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ペレー丘洞窟

4 ペレー丘洞窟

「それがですね・・・昨晩息子を襲った魔物たちですが、まだこの周辺に生き残りがいるという噂を耳にしました・・・。

 そこですぐにガードマンを雇うことにしたのですが・・・、いかんせん本日からという訳にはいかず・・・、明日から来ていただけることにはなったのです・・・。


 それなので大変申し訳ないのですが・・・、本日だけは我が家をツバサ様にお守り願えないかとお願いしていた次第でして・・・。」

 町長が、申し訳なさそうに頭を掻きながら説明してくれる。


「あっ・・・ああ・・そうですか・・・、じゃあどうするかな・・・本日分の冒険がないからなんとしてでもクエストには向かいたいんだがな・・・。」

 ツバサの顔に目を向けるが・・・、ツバサは目を合わせようとはせずに、うつむいたままだ。


「分かったよ・・・じゃあ今日のクエストはあきらめて明日にしよう・・・、明日の朝一から始めれば午前中に終えて次のクエスト地点へ出発することもできるだろう。」


 ツバサが行けないのなら明日に引き伸ばしという事になりそうだな・・・、しかし冒険放送が気がかりではある。

 まさか昨晩の町長の息子の襲撃事件を放送することはできないだろう・・・一応カメラはつけていたのだが、流石に個人情報が出すぎてしまう。


「そんな・・・これはあたしのわがままですから、皆さんはクエストに向かってください・・・。」

 ツバサは俺たちだけでのクエスト続行を勧める・・・それはそうだろう、自分の都合が原因で冒険の進行が遅れるのは、我慢できないのだろう。


「だがしかし・・・、やっぱりチームメンバー全員で向かわないと・・・ツバサが抜けると厳しいよ・・・。」


 クエストをこなすのは、最終目標である魔王城の魔王や魔神たちに達するという目的のほかに、ツバサのレベルアップも重要な目的の一つと言える。

 それに、やはり3人だけだと魔物たちのレベルが上がってきているのでつらいというのが、本音ともいえる。


「いえいえ・・・ペレー丘の洞窟は、先ほども申し上げましたように非常に簡単な造りをしておりまして・・・、更にクエストアイテムであるツミレ鳥は、これはもう美味なるものでして・・・。

 皆様方の実力でしたなら、3人もいれば十分にこなせるクエストと思っておりますぞ・・・!」


 すると今度は町長が笑顔で力説する・・・、決して、そんなに簡単なクエストとは思えないのだが・・・、何せクエストレベルがBAと上がっているわけだし・・・。


「聞いた限りではダンジョンは迷路ではなく単純な構造のようですし・・、今回のクエストは僕らだけで行ってみましょうか?


 魔物のおいしさばかりが強調されてしまって強さが分からないので何とも言えませんが、構造が単純なら相手が強ければ逃げてきて、再度ツバサさんと一緒にチャレンジすればいいのではないでしょうか?」


 源五郎が俺の背後から小声で提案する・・・、まあなあ・・・今日は何もしないというよりも、一応ダンジョンへ顔を出してみて・・・様子を見てみて・・・といった感じだな・・・。


「よし分かった・・・、俺たちだけで行ってみよう。

 ツバサは今日1日は町長宅の警護に専念してくれ・・・、もちろん俺たちもクエストを終えたらすぐに戻ってきて、警護に協力をする。


 それで・・いいね?」

 ツバサに念を押して確認する・・・、あくまでも彼女の意思には違いがないのだが・・・冒険好きのツバサとは思えない態度に、少し抵抗がある。


「はい・・・申しわけありませんが、今回だけは堪忍してください。」

 ツバサがようやく顔をあげて返事をした・・・、ううむ・・やはり何か気になるなあ・・・。


「じゃあ、行きましょう・・・ツバサさん後をよろしく。」

「ツバサお姉さんは、今回は留守番かあ・・・じゃあ行ってくるね!」

 それぞれ、ツバサにしばしの別れを告げて町長宅を後にした。



『ブロロロロロッ・・・キキィッ』ペレー丘は町を出て車で30分も行かないところにあった。


 まっ平らな平原の中にポツンと飛び出したはげ山というか、木がほとんど生えていない、草ばかりの幅が2百メートル、高さが20メートルくらいの小高い丘だった。

 その真ん中あたりに幅5メートルくらいの洞窟がぽっかりと開いている・・・、これがペレー丘洞窟だろう。


「じゃあ、これからツミレ鳥捕獲のクエストに向かう・・、目の前の洞窟内にいるようだ。

 改めてクエスト票を確認してみると・・・、ツミレ鳥・・・攻撃力BA防御力DDとなっている。


 攻撃力を犠牲にして防御力を高めにしているとか、ではなさそうだね・・・、今までの魔物に比べると普通時でも攻撃力は高めではあるが、俺たちのレベルに比べればまだ低いし、更に反撃力など特化しているようではなさそうだから、3人だけでも十分に戦えるだろう。


 ほかには・・目が光るとなっているから、暗い洞窟内でも見つけやすいのかな?」

 とりあえず洞窟前で恒例となりつつある朝会を行う。

 洞窟も一本道と言っていたし、何とかなりそうだな・・・。


「じゃあ行くぞ・・・。」

 俺を先頭に洞窟内へと入っていく・・・、結構大きな洞窟なので、外からの光が差し込み十数メートル先でも結構明るい・・・。


「うんっ」

『ピカッ』すると、洞窟の奥の方が光り輝いた・・・、「いてっ!」


 同時に左わき腹に激痛が走る・・・、攻撃を受けたのか?一体だれに・・・?

 すぐにわき腹を抑えながら、周囲を見回す・・・が、見える範囲には魔物のような影はいないようだ。


「パパ、大丈夫?全回復(ゼンカイ)!」

 レイの魔法で、焼き鏝を当てられたような痛みが引いていく・・・。


『ピカッ』「伏せてっ!」

『ズザザザッ』源五郎が叫ぶと同時に、反射的に前方に滑り込むようにしてうつぶせになる。


「どうやらレーザー光線のようですね・・、しかも以前受けた攻撃よりも、強力なレーザーのようです。」

 源五郎が、鉄の大弓の真ん中あたりにきれいに開いた丸穴に人差し指を入れながら告げる。

 目的が捕獲なので少しでも攻撃力を抑えるつもりだったのだろうが・・・、修復しないと使えないな・・・。


 ふうむ・・・こういった場面では大抵ツバサが駆け出して、華麗に宙を舞い上がり狙撃手を倒し、それから俺たちが本隊を・・・といった戦法になるのだが、今回はツバサはいない。

 ないものねだりをしても始まらないので・・・。


「どうだ・・・俺がおとりになるから、なにかが光った瞬間にそこを狙って矢を射かけることは可能かい?

 そりゃあ・・・すぐにこっちもよけなければならないから、かなり忙しいだろうが・・・。」

 まずはこっちを狙っている奴を何とかしなければならない・・・。


「それは可能ですが・・・、その鎧で大丈夫ですか・・・?

 敵のレーザーは強力ですよ。」

 源五郎が俺の鎧を眺めながら心配そうにため息をつく。


 確かに鉄の鎧は鋼鉄の鎧よりもさらに表面が磨かれていなく、鈍くつや消しになっている。

 そのため光を反射することはほとんどなく、ダメージが直接加わることが予想されるわけだが、分厚い大弓の握り部分を貫通させる威力だ・・・薄い鉄板の鉄の鎧程度では元々防御力とはなりえないだろうな。


「ああ・・・何とか避けてみるよ・・・最悪致命傷さえ避ければ大丈夫だ・・・、レイの回復魔法もあるしな。」

 とりあえず、今この場で一番やれそうな作戦にかけてみる。


「よしっ!行くぞ!」

 少しほふく前進をして間をつけると、突然立ち上がる。


『ピカッ』『ズザザザッ』洞窟の奥が光った瞬間に、すぐに身を伏せる・・・、というより立ってまたすぐに伏せるといった方が正しいか・・・心の準備があれば何とか避けられるようだ。

『シュッシュッシュッシュッシュッ』すぐに狙撃手の弓で源五郎が、光った周辺を狙って矢を打ちまくっている。


「うーん手ごたえがあまりありませんね・・・、目標が小さいのかな?」

 源五郎が不満そうに首をかしげる。


「まあいいさ・・・敵も反撃を食らうと分かれば、おいそれと攻撃を仕掛けてこなくなるだろう。

 ほふく前進で少しずつ近づいていけばいいさ・・・。」

 そう言いながら、数メートル前進して突然立ち上がる。


『・・・・ピカッ』『ピカッ』『ズザザザザッ』今度は少し間をおいて左右2ケ所がほぼ同時に光ったようだ・・、光らないのでもう一度立ちそうになりちょっと危なかったが、ぎりぎり避けることが出来た。

『シュッシュッシュッシュッシュッシュッ』源五郎がまたもや光ったあたりに狙いをつけて、矢を射かけまくる。


「まだ駄目ですね・・・、レーザーを発した後に高速で移動しているのかもしれません。」

 源五郎が悔しそうに顔をしかめる。


「まあいいさ・・・だんだんと距離を詰めてきたから、もう少しでこっちだって射程距離だ・・・光った瞬間に斬りつければ倒せるだろう。」


 ずいぶん奥までほふく前進してきたから、もう辺りは真っ暗闇だ・・・、レーザーで狙われる危険性があるので、ヘッドカメラ用のライトも付けていない。

 確かこのカメラには暗視モードがあると言っていたから、映りはあまりよくはないだろうが、戦闘記録は可能なはずだ・・、どうせならその画像を今確認できるといいのだがな・・・。


「ようし・・・、じゃあまたおとりになるから・・・頼むぞ・・・・。」

 そう言ってすっくと立ちあがる。


『・・・ピカッ』『ピカッ』『シュッシュッシュッシュパッシュッシュッシュッシュパッ』『ズザザー』今度は光るとほぼ同時に源五郎が射かけ始めた。


「手ごたえありです・・・、恐らく2匹ともに当たりましたよ・・・。」


「おおそうか・・・じゃあ敵は近いな・・・レイ、念のために前方に水流を起こしてから、すぐに凍らせてみてくれ。

 このくらい近ければ、いくら素早くても逃げる間もなく凍り付くだろう・・・、伏せたままでできるよね?」


 源五郎の感覚を信じて、ここらで一気に攻め落とそうとする・・・炎系魔法の方が洞窟内が明るくなってよりいいのだが、この場で焼き鳥にするわけにはいかない・・・あくまでも捕獲なのだ。


「うん分かったー・・・、大津波(ツナミ)!・・・・絶対零度(ゼロK)!」

『ザッパーンッ・・・・ピッキィーンッ』地面に伏せたまま前方に向かってレイが唱えると、少し先に大きな水音が発生し、すぐに一瞬で静まり返った・・・。


「ようし・・・、立ってみるぞ・・・、まだ攻撃してくるようなら・・・援護を頼む。」

 そう言いながら立ち上がる・・・、何も起こらない・・・2、3歩前に出てみる・・・が、やはりなんともない。


『カチッ』思い切ってライトを点灯してみる・・・、すると十数メートル先が洞窟の行き止まりのようで、岩壁になっていた。

 その岩壁の前にはいくつもの氷柱や波のようにウェーブがかかったままの氷が見える。


「おお・・・、やったぞ捕まえたようだ・・・。」

 手前の大き目の氷の中には矢が刺さった2匹の鳥が見える・・・、どちらも小さい・・・小雀くらいの大きさだ、『カチッ』ヘッドライトだけでは暗すぎるので、道具屋で購入したランタンを数個取り出し灯してそこかしこに配置する。


「これじゃあ、目見当じゃあなかなか当たらないわな・・・、的が小さすぎだ。」

『ザグッザグッ』すぐに銅剣を取り出し氷を砕いて凍ったままのツミレ鳥を捕獲用袋に入れる。


「奥の方には塊でいますね・・・、こっちも凍らせたまま捕まえちゃいましょう。」

『ガシュッガシュッ』源五郎は鋼鉄の矢を握り、氷を砕いているようだ。


「こういう事もあろうかと・・・、ちゃあんと道具屋さんで斧を買っておいたんだよ。」

『ガッガッガッ』レイは小ぶりの手斧で氷を砕き始めた。


 そういえば、俺も大ハンマーを買っておいたんだったな・・・。

『ドゴッドガッドゴッ』大き目の氷の塊を大ハンマーで砕いて細かくする。


「これで最後のようですね。」

『ザグッザグッザグッ』源五郎が、洞窟の壁際で凍っていたツミレ鳥を捕獲用袋に収める。


 意外とあっけなかったな・・・、ほふく前進で距離を詰めて後は一気に魔法攻撃・・・・といった形でケリが付いたという事だ・・・、終わってみれば何のことはない・・・。


『バタンッ・・・ヒューッ』などと思っていたら、洞窟奥の壁が突然向こう側に倒れ、さらに地面が斜めに傾いて、今開いた洞窟奥へと転がり落ちた。

『ヒュー・・・ドンッ』そうして、何メートルか下の硬い岩肌にたたきつけられる。


「あいたたた・・・っ、こういった衝撃は戦闘時のものではないから、高い経験値は関係しないのかね。

 鎧を着ていても、やたらといたいな・・・。」


 不意を襲われたために受け身もうまく取れなかったという事もあるのだろうが、結構痛かった。

 そこは・・岩壁に囲まれた閉鎖空間だった・・遥か上方から差し込む光は、先ほど灯したランタンの光だ。

『ぎぃー・・・』そうして差し込んでいた光が、上方へと移動していく。


「まずい・・・、上が閉まるぞ・・・。」

 今落ちてきたところの倒れこんだ洞窟奥の壁が再び元に戻ろうとしているようだ・・・、これでは閉じ込められてしまう。


「えやっ!」

『シュッ』すると源五郎が、何かを投げかける・・・『ガギッ』


「ようしかかった・・・倒れた壁の上側に、カギ爪を引っかけました。

 みんなで引っ張りましょう。」

 源五郎が、手に持つ鉄の鎖を引き始める。


「おお・・・、おーえすおーえす・・・。」

 掛け声をかけながら、3人で必死に鎖を引っ張り始める。

『ギギギギギギ・・・・』すると何とか、岩壁が閉まるのを止めることが出来た。


「ようし・・じゃあ鎖の先を、この突き出た岩にむすびつけましょう・・これでもう閉じられません。」

 源五郎が引っかけた鎖の先を、岩壁の真下に突き出た岩に何重にも巻き付けた後に固く結びつけた。


「じゃあ、レイちゃん行けるね・・・。」

「うん・・・、ツバサお姉さんほどにはいかないけど・・・、このくらいの高さならいけるよ・・・。」

 源五郎の指示に従い、俺と源五郎が両手をクロスさせた状態で手と手を握りしめ、そのクロスさせた腕にレイを乗せる。


「せーの・・・!」「おりゃあっ!」

 2人して一旦しゃがみこんだ後勢いよく立ち上がり、更に反動をつけて腕を振り上げる。


「ジャーンプッ・・・。」

 レイが華麗に舞い上がり、そうして倒れ掛かった洞窟奥の壁に両手でしがみついた。



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