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結婚???

6 結婚???

「どうしたんだい?まさか、もう1日町長の息子さんの警護のために残るというんじゃあないよね?

 今日からは護衛が来るはずだったんじゃあないのかい?」

 ツバサのごめんなさいは、どういう意味か分からないが、俺たちにとってありがたい事では決してないだろう。


「そ・・・それが・・ですね・・・・・・・・・・・・・・すぅー・・・えー・・・、あたしは・・・」

 ツバサが話しにくそうに・・・それでも何とか深く息を吸い込み、話し始めようとする。


「その件は、僕からお話ししましょう。

 単刀直入に言います・・・、僕とツバサさんは結婚します。」

 するとツバサに変わって町長の息子が、ショッキングな言葉を発する。


『結婚ー!!!』

 これには俺も源五郎も、もちろんレイも耳を疑った。


「ど・・・どういう事なんだい?」

「えー・・・、ツバサお姉さん・・・結婚するのー・・・?」


「ツバサさん・・・結婚って・・・???」

 3人が3人とも目を白黒とさせながらツバサを眺める・・・が、ツバサはうつむいたままだ・・・。


「本当に申し訳ありません・・・、あたしにはその・・まだ少し早いかな・・とも思っていたのですが・・・彼がどうしてもと・・・。」

 ツバサは顔を伏せたまましどろもどろだ・・・ショートカットヘアの隙間から覗く、耳たぶまで真っ赤になっているようすだ。


「いやあ僕がツバサさんを見初めまして・・・何せこんなに美しいのに、どうしてあんなに強いのか・・・、本当に彼女は世界一の女性です。


 以前から冒険放送を見るたびに気にはなっていたのですが、本人に出会うことが出来て自分の気持ちにはっきりと気づきました。

 彼女を愛しています、そうして彼女を失いたくはありません。


 大変申し訳ありませんが、皆様方と一緒に危険な冒険の旅に行かれては困るのです。

 そんなことよりも、この平和な地で僕と一緒に暮らしましょうと、何度も何度も重ねてお願いし、ようやく承諾していただいたのです。


 彼女のような強い人が一緒に暮らして頂ければ、我が家は安泰ですからね。」

 町長の息子は満面の笑顔で自慢げに告げる・・・ううむ・・昨日1日かけて説得したという事か・・・。


「だが・・・2人は出会ってまだ2日しか経っていない・・・いくら何でも早すぎないか?」

 いくら何でも出会って2日ではお互いのことを何も知りあえないだろう・・・それなのに何という大それたことを・・・。


「そ・・・そうですよね・・・そうなんですよね・・・、もう少しお付き合いしてから考えた方が・・・。」

 ツバサは、それでも顔をあげずに、垂れさがった髪を少し指でたくし上げながら答える。


「つっ・・ツバサさん・・・何を言うんだい?・・・昨日あれほど何度も繰り返して僕の気持ちを告げたというのに・・・。

 僕がどれほど君のことを愛しているか・・・、君の真の美しさをどれだけ感じているのか・・・。


 出会ったばかりだといっても、僕はずっと前から冒険放送を通じてツバサさんのことを知っていたし、ツバサさんの人となりも理解しているつもりだ。」

 すると急いで町長の息子がツバサの両肩を持ち上げて、彼女と正対し目を合わせようとする。


「わっ・・・分かっています・・・、あたしのことを本当に愛してくださっているという事は・・・。

 本当にうれしいです・・・、あたしも・・あなたのことが・・・。」

 ツバサは半分泣きそうになりながら、町長の息子とそれでもしっかりと目を合わせて答えようとする。


「ツバサさん・・・僕たちは、あなたからの本当の要請ではなかったとしても、それでもあなたを助けようとしてこの地へやってきました。

 そうして一緒に冒険を続けられるようになって、本当にうれしく感じていました。


 それなのに、ツバサさんは一人だけその冒険から外れようとしますか?

 この世界がどうなっても、いいというのですか?」

 そんなツバサの態度に、源五郎が堪らず問いかける。


「分かっています・・分かっています・・・、皆様方が、あたしを救おうとしてこの地にいらっしゃったことは、重々に感じております・・・、ですが・・・その・・・これ以上危険な冒険を継続することは・・彼が・・・。」

 ツバサはそういいながら町長の息子の両手を自分の肩から外し、再びこちら側に向き直った・・・が、すぐに正面を向いていられずに顔を伏せてしまう。


「わっ・・・分かっているんだったら・・・、だったら僕たちと一緒に冒険の旅を続けるべきではないのですか?

 別に一生旅を続けようと言っているわけではないのです・・・、このおかしくなったゲームの世界を立て直すまでだけです・・・、そのくらいの時間・・・待っていただけますよね?」

 源五郎が、今度は町長の息子に目を向けて問いかける。


「いや・・・そんなこと・・・到底無理です・・・、何せ皆さんの冒険を見ていると、本当に危なっかしいというか、常に命のやり取りをしていますよね・・・?


 特に最近はダンジョンに閉じ込められそうになることがしばしばあります・・・、そんなところに彼女が閉じ込められたら・・と思うと・・・、絶対に冒険の継続を許可するわけにはまいりません!」

 ところが町長の息子はきっぱりと拒否する・・・いや・・・許可って・・・、一体あんたはツバサの何なの?


「確かに俺たちは、はたから見れば危険な冒険の旅をしているし、危険なダンジョンにクエストを達成するために潜り込んで、命のやり取りをしている。

 だがそれは俺たち冒険者の使命なんだ・・・、危険だからやめようなんて思っていたら、冒険なんか最初からできない。


 危険っていうけど・・・確かに魔物たちも強力になってきているが、そんな中でも勝ち抜いていけるよう、日々のトレーニングだって欠かさないようにしているつもりだ。

 そうして少しでもスムーズに冒険を続けられるよう頑張っている。


 ただやみくもに、ダンジョンへ突入しているという訳では決してない、これだけは信じてくれ。」

 どうにも俺たち冒険者に対して誤解があるようなので、とりあえずその誤解を解いておこうとする。

 まあ、ダンジョンに閉じ込められることが恐ろしくて、皆に1週間も足止めをくらわした俺がこんなことを言うのも何なのだが・・・。


 大体、昨晩だって町長は俺たちなら今後のクエストは楽勝だって言っていなかったか?太鼓判を押すって言っていたはずだぞ?それを真っ向から否定するというのか?あの絶賛はいったい何だったというのだ?


「信じろと言われて・・・あなたたちのような無頼漢の言葉を・・・、そのままそっくり信じるという訳にはいかないですよ・・・。」


 ところが町長の息子は、なぜか冒険に関して態度が頑なだ・・・、だが・・・待てよ・・・彼は最初は俺たちのファンで冒険放送を楽しみにしているって言っていなかったか?


「まあまあ、なにをどうおっしゃられましても・・・、ここに残るというのはツバサさんのご意志ですからね!

 私たちは、なにも無理強いしているわけでも、ましてや脅迫してとどまらせようとしているわけでもありません。

 脅迫といっても、ツバサさんのような強い方に我々のような一般人が脅迫できるはずもありませんよね?


 仲間を失うというのは大変につらいことです・・・お気持ちはお察しいたしますが・・・、ここはひとつツバサさんの気持ちを第一にお考え下さい・・。」


 俺たちの話し合いがいつまでも平行線なのに業を煮やしたのか、町長が強い口調で言い放つ・・・ツバサの意思と言われると本当につらい・・・なにせ昨日からツバサの様子がどうにもおかしいのだ・・・、一体どうしたのか?


「分かりました・・・、確かに彼女の気持ちが最優先です。

 ですが・・・最後に俺たちだけで彼女と話をさせてください・・・、それでも彼女の気持ちが変わらなければ、俺たちはきっぱりあきらめてここを旅立ちます。」

 仕方がない・・・ツバサと直接対決するしか方法はなさそうだ。


「そっそんなこと・・・あなたたちはツバサさん以上に強いそうではないですか・・・、だったら無理やりツバサさんを連れて行こうとするに決まっています。

 そんなこと・・・絶対に認めるわけにはいきませんね。」

 ところがそんな最後の提案さえも町長の息子は拒否をする。


「ツバサ・・・ツバサはどうなんだい?

 俺たちと話をしたら、無理やりにでも冒険の旅に連れていかれるって考えているかい?」

 町長の息子は無視して、ツバサに直接訪ねることにする。


「あっあたしは・・・サグルさんたちが、そんなあたしの気持ちに背くようなことをするはずがないことはわかっていますよ・・・ですから、お話し合いをしても全然問題はありません・・・。」

 ツバサはまたもや顔をあげずにうつむいたまま答える・・・ううむ・・一体どうしてしまったのだ?


「だっだめだよツバサさん・・・彼らの口車に乗っては・・・、本当に無理やり連れていかれてしまうよ!

 おいっ!ガード!彼らを家から追い出してくれ!」

 すると突然町長の息子が、大きな声で食堂入り口ドアに向かって叫ぶ。


『ダダダダダダッ』すぐに屈強な体をした大男たちが数人食堂内になだれ込んできた。

 ガードとして雇った男たちなのだろう・・・魔物からの護衛のはずだったんじゃないのか?


「おいおい・・、俺たちは冒険者だから魔物たちとは戦うが一般人と戦うつもりはない。

 だがそれでも襲ってきた場合は、何も抵抗しないという事はないぞ。


 対抗手段はいくつも持っているし、何より俺たちのレベルから考えれば、この辺の者たちが何人寄ってきても俺一人でも簡単に対処できるだろう。

 俺たち3人を何とか出来るつもりで呼んだのかい?」


 冒険者であり続けるため、一般人と面倒なことはなるべく避けたいのだが、それでも向こうから襲い掛かってくるというのであれば、それは正当防衛だから問題はないだろう・・・余裕の表情で町長の息子をにらみつける。


「なっ・・・。」

 睨みつけられた町長の息子は少し反発しようとしたが、すぐに町長に押しとどめられた。


「まあまあ・・・冒険者の皆様方がお強いという事は、よく承知しておりますよ・・・。

 そうして皆様方のようにお強ければ、これから先の冒険も楽勝であろうという事もね・・・。


 ですから、ツバサさんが一緒に同行されなくてもどうという事はないですよね?

 申し訳ありませんが、我息子はツバサさんに恋い焦がれておりまして、どうしてもツバサさんを必要としております・・・、そんな息子の気持ちを汲んでやっていただけませんか?


 皆様方がツバサさんと最後のお別れをするという事でしたら、それをお止めすることはできないと考えますが、この食堂で行ってください。


 外でやっていただいたところで、息子が申しているように、皆様方がツバサさんの意思に背いて無理やり連れ去るという事はないと考えておりますが、それでもツバサさんが戻るまで息子がやきもきしてしまうでしょう。

 それを避けるためにも、どうかこの食堂で最後のお別れをしていただきますようお願いいたします。


 さっ・・行くぞ・・・。」

 そう言い残して、町長はぶつぶつつぶやいている息子とガードたちを連れて、食堂を出て行った。

 あとには俺とレイと源五郎とツバサだけが残された。


 まあ要するに、俺たちはどうなったとしても構わないから、クエスト攻略問題ないですよと太鼓判を押すけど、ツバサは大切な人だから彼女の参加は認めませんよ・・・という、本当に自分勝手な評価をしていたわけだな。

 全く信頼できない人物・・といったところだが・・・、それは俺からの見た目であって・・・。


「ツバサ・・・本当にいいのかい・・・?ここに残って、たった2日前に出会ったばかりの町長の息子と結婚をするというのかい?」

 依然として顔を伏せたままのツバサに、本当の気持ちを聞こうと問いかける。


「はっはい・・・、あたしは・・・町長の息子さんを愛しています・・・。」

 ツバサがボソッとうつむいたまま答える。

 ううむ・・・参ったな・・・。



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