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ダンジョンへ

4 ダンジョンへ

「ジャッキを外して手を入れて向こう側を探ってみますか?うまくすればロックしている金具を外せるかもしれません。」

『カチャカチャカチャ・・ズズッ』源五郎がジャッキの爪を降ろして引っ込め、手を入れる。


「うーん・・・、これだけだと・・・すぼめた手の先くらいしか入らないので、ちょっと難しいですね・・・。」

 隙間に手を突っ込んでいる源五郎が、力なく首を振る。


「もうちょっと上げればいいんじゃない?台を貸してあげるよ・・・。」

 不意にレイが笑顔で割り込んでくる・・・、手には金属製の四角いブロックが・・・。


「これは何だい?」


「うーん・・よくわかんないけどレンガやさんが使うんだって・・・積み重ねられるから、少し買っておいた・・・。」

 レイの持っている金属のブロックには、表面に何か浮き彫りがしているようだ・・・そうか、レンガ職人がレンガを作るための型を抜くときの標本だな・・・、金属の塊であればジャッキの台にはうってつけだ。


『カチャカチャカチャ・・・ビリ・・・ビリ・・・ビ・・ガッゴォーンッ』源五郎と一緒にレンガ台の上にジャッキを乗せて、更にジャッキの爪をあげていく・・・と、途中から音が変わった・・・。


「どうやらロックが外れたようですよ・・・。」

『カチャカチャカチャ・・ズズッ』『ガラガラガラガラ・・・・・』源五郎がジャッキを外して、その隙間に両手を突っ込んで上に振ると・・・、壁は上へと吸い込まれて行った。


「おお・・・開いた・・・。」

 ちょっと薄暗いが・・・、細い通路がずっと奥へと続いているようだ。


『パサパサパサパサッ』「うわっぷ・・・なんだ・・・?」

 細い通路へ一歩踏み出した途端に、何かが飛んできて視界をふさぐ。


『ブンッシュパシュパシュパシュパシュパパァーンッ』反射的に鋼鉄の剣を抜いて、気配がする方へと斬りつける。


「どうやら蝙蝠系の魔物のようだな・・・しかも雑魚魔物の類だ・・・。」

 足元に無数の蝙蝠系の魔物の死骸が落ち、次々に消滅していく。


『シュシュパッシュシュパッシュシュパッ』「どうやらこの通路には、ダンジョンの魔物たちが存在するようですね・・・、パラボラアンテナ施設が強力な魔物たちに乗っ取られて工事が遅延しているので、本来の役目に戻ったのかな?」

 源五郎がビデオの早送りのように、矢をつがえては撃ちつがえては撃ち・・・を繰り返しながらつぶやく。


「それにしても結構な数がいるようだな・・・、これじゃあいくら雑魚魔物でも、なかなか前には進ませてくれないぞ・・・。」


『ブンッシュパシュパシュパパァ−ンシュパンッ』とびかかってくる魔物たちを鋼鉄の剣で払い落しながら、何とか前へ進もうとするが、何にしても数が多すぎる。


「こんなんじゃあきりがないよ・・・、パパもダーリンもどいてっ・・・一気に片付けるから。

 煉獄(バーナウト)!」


『ボワッ・・・ズゴーッ・・・』レイが唱えると、通路いっぱいの大きさの巨大な火の玉が、回転しながらゆっくりと奥へ進んでいく・・・あれでは雑魚魔物たちならどれだけいたとしても、全滅だろう。


「これでゆっくり歩いて行けるよ・・・。」

『チリチリチリッ』焦げ臭い通路を、レイは自慢げに先頭に立って歩いていく。


「おっおう・・・、ありがとう・・。」

 そう言ってレイの後を源五郎とともについていく・・・・、中継ボックスの入ったリュックは・・・今更使えないし、このままここに置いておこう・・・まずは、ここを脱出することが先決だから身軽な方がいいだろう。


「うーん・・・魔物たちの強さから想像すると・・・普通の冒険者用のダンジョンで、僕らには何の障害にもならないとみて入り口をふさいでいたと考えた方がいいのでしょうかね?」

 源五郎が通路の両側をきょろきょろと見まわしながらついてくる。


「どうなんだろうなあ・・・、俺たちを閉じ込めるつもりはあったのだろうと俺は考えている。

 落とし穴のダンジョンで、何か工具を持っていなければ開けられないような仕掛けをしておいて、そこで動けなければラッキーで、破られてしまったとしても、またその先で何か手立てを考えればいいといったところだろう。


 なにせ冒険はまだまだ続くわけだろう・・・?ツバサに聞いたところでは、この星の冒険世界には初期ステージの中央諸島のほかに5つの大陸があってそれぞれにいくつもの町があるらしい。

 俺たちは中央諸島から東部大陸の北部と中央部に北部大陸の西部を回って今ようやく中央部に来ているところだ。


 地図がないからあまり実感はないが、まあまだ道半ばどころか・・・、1/3も来てはいないだろう。

 更にこの後ますますダンジョンは厳しくなっていくだろうし・・・どこかで俺たちを仕留められればいいと考えているのだろう・・・、冒険の果てに冒険者チームが全滅するのであれば、それは自然なわけだ。


 それで冒険者が一人もいなくなってしまったとしても、ゲームの世界としては成り立つわけだな・・・。

 逆に、冒険者に冒険をさせないようにしてはいけないという事に気が付いたのだろう・・・、だから三四郎さんに救われたダンジョンのようなあからさまな妨害は、今後はしてこないのではないかと考えている。


 今回の落とし穴のようにだな・・・道具さえあれば脱出は可能な余地を残しておくのではないかな・・・、しかし普通の冒険者が自動車用のジャッキとかレンガの型とか持っているのかね・・・?

 だんだんと買い物ゲームのようになりつつあるわけだが・・、今後も思いつく限り様々な道具は揃えておくに越したことはないという訳だ。」


 恐らく中央の奴らというのは、俺たちのことをおもしろくは思っていないはずだ。

 何とかして俺たちを抹殺したいのだろうが、それはあくまでもこの冒険の世界で許される範疇での方法に限られるわけだ・・・。


 だが・・・逆に言えば・・・どこかに脱出口を残しておくことで、どんな難解なダンジョンであっても許されるという事になってくる。


 それに対応できるだけの準備は怠れないという事だ・・・そうはいっても・・・、本当にバーナーで金属壁を焼き切るだの、あるいは指先の感触でダイアルロックの金庫を開けるだのという、専門的技能が必要な試練はやめてほしいと思う・・・、流石にそれはいきすぎだろう。


「おっとそういえば・・、レイっ・・・ちょっとストップ・・・。

 そういえばダンジョンにもう入っているという事を忘れていた・・・、クエスト票を確認して、どんな魔物たちか出てくるか確認してみよう。」


「はーい・・・。」

 数メートル先を速足で歩いていたレイが、振り返って駆け寄ってくる。


 パラボラアンテナ施設の入り口前で落とされてしまったから、ダンジョン前の朝礼ができていなかった。

 今一度、このダンジョンの状況を確認してみようと思う・・・。


「えーと・・・、パラボラアンテナ施設内の魔物駆除のクエスト票は・・・・うん・・・?

 魔物の種類・・・、攻撃力FからAVまで58種類・・・、また随分と様々な種類がいるな・・・。


 恐らく、このダンジョン固有の魔物たちに加えて、地方からパラボラアンテナ施設の労働者として駆り出されてきた魔物たちも含まれているのだろうと考える。

 ペレンの町の人たちは、アンテナ施設工事が中断されているので一時帰省したのだろうが、魔物たちはそのまま居残りなのではないかな。


 そうなると・・・全ての魔物たちを倒していっていいものかどうか悩むところだな・・・、かといって退治しきってしまわなければクエスト完遂とは言えないしな・・・、後で工事のための労働力が足りなくなったなんて、苦情が出ないといいな・・・。」

 かなり大きな建物なのだろう・・・これだけの種類の魔物がいるとなると、倒しきるのも大変だな・・・。


「そうですね・・・、恐らく先ほど群れを成して襲い掛かってきた魔物がFクラスなのでしょうが・・・。

 それだって第1ステージでは中ボスクラス以上ですからね・・・、それをレイちゃんの魔法であっさり片付けたわけですから・・・、加減なんてできないでしょうし倒してしまえばいいんですよ・・。」


 少しでも早くクエストを完遂して先へと進みたい源五郎は非情だ・・・、だがまあいいか・・・雑魚魔物はすぐに復活するからな・・・。



「この先に階段があるよ・・・。」

 先頭を歩くレイが振り返る。


「そうか・・・他に分岐もなさそうだし・・・、上って行こう。」

 そのままレイに階段を上がっていかせる。


「きゃあっ!」

『シュシュパンッ』すぐにレイが悲鳴を上げる。


「お化け系の魔物のようですね、レイちゃんのすぐ目の前に出現したから驚いたのでしょう。

 ですが・・・レベルは低めですから、恐らく攻撃されたとしてもダメージはほとんどなかったでしょう。」


 源五郎が矢を射て倒したのだろう・・・俺には何も見えなかったが、流石スナイパー系の源五郎は目がいいようだ。


「ふうん・・・じゃあまただね・・・煉獄(バーナウト)!」

『ボワッ・・・ドゴッー・・・』階段を埋め尽くす巨大な火の玉が上へと上がっていく・・・、雑魚魔物ならこれで一網打尽だろう・・・。


「ドアがあるよー・・・。」

 急な階段をいくつか折り返して昇った先の踊り場で、レイが振り返る。


「この階へのドアだろうな・・・、どうせ全ての階の魔物たちを退治していかなきゃならないわけだから、まだ上へと階段は続いているようだが、行ってみよう。

 だがちょっと待て・・・強い魔物が待ち構えているかもしれないから、パパが最初に入る。」


 ドアノブに手を伸ばそうとするレイを引き留め、順を入れ変わる。

『ガチャッ、ギィー・・・』非常に重く頑丈そうなドアを開けた先は、薄暗い室内だった・・・。


 コンクリート打ち抜きで、壁のないコンクリート柱が規則正しく並んでいるのが見えるが、見上げるほどの高さの天井照明がところどころにしか灯っていなく、暗闇というほどでもないが数メートル離れれば人の顔も判断できないほどの暗さだ。

 それでもだだっ広く、遥か先まで白いコンクリート柱が続いていることを予感させる。


『ガッシャンッ』背後で大きな金属音がする・・。


「あれっ・・・内側にはドアノブがありませんね・・、もう戻れませんよ・・。」


 源五郎が入ってきた鉄の扉を振り返りながらつぶやく・・・、またもや閉じ込められたという事か・・・いや、これだけ広い空間だから、閉じ込められたという表現は正しくはないか・・・、どこかに次へと続くドアがあっても不思議ではない・・・が、退路は絶たれたという事だな。


「うんっ?」

 すると突然足元の床が光った・・・、俺たち3人が立っているドア前が、直径4mほどの円形に光り始める。


「矢印が出ましたね・・・どうします?」

 そうして前方を指す矢印が・・・その幅は1mほどで、その中を歩いてこいと言わんばかりだ・・・。


 前方同様、左右を見渡してみても、延々とコンクリート柱が続いている・・・恐らく数十メートルはあるだろう。

 普通だったら、どこかに宝箱があるかもしれないと、端から端までしらみつぶしに歩いていくところだが・・・、矢印に対してどう対処すればいいのか・・・だな・・・。


「まあまずは・・・、設定どおりに進んでみよう。」


 こう言った場面では、無理に逆らって別ルートを通ろうとすると地下に落とされてまた昇ってくるなんて言うパターンが通常だ・・・、時間の無駄を避けるためにもルート通り正直に進んでいってみることにする。

 まあ、この階の魔物たちをせん滅してから、後でゆっくりと回ってみても遅くはないだろう。


「なにかいますね・・・。」

 俺の肩越しに前方を覗いている源五郎がささやいてくる・・・、そう視線の先にはまたもや直径4mほどの円形の光るサークルがあり、そこには3つの頭を持つ魔物が・・・しかも前回より二回りは大きい。


「あいつは・・試練のダンジョンに出てきた魔物だな・・・。」

 そう・・・大きな犬の体に3つの頭を持つ魔物・・・、ケル○ロス風の魔物が待ち構えているようだ。


「どうやら、あの魔物たちを倒すと、次へ向かうルートが表示されるのだろうな・・、やってみるか。」

『シャキィーンッ・・・ダダダッ』鋼鉄の剣を抜いて、そのまま駆け出す。


「がぉーっ」

『ゴォーッ・・・』『シュッ』距離が詰まると、3頭の魔物が炎を吐き出して攻撃してきた。


『ズザザッ』すぐに急停止すると、天空の盾が反応して俺の体を覆い、炎のダメージを軽減してくれる・・、ううむ・・試練のダンジョンでは魔法攻撃はしかけてこなかったはずだが・・・バージョンが違うのか?


「神の裁き(ライデン)!神の裁き(ライデン)!神の裁き(ライデン)!」

『バリバリバリバリッ・・・ガゴゴォーンッ』『シュッシュッシュッシュッ』すぐにレイの雷撃と源五郎の矢が俺を援護してくれる。


『キューンンッ』すぐにケル○ロス風の魔物は、首をうなだれておとなしくなった。

『ダダダッ』間を詰めるなら今だ・・・、すぐに気を取り直して駆け出す。


「ぐるぁー!」

『ザッパァーンッ』『シュッ』ケル○ロス風の魔物は、今度は大量の水流を吐き出した・・・、天空の盾が広がって凌いでくれるが、ものすごい水流で先へ進むことが困難になる。


 どうやら先ほどとは違う頭が水流を吐き出しているようだ・・・、真ん中の頭が炎を吐き出して、左の頭が水流・・・となると右の頭は何だろうな・・・?


『ヒュッヒュッヒュッ・・グサッグサッグサッ』立ち往生していたら横っ腹にチクチクと痛みが・・・、見ると鎧の脇腹部分に矢が刺さっている・・・、源五郎のミスか?と思って盾を構えたまま振り返ると、源五郎とレイのところにも、矢が雨のように降り注いでいた。


「いやぁー・・・なんのこれ?」

 俺たちが進んでいるルート側面から矢を放ってきているようだ・・・、レイが溜まらず悲鳴を上げる・・それはそうだ、魔導士のローブは魔法耐性は強いが、物理攻撃への耐性はなくはないだろうが弱いはずだ。


 ううむ・・・、ケル○ロスへの援護というわけか・・・。

 レイは矢の攻撃を避けようと、狭い光のルートを前後に行ったり来たりいるようだ。


「レイっ・・逃げ回っているよりも、ちゃんと盾を構えてガードした方がいい。

 源五郎と2人で両側をガードすれば、矢は当たらないはずだ!」


「うっ・・・うん、わかったぁ・・・。」

 すでに天空の射者の盾で片側をガードしている源五郎に気づくと、一緒に並んでレイも反対方向へ楯を構えた。



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