戦い終わって
9 戦い終わって
「源五郎・・・あんな状態になっても全然平気で動いているという事は、葉の中心部分・・・茎との結合部分・・・、恐らくそこが急所じゃあないかな。
蓮の葉自体は大きな羽のようなもので、燃え尽きてもダメージはさほどないのだろう。
中心部分を攻撃してみてくれ。」
源五郎に指示して、骨組みだけになった葉の中央を狙ってみるよう指示する。
「はいっ・・。」
『シュッ・・シュパッ』『ギャオォースッ・・・』思った通り、葉の中央部分を射抜かれた蓮鳥は、もがき苦しむようにのたうち回り、やがて消失した。
「へえ・・・じゃあ、どんどん行きますよ・・・。」
『ザッパァーンッ』『シュッ・・・シュパッ』『ギャァー・・・』骨組みだけのようになった焼け残りの蓮鳥の葉の中央部分をうまく射止めて、源五郎が魔物を退治していく。
『ザッパァーンッ』『ザッパァーンッ』『ザッパァーンッ』『ザッパァーンッ』『ザッパァーンッ』形成が悪いと判断し一斉攻撃をかけるつもりか、一気に大量の蓮鳥がその鎌首を持ち上げてきた。
「レイッ・・・湖を凍らせてくれ・・・、強い魔法ではだめだ・・・魔物たちまで完全に凍ってしまうからな・・・、湖の水だけ凍らせる程度の弱い魔法をかけてくれ。」
すぐにレイに指示を出す。
「うん、分かった・・・えーとえと・・・強冷凍!」
記憶力のいいレイが唱えると、初級魔法でも遥か見渡す限り一瞬で湖の表面が凍り付いた。
『ブンッ』『シャッキィーンッ』それでもレベルの高い蓮鳥は凍り付くことなく、湖上に突き出た部分だけで攻撃を仕掛けてくるので、鋼鉄の剣で受け止める。
「レイッ、今なら炎攻撃で燃やし尽くせるはずだ・・・、奴らは水中へ頭を引込められないからね。
そうして源五郎・・、骨組みだけにならなくても弱点は葉の中心部分だろう、狙えるかい?」
「うん、わかったぁ・・・。」
「まかせてください!」
二人とも元気に散っていく。
「煉獄!煉獄!煉獄!」
『ゴワッ』『ボワッ』『ブワッ』『ギャースッ』『ギャァー』『ギャァギャー』蓮鳥たちは、炎にその体を包まれるが、水中へ逃げ込むこともできず、断末魔の叫び声をあげる。
『シュッ・・シュパッ』『シュッ・・シュポッ』『シュッ・・シュパンッ』さらに源五郎の射かける矢が的確に巨大蓮の葉の中心部分を射抜き、次々と蓮鳥たちは消滅していく。
『シュッ・・シュパンッ』「これで、顔を出していた蓮鳥は最後です・・・。」
源五郎が、最後の蓮鳥に止めを刺した。
うーん、何とかなるものだな・・・まあレイが加わってくれたのがありがたかった・・・、俺と源五郎の2人だけでは、奴らの急所にまで頭が回らなかっただろう。
やはりクエストはチーム全員で助け合っていかなければならないという事なのだ・・・、ううむ、そう考えると・・・やはりツバサの抜けた穴は大きいな・・・。
『ピキピキピキピキッ・・ザッパァアーンッ』『ギャォースッ』ほっとしたのもつかの間、湖表面の氷を割りながら超巨大な水柱が上がったかと思うと、遥か天にまで届こうかとするばかりの巨大な蓮鳥が、その鎌首を持ち上げた。
葉の直径が十数メートルはあるだろう、茎の太さも成人男性の太ももぐらいはありそうだ。
『シュッシュッシュッ』『キンッキンッキンッ』すぐ源五郎が遥か上空に向けて矢を射かけるが、途中で勢いが落ちるのか、小刻みに揺れるその葉の振動だけで簡単にはじかれてしまう。
「煉獄!」
『ゴワッ』『ブンッ・・キンッ』レイの魔法でひときわ大きな火球が上がっていったが、蓮鳥がその鎌首を大きく振り回して弾いてしまった。
「だっ・・・ダメですね・・・。」
弓を持つ源五郎が、首を振りながらこっちを見る。
「任せろっ!とうっ・・・」
『ブンッ』『ダダッ・・シュタッ・・・シャッキィーンッ・・・・』超巨大な蓮の葉を大きく広げて俺たちの方へと突っ込んできたので、数歩駆け出し助走をつけて勢いよくジャンプ・・・。
跳躍したまま大きく振りかぶると、巨大蓮の中心めがけて一気に鋼鉄の剣を振り下ろす。
『ザザザザザザッ・・ザザザザザッ・・ザザザッ』そのまま剣を振り切らずに太い茎を真っ二つに割きながら落下し、何とか桟橋の端ぎりぎりに着地した・・・ツバサ並み・・とまではいかないが、飛翔の剣の効果だ。
『どっぼぉーんっ』超巨大蓮鳥は、真っ二つに割けながらその体を湖表面にたたきつけ、その後消失した。
「ふうっ・・・、何とか片づけたな・・・。」
最後の最後に俺の出番があって・・・、危なかったというよりちょっとうれしい・・・。
「やりましたね・・・じゃあ遊覧船発着場の彼女に、片付いたことを知らせてあげましょう。」
「ああそうだな・・・、それはそうと・・・彼女は違うのかい・・・?
なにか、ピンとくるものはないのかい?」
念のために源五郎の夢の中の彼女ではないのか聞いてみる・・・、かなりの美女でしかも巨乳だからな。
「いえ・・・たぶん彼女ではないでしょう・・、体形も夢に出てくるシルエットとは違いますし・・・。」
源五郎が笑顔で首を振る・・・まあそうだろうな・・・、ロリコンとは言わないまでも、レイがお気に入りという事は、彼女のような大人の女性は恐らく源五郎の好みではないのだろう・・・。
「なあに・・・?あのおばさんの話・・・?
ママに言いつけるわよ・・・!」
すると俺と源五郎の話の一部が聞こえたのか、レイが寄ってきて睨みつける。
「いっいや・・・なっ何でもないんだ・・・それにしても、おばさんは失礼だぞ・・・お姉さんにしておけ・・・いいな!」
レイに巨乳美女に対して失礼な態度をとらないよう、念を押しておく。
「はいはい・・・。」
レイは頬を膨らませながら、気のない返事をかえした。
『ガンガンガンッ』「すいませーんっ、きこえますかー・・・?蓮鳥は退治し終えましたよー!」
源五郎が湖畔の建物へ向かい、扉をたたいて中に声をかける。
ところが、反応がない。
『ドンドンドンドンッ』「おーい・・・、魔物たちは一掃したから、もう出てきても大丈夫だぞう!」
俺も一緒に扉をたたいて大声を張り上げる。
(・・・わけない・・・でしょ・・・)
「うーん・・・、中で何か言っているような気もするんだがなあ・・・。」
先ほど同様、出てくるまで何度でも扉をたたいて叫び続けるしかなさそうだな・・・。
『ぼー・・・ぼーっ』すると突然、湖の方から汽笛が聞こえてきた。
『カチャッ』「ゆっ・・・遊覧船・・・、あんたたち本当に魔物を退治してくれたんだねーっ?」
汽笛が鳴るとすぐに扉が開いて、先ほどの巨乳美女が飛び出してきた・・・遊覧船だって・・・?
『ぼーっ・・・』湖へ振り返ると、確かに大きな船が桟橋に向かってやって来ている。
「ありがたいありがたい・・・、あんたたちは真の勇者だよ。」
巨乳美女は先ほどまでの不機嫌な顔はどこへやら、満面の笑顔をたたえて俺の両手を握りしめ、何度も飛び跳ねる。
「乗船するかい?」
そうして、とんでもないことを尋ねてきた。
「乗船って・・・乗れるのかい?
ずっと営業していなかったんだろ?」
魔物のおかげで何ケ月も営業休止(という・・・設定なのだろうが・・・)だったわけだが、いくら何でも魔物を退治した瞬間から営業再開という訳にはいかんだろう。
「確かに俺たちも遊覧船に乗って向こう岸へ行きたいんだが・・営業再開するまでその辺で野宿させてもらおうかと言いに来たんだ・・・。」
とりあえず、その辺にテントを張ろうとして、営業妨害だなどと怒られても困るので、断っておいた方がいいだろう・・・なにせ平らな場所は湖畔の遊覧船乗り場の狭い範囲にしかなさそうだ。
「だったら船に乗り込むといい・・・客船だからベッドもあるし、こんなところで野宿するより快適に寝られるさ。
この遊覧船は昼間は湖上の観光船だが、夜は移動手段として一晩かけて対岸へ航行するんだ。
あんたたちは遊覧船乗り場の魔物を退治してくれたんだから、もちろんただで乗っていいよ。
どうせ今日の夜便は乗船客なんかいやしないんだ・・・、だから一等でも何でも好きな客室を使ってくれればいいさ。
じゃあ、あたしは到着したお客さんの世話をしなきゃならんから、先に行っているよ。
乗りたくなったら桟橋へきて、あたしに声をかけてくれ。」
巨乳美女は紺のブレザーをTシャツの上から羽織ると、桟橋へ向かって駆け出して行った。
「どうしました?早く行きましょう。
あのくらい大きな遊覧船だったら、多分乗用車も積めると思いますよ。
中継車を迎えに行きましょう。」
桟橋へと駆けていく巨乳美女の後姿をぼうっと眺めていたら、源五郎から催促されてしまった。
「あっ・・・ああ、そうだな・・・フェリー型の客船のようだし、大丈夫だろう。」
すぐに雑木林を抜け中継車に戻ると、乗車して再び桟橋へと向かう。
『ブロロロロロロロッ・・・キキィッ』桟橋はコンクリート製のがっしりした造りなので、中継車でも悠々と乗り入れることが出来た。
「いったい・・・湖内を何百周したのか、途中から数えることも飽きてしまったぞい。」
「本当にそうですよねえ・・、食堂の定食もメニューの順に頼み続けて・・・、それを何度繰り返したか・・・。
しまいには暗記してしまって、今日の注文は何になるのか、ウェイトレスさんも覚えていましたものね。」
「うーむ、毎日カレーを食べ続けて1000食連続達成・・・これは世界記録となるだろうか・・・。」
「毎日食堂のウェイトレスさんを口説き続けて、フラれ続け・・・、この撃沈記録は世界記録として申請できるだろうか?」
様々なことをつぶやきながら、客たちが降りてくる。
降船客がまだ多いため、桟橋の中ほどで中継車を止め、後は徒歩で向かう。
客の会話を聞く限り、魔物に居つかれて着岸できなくなっている間中、遊覧船は湖上を周回していたという事なのか・・・?何ともまあ・・・お気の毒・・・。
「いらっしゃいませ・・・、乗船なさいますか?
この遊覧船は、湖北行きとなります。
お客様たちなら特別大サービス・・・、なんと・・・無料です・・・。」
先ほどの巨乳美女は俺たちの顔を見ると、少しかしこまりながら笑顔で応対してくれる。
「ああ・・・無料はありがたいんだが・・・、乗船するのは俺たち3人だけじゃあない。
あの中継車とテレビスタッフたちも一緒なんだ・・・、車は積めるかい?
それでも流石に彼らまで無料とはいかないわけだろ?だけど少しはサービスしてくれないか?」
俺たちだけただで乗せてもらうのは少々気が引けるので、スタッフ分も値引き交渉する。
「ええええ・・・車もOKですよ・・・、更にスタッフさんたちも無料です。
帰りの分どころか、お客様たちとスタッフさんには永久にこのペレヘス湖遊覧船のタダ券を進呈しますよ。」
そう言いながら、巨乳美女は遊覧船のタダ券を、テレビスタッフ用と2枚手渡してくれた。
「この券は青空観光グループの乗り物でしたら、何でも無料でご乗車できます。
と言ってもまだ小さな観光会社でして・・・、ペレヘス湖での営業しかしていませんけどね。
ですが社長は野心家なので、いずれは他の大陸にも進出するって息巻いておりますから、期待していてください。
この券1枚で、お連れ様も同条件でご乗車可能です・・・、どうぞご利用ください。」
なんともまあ、ありがたい・・・と言えるかどうかわからないチケットを手に入れることが出来た。
「あっああ・・ありがとう。」
タダ券は袋に入れることが出来たので、冒険者グッズであることは間違いなさそうだ。
「では、どうぞご乗船ください。」
『ギギギギギ・・・ガッシャン』船から降りてくるお客がいなくなった頃を見計らって、船後方のフェリーゲートが開いて桟橋と同じ高さになった。
「よしっ・・、じゃあありがたく乗船させていただこう。」
『バタンッ・・・ブロロロロロッ』中継車に乗り込み、少しバックしてフェリーへ乗船する。
「へえ・・・、随分と広いですね・・・。」
形ばかりの本日分の冒険放送の検閲を済ませ車庫から客室ホールへ上がると、そこはシャンデリアが下がった豪華な造りとなっていた。
「いらっしゃいませ・・・、客室のご案内ですか?」
紺色の帽子に制服姿のきれいなお姉さんが、カウンター越しに声をかけてくる。
見ると受付となっているので、ここで部屋割りをしてもらうのだろう・・・勝手にどこでもという事ではなさそうだ。
「あっああ・・・、どこでもいいとは聞いているんだが・・。」
そう言いながら、先ほど受け取ったタダ券を見せる。
「まあっ・・・VIP様ですね・・・、失礼いたしました。どうぞこちらへ・・。」
受付嬢は少し驚いた表情を見せたが、すぐに立ち上がって俺たちを案内してくれるようだ。
『カッカッカッカッ』階段を上がっていき、最上階フロアへとたどり着いた。
「こちらのフロア・・・、全てご自由にお使いください。」
そうして一等客室フロア、貸し切りという事になった。
「じゃあ、俺たちはこっちのスイートにするから、君たちはそちらを使ってくれ。」
会議室もあるような5部屋位の間取りの部屋はテレビスタッフたちに割り当て、俺たちは2ベッドルームのスイートを使うことにした。




