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門扉

12 門扉

「そうですね・・・走っても結構距離があるから、着くまでに疲れてしまいそうですよね。

 まあ、中継車ごとこの門をくぐっていけばいいわけですよ・・・。」

 ううむ・・・門を通ってからもまだ車が必要なくらいに遠い・・・しかも巨大な建物だ・・・、こりゃ大変なクエストだな・・・。


「おいおい・・・お前たち・・・、俺様の存在を無視して結構なご身分だな・・・。

 お前たちのように警戒心のない奴らは、お仕置きをしてやらなければならん・・・。」


 門扉の格子を両手でつかみながら、はるか向こう側のアンテナ施設を見ていると、どこからか声が聞こえてきた。

 しかも俺たちの行動を批判してお仕置きだなんて・・・、また随分と高飛車な態度だ・・・。


『シュルルルルッ』「うわっ・・・あっ・・・ばかな・・・。」

 所が身構える暇もなく、あっという間に両手両足を拘束され、鉄製門扉に磔状態となってしまった・・・、一体どうなったんだ?


 何とか首を少しだけ動かして、後は流し目気味に両手首の状態を見ると、細いロープ状のもので門扉の格子に巻き付けられている・・・、だがおかしい・・ここには俺たち以外に人や魔物の気配はなかったはずだ・・・、まさかテレビスタッフにこんなことが出来るとは考えられないし・・・。


「おーい・・・源五郎・・・、どうだー・・・?動けるかー?レイはどうだー?」

 俺の限られた視野では源五郎の姿もレイの姿も確認できないが、奴らはうまく逃れただろうか・・・?


「ぼっ僕は動けません・・・どうしてこんなことになったのか・・・、突然門扉が変形して、僕の両手両足を拘束したみたいですー・・・。」

 うーん、源五郎も俺と同じ状態か・・・。


「あたしもだめー・・・、なんだか両手と両足を縛られちゃったみたいだよー・・・動けないものー・・・。」

 レイも・・だめか・・・参ったな・・・、すぐそこにテレビスタッフたちはいるはずだが・・・、彼らが出てきたら、もっと危険だ・・・。


「テレビスタッフは危険だから、中継車をバックさせて直ちにここから離れてくれ!」

 敵の正体はわからないが、スタッフまで危険にさらすことはない・・・彼らをまずは逃がそう。


『ピーピーピー・・・・ジャリジャリジャリッ・・ブロロロロロッ・・・・』門扉側を向いたまま磔にされているので後ろは見えないが、バックアラームとエンジン音から、中継車はバックしてから方向転換し、エンジン音が聞こえなくなるまで走り去っていったと想定される・・・これでまずは一安心だ。


「ありゃりゃ・・冷たいねー・・・、こんな近くで仲間が捕まっちまったっていうのに逃げて行ってしまうとは・・・、危険だから直ちに離れてくれなんていうのは、社交辞令に決まっているっていうのにな・・・。


 やっぱりお前たちは好かれていないんだなー・・・、かわいそうに・・お気の毒様、同情するよ。」

 またまた突然、どこからか声が聞こえてくる。


「お前は誰だ?テレビスタッフは別に俺たちのことを嫌っているわけじゃあない・・・、危険だからこの場から退避願っただけだ・・・、彼らは一般のスタッフだから無理をすることはないといつも言い聞かせているんだ。」

 とりあえずスタッフの代わりに弁護しておいてやる・・・、それにしてもちょっと嫌なことを言う奴だ。


「お前は誰だ・・・だぁー・・・?まだわからんのか、お前たちのこんなに近くにいるというのに・・・、まったくお粗末だなあ・・、そんなんで冒険者とは呆れるよ・・・。


 こんな魔物の巣窟に来ているのに、何の用心もしないで無防備な態度を取りやがって・・・、せっかく息をひそめて待ち構えていた、俺様の立場がないじゃないかよ・・・。

 何のために俺様はじっと動かずに、その存在を悟られないように必死で堪えていたっていうんだ?


 お前たちなんか俺様がその姿を現していたとしても、俺様が狙っている事に気づかずにいて捕獲されただろうな。

 全く張り合いがない・・・、こんなんじゃあ中央の連中に自慢することすらできやしない。


 あんまりにも歯ごたえがなくって、拍子抜けしたぜ・・・。」

 声の主は散々悪態をつく。


「ふうむ・・・どうやらお前は魔物のようだな・・・、そうして中央に命じられて俺たちを捕まえに来た・・・、その存在が見えなかったという事は、お化け系で姿を消せるタイプなのか?

 今も姿を消して俺たちのすぐそばにいるのか?


 3人一緒に拘束できたという事は、仲間も含めて複数いるという事か?」

 とりあえず魔物という事はわかった・・・、後はその姿の消し方だな・・・。


「ぷぷっ・・・、本気でそんな的外れな質問をしているのか?

 残念だが俺様は一人だ・・・、そのたった一人の俺様に無様にも捕まってしまったお前たちは、おおまぬけという事だ。


 お前たちはこれまでにたくさんのダンジョンをクリアしてきているんだろ?・・ちょっとは期待していたんだが本当に残念だ・・・、お前たちのような奴らに倒されてしまった魔物たちには同情するよ。

 たまたまだな・・・たまたま運が良かったんだな・・、そうしてその運もついに尽きたという事だ・・・。


 じゃあ悪いが、お前たちは処刑させてもらうぞ。」

『シュルルッ』そうして俺の首の周りに新たなロープが出現した・・・首を絞めて窒息死させるという事か。


 姿の見えない声の主は、どのようにして一瞬のうちに俺たちを拘束し、更にその姿を現さずに俺たちのそばに居続けられているのか???それにしても、奴の言っていることはいちいち癇に障る・・・。


「ああっ・・・そうか・・・からみ蔦ですよ・・・クエスト票にあった・・・。

 パラボラアンテナ施設門にはびこるからみ蔦・・・、恐らく蔦の魔物なんですよ。


 だから、その姿を見せずに僕たちを瞬時に拘束できた・・・、何せ蔦である自分自身で俺たちの両手足に巻き付いているわけですからね・・、だから、すぐ近くに存在するが、その姿は見えないんですよ。」

 源五郎がひらめいたかのように、大声で解説する。


 なるほどそうか・・・蔦の魔物であれば、その姿は見えないはずだ・・・なにせその蔦をロープ代わりに俺たちの両手足を拘束しているわけだからな。

 しかもからみ蔦・・・、先ほどからの辛辣な口調も納得できるというものだ。


「ようしレイ・・・、敵の正体が分かれば反撃の糸口も見つけられる。

 俺の両手足を狙って威力を弱めた炎の玉を打ってくれ・・・うまく蔦を焼くことが出来れば脱出できる。


 俺は鋼鉄の鎧を着ているから多少の火炎なら平気だ・・・、レイや源五郎の場合だとは服ごと燃えてしまって火傷しそうだから、俺に対してしかできない作戦だ・・・できるかい?」

 すぐにレイに指示を出す・・・息ができるうちに・・・急がねばならない。


「分かった・・・、強火炎弾(パチ)(自パパ手)!ぱ・・・。」

『ボワッ』俺の鎧の右手が炎に包まれる。


「させるか!」

『シュルルッ・・ガギッ』その瞬間すぐに俺の首を絞めつけているロープというか、蔦の締め付け力が突然強まった。


 恐らくレイや源五郎も一緒だろう・・・、俺は鎧を着こんでいるから直接締められることはないが、レイや源五郎の場合はまずい・・死んでしまう。

『ググッ・・・』急いで炎に包まれている右手に力を込めて引っ張ろうとする。


「無駄無駄無駄無駄・・・。」

『シュルシュルシュルシュルッ』せっかくほどけかけていた右手に新たに何重にも蔦が巻き付いてきて、同時に炎も消えてしまった。


「ちいっ・・・レイっ源五郎っ!大丈夫か?」

「・・・・・」


 まずい・・2人とも首を絞められているとしたら、もはや猶予がない・・・、一体どうすれば・・・こんな時ツバサがいれば・・・というか、ツバサだったら俺たちみたいに捕まることもなく、華麗に跳躍してからみ蔦の拘束を逃れていただろうな・・・。


 なんて、ないものねだりをしている場合じゃあないな・・・。


『シュルルルシュルルル』『シュルルルルシュルル』もう正体がばれてしまったから遠慮しないのか、体中に蔦が巻き付いてきたようだ・・・それに伴い緑の葉も生い茂り始め、俺の体は緑に埋もれ始めた。

 恐らく源五郎やレイも同様だろう。


「レイッ・・・レイッ・・・先ほどの炎は蔦を焼き切る前に消されてしまった。

 なるべく火傷しないようになんて考えて弱い魔法を使っていてはだめだ。

 構わんから最高威力の炎の魔法をかけてくれ・・・それで何とか蔦は焼き切れるだろう。


 俺は鎧を着ているから炎に包まれても少しの時間なら問題ない、だから容赦なくやってくれ。」

 すぐにレイに第2の指示を出す・・・、トシミさんの時に危うく死にかけたことを思い出したが、まあどうせ何もしなければ同じことだ。


 だが、レイの首が絞められていたら、魔法を唱えられるだろうか・・・。

 それよりも何よりもレイの意識はまだあるだろうか・・・、参ったな・・これじゃあ身代わり指輪をいくつつけていても、どんどん割れていくだけで収まることはない・・・このままでは全滅だ・・・。


『ゴワッ・・・』そう思っていたら周囲の景色が真っ赤に変わり、同時に息もできないような熱気に包まれた。

 やった・・レイの巨大火炎魔法だ・・・うわ・・・熱いっ!


『グググッ・・・ブチッ』『グググッ・・・ブチッ』すぐに両手に力を込め、手首に絡まっている蔦を引きちぎる。

 やはり火炎のダメージを負っているのか、かろうじて引きちぎれた。

『シャキィーンッ』『ブチッブチッブチッ』すぐに鋼鉄の剣を抜き、首と両足に絡みついている分を切り払う。


『ザッパァーンッ』炎を身にまとったまま数歩門扉から下がると、今度は強烈な水流に見舞われた・・・、レイの奴だろう・・・とりあえず少しダメージを食らったが、火は消えた。


『タッ、タタタタッ・・・』『シャキィーンッガッガッガッガッガッガッ』『ブチブチブチブチブチブチブチブチブチッ』すぐにレイのところへと駆けより、襲い掛かってくる蔦攻撃を盾で振り払いながら、まず首に絡みついている蔦を切り払い、両手両足の分も素早く切る。


 紙一重というか寸止めというか、衣服ぎりぎり残して素早く剣で切り裂くという事が、今の俺には可能なようだ。


『ドサッ』「ごほっ・・・ごほごほっ・・・はっ早く・・ダーリン・・・」

 宙づり状態から解放されたレイは、そう言い残したあとそのまま地面に転がった。

『ズザザザザザザッ』再び蔦に絡まれないように、少し門扉から引きずって離しておく。


『シャッキィーンッガッガッガッガッガッガッ』その間もなおも幾本もの蔦は、まるでそれが知能を持った生き物のように、あらゆる方向から俺の体を再び拘束せんものと襲い掛かってくる。


『ブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチッ』何とかスキをついて、今度は源五郎を拘束している蔦を切り払う。

 部分部分を切り払っていてもすぐに再生してしまうので、一気に切り払って引き剥がす必要性がある。


『ドサッ』「ぐ・・・ごっ・・・ごぼっ・・・ごほっげほっ・・・。」

 門扉の磔状態から地面に落ちた源五郎が、苦しそうにあえぐ・・・。


『ガッツガッガッガッガッツガッガッガッ』拘束の対象が居なくなってしまったせいか、蔦の群れの攻撃は一段と激しさを増してきた・・・右から左から上から下から矢継ぎ早に仕掛けてくるので、何とか盾と剣で襲い来る攻撃を防ぐだけで精いっぱいだ。


「源五郎!動けるか?動けたら、そのまま後方のレイのところまで何とか行ってくれ。」

 とりあえず、このままだと危険なので源五郎を退避させることにする。


「は・・・はいっ・・・」

 がすれた声で返事をすると、源五郎は這うようにして後方へと下がっていった。


『ガッツガツンガガガッガッ』その間も俺はただひたすら、四方八方から飛んでくる蔦攻撃を盾と剣で受け止めることに必死だった・・・、ううむ・・・このままではじり貧だ・・・。


「よくもやってくれたわね・・・もう許さないんだから・・・、パパっどいて!煉獄(バーナウト)煉獄(バーナウト)煉獄(バーナウト)!」

『ボワッボワッボワッ』後方から声がして危うく体をかわすと、3つの巨大な火の玉が俺のすぐ横をすり抜けて行った。


『ゴウゥアー』レイの魔法により、門扉の格子は真っ赤な火炎に包まれる。

『ゴォー・・・ブンッブンッ』『ガゴッゴワッガガッガツンッ』それでもからみ蔦は、炎をまとったまま蔦を伸ばして再び襲い掛かってきたので、またも盾と剣で振り払う・・・が、火炎をまとって威力を増したようにすら感じる。


「ばかなっ・・・、これだけの炎でも燃え尽くせないというのか?」

 紅蓮の炎に包まれても、なおも攻撃を仕掛けてくるからみ蔦に、恐怖を感じてきた。


「恐らく、どこかに本体が隠れていて、燃えても燃えても蔦をどんどん供給しているのでしょうね。

 これではいつまで待っても退治できませんよ・・・、本体を叩かなければだめです。」

 後方から源五郎の声が・・・レイと2人、魔法で回復したのだろう。


 源五郎はそういいながら矢をつがえると弓を引き、じっと目をつぶった・・・まるで見えない標的を探るかのように・・・。


「そこだっ!」

『シュシュシュシュシュシュシュシュッ』『ガッツガツガッツガッツガッツガッツ』一体同時に何本の矢を放ったのか、すさまじいまでの連射で放たれた矢は、門扉を支えているコンクリート製の大きな門柱の根元に突き刺さっていく。


『キュゥーンッ』『シュルシュルシュルシュル』突如悲鳴のようなものが響き渡り、執拗に攻撃を仕掛けていた蔦が、勢いよく門柱の裏側へと引き戻っていった。


「逃がすか!」

『ダダダッシュタッ』叫びながら俺は数歩助走し、ジャンプ一番・・大跳躍し、門扉を飛び越した。


『シュルシュルシュル』『シュッパァーンッ』そうして門柱裏側の蔦が引っ込んでいっている根元に向けて、鋼鉄の剣を思いきり深く突き刺す。


「うっぎゃぁーんっ!」

 確かな手ごたえがあり、断末魔の叫び声とともに魔物の気配は完全に消え去った。


「ふうっ・・・何とか倒せたようだな。」

『カチッ』『ぎぃー・・・』門扉のロックが外れたのか、自然と開いた・・・・。


「ウーン・・・どうしようか・・・、ここで待っていてもらった方がいいかな?」

 門が開いたので中継車も一緒にパラボラアンテナ施設へ向かう事は可能だが、これまでのことを考えると、ちょっと危険すぎるだろう。


「まずは一旦中継車に戻ろう。」

『タタタタッ』レイと源五郎と連れ立って、中継車に戻る。



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