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雷のステージ

6 雷のステージ

「ああ・・・それなら任せておいてくれ・・、こんなこともあろうかと・・・じゃーんっ!」

 冒険者の袋の中から、分厚いゴムシートを取り出す。


「塗装業者用の道具の中にあったんだ・・・結構厚さがあるから、雨が降った後のぬかるみにテントを張るときのシートに使えると思って買っておいた。」

 2m角のゴムシートを広げて、頭上に掲げる。


「これで雷対策はばっちりだ・・・。」

 上下にゴム製品で防御すれば、雷など恐れるに足らずだ。


『ゴロゴロゴロッ・・ドーンドーンッ』雷鳴と地響きが鳴り渡る中、ルートを外すまいと床の表示に注意しながら進んでいく。


「これなら、下の階の矢の方が脅威でしたね・・・、ゴムで囲まれてさえいれば、雷は避けてくれますからね。」

 ゴムシートの端をしっかりと握りしめ頭上にかざしながら、最後尾の源五郎が明るい声で話しかけてくる。


「まあそうだな・・・魔物は変わらないようだし・・・、こっちの方が楽かもな・・・。」

 確かに、あまりダメージはなかったとはいえ、矢の方が嫌だったな・・・チクチクしたし・・・鎧には穴が開きまくったし・・・。


 だがこれは、あくまでも俺たちのレベルが最高レベルであり、更に用意周到に様々なものを持ち込んでいるからにすぎない・・・、レベルが低くゴムの胴長や分厚いゴムシートを持っていなければ、このステージへ足を踏み入れただけで恐らく黒焦げだ。


 ゴムシートのひさしの下、前方を眺めると、先ほどと同じ4つの頭を持つケル○ロス風の魔物が待ち構えている・・・うん?4つの頭・・・?

 あれ・・・遠目から見る限りは先ほどと同じ魔物と思っていたのだが、近くへ来て見ると3つの頭の奥側にさらにもう一つの頭が見える・・・、あれ?さっきは見逃していたのか?


「ぐるぁーっ」

『ガガガッ・・・ドーンッ』俺の頭をよぎった不安の通りに魔物奥側の口が吠え立てると、その口から閃光が稲妻状にジグザグの軌跡を描きながら俺の顔面に直撃・・・『ピッキィーンッ』・・・。


「まずいっ・・・、ルートから外れて落ちるぞ!」

『ええっ・・・?』

『ピューッ・・・』源五郎たちの返事も聞かずに、すぐに光の矢印で示すルートを外れて足を踏み出し落ちていく。


『ピュー・・シュタッ』『ヒュー・・・ドスン』『シュー・・・シュタッ』


「いたたた・・・、どうしたの?パパ・・・」

 3人で持っているゴムシートに引きずられて、自動的にレイも源五郎も落ちてきた。

 源五郎はうまく着地したが、レイはまたしても尻もちをついた。


「ああ・・・指輪が割れた・・・。」

『指輪が・・・?』

 源五郎もレイも、俺の思いもかけない言葉に、甲高い声を発する。


「あの階の魔物は下の階とは違う魔物だ・・・なにせ頭が4つあった・・、その4つ目の口から雷を発したようだ。

 閃光とともにものすごいビリビリとした衝撃が伝わってきて、同時に身代わりの指輪が砕けた・・・。


 ゴムシートで上を覆って下はゴムの胴長で十分と高をくくっていたのだが、当てが外れた。

 恐らく・・・通路に降り注いでいた雷撃は、俺たちのレベルであれば当たればビリビリしびれる程度で、ダメージは下の階の矢攻撃と大差ないのだろうと思う・・。


 だが・・・あの魔物の攻撃力は違う・・・、もしかすると雷攻撃だけAAとか特AAとかの可能性がある。


 更に口から発する雷は炎などと同じく真横に伝わってきた・・・、恐らく狙いを定めてピンポイントで狙えるのではないかな・・・そうなるとゴムシートを上からかぶっているだけでは防ぎきれないという事になる。

 なにせ前を見るために、前面は開けて進んでいるからな。


 よく考えてみたら、あの魔物は炎も吐き出すし、ゴムシートは炎など熱に弱いから、完全な防備ではないわけだな・・・。

 ちょっと待て・・・、今一度クエスト票を確認してみる。」


 そうなのだ・・・別に4つ目の頭がなかったとしても、真ん中の頭から炎攻撃を食らったとしてもゴムシートは溶けるか燃えてしまっただろう。


 単に攻撃の選択肢から先頭の俺を、ピンポイントで雷撃で狙ったに過ぎないわけだ。

 もしかすると、クエスト票の内容がまた追記されているかもしれないので確認してみる。


「ふうむ・・・4つ頭犬・・・、炎、水、冷気の魔法攻撃・・・GA、噛みつき攻撃・・AAか。

 あれ?雷攻撃AAとなっている・・・、ううむ・・・やはりあの雷撃を食らうと致命傷という事か。


 防御力は物理・魔法ともにCAとなっているから、3つ頭魔物にAAの雷攻撃の頭を足したような魔物だな・・・、さてどうするかだな・・・。」


 3つ頭でも楽勝という訳ではなかったのだが、更にもう一つ頭が増え、その攻撃がAAというのだからたまらない。


「確かにゴムシートでは3人が一塊になりますから狙い撃ちされますよね・・・、先頭が避けると後続に当たってしまうわけですよ・・・、ただでさえ狭いルートですからね・・・。


 あっ・・・じゃあ、あれはどうですか?ドライスーツ・・・、あれならゴム製だし一人ずつ着られるし、何より頭の先からつま先まですっぽり覆えますよ。」


 しばし思案していた源五郎が、おもむろに提案する・・・、おおそうか・・・ダイビング用のウエットスーツとドライスーツも買い込んでいたんだったな・・・。


「さすがに鎧の上からは着られないから防御力は落ちるが・・・、まあ所詮この鎧なんて気休めだからな・・・、よし・・・その作戦で行こう・・・。」

 すぐにレイに通路に向けて火の玉を打ち出させ、更に階段でも上に向けて打ち出す。


 階段は続いているので上階に上がってみたが、今度は外側にドアノブがついていなかった・・・、下の階で向こう側から出て上らなければならないのだろう。


 下に戻って側方から矢が打ち出されるステージを、盾でガードしながら駆け足で進む・・・魔物がいないので、まあ楽なものだ・・・当たってもチクチクするだけだし・・・、そうして奥側ドアを開けて念のためにレイに火の玉を打ち出させてから階段を上っていく。


「じゃあ、早速着替えるか・・・。」


『カチャカチャッ』矢で穴をあけられると困るので直前で着替えることにしたわけだ・・・階段の踊り場で鋼鉄の鎧を外してすぐにドライスーツを着用する・・・確かに頭も全て覆ってしまうので、これなら雷対策としてはばっちりだ。


 源五郎とレイは、服の上からドライスーツを着込むことが出来たようだ。


「水中メガネはつけない方がいいでしょうね・・・、ガラスは電気を通しませんが、枠が金属ですからちょっと嫌ですね。

 競泳用のゴーグルの方がいいでしょう。」


 おおそうか・・・すぐに袋の中を探って、水泳用のゴーグルを取り出す・・・、こっちは透明な樹脂製にゴムのベルト付きだから不導体だな・・・。


「ううむ・・よく考えたら鋼鉄の剣もやばいわけだな・・・、木刀に変えるか・・・しかしこれじゃあなかなか致命傷まで与えられないな・・・。」

 鋼鉄の剣を袋に入れて、代わりに樫でできた木刀に持ち替える。


「木刀でも脳天にきつい一撃を加えれば、倒せるんじゃあないですかね・・・、それなりにレベル差はありそうですし・・・。」

 木製の初級者の弓に装備を変更した源五郎が励ましてくれる・・・、ううむ・・お互いに戦力ダウンは否めないな・・・。


「炎の杖は木で出来てるから大丈夫だよね?

 ローブも着たままだから・・・あたしは大丈夫だよ・・・。」

 レイが自慢げに笑顔を見せる・・・、ううむ・・・レイだけが頼りだ・・・。


「あれっ・・・そうか・・・炎も水流も冷気も雷も・・・、みんなあの魔物の得意魔法だから・・、もしかすると魔法耐性も高いのかもしれないな・・・。

 レイッ・・・光の魔法だ・・、光の魔法で攻撃するんだ・・・。」


「わかったぁー・・・。」

 すぐにレイは炎の杖から光の杖に装備変更する。


「あれからしばらく経つが腹の具合はなんともないし・・・、レイたちも弁当を食べて体力回復しておいた方がいいな・・・。」


「はーい・・・じゃあ、全回復(ゼンカイ)!」

 レイが、俺に回復魔法を施してから、源五郎と一緒に特上松弁当を食べ始めた。


「ようし・・・行くぞ・・・。」

『ガチャッ』おもむろにドアを開けて、中へと入っていく。


 天空の盾は見た目で金属光沢があるのだが、強い魔法耐性があるというのだから雷の魔法も防いでくれると信じて、装備は外さない。


『ゴロゴロゴロゴロッ・・・ドーンッドーンッ』『ゴロゴロゴロッ・・・ドーンッ』光の矢印で示されるルートには、絶え間なく稲光が降り注いでいる・・・、だがしかし構ってはいられない・・・そのまま歩きだす。


『ビリビリビリッ・・・』『ビリビリビリッ』体の前後左右が、静電気を帯びたように毛羽立つ中をゆっくりと進んでいく・・・、あまり激しく動くと余計に静電気が起きそうなので、なるべく摩擦しないようスムーズに歩くことを心がける。


 通路の雷はやはり大した威力はないのだろう・・・、ほとんど衝撃を感じることもなく進んで行ける・・・、まあこれも、ドライスーツの効果なのだろうがな・・・。


光攻撃(ペカ)!」

『ぺっかー』薄暗いステージ上を、まばゆいばかりの光の帯が一直線に魔物に向けて発せられる。

『シュシュシュシュシュシュシュシュ・・・』さらに源五郎も矢を射かけ始める。

 下の階と違い、常に盾を大きく広げて矢の攻撃を防御しているわけではないので、攻撃も積極的だ。


 炎と雷の頭は危険なので集中的に狙わせることにしたのだ・・・どうやら、こっちの方が少しは射程距離が長いようだ・・、まだ向こうは攻撃を仕掛けてきていない。

『ダダダダッ・・・ダッ』俺だけ先行して一気に間を詰めるべく駆け出し、ジャンプする・・・。


『ぺっかー』『ブンッ』『ドガドッゴォーンッ・・・ボゴッバゴッ』後方の4つ目の頭がレイの光攻撃を首を振って除けたところをめがけて木刀を思いきり振り下ろす・・・ドンピシャのタイミングで2撃さく裂し、その反動を振り子のように使って真ん中の頭と左の頭に膝蹴りを食らわせることが出来た。


『シュシュシュシュシュシュ・・グザザッザザッザザザ・・』右の頭には、源五郎の矢が矢継ぎ早に突き刺さっていく。


「きゅぅーむ・・・」

 4つ頭の魔物は、そのまま消滅した。


「ううむ・・・下手に噛みつこうとしてこなかったのが幸いしたな・・・、レイの光攻撃に目が行っていたようだったからな・・・、だが、そうもそうも使える作戦ではないな・・・。


 向こうに身構えられたらおしまいだ・・・、雷の一撃を食らう事はないだろうが・・・逆に噛みつき攻撃の方が厳しいかもしれん。」

 やはり接近戦では噛みつき攻撃の方が有効なのだろう・・・、次からはこう簡単にはいかないだろう。


「だったら、僕がジャンプして攻撃してみましょうか?

 初級者の弓でも連射は効きますし・・・、意外と数が当たれば致命傷になりそうですよ。」

 すると源五郎が突撃役を志願してくる・・・まあ確かに・・・先ほどの攻撃は素晴らしかったからな。


「ダーリンよりも、あたしの方がいいと思うよ・・・、あたしだけ装備はそのままだから。

 あたしもビュッと飛んで攻撃してみたい・・・ジャンプして攻撃をよけたり魔物を踏みつぶしたりするのは得意なんだよー・・・。」


 なんとレイもが志願する・・・こういった役割はツバサ・・・、いや今は俺の役割なのだがな・・・。

 確かに横スクロールのアクションゲームはレイの得意とするところだ・・・しかも彼女の光攻撃を魔物は嫌がっているようだしな・・・。


 ここで、いやレイには危険な真似はさせられない・・・などとは言っていられないのだ・・・なにせ魔物を倒せなければ全滅もありうるわけだからな。


「分かった・・・この場はレイに任せよう・・・、確かにレイの場合は装備がそのままだから、魔物への攻撃が一番強力だからな。

 レイの攻撃の方が魔物の攻撃よりも遠くへ届くようだから、思い切り高くジャンプして、高いところから何発も攻撃してみてくれ。


 魔物たちの注意が上に向いたときに、俺と源五郎が一斉攻撃を仕掛けてみる。

 そうして落ちてくるときは、盾を大きく広げて盾ごとぶつかっていくように・・・、そうすれば魔物も噛みついてはこられないだろう。」


 レイの場合は飛び道具だから、俺と違って魔物の射程圏内に突っ込んでいく必要性はないわけだ。

 盾でガードしながら突っ込んでいけば、それだって立派な攻撃にもなるし、少なくとも噛みつき攻撃は防げるだろう・・・レイに飛翔の剣を手渡す。


「わかったぁー・・・、ジャンプしてぺかぺか・・・だね?」

 レイが飛翔の剣を袋にしまい込みながら笑顔で頷く・・・、上手くいってくれるといいのだが・・・。


『ゴロゴロゴロッ・・・ドーンッドーンッ』稲光が降り注ぐ中を、光の矢印に従ってルートをたどり進んでいく。

 下の階と違い上から稲妻が落ちてくるので、横に進んでも奥へと進んでも、ダンジョンとしての攻撃の密度に大差はないようだ。


光攻撃(ペカ)!」

『ぺっかー』『シュシュシュシュシュシュシュシュ』ルートの半分ほど来たところで、早くもレイの光攻撃と源五郎の矢攻撃が始まる。


「よしっ・・・レイッ・・・いけっ!」

「わかったぁー・・・。」

『タタタタタタタタッ・・・ダッ』レイが少し助走してから、高く舞い上がった・・・。


光攻撃(ペカ)光攻撃(ペカ)光攻撃(ペカ)光攻撃(ペカ)!」

『ぺっかーぺっかーぺっかーぺっかー』そうして上空から幾筋もの光の帯が、魔物たちに向けて降り注いでいく。



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