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情報収集

10 情報収集

「クエストは2つありましたよ・・・一つはヨースルの南方のヨースレ山に生息する怠け目ザルの捕獲で、クエストレベルは少し上がってXAですね・・・。

 もう一つは、ヨースル南東に位置する大河ヨーレン川に生息する雷魚ライライの駆除・・・、こちらのクエストレベルは・・なんとBBです。


 僕たちのレベルはAAですから引き受けられますが・・、一気にレベルが追い付いてきているようですね。」

 先へ進むことが本当にうれしいのだろう、源五郎が笑顔でクエスト票を手にしてやってきた。


「いよいよ本格的に俺たちを先へ進ませないよう、強力な魔物を駆使してきたのだろう。

 どんなクエストであれ挑戦していく気持ちに変わりはないさ・・・、失敗した場合の保険もあるしね・・・。


 ヨースレ山のクエストは・・・、大かた俺たちの力を甘く見ていた時に準備したクエストで、引っ込め忘れていたものじゃあないかな。

 こっちもツバサのレベルアップのために引き受けるとしよう。」

 源五郎の手からプラチナクエスト票2枚を受け取り、そのまま受付にもっていく。


「ヨースレ山に生息する怠け目ザルの捕獲とヨーレン川に生息する雷魚ライライの駆除・・ですね?

 クエストレベルは・・・XAとBBですね・・・リーダーの変更はございませんか?では頑張ってきてください。」

 美人受付嬢の笑顔に送られ、ギルドを後にする。


「じゃあ出発だ・・・と言いたいところだが、ヨースレ山とヨーレン川についての情報を集めるぞ。


 といっても、以前のようにしっかりした情報がなければ1週間でも2週間でも出発しないというつもりはない。

 今日1日だけだ・・・だからこそともいえるが、各自一心不乱で情報をかき集めてきてくれ。」

 ギルドを出たすぐ後で、皆に指示を出す。


「えー・・・、すぐに中継車に乗って出発じゃなかったの?」

 すぐにレイの奴が不満そうに頬を膨らませる・・・、面白いテレビ番組がないので、宿にもう一泊したくはないのだろう。


「レベル的には依然として低めとはいえ・・・、これまでのクエスト状況を見ても、ちょっとした失敗で全滅もあり得たし、閉じ込められていても不思議じゃあない。

 だからこそ・・・慎重に集められるだけの情報を集めるんだ・・いいね?


 クエストを引き受けてすぐにダンジョンに向かうような、行き当たりばったりでは真のRPG攻略とは言えないぞ・・・、じっくりと情報を集めて、そのダンジョンをクリアするための作戦を立てて進むから面白いんだ。」

 レイにRPGを攻略する醍醐味を講釈する・・・、うーん分かってもらえるかな?


「わかったぁー・・・、じゃあ一緒に情報集めに行きましょ。」

 すぐに気持ちを切り替えたレイは、源五郎の脇に手を滑り込ませて腕を組むと、そのままスタスタとヨースルの街中へと消えていった。


「じゃあ・・・、あたしたちも情報集めに行きましょうか・・・。」

 ツバサが、2人が向かった反対方向を指しながら俺の方へと視線を移す。


「あっああそうだね・・・それほど大きな町でもなさそうだし・・・、2組に分かれて回っても十分だね。

 その方が聞き漏らしもないだろうからいいな・・・、じゃあ、行こうか。」


 レイたちがギルドの左方向へと歩いて行ったので、俺たちは右へと向かう。


 重装備の鎧姿と拳法着姿で街を歩き回るのは一般社会では本当に異常に映るのだろうが・・、この世界では警察を呼ばれることもないだろう。

 今日中に集められるだけの情報を・・・と考えていたのだが、そんなに甘くはなかった・・・


「すいませーん・・・旅の冒険者のものです・・・、ヨースレ山のこと教えてください。誰かいませんか?」

 ドアをノックしたり呼び鈴を鳴らして呼び掛けても、どの家も返事がない。

 仕方がないので、声を張り上げて呼びかけてみる。


「うーん・・・ここもだめかあ・・・、この大陸はもともとこの星にあった大陸で、この星の本当の住民たちが住んでいるんだよね?

 ツバサの故郷のあんず村も北部大陸にあるんだったよね?


 だからかなあ・・・この家ももともとの住民のための家で、冒険に使われてはいないのかな・・・?」

 家々を一軒ずつ回って呼びかけていったのだが、街はずれまで来ても、どの家もまったく返事がないどころか人の気配すらなさそうだ。


「そうかもしれませんね・・・仕方がありません、冒険者用の店を回ってみましょう。

 武器防具屋はやっていたはずです。」

 ツバサが仕方がなさそうに提案する。


「いやあしかし・・、武器屋も防具屋も昨日この町に着いたときに回ってみたが・・・、剣を研ぎに出すのとぼこぼこになった鋼鉄の鎧の修復のためにね・・・、さりげなくダンジョンのことも聞き出そうとしてみたが、武器や防具の品ぞろえの確認やメンテのための会話以外は何を言っても相手をしてもらえなかったぞ。


 道具屋だって弁当の購入以外の会話は、すべて無視された・・・。

 具体的にヨースレ山とかの名前を出せばどうなるかだが・・・、どちらにしても3軒ともにレイたちが回った方角だ・・・、こっち側にあったのは食堂くらいだったな・・・。


 仕方がない・・・食堂へ行ってみるか?」

 武器屋にはこれといった武器はなかったが、鉄の大ハンマーがあったため、脱出用の道具として使えるかもしれないと思い購入。


 レイは鉄の杖を、源五郎は、こりゃまた重いのだろうが鉄の大弓を・・・ツバサは鉄下駄を購入(ツバサの場合は訓練用かもしれないが・・・)した。


「そうですね・・・。」

 ツバサと2人でこの町の食堂へ向かう・・・、冒険者用の食堂なので営業しているはずだ・・・。



『ギィッ』「いらっしゃいませ・・・、空いていますからお好きな席へどうぞ・・・!」

 食堂の扉を開けて中に入ると、元気そうな美少女が大きな声で迎えてくれた。

 確かに昼飯までもまだ少し時間があるためか、店の中には客が一人もいない。


「ああ・・・悪いが俺たちは客じゃあない・・・というか・・、後でここに飯を食べに来るつもりでいるが、今は情報集めが先決だ。

 ヨースレ山のことについて何か・・・」


「いらっしゃいませ・・・、お好きな席へどうぞ!」

 ところが女の子は俺の言葉を無視して、俺たちを店の中へと導こうと右手で示す・・・、耳が悪いのかな?


「仕方がありませんね・・・、回鍋肉丼とスープをお願いします。

 それと・・・、ヨーレン川のライライという魔物に関して知っていることはありませんか?」

 するとツバサが、仕方がなさそうに注文をする。


「はいっ!・・・回鍋肉丼一丁、スープ一丁・・・、それとマスターっ!ヨーレン川の何とかいうののことを聞きたいようですよ!

 こちらのお客様は何にいたしましょうか?」


 女の子は店の奥に大声で注文を繰り返して告げると、今度は俺の方へと向き直ってきた。

 肩を超す長めの髪の毛を2つおさげにして、目がクリっと鼻筋も通っている、美人タイプの女の子だ。


「あっああ・・じゃあ俺は天津飯とスープを・・・、それとヨースレ山のことと、ついでにこの町の住民のことを聞きたいんだが・・・。」

 食事を注文すれば情報を教えてくれるというのであれば、それはありがたい・・・。


「はーい・・・、天津飯とスープ一丁ずつ・・、更にヨースレ山のことと町のことも聞きたいそうです!」

 すぐに女の子が店の奥に向かって声を張り上げる。


「わかったぁー・・・、料理を作り終えたらすぐに行くから、座って待っていてもらえ!」

 すると店の奥から、マスターらしき人の返事が返ってきた。


「それでは、お待ちください・・・。」

 そう言って女の子も、店の奥へと消えていった。


「じゃあ、座るか・・・。」

 傍らの席へと腰かけて、マスターが来るのを待つことにした。



「この町の住民たちは・・・冒険者用の施設関係者以外は全員がこの大陸中央に建設中のパラボラアンテナ施設の工事のために駆り出されちまっているさ・・・。


 住民たちどころか・・・、ダンジョン以外の平原や山に住む魔物たちまでもが駆り出されているっていうんだから、凄いよな・・・。


 おかげで街の外に出ても魔物たちに出くわすこともなくなって平和でいいんだが・・・、いかんせん客が全くいないので商売あがったりだ・・・。

 アンテナ施設近くの町はたいそうな賑わいだそうだが・・・、こっちはいい迷惑さ・・・。」


 回鍋肉丼と天津飯とスープを持ってきた店主が、俺たちの真向かいの席に着くなりぼやき始める。

 そうだったのか・・・、だからどの家も留守だったという訳だ・・・・。


「そのなかでもヨースレ山とヨーレン川だけはダンジョンだから魔物たちが生息しているという噂だが・・・、その中身は伝わってきていない。


 それでもヨーレン川の方はひどいありさまという事だ・・・、何せ遠くからでも雷鳴が聞こえるくらい、大量のライライっていうのか?雷魚が生息しているらしい。

 昔は渡し船で渡っていたんだが、今では危険という事で渡し船は出ていない。


 橋を架ける計画も上がったんだが、雷魚のおかげで計画はとん挫しているという事だな。

 だから・・・アンテナ施設へ向かった町の人たちは、長期休みになっても帰省もできないと伝わってきている。


 だがまあ・・・魚はいいわけだ・・・、川の水がなければ生きられないから、川にさえ近づかなければこっちは安全だ。


 問題は山の方の生き物・・・、何せ山を下りてきて町を襲う危険性もあるわけだ・・、餌となるべき弱い魔物たちですらも、アンテナ建設現場へ招集されちまっているからね。


 ところが・・ところがだ・・、ヨースレ山に魔物が生息したという噂がたってからずいぶん経つが・・・、一向に魔物たちが町へ降りてくる様子は見られない。

 どうやら奴らは山から下りることはないようで・・・、俺たちは山と川にさえ近づかなければ安全と見越しているってえ訳さ・・・。」


 食堂の店主は嬉しそうに、この辺りは安全なのだと説明してくれる。

 ううむ・・・そんなことではなくて、どんな魔物たちなのか・・強さはとか武器や魔法に関して聞きたいわけなんだが・・・そのほかにもダンジョンの難易度に関して聞きたいのだが・・・。


『ガチャッ』「あーずるいんだ・・・!2人だけで先にお昼ごはん食べてるー・・・。」

 するとそこへ、何とレイたちもやってきた・・・、しかも俺たちの前に置いてある回鍋肉丼と天津飯に目を付けた様子だ。


「ああ・・これは・・・注文をしなければ情報を聞き出せないシステムのようで・・・、仕方がなかったわけだ。」

 すぐにレイたちの方に向き直る・・・。


「ヘイっいらっしゃい!何になさいますか?」

 すると店長はすぐに立ち上がり、注文を取り始める。


「まあ、これと言って詳細情報は得られなかったのだが・・、レイたちも注文してくれ・・・昼飯にしよう・・・そっちはどうだった?」

 どうせだから昼食にしようと誘う。


「えーっとねえ・・・、チャーシュー麺と・・・」

 すぐにレイがメニューを見ながら悩み始める・・・。


「武器防具屋も道具屋も、なにか注文するときの会話以外は、まったく相手にしてくれませんでした。

 彼らも自我に芽生えたはずなのですがね・・・。」


 源五郎が力なく首を振る・・・、やはり何の情報も得られなかったようだ・・・、中央の奴らから口止めでもされているのだろうか・・・?


「ダーリンは何にする?」

 注文を終えたレイが、源五郎の顔を見上げる。


「あっああ・・・、じゃあ僕は・・・、棒棒鶏丼とスープで・・・・。」


「へいっ・・・、少々お待ち願います。」

 店長が駆け足で店の奥へと消えていった。


「ヨーレン川は、魔物たちの影響で遠くからでも雷鳴が聞こえる状態らしい。

 渡し船も運航できないくらいの状態らしいから、かなり強力な魔物たちが生息しているのだろう。

 クエストレベルがBBなのも頷ける。


 ヨースレ山の方の魔物に関しては全く情報が得られなかったが、まあ、山を下りてくるような魔物ではないようだから、あまり狂暴ではないのだろうな・・・。


 情報収集といっても限界のようだから・・・、昼飯を食ったら早速出かけるとするか・・?

 テレビスタッフたちは、ギルドの外で待って居る手はずだから、すぐに出られるだろう。」


 まさか何の情報も得られないと分かった情報収集の場面だけで1日分の放送を稼ぐことはできないだろう・・・、何もないことが分かれば、すぐに出発した方がいい。


「そうですね・・・、先へ進めば・・・情報収集も楽にできるようになりますよ。」

 源五郎も笑顔で答える。


 昼食をとると修復に出した防具や剣を取りに行き、早々に出発と相成った。



「そういえば・・・以前の冒険の時は、ダンジョンに入る前にサグルさんがクエスト票を読み上げていました。

 クエスト票にはそのクエストの対象やダンジョン、中ボスに関する情報が記載されていたようですね。

 ダンジョン攻略に結構役立ちましたから、また今度もやりましょうよ・・・確かちょうかい・・・とか・・・?」


 晩というか、夜時間に入って少しのタイミングでヨースレ山ふもとに到着したのだが、夜間でのクエストを避けるため(レイが途中で寝てしまう可能性もあるから)、大事を取ってふもとでキャンプして翌朝早朝からダンジョン攻略となった。


 さあ出発というときに、ツバサが懐かしいことを言い始めた。



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