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落とし穴

13 落とし穴

「悪いがここからは、俺たちだけで行く。

 君たちは湖畔の遊覧船乗り場まで戻って、そこで待機していてくれ。


 危険を感じたら遊覧船で戻ってもらっても構わない・・・、タダ券は渡してあるよね?

 とりあえず今日はこれまでにして門のこちら側に泊まるから、まずは今日の分の検閲をしておくよ。」

 そう言いながらモニターを確認し、形だけの検閲を実施する。


 フェリーの着岸から湖北港の様子に加え若者とのやり取りやバリケードの除去・・・更に洞窟と門扉での戦いまで含めたら、2から3日分の放送に使えるだろう。


「はあ・・・・分かりました・・・、ヘッドカメラの電波受信は遊覧船乗り場まで戻っても恐らく問題ないでしょうし、ついでに遊覧船で中継車の修理もしておきますよ・・・フェリーだけに車のメンテナンス施設もありましたから。


 ですが、パラボラアンテナ施設内に入った場合は、正常な受信が可能かどうかわかりません。

 ですので、すいませんが中継ボックスをご使用願います。」


 スタッフは中継ボックスの詰まった大きなリュックを俺の足元に置いた・・・ううむ・・・テレビスタッフも冒険者の補助役と分かっているのだから、この中継ボックスも冒険者の袋に入れられてもいいのではないのか・・・?


 そうしてテレビスタッフたちを見送った後、レイ用のテントを立ててやる。

 ライガー蝙蝠とさらにからみ蔦で、かなり消耗したので弁当を食って休息だ。


「身代わりの指輪を、また一つ使ってしまいました。」

 源五郎がそういいながら左手を掲げ、頭を下げる。


「あたしは2つ・・・。」

 レイも申し訳なさそうにつぶやく。

 早くも4つ指輪を使ってしまったか・・・、これまで一個も消費していなかったというのに・・・。


 俺の指輪が減っていないのは、一度死にかけたときには指輪をしていなくて復活の木の葉のお世話になったからであり、彼らが油断していたとかいう事では決してない。


 確かに魔物たちが格段に強くなってきているからな・・・、それでも何とか対処できていたのは、俺たち4人チームでそれぞれの持ち味を生かせていたからだ。

 3人になってしまった途端に弱点が鮮明化した・・・、突発的な状況変化に全く対応できていない。


 油断・・といってしまえばそれまでだが、今までは切り込み隊長としてのツバサがいて、相手の状況を探りながら対処を検討できたのが、直接攻撃の矢面に全員が立たされてしまうがために、致命傷を負ってしまうケースが出てきたという訳だ・・・、何とかしなければ・・・と気ばかり焦るが解決策が浮かばない。


 とりあえず寝ることにするが、この地では安全とは言い難いので、交代で見張ることにする。

 まずレイと源五郎を見張り番にして、俺は軽くランニングした後に眠りについた・・・昨晩ほとんど寝ていないので、頭の回転を戻すためにも睡眠は必須だ。



「リーダー・・・・交替ですよ。」

 しばらくして源五郎に起こされる。

 ツバサがいないので、俺一人だけの見張り番だが仕方がない。


 今更ではあるのだが参考のために、からみ蔦のクエスト票を袋から取り出して確認してみる・・・と、からみ蔦、地中に潜み隙をついて攻撃に転じる。


 隠密攻撃特AA・・・一般攻撃DA・・・ううむ・・・、やはり不意打ちでは高い攻撃力を持っていたという事だな。

 魔法耐性・・・AAだ・・・だからレイの魔法でも、なかなか弱らせることもできなかったという事か。


 物理攻撃防御力・・・TZ・・・ううむ、蔦だからどちらかというと火に弱いと考えがちだが、炎攻撃よりも物理攻撃の方がよかったという事か・・・、だから源五郎の矢攻撃と俺のとどめの一撃が効いたわけだな・・・。

 攻撃だけではなく防御も特定な部分を強化して、レベルを俺たちに近づけるという事を意識しているようだ。


 しかし門扉を見たときに蔦のつる一本も目にしなかったから、完全に油断していたな。

 格子の向こう側に見えるパラボラアンテナ施設にばかり目が行っていた。

 寝不足のせいもあったのだろうが、油断大敵というより完全に腑抜けていて、やられていてもおかしくはなかった。


 やたらとからんできて、その会話に時間をとっていたので、何とかこっちも対応するために頭を働かせることが出来た。

 無言で粛々と攻撃を続けられていたら、俺たち3人では間違いなく全滅していただろう。


 ツバサを置いて行くことに躊躇を感じなかったわけではないが、それでもツバサの幸せが第一と考えた。

 だが・・・俺たちの冒険にもやはりツバサは必要なのだろう・・・、彼女が居なければ・・・色々と反省を重ねていると2つ目の太陽が昇ってきた・・・朝になってきたようだ。



「おーい・・・朝だぞ・・・起きろ!」

 3つ目の太陽が昇ると同時に、レイと源五郎を起こす。


 朝食の弁当を平らげると、おもむろに立ち上がって、はるか門扉の向こう側に見えるパラボラアンテナ施設を眺める。

 恐らく無人であろう、はるか向こうにある巨大な施設が朝日に照らされて光っている。


「ようし・・・、腹ごなしがてら走るぞ・・・っとその前に・・・。」

 おもむろに袋からクエスト票を取り出す。


「まずはパラボラアンテナ施設内の魔物・・・、3系統・・・お化け系、魔物系、獣系と記載されているな。

 攻撃力がそれぞれZからAVとなっているが、どうせ近くになったら例えば魔法攻撃だけはAAとか特殊攻撃や特殊防御だけに特化した部分が追加されるのだろうな。


 ちなみにこの時点では防御力もそれぞれZからAVとなっている。

 さらに・・・パラボラアンテナ施設最深部にある受信装置を守っている魔物は攻撃力防御力ともAUとなっているから、いわゆる中ボスだな・・・。


 ふうむ・・・パラボラアンテナ施設に近づいてからでは遅いと踏んで、先にクエスト票を確認してみたのだが、あまり意味はなかったな・・、ダンジョンぎりぎりでなければ詳細は読み取れないという事のようだ。

 仕方がない・・・、アンテナ施設前でもう一度朝会と行こう。」


 そう言ってからすぐに駆けだす・・・何せ見た目では、まだここから数キロはありそうなのだ。

『タタタタタッ』そう思って急いだのだが、すぐに目の前にコンクリート製のビルが・・・、やはり最大経験値のおかげか、何分もかからずに走破できてしまった。


『ガッゴォーンッ』『ザザザザザッ』スピードを緩めて、ビルの入り口に近づこうとしたとたんに、地面がぱっくりと割れその中に落ちていく。

『ザザザザザッ・・・ドザッ』そうして、はるか下の冷たいコンクリートの上に落ちた。


『ギギィッ・・・ガッシャンッ』すぐに落ちてきたところの日の光が閉ざされて真っ暗になる・・・、割れた地面が元に戻ったのだろう・・、いわゆる落とし穴の類の仕掛けだ。


 落ちてきた穴が小さな四角にしか見えなかったところを見ると、相当に深い穴に落とされたのだろう・・・何十メートルとか、いやもっとか・・・?


 恐らくツバサであれば落ちる瞬間に地面を蹴って華麗に宙に舞い上がったのだろうが、俺たちではそんなことはできやしない。

 ただただ驚いて・・・何とか受け身を取ってけがを最小限にするくらいが精いっぱいだった。


「レイッ・・・大丈夫か?源五郎はどうだ?」

「うーん・・・、落ちてきた時に少し頭を打った・・・。」


「僕は何とか大丈夫です。」

 よかった・・・、2人とも何とか無事な様子だ・・・。


「閉じ込められてしまいましたね・・・しかもダンジョンでも何でもない、施設入り口前の只の道路に仕掛けがありました・・・、もう手段を択ばないというか、卑怯な手段もいとわないといったところですかね。


 でも・・僕たちを閉じ込めてしまうと、パラボラアンテナ施設の魔物たちは駆除できないわけですからね。

 アンテナ施設建設計画に、支障をきたすんじゃあないですかね?


 今だって工事が中断中で、せっかくはるばる来ていたヨースルの町の人たちは、1時的に帰ってしまったわけですよね・・・いったいどうしたいんでしょうか?」

 源五郎が首をかしげる・・・、やっぱり俺が普段考えている通り、どうにもこの辺りの仕組みが理解できないな。


「まあ・・・やっぱりパラボラアンテナ施設に巣くう魔物というのは、俺たち冒険者たちのクエストづくりのためだという事だろうな。

 俺たちが居なくなってから本格的に、パラボラアンテナ施設建築に乗り出すという事なのだろう。


 恐らく全ての大陸にパラボラアンテナ施設が完成して、24時間地球からのテレビ電波が受信できるようになった時に、俺たちのような中央の言うことを聞かない冒険者がいると、何かまずいことでもあるのではないかな。


 だからこそ俺たちをパラボラアンテナ施設に向かわせて、そこにいる強力な魔物たちと戦わせようとしているのだろう。

 俺たちが魔物を退治してしまえばよし、退治できなければもっと良し・・なんてところなんじゃないのか?


 それはそうと・・・、さてどうやって脱出する?

 なにせ中継ボックスをビルの外壁に着ける間もなく落とされてしまったから、俺たちのカメラ映像は送信されていないかもしれない。


 ビデオモードはあるのだろうが、どれくらいの時間分録画できるのか聞いていない。」

 とりあえず、ここを脱出しなければ、先へ進むことも魔物と戦うこともできない。


 しかも電波が届いていなければ、俺たちが今どんな状況下に置かれているのか、テレビスタッフたちが把握できていないかもしれないのだ。


 船を離れて随分と遠くまで来てしまったから、俺たちが危機だからと言って占い師に助けを求めることも難しい・・・、ツバサ・・・に助けを求めに行って欲しくはないしな・・・、なので自力で素早く脱出しなければならない。


「とりあえず吊り橋業者が吊り橋用のロープをかけるときに使うための、ロープを引っかけられる矢を買ってありますから、これで僕たちが落ちてきた上方の天板をめがけて打ってみましょう。

 うまく刺されば、ロープを手繰って昇っていくことが出来るかもしれません。」


 源五郎が、冒険者の袋から黒光りする矢を取り出す。

 どうやら鉄製の矢のようで、矢の中央部分に丸く穴が開けられていて、そこに細いロープを通すことができるようだ。


 源五郎がそこに大きなリールに巻き付けられた釣り用のテグスを通してから狙撃手の弓につがえて、真上に向けて弓を引き絞る。


『シュッシュルシュルシュルシュル・・・・・』テグスをつけられた矢は、そのまますごいスピードでリールを回転させながら上っていく。

『スッコォーンッ』やがて天井に到達し、リールの巻き上げが止まる。


「じゃあテグスの端をこの太いロープに結び付けて反対側を引っ張れば、いずれロープが矢の穴を通って戻ってくるはずです。

 ロープは長さ2百メートル以上あるはずなので、恐らく十分たりるでしょう。」


『シュルシュルシュルシュルシュルル』源五郎がそういいながら、リールを回転させてテグスを巻き取っていくと同時にロープが上へと上がっていく。

 やがてロープが垂れ下がって降りてきた。


「これでロープが矢の穴を通って降りてきました。

 この2本のロープを引っ張れば、天板を開けられるかもしれません、引っ張ってみませんか?」

 源五郎が矢の穴を通したロープを持って、提案する。


「あっああ・・・、早速やってみよう。」

 レイも含め3人で、上から垂れ下がったロープを掴んで思いきり引っ張る。


「オーエス・・・オーエス・・・。」

 しかし、どれだけ引っ張っても天板はびくともしない。


「ううむ・・・油圧かな・・・?そもそもが、地面に模した板だったわけだからな。

 その上を人が行き来しても大丈夫だったわけだ・・・、俺たちが到着したタイミングに合わせて、突然開いてまた閉じたわけだからな。


 だから、ちょっとやそっとの力じゃあ、開けられないわけだ・・・困ったな・・・。」

 ううむ・・・本当に困った・・・。



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