、やみくもに突っ込んでいけるわけではない。


 やはり遠隔攻撃で気を引いておいて・・・という事にはなるだろうがな・・・・。」

 魔物の無敵の解除条件を、俺なりに推測してみた。


「そうなると厄介ですね・・・光で示されたルート上でこっちがいくら攻撃を仕掛けたとしても、ほとんど効いていない・・・というか、すぐに再生するわけですからね。


 誰かがサークルまで到達して初めて攻撃が有効になるわけですよね・・・、うーん・・・鋼鉄の矢を織り交ぜて攻撃力をあげようと考えていたのですが・・・、ちょっと難しいですね。」

 源五郎が頭を抱える。


 じっくりと作戦を練る必要性があると考えて下へ落ちてきたという訳だ・・・、倒した魔物は再度上がっても再生しないので、ダンジョンからの攻撃だけであればガードしながら進んでいけば何とかなるからな。


 魔物と戦うサークルはダンジョンからの攻撃は受けないのだが、次の光のルートが示されると、ダンジョンからの攻撃が開始されるので、じっくりと考え込んではいられないし、サークルの滞在時間にも制限があるかもしれないのだ。


「またあたしがジャンプして・・・、そうしてぺか・・・で攻撃すれば大丈夫だよ。」

 レイの奴は自信満々だ・・・。


「上空は安全だと思ったからレイにジャンプさせたんだ・・・、レーザー砲なんてのがあるのなら、レイは下から魔法攻撃しなさい、パパがジャンプして斬りこんでいく。」


 張り切るレイには申し訳ないが、娘を危険な目に合わせるわけにはいかない。

 レーザー砲を撃たれたとしても、空中で何とか体をかわして・・・。


「えー・・・、大丈夫だよう・・・。」

 レイが不満そうに頬を膨らませる・・・が、ここは譲るわけにはいかない。


「レイちゃんに鏡を持たせたらどうですかね?

 レーザー砲なら先ほどと同様反射して、魔物がダメージを負うだけです。


 レイちゃんの場合は魔法攻撃だから、両手がふさがっていても大丈夫でしょうし、盾代わりに左手で持てば、右手は光の杖を持っていられますよ。」

 すると源五郎がレイをアシストする。


「だがなあ・・・、さっきは魔物のすぐ上に鏡が来たから、全部跳ね返せたわけだ。

 ある程度距離があったら分からないぞ・・・、何せ鏡の幅は30センチだからな。」


「いえ・・それは大丈夫でしょう・・・、レーザーは直進波だからあまり広がらないと思いますよ。

 逆に言うと、広がるという事は威力が分散するという事ですから・・・、だから射程距離が短いのかもしれないですよね。


 焦点から離れてしまうと威力は半減してしまうのかもしれません・・・、だったら余計に大丈夫ですよ・・・。」

 源五郎が笑顔でフォローする。


「いやしかし・・・レーザーがダメでも、雷攻撃があるわけだ・・・金属鏡だとアウトだぞ・・・。」


「金属鏡ですが、薄い金属板なので裏側は木の板が貼り付けてあります。


 木の板だけに触れていれば、恐らく雷の影響も少ないでしょう・・・、なにせ空中ですから電気が流れて行く先が必要なわけです・・・、流れやすい方に雷は誘導されますから、地上を駆けてくる方にターゲットは向けられるはずです。」

 源五郎は自信満々だ。


「いや・・だがしかし・・。」


「いいの・・・、あたしが行く!」

 何とか反論しようとしたが、レイが厳しいまなざしで睨みつけてきた・・・、ううむ・・・これ以上の言い争いは得策ではないな・・・親子の信頼関係を悪くしてしまう。


「分かった・・・、レイが鏡をもってジャンプする作戦で行こう。

 だが、もしちょっとでも危険な場面があったら、パパと交代だからね・・・・いいね?」


「いいよ・・・、きっと大丈夫だから・・。」

 レイも自信満々の笑みを見せる。


 仕方がないので妥協することにする・・・、まあ雷攻撃の恐れがあるのなら、最初から鋼鉄の剣を構えておけばこっちが狙われるのだからいいだろう。


煉獄(バーナウト)!」

『ボワッ・・・ズッゴォーンッ』レイに炎の魔法を唱えさせてから、階段を上がっていく。

 盾でガードしながら矢攻撃のダンジョンを通り、次はドライスーツに着替えて雷のダンジョンを通っていく。


「じゃあ、さっきもらった特上松弁当を頂くとするか・・・。」

 レーザーのダンジョン手前の階段踊り場で、ドライスーツから鋼鉄の鎧に着替えるついでに食事休憩にする。

 鋼鉄の鎧は穴だらけで腹のあたりがスースーするが、弁当を食べると力がみなぎってきた。


「じゃあ行くぞ・・・、とりあえず源五郎が先頭で、粉を撒きながらレーザーの高さを指示してくれ。

 そうして半分ほど進んだら、レイが思いきりジャンプだ・・・鏡を持つことを忘れないように・・・いいね!」

 一度決まった作戦にケチをつけるわけにはいかないので、まずはその通りに進ませる。


「まずは右が肩口と膝で・・・、左が腰です・・・、あっ今度は右が頭とももで、左が胸ですね・・・。」


「よしっレイっ・・・、右手を上げて左手を下げる・・・そうして2歩歩いて今度は・・・。」

 源五郎にレーザーの高さを聞いて、俺が最後尾のレイに高さを指示して進んでいく。


「次は右へターンですね・・・、この場合は・・・前方正面から頭ともも・・・。」

 先ほど魔物を倒したサークルは空きだったので、そのまま今度は次のルートへと進もうとするが、右へ進路が変わるので、今度は正面からレーザーが・・・すぐに鏡を源五郎に手渡す。


「恐らく、背後からも胸と足首あたりにレーザーが来ているはずです。」

 源五郎に言われる前に、すでにレイが鏡で背後をガードしていた。


「このまま前進していけばいいので、かえって楽かもしれませんね。」

 レーザーの間隔はあまり詰められないのか、鏡1枚ずつでガードできる範囲での攻撃だから、1枚の鏡を立てて横からのぞき込みながら進んでいけばいいようだ。


「じゃあ、いよいよですよ・・・、これ以上近づくと、敵の射程圏内に入ってしまいます。」

 ルートを中ほどまで来たところで源五郎が立ち止まり、振り返る。


「よしっ・・・レイ・・分かっているな?またパパの頭の上でジャンプだ。

 思い切り高くジャンプするんだぞ!そうして鏡を自分の体の前で盾にして、そうして魔法攻撃だ・・・。」

 身振りも交えながら、レイに念を押して作戦を指示する。


「うんっ・・大丈夫だよ・・・。じゃあ行くよ!」

 レイが鏡片手に、かがんだ俺の背中の上をよじ登っていく。


「せーのっ!」

『ダダッ』そうして首を思いきり捻られるような衝撃の後、頭が軽くなる。


「よしっ、俺も行くぞ!」

『ダダダダダダッ』源五郎の背中に俺の持っている鏡1枚を置くと、源五郎と体を入れ替え前方の鏡を受け取り、そのまま掲げながら前へまっすぐに突っ込んでいく。


光攻撃(ペカ)光攻撃(ペカ)光攻撃(ペカ)光攻撃(ペカ)!」

『ぺっかーぺっかーぺっかーぺっかー』前方ではレイの光攻撃が始まった。


『シュシュシュシュシュシュシュシュシュ・・・グザザザザザッザザザッ』さらに源五郎の矢攻撃も加わる。


「ぐわぉーっ!」

『ダッ・・ゴンッ』『シャキィーンッ・・・シュパッズッシュパシュッパァーンッ』魔物の雄たけびを聞いて大体の距離を把握すると、鏡をそのまま魔物に向けて投げつけ、急いで鋼鉄の剣を抜いて斬りかかっていく。


 前方右の頭を右上方から袈裟懸けに切り落とし、返す刀で左の頭ののど元に突き立てると、そのまま右に横引きし真ん中の頭の首を切り裂いた。


「きゅむー・・・。」

 少し前足でひっかかれはしたが、魔物は断末魔の雄たけびを上げながら消滅した。


「はぁはぁはぁはぁ・・・」

『シュタッ』「やったねっ」

 息を整えていると、レイがサークル上に着地してきた。


「うまく行きましたね。」

 源五郎が、笑顔で駆け寄ってきた。


 確かに・・うまくいった・・・やはり魔物のいるサークルに到達してしまえば、無敵ではなくなるのだろう。


 だがまあ・・・本来であればレイの役割はツバサがこなすのだろうな・・・、源五郎とレイに援護射撃させておいて鏡でガードしながら飛び込んでいき、光の爪やキックで攻撃する・・・、更に俺が加わって攻撃すれば簡単に倒せたはずだ。


 とか、考えていても仕方がない・・・、今は俺たち3人だけでもクエストを何とかこなしていけることを喜ぼう。


「鏡を魔物にぶつけて、そのすきに攻撃するというのもいい作戦ですね・・・、次もやった方がいいでしょう、レーザー砲のガードにもなりますしね。」


 源五郎が俺がとっさに取った行動を、いいふうに評価してくれる・・・、ただ単に両手で鏡を盾にしていたために、剣を抜けないから魔物に押し付けただけなのだがな・・、金属鏡だから簡単には割れないし・・・。


 そんなこんなで、その後も何とか魔物を駆逐しながら光のルート通りに進んでいき、奥の壁まで到達した。


「今度は宝箱が2つありますね。」

 レイと源五郎が扉脇の宝箱のところに駆け寄っていく。


「またお弁当だねー・・・。」

 一つ目の宝箱はまたもや特上松弁当だった・・・、確かに魔物の攻撃はほとんど受けずに倒してはいるが、ダンジョンからの密度の高い攻撃で体力はずいぶんと消耗しているからな。


「あとの一つは・・・、これは恐らく復活の木の葉ですね。」

 源五郎に言われて宝箱の中を覗き込む。

 宝箱の中には、4枚の復活の木の葉が入っていた。


「でも・・・復活の木の葉は、確か一人1枚ずつしか持てなかったんじゃあないでしょうか?」

 源五郎が手を伸ばすが、目の前にある復活の木の葉に触ることが出来ずに空を切る。


「だったら、俺はもらえるな・・・。」

 そういえば怠け目ザルのところで源五郎に復活の木の葉を食べさせてもらい、返却していたのを思い出した。


 1枚だけのために賢者のトンネルを使って中央諸島へ戻るのも何なので、そのままにしておいたのだった。

 ありがたく復活の木の葉を宝箱から取り出す。


「ここに復活の木の葉があるという事は・・・、次のダンジョンの魔物は超強力・・・つまりは中ボス以上という事になりますね。」

 源五郎が次のダンジョンについて推測する。


「ああ・・・恐らくそうだろうな・・・、じゃあ次へ進む前に弁当も頂くとするか・・・。」

 なんだか、このクエストは弁当を食べてばかりのような気がするな・・・。



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