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必殺技

7 必殺技

『ダダダダダッ・・・』レイの攻撃を見てすぐに俺は駆けだす・・・、ここで一気に間を詰めなければ・・・。

『シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ』俺の頭上を越えて源五郎の矢が、魔物たちに向けて発せられている・・・、『グザザザザザッ・・・ザザザ・・・』幾本もの矢が魔物の頭に刺さり、針山状態となる。


「だりゃあっ・・・!」

『ブンッ・・・ドゴバゴドガッ』魔物との間を詰めると、木刀を一気に振り下ろす・・・と、鈍い音が数発響き渡った・・・。


『ごるあーっ!』『ブンッ・・バギッドガッボガッ』一度の攻撃では倒せず、中央の頭が牙をむいて襲い掛かってきたので、またもや木刀で数撃一気に撃ち放つ。

『シュシュシュシュシュシュシュシュ・・・グザザザッザザッ』さらに左右の頭に源五郎の矢が降り注ぐ。


光攻撃(ペカ)光攻撃(ペカ)!」

『ぺっかーぺっかー』「きゅんっ・・・」

 最後にレイの光攻撃がさく裂し、4つ頭の魔物は消滅した。


 ううむ・・・、何とか倒せたようだ・・・。

 そのまま同様の攻撃で各サークル上の4つ頭の魔物を倒して進んでいく・・・・そうして奥の壁まで到着してドア横に置いてある宝箱を開けると・・・、やはり特上松弁当が入っていた。


『ガチャッ』弁当は次の休憩に取っておくことにして、そのまま外の階段へと出た。


煉獄(バーナウト)!」

『ボワッ・・・ズッコォー』レイに炎の魔法を唱えさせ、階段上へと発射させて雑魚魔物たちを一掃した後で、ゆっくりと階段を上がっていく。


「次はどのようなダンジョンでしょうね?」

 源五郎が腕を組み、考え込みながらつぶやく。

「ああ・・・矢の次が雷なんだから、次は凍てつく寒さかな・・・猛吹雪でまったく前が見えないとか・・・、入って数秒で凍り付くみたいな・・・かな?

 まさかプールみたいになっていて泳いで進む・・・とかじゃあないだろ?」


 不要になったドライスーツを脱いで、鋼鉄の鎧に着替えながら答える。

 障害物競走のような感じになりつつあるのだが、次はどんな難関なのか?


「そうですね・・・寒さ対策だったら、ヒーター付きのダウンコートを購入済みですからばっちりですよ。

 それよりも、炎がルートの左右から常に吐き出されているとかのほうが・・・困りますよね。」

 源五郎が、モコモコのコートを取り出しながら顔をしかめる。


 そうなのだ・・・なぜか南極探検隊用グッズもコスチューム屋に置いてあったので、他にもボア付きのブーツに手袋など防寒グッズはばっちり買いそろえているのだ。

 炎攻撃だったら・・・、矢の時と同様に天空の盾を大きく広げて防御しながら進んでいくのだろうな・・・。


「まあ、入って見るか・・・。」

『ガチャッ・・・ガッシャーンっ』ドアを開けて薄暗いダンジョン内に入っていく。


「あれっ・・・何もなさそうだな・・・、歩きだしたら攻撃が開始されるのかな?」

『スタスタスタッ』『シュキィーンッ』数歩前へと歩き出すが、炎も噴き出さないし冷気も出てこない・・・が、しかし・・・天空の盾は反応して広がった。


『ずきずきずきっ・・・』同時に、体右半分がずきずきする・・・。


「パパ・・・鎧に穴が開いているよ・・・。」

 躊躇して最初のサークルに戻ると、レイに指摘された。


「ああ・・・それは下の階で矢で開けられた穴なんじゃあ・・・。」


 ひりひりする体を確認がてら鎧を脱いでみる・・・と、確かに矢で開けられた穴のほかにももっと小さな穴が増えているではないか・・・、そうして右半身のいたるところに真っ赤な斑点が・・・すぐに薬草を押し当てるとじわーっと回復していくのが分かる。


「レーザー銃ですかね・・・、光線だったら横から見ても見えませんからね・・・グラウンド整備員用の消石灰の粉を持っていますから、撒いてみましょう。」


 源五郎が冒険者の袋の中から小さな段ボール箱を取り出すと、角を切り取って高く掲げて中身を振りまいた。

 すると・・・、目の前の空間にいくつものキラキラと光る線が浮かび上がってきた。


「レーザー光が粉に当たって乱反射して見えるはずですよ・・・、結構密集しているようです。

 ずっと光線が出ているわけではないようですね・・・、チカッチカッっと短いパルスで発しているようです。

 まあそうですよね・・・高出力レーザーを長時間発生させていたら光源もレンズも持たないでしょうから。」


 光の矢印で示すルートを横切るようにして、光の帯は膝上の高さからちょうど頭の高さ位まで、50センチ間隔くらいの距離で等間隔に発せられているようだ。


 さらにその50センチくらい先では床すれすれから50センチ間隔で連なっていて、そのまた奥には・・・つまり互い違いにほぼ隙間なくレーザー砲が格子状に配置されている。


「ううむ・・・この間隔を、体をくねらせながら避けて通り抜けるというのは・・・ちょっと難しいな。」


 いくら連続的ではないとしても、その間隔は0コンマ何秒という時間だろうから、すり抜けることは難しいだろうし、避けるのもいかに体が柔らかくても、まあ無理だろうな・・・。

 目に見えないし・・・見えたとしても見えた瞬間には、もう当たっているわけだからな。


「鏡があれば・・反射可能なんでしょうがね・・・。」

 源五郎が手鏡を頭の位置にあるレーザーにかざして見せる。


「ふうむ・・・肩の高さへは、右方向からレーザーが来ているようですね。」

 源五郎がかざした手鏡をくるりと反転させて見せる・・・と、確かに裏側に向けたときには、その中央部分から煙が出て焼け焦げた跡が・・・。


「あたしが大っきな鏡を持っているよー・・・。」

 すぐにレイが満面の笑みを見せながら、袋から細長い板を取り出した。


「組み立て式なんだよー・・・。」

 そう言いながら冒険者の袋から取り出したのは、幅が30センチほどで長さが1.5mくらいの細長い鏡が3枚。

 3枚並べて枠に入れて立てかけると・・・確かに姿見になりそうだ・・・、流石女の子・・・。


「えへへへ・・・、ハウスマヌカ用・・・だったかな?コスチューム屋さんに売っていた。」


 冒険者の袋は言ってしまえば底のない布袋で、どんな仕組みかはわからないが、口に入ってさえしまえば、どんなに長いものでも押し込んでしまえる・・・、だから分解組み立て用の姿見も収納可能なわけだ・・・そう考えると・・・、この程度のダンジョンは普通にあってもいいくらいなんだろうか・・・いや、そんなわけはないわな。


「ちょうど3枚か・・・一人ずつ片側をガードしながら進んでいけるな・・・、レーザーが来るのは一方向だけなのかな?」

 手鏡を持つ源五郎に確認する・・・まあ、パターンごとに方向が変わるなら、都度持ち替えればいいか・・・。


「いえ・・・最初の列は、肩と腰と膝くらいの高さですが・・・、肩と膝は右からで腰は左ですね。

 その先は・・・、頭と胸とももと足首になりますが、恐らくこちらも同じ方向とは限らないと思います。


 3枚だけでは・・・あっそうか・・・、3枚を横向きにすれば・・・、たぶん斜めにすることにより隣り合ったレーザーパターンも対応可能でしょう。

 足首の部分までカバーすることは難しいですが、まあ、大股で歩けば足元は何とかなりますよ・・・。


 僕が先頭を歩いて粉を巻きながら高さを指示しますから、鏡の高さを調整しながらついてきてください。」

 源五郎が先頭で、次が俺でレイが最後という順で歩き始める。


「まずは右が肩口と膝で・・・左が腰です・・・、あっ今度は右が頭とももで、左が胸ですね・・・。」


「よしっレイっ・・・、右手を上げて左手を下げる・・・そうして2歩歩いて今度は・・・。」

 源五郎にレーザーの高さを聞いて、俺が最後尾のレイに高さを指示する。


 鏡中央部の裏側を俺が支え、レイが末端を上げ下げし、高さ位置調整することにした。

 もちろん俺も鏡の高さを変えながら歩いていかなければならない・・・、何のことはない・・子供のころの電車ごっこだ・・・。


「さて・・・ここからですよ・・・、どうしますか?」

 矢印で示されるルートを半ばほど来て源五郎が立ち止まる・・・、前方には大き目のサークルがあり、そこには5つ頭の魔物が鎮座している・・・5つ頭???4つ目が雷だったが5つ目は何だろ?


「頭より高い位置にはレーザーは通っていないだろ?

 だったら・・・レイは俺の背中を登って俺と源五郎の頭を踏み台にして、魔物の上高くまでジャンプして魔法攻撃だ・・・、5つ目の頭の魔法はなんだかわからないが・・・まあ魔物相手であれば光の魔法は効果的だろう。


 源五郎はこの場を動かずに、援護射撃を頼む。

 申し訳ないが、俺も源五郎の背中を踏み台にさせてもらって、ジャンプして斬りこんでいく。


 鏡はなしでいい・・・左側は天空の盾でガードして、右は鋼鉄の剣の刃の部分でレーザーを跳ね返すつもりだ・・・、ちょっとくらいなら当たっても死にはしないしな・・・。」


 飛翔の宝剣はレイに渡したままだし、下の階ではうまくいった作戦だ・・・鋼鉄の鎧が穴だらけになるのは悔しいが、贅沢は言っていられない。

 俺が木刀を鋼鉄の剣に装備しなおすと、源五郎も思い出したように初級の弓を狙撃手の弓に持ち替えた。


「うーんと・・・、どうするの?」

 レイが小首をかしげる・・・ううむ・・・説明が難しすぎたか・・・。


「レイは、まずパパの背中を登って・・・、頭の上に乗ってそこを踏み台にして・・・そうして・・・」


「ええっ・・・ダメだよう・・・、人を踏み台にしてはいけませんよって、生活の時間で習ったよー・・・。」

 生真面目なレイは、倫理観が半端ないようだ・・・。


「いっ今はいいんだ・・・、大体・・・踏み台の意味が違うしな・・・。


 どのみち・・・人の頭を足蹴にすることはいけないことだが・・・、今の場合は違う・・・作戦なんだ作戦・・・魔物を倒すための作戦に必要なわけだ・・・、だから正しい行いなの・・・いいか?わかるか?」


 本来ならばじっくりとケーススタディなどで教え込むのがいいのだろうが、今はそんな余裕はない・・・、光の矢印で示されているルートが、どれくらいの時間表示されているかわからないのだ。

 ルートが消えれば真っ逆さまに落ちて、また矢と雷が降り注ぐダンジョンを通って昇ってこなければならない。


「正しい・・・の?じゃあ、大丈夫だね・・・わかったぁ・・・。

 パパたちの背中に乗って、ジャンプすればいいんだね?

 それと・・・またペカだね?」


「そうだ・・・いいか?思い切り高くジャンプして、そうして落ちてくる前に攻撃して倒してしまうんだ・・・。」

 とりあえず言っていることの意味は分かっていたのだが、倫理的観点から確認しているようだな・・・、ゲームの世界ではある程度のことは無礼講という事を教え込まなければならないな・・・。


「わかったぁ・・・、じゃあ行くよ!よいしょ・・・。」

 レイが俺の背中をよじ登っていく・・・。


『ダッ・・・』首を思いきり押し込められるくらい強い衝撃を感じた後、不意に軽くなる。

 レイが大跳躍したのだ。


『ズルズル・・ダッ』3枚の鏡を源五郎の側面に立てかけると、すぐに源五郎の背中をよじ登り、申し訳ないが頭の上を駆け抜けさせてもらう。


『ダダダダダッ』そうして光のルートに従いダッシュだ・・・、伸ばした右手で剣の柄をもち逆立たせ、腕に沿わせているので、頭と肩の部分のレーザーは防いでくれているようだ。

 時折膝部分が熱く感じるが、何とか持つだろう。


『シュシュシュシュシュシュシュ・・グザザザッザザッザザ』援護で放たれた矢が、俺を追い越して魔物に突き刺さる。


光攻撃(ペカ)光攻撃(ペカ)光攻撃(ペカ)光攻撃(ペカ)!」

『ぺっかーぺっかーぺっかーぺっかー』大跳躍したレイが、空中から連続攻撃を仕掛けてきた。


「ぐるあーっ!」

 光攻撃が苦手なのだろう、5つの頭全てが上空のレイに向けて吠え立て始める。


 よしっ、今がチャンスだ!

 あと数歩という距離まで詰めて、鋼鉄の剣を振り上げ一気呵成に踏み込んでいく・・・。


『グワッ』すると、後方の5つ目の頭が特に大きく口を開いた・・・、落ちてくるであろうレイを待ち受けて、噛みつき攻撃か・・・?と思ったが違った。

『ヒュンッ』『ピカッ』頭の上を何かがよぎったかと思ったら、目の前がまばゆく光り輝く。


 なんだ?どうした?・・・と思ったが、板状のものが魔物の頭上をよぎり、そのまま飛び越してサークル奥へと飲み込まれていく・・・と・・・なんと魔物後方の5つ目の頭と4つ目の頭がなくなっているではないか。

 あの飛んできたものが実は強力な攻撃だったのか?


「だりゃあっ!」

『シュパパァーンッシュパパァーンッシュパッ』考えている暇はない、すぐに鋼鉄の剣で無敵の魔物が再生する前にひたすら斬りつける・・・と、数撃で魔物の姿は消え去った・・・。


『シュタッ』魔物が消えた後、レイがうまくサークル上に着地してきた。


「えへへへ・・・上手くいったね・・・。」

 レイが大満足の笑顔を見せる。


 確かにレイの光攻撃で魔物たちの注意を引き付け、源五郎の矢攻撃も当たったし、俺も容易に踏み込んでこられた。

 だが一番の勝因は、なんだかわからんがあの飛翔物だ・・・、一撃で首二つを消滅させるなんて・・・どんな武器だ?


「すごいな・・・、奥の手・・・と言った方がいいのか?あるいは必殺技か?

 何ていう武器・・・、いや、技なのかな?」

『パチパチパチパチ』拍手しながら源五郎へと振り返る。


「何のことですか?投げたのはレイちゃんの姿見の鏡1枚ですよ・・・。


 魔物が大口を開けたので・・・レイちゃんに噛みつかれてはいけないと思って、ちょうど魔物の上に落ちてきそうだったから、鏡を足場代わりにできればいいかな・・・と思って・・・、初級の弓じゃ無理でしょうし、他に適当なものがなかったので、とっさに・・・。」


 源五郎がそういいながら頭を掻く。



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