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新たなクエスト

3 新たなクエスト

「たっ助けてー・・・!」

『ぐるぅぉー』『ぎゃぉー』屋敷の中へ行ってみると窓ガラスが割られ、黒いアメーバ状の魔物が何匹も侵入していて、町長の息子に襲い掛かっていた。


「ライ・・・」


「レイッだめだ・・・部屋が狭すぎるし、魔法効果が飛び散って町長の息子に当たると死んでしまう!

 ちぃっ・・・」


 源五郎の矢も魔物と町長の息子の距離が近すぎるため危険だろう・・・魔物の強さはわからないが、加減すると簡単にはじかれてしまうだろうし、強く射た場合は下手をすると魔物の体を通過して、町長の息子に当たってしまいかねない。


 鋼鉄の剣は研ぎに出しているため、冒険者の袋から銅剣を取り出し装備して斬りかかっていく。

 トレーニングを始めようとしていたところだったので、冒険者の袋は腰に下げていたからよかった・・・


「とうっ・・・」

『タッ・・・シュタッ・・・シュパンッ・・・パンッ・・パンッパンンッ』するとツバサが華麗に舞い上がり、鉄の爪で魔物たちを次々に粉砕していく。


「たありゃっ」

『シュッ・・・シュッパッ』最後に逃げ出そうとしていた魔物一匹を俺が斬り捨て、魔物の気配は消え去った。

 意外とあっけない・・・どうやら初級冒険者用の雑魚魔物だったようだ。


「ありがとうございます、ありがとうございます・・・。」


 町長の息子は、自分に襲い掛かっていた魔物をいち早く退治してくれたツバサの体にしがみついたまま、念仏のように礼の言葉を繰り返す。

 それだけ怖かったのだろう・・・一般人にとっては初級の魔物だって脅威の対象だからな・・・。


「それにしても・・・どうして魔物が・・・?

 今回の冒険では平原に巣くう魔物たちまでもがパラボラアンテナ施設建築に駆り出されてしまい、村の外を出歩いても魔物に出くわすこともなくなったというのに・・、それが一体どうして・・・???」


 途中までの経験ではあるのだが、以前の冒険の時でも街中で魔物が出現することなど・・・、クエスト以外では起こらなかったはずなのに・・・。


「そうですよね・・・でも・・・、さっきまでこの町中を埋め尽くすようにしていた人たちの大半は、パラボラアンテナ施設建築に駆り出されていた、ヨースルなどから来た人たちでした。


 彼らはアンテナ施設に強力な魔物たちが巣くっていて工事が中断されたって言っていましたよね。

 恐らくそのあおりを食った魔物たちも多く居て、この辺りに生息していたのではないでしょうか?

 そうして人混みが薄れた今になって、大きなお屋敷を襲い始めたと考えられないでしょうか?」


 源五郎が、パラボラアンテナ施設工事を絡めて推理を働かせる。

 ううむ・・・なるほど・・納得・・・。


「大丈夫でしたか?」


「ありがとうございます・・・ありがとうございます。」

 とりあえず町長の息子に声をかけて怪我がないか確認してみるが、ツバサにしがみついたまま礼の言葉を繰り返すだけだ・・・。


「うーん弱ったな・・・、どこか怪我をしていたら薬草を貼ってあげたいんだがな・・・。」

 見た目は着衣に大きな乱れも破れもないが、打ち身などは服の上からでは判断できないからな・・・。


「よほど怖かったんだろうと思います。

 とりあえず、落ち着くまであたしがなだめておきます。


 薬草も・・少しはもっていますから、ケガをしていたら貼ってあげます。

 皆さんは・・・、もうお休みください・・・あたしも彼が落ち着いたら寝るようにします。」

 町長の息子にしがみつかれたままのツバサは少々戸惑いながらも、彼女らしい優しさを見せる。


「分かった・・・じゃあ、俺たちは寝るとするか・・・。」

 とりあえず割れたガラスを片付け、割れた部分にはその場にあった布を貼りつけて風の侵入を防ぐことにした。

 応急処置だけ終えると、俺たちは先ほど案内された客間に戻り、それぞれ就寝した。



「おはよう・・・。」

 客間に入ろうとした途端に翌朝になって廊下に立っていたので、そのまま階下へ降りていく。

 1度目はその時間からテレビを視聴すると判断されて、2度目は睡眠という判断だろうか?


 居間のソファには、昨晩同様町長の息子にしがみつかれたままのツバサの姿があった。


「ま・・・まさか・・・、一晩中そのままだったのかい?」


「はい・・・途中で寝てくれたのであたしは離れようとしたのですが、そうすると目を覚ましてまた強くしがみつかれてしまうの繰り返しで、彼の体に毛布を掛けてあげることもできませんでした。」

 一晩中起きて町長の息子の体をさすってあげていたのだろう・・・・、ツバサは目を真っ赤に腫らしていた。


 ううむ・・今のツバサの格好は拳法着ではなく女子高校生風のブレザーにスカートだからな・・・、怒られないのであれば、しがみついたら離れたくない気持ちもわからんでもないのだが・・・、一晩中では迷惑だぞ・・・。


「おはようございます・・・、ありゃりゃ・・・昨日からこのままですか?」

 源五郎も起きてきて、ツバサの姿を見て目を丸くする。


「パパお早う・・・ダーリンもお早う・・・ツバサお姉ちゃんも・・・っと、おはようでいいのかな?」

 さらにレイも起きてきた。


「うーむ・・・、町長の息子はツバサにしがみついたまま寝入ってしまって、目を覚まそうともしない。

 だが、もういい加減離れてもいいんじゃないのか?

 仮に目を覚ましたところで、もう朝なんだから・・・魔物たちだって襲って来やしないだろう。」


 朝一でギルドへ行くつもりなので、寝ていないツバサには申し訳ないが、町長の息子を引きはがして出かける準備を促す。


「うーんでも・・・相当怖い思いをしたでしょうから、自分で目を覚ますまでは待っていてあげたいと思います。

 ギルドへ行くんですよね?あたしは一緒に行かなくてもいいでしょうか?」

 ツバサはソファに腰かけて町長の息子にしがみつかれたまま、上目遣いで尋ねてくる。


「ああそりゃあ・・・ギルドに行ってクエストを申し込むにしても、町長に会って情報を聞いてからじゃないと向かうつもりはないから、どうせ一度は戻ってくる。

 ついでに辺りの家にも聞いて回ってみるつもりだけれどね・・・じゃあ俺たちだけでギルドに行くが、ツバサはそのままではつらいかもしれないが、少しでも眠っておいた方がいいぞ。


 近場のクエストがあれば、午後からでも向かう可能性がある・・・なにせ、今日の放送分の冒険が全くない状態だからな・・・、テレビスタッフのためにもクエストをこなさなくちゃあならん・・・。」


「分かりました・・・、すみませんが甘えさせていただきます・・・。」

 ツバサはすまなそうに頭を下げた・・・、いやいやいや・・・決してツバサが悪いわけじゃあないのだから・・・。



「ここのギルドには・・・クエストが豊富ですね・・・。

 一番多いのは・・・やはりパラボラアンテナ施設関連で、そこに巣くっている凶悪な魔物退治に関するクエストなどが何件かあります。


 でも・・・場所が遠いようで、片道だけでもここから数日かかるとなっていますから、中継車で行ったとしても午後からでは無理でしょう。


 ほかにはペレンの町郊外のペレー丘洞窟に巣くうツミレ鳥の捕獲というのがあります。

 半日のクエストになっていますから場所も近いでしょうし十分行けますね・・・、クエストレベルはBAです。」

 源五郎が一枚のプラチナクエスト票を手にして、戻ってきた。


 ペレンの街のギルドは、武器屋防具屋道具屋と続いた先にあった。

 道中、家々の確認をしてみたが扉が閉ざされていて、冒険者用の店以外では町人に出会えることはなかった。


 武器屋では研ぎに出した鋼鉄の剣は引き取ることが出来たが、防具屋に寄ってみると、やはり鋼鉄の鎧はもう数日修復にかかるらしい。

 鉄の鎧を購入して正解だ・・・。


 源五郎の胸当てとレイのローブは修復を終えて受け取ることが出来た。

 ツバサの拳法着ももらって行ってやろうとしたが、本人でないと渡せないと断られてしまった。


「ようし・・・、じゃあまずはツミレ鳥の捕獲というクエストを申し込むとしよう。

 ほかのクエストは・・・別に誰かにとられるという心配もないから、とりあえずはこの一件だけでいいさ。」

 源五郎からクエスト票を受け取ると、そのまま受付へ向かう。


「ツミレ鳥の捕獲のクエストですね・・・、リーダーの変更はございませんか?」

 髪の長い美人系の受付嬢が笑顔で確認してくる。


「ああ・・・変更はない・・・ダンジョンに向かうのは今ここには来ていないツバサも含まれるんだが、彼女はシメンズメンバーだから、構わないよね?」


 いつもメンバー全員でギルドに来てクエスト申し込みを行っているのだが、申込時にいないメンバーがクエストに参加してもいいかどうか、念のために確認しておく。

 もし、今ここにいる3人しか認められないとなったら、もう一度ツバサもつれて出直しだ。


「はい・・・既に登録済みのチームメンバーであれば、今この場にいらっしゃらなくてもクエストには参加可能です・・・、では、頑張ってきてください。」

 よかったよかった、では一旦町長宅へ戻るとしよう。



「ツバサ・・・半日のクエストを申し込んできたからこれから出かけ・・・。」

 町長の屋敷に戻り、居間へ行ってツバサを誘おうとする。


「いやあ、ツバサさんのように大変お強くてさらにお美しい女性に、僕は今まで出会ったことはありません。

 あなたは世界一の女性だ・・・。」


「あら、そんな・・・。」

 すでに目覚めていた町長の息子が・・・、長ソファの隣に座るツバサを絶賛しているようで、なんとツバサもまんざらでもない様子に見える。


「おお、貴方様はまさにシメンズリーダーのサグル様・・・、そうしてこちらが源五郎様とレイ様ですね・・・。」

 そうしてもう一人、後ろ向きに座っていた大柄な男性が立ち上がると笑顔で話しかけてきた。


「えー・・レイ様だって・・・、お姫様みたいだけど・・・レイちゃんって呼んでくれていいのよ・・・。」

 様付で呼ばれて、レイが照れたように体をくねらせる。


「ああ、俺がサグルだが・・・、あんたは・・・もしかするとペレンの町長さんかな?」


「はいそうです・・・、ペレン町長と申します。」

 やはり、息子同様そのままの名前だ・・・。


「そうですか・・・、一晩の宿の提供・・・大変感謝しております。

 なにせ、この町には昨日着いたばかりでして・・・、しかもたくさんの人でごった返していたものですから、店や宿を探して回ることも困難を極めておりました。


 そんな中、息子さんから呼び止められまして、宿泊を勧められた次第です・・・、町長さん不在の折大変恐縮ではありましたが、一泊の恩義にあずかりました・・・、ありがとうございました。」


 すぐに姿勢を正して直立し、お礼の言葉を述べると同時に頭を深々と下げる。

 世話になったのだから、きちんと礼を言っておく必要性があるのだ。


「いやあ、こちらこそ・・・、昨晩息子の危ないところを救ってくださったようで・・・、かえってお世話になりました・・・本当に感謝しております。


 その・・・もしよろしければでいいのですが・・・、一泊だけとはおっしゃらずに今晩も・・・お泊り願えましたら、大変光栄です・・・。

 冒険の話などいくつかお聞かせ願えれば、私も息子も大変うれしいのですが・・・。」

 町長はさらに今夜の宿も提供してくれると言ってくれる・・・、これはありがたい。


「ああそれはありがたいことです・・・、よろしくお願いいたします。

 それでですね・・・息子さんに聞いたところでは、町長さんはこの辺りのクエスト事情にも詳しいそうで・・・、出来ましたらダンジョンに関する情報を頂けるとありがたいのですが・・・。


 代わりにと言っては恐縮ですが、我々の冒険話でよければ、何時間でもお聞かせいたしますよ。」


「それはもう・・・、私が知っていることでよければ残らずお教えさせていただきますぞ・・・・。

 そうして、この町のクエストをこなしていらっしゃる間は、是非とも我が家に宿泊をお願いいたします。」


 町長は、満面の笑顔で答える。

 とりあえず当面は宿に困ることはなさそうで助かる・・・しかも情報まで得られるわけだ。


「では早速なのですが・・・、この・・・ペレン郊外のペレー丘洞窟というのはどんなところなのでしょうか?

 また、ツミレ鳥というのはどんな鳥かわかりますか・・・?例えば魔法系とかあるいは格闘系とか強さに関しての情報が欲しいのですが・・・。」

 まずは引き受けてきたクエスト内容について確認してみる。


「ペレー丘ですか?そうですね・・・子供のころに近所の子供たちと一緒に洞窟探検した事があります。

 その頃は・・・、どこまでも続く深い深い洞窟・・・といったイメージでしたが、恐らく数十分も歩けば最深部まで行きついてしまうようなものだと思いますよ。


 子供の足でも昼間時間で往復できたくらいですからね。

 別に迷路のように分岐があるわけでもなかったですし・・・、容易に行き来出来ましたよ。


 それから・・・ツミレ鳥というのは・・・、その名の通り、鍋用のツミレにするとおいしい鳥です。

 この辺りではブランド化もされているような鳥で・・・・、その肉は弾力があって歯ごたえもいいのですが、何よりもその味が素晴らしい・・・、鍋にするとたっぷりのだしが出て・・・それはもう・・・。」


 町長が舌なめずりしながら洞窟が非常に単純な構造をしていることと、ツミレ鳥のおいしさについて説明してくれる。

 なんだか鍋が恋しくなってきたな・・・。


「そうですか・・・貴重な情報ありがとうございます・・・、じゃあツバサ、半日コースのクエストだ・・・早速向かおう。」


 貴重な情報も得られたのだ・・・、早速クエストに向かうとしよう。

 今からなら編集時間を考慮しても、十分本日分の放送に間に合うはずだ。


「それが・・・。」

 ところがツバサはソファに座ったまま、もじもじとうつむく・・・。


「あの・・・大変申し訳ないのですが・・、本日のクエストは3人だけで行っていただけないでしょうか?」

 そうしてツバサの口から、信じられない言葉が告げられる・・・、えっ・・・?どうしちゃったの?



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