土俵トラップ
4 土俵トラップ
「しまった・・・レイが閉じ込められた・・・。」
すぐに、レイが閉じ込められた土俵へと駆け寄って行く。
『ウィンッ』すると突然土俵上のドームが開き、今度はレイが土俵中央にいるのが見える。
『ダッ』土俵の端にいたカンガルーが大跳躍して、俺の頭上を飛び越えて竹林の小道へ・・・。
「とうっ・・・」
ツバサもほぼ同時に大ジャンプしてカンガルーを追っていく・・・、飛翔の剣の効果だな・・・。
そう・・・東部大陸北部のパラボラアンテナ施設で手に入れた宝剣は、飛翔の剣だった。
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「これは飛翔の剣・・・持つ人間の脚力を向上させ、ジャンプ力を強めるものだな。
だが・・・付加されるのはジャンプ力だけではない・・・、下半身のばねの力が強化されるから・・・、キック力なども倍増と言えるし、打撃も強化されるな・・・。」
船旅の最中、剣の鑑定をお願いしに占い部屋に行ったところ、占い師が教えてくれた。
まさにツバサのためにあるような宝剣であり、勿論そのままツバサが持つことになった。
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「たありゃっ!」
『シュタッ・・・バンッ・・・ズザッ・・・バンッ』逃げようとするカンガルーに追いつくと、ツバサがすかさず攻撃を仕掛ける。
『バシュッ・・・シュッシュッシュッ・・・バズッ』仕方なさそうに、カンガルーのボクサーはツバサの相手をし始める。
『シュッシュッシュッシュッシュッシュッ』そこへ、源五郎が矢を雨のように射掛けはじめた。
「あーん・・・出られないよう・・・」
叫ぶレイを見ると、別に周りを何かで覆われている様子は見られない。
「どうした、レイ?
どこか怪我でもしたのか?」
まさか、カンガルーから攻撃を受けてダメージを負ったのか?
「ちがうよー・・・、何か目に見えない壁があるみたい・・。」
ひじを曲げながら両手を掲げるレイの前には、どうやら見えない壁があるようだ・・・。
ううむ・・・やっぱり閉じ込められてしまうのか?
「ちょっと待っていなさい・・・。」
すぐに土俵へ駆け登って行く・・・、すると・・・
「あっ出られた。」
俺が土俵上へ上がると同時に、レイの体を包み込んでいた透明な壁が消え去った様子だ。
『ウィンッ』そうしてレイが土俵中央から動いた瞬間に、ドーム状の壁が出現して今度は本格的に閉じ込められる。
「ううむ・・・・そうか・・・レイ、悪いがまたこの土俵中央に戻ってくれ。」
「ええっ・・・またぁ・・・。」
ヘッドカメラ横の照明のスイッチを入れ、レイにもう一度土俵中央に戻るよう指示を出す。
『ウィンッ』すると土俵上を包み込んでいた、真っ黒な半球が消え去り見通しが良くなる。
「この状態で手を伸ばして見てくれ・・・、壁はないだろ?」
「あれ・・・本当だ・・・。」
レイが両手を伸ばしてみるが、どこにもさえぎる壁はない・・・。
「ちょ・・・ちょっとそのまま、動かないで待っていてくれ・・・。」
すぐにレイに、そのまま動かないよう指示を出して、土俵をかけ降りて行く。
『シュタッ・・・タッ・・・バシュッ・・・ドガッ』『シュッシュッシュッシュッ』ツバサと源五郎が、逃げようとするカンガルーを挟み込みながら、攻撃を続けている。
だがしかし、恐らく相手は無敵状態なのだろう・・・、攻撃を食らった一瞬はダメージを感じるが、すぐに平気な顔をして立ち上がって駆け出そうとする。
ワンターン過ぎれば、ダメージは全て回復してしまうというのは本当のようだ。
「いくら宝剣でキック力が強化されているといっても、2人だけの攻撃では無敵相手に致命傷までのダメージを負わせることは難しいだろう。
三四郎さんのように、死ぬ間際のいわゆる火事場の馬鹿力的なパワーでも出れば別だがね・・・。
それよりも・・・こいつがひたすら逃げようとしている気持はわかる気がする・・・、あの土俵状のサークルは、どうやらトラップのようだ。
中央にいる動物は、そこから出ることができない様な・・・、中央に誰かがいなければドーム状の黒い覆いが出現して、周囲と隔絶してしまうようだ。
レイがこいつの代わりに閉じ込められてしまった。
すまないが、こいつを倒してしまうとレイが脱出できなくなってしまうから、倒すのは止めだ・・・。
まずは、こいつを失神させてあの土俵の上に運び上げる必要がある。」
すぐに二人に状況を説明する。
「分りました・・・、でもどうすればいいですか?」
ツバサが問いかけてくる。
「とりあえずこうしよう・・・、まずは源五郎が矢を連続して射掛け動きを止め、その隙にツバサがカンガルーの頭部を狙ってキックの応酬をしてくれ。
そうして相手がよろめいたところを、俺が抱き付いて行ってそのまま土俵まで押し運んでいく。
俺一人だけで押し運ぶのは無理かもしれないから、その時は源五郎が俺の背中を押してくれ。」
とりあえず成功するか分らないが、作戦を説明しておく。
「分りました・・・やってみましょう。」
『シュッシュッシュッシュッシュッ』源五郎がカンガルーの体めがけて矢を射掛け、『タッ・・・ドゴッ・・・バゴッ・・・ズガッ』ツバサが、頭部を集中的に攻撃し始める。
カンガルーは隙あらば逃げ出そうと、その先の竹林の小道を見ているだけで、有効な反撃をしようとはしていない・・・恐らく二人だけの攻撃ではダメージが蓄積しないことを、すでに理解しているのだろう。
『ドッゴォーンッ』ひときわ大きな音が響き渡る・・・、ツバサの会心の一撃だ・・・。
『ボゴッ・・・ダダッ』すぐにカンガルーの体に抱き付き、そのままダッシュする・・・。
『ズザッ』更に源五郎も俺の背中に抱き付いて、一緒に駆け出した・・・。
「少し左です・・・そのまままっすぐ・・・、そこから登ります・・・。」
ツバサが並走して、前の見えない俺に向かって先を説明してくれる。
『ズザザザザッ・・・ドザッ』そうして何とか土俵の上に、ボクサーカンガルーの体を持ち上げることができた。
「レイっ・・・、もう動けるはずだから、すぐに土俵の上から離れなさい!」
すぐにレイに土俵から降りるよう指示をだし、レイの抜けた土俵中央にカンガルーの体を置くと、『シュッパァーンッシュッパパァーンッパパーンッシュパッ』離れ際にすぐさま数撃カンガルーの体を斬りつけて弱らせてから、源五郎と一緒にすぐさま土俵を離れる。
「ふうっ・・・、何とかなったな・・・。」
土俵中央には気絶したのか動かなかったカンガルーが復活して、元気に立ち上がる様子が伺える。
[さて・・・どうします?
土俵のようなサークルは4つありますから、恐らく一人ずつそれぞれのサークルの中で戦うのでしょうけど・・・、魔物を倒してしまうと、そこから出られなくなってしまうという事ですね?
中央部に誰かがいないと、ドーム状の壁に覆い隠されてしまうのですよね?」
源五郎が、4つの土俵を眺めながら尋ねてくる。
「いや、そんな簡単な構造じゃあない・・・、中央に誰かがいればドームが開くのであれば、先ほどのジャンプ力があれば、あのカンガルーならドームの壁が閉じる前に飛び出していただろう。
2重のトラップとなっているようで、土俵中央に誰かがいればドーム状の覆いは引っ込むようだが、土俵の上に1人しかいない時には、中央部に見えない壁が生じて、そこにいる者は身動きが取れないようだ。
つまり誰かもう一人が土俵の上に上がって来てくれなければ、身じろぎ一つ出来ない状態で捕らわれていた訳だ。
あのボクサーカンガルーが、冒険者である俺達と戦おうともせずに、逃げようと画策していた理由がよく判る。
なにせ登って来た冒険者を倒してしまえば、自分は依然としてあのトラップから抜け出すことは叶わないわけだからね。
だがその事は・・・俺たちにも言えることだ・・・、あの土俵の上に上がって魔物を倒してしまえば・・・、魔物を倒した者がそこに閉じ込められてしまうことになる。
と言っても相手は無敵の魔物のようだからな・・・、別々に4つの土俵に上がっていたなら、恐らく倒されるのはこっちの方だっただろうがね・・・、無敵の魔物はダメージがワンターンごとに回復するが、こっちはそうはいかない。
回復アイテムを使ったところで・・・、やがてこっちが力尽きるのは目に見えている。
だからこそ、向こうは戦いを放棄して逃げ出す作戦を選んだといえるだろう。」
俺がもう一度、攻略不可能なダンジョンの詳細説明を行う。
「そうなると・・・打つ手なしという事ですか?」
ツバサが不満そうに頬を膨らませる・・・、彼女にとって目の前に戦うべき相手がいるのにお預けを食らった状態は、面白くないのだろう。
「うーん・・・中央にいる相手というのが・・・、人か魔物じゃなければいけないのですかね?」
不意に源五郎が腕を組んで考え込む。
「そうか・・・、重量センサーか何かで感知しているのであれば、人がいなくてもある程度の重さがあればいい訳か・・・、でもそんな都合のいい重しなんて・・・???そうか難破船の時に使ったあの重しなら・・・。」
「そうですよ・・・、あの重しを使えば・・・。」
そうなのだ・・・湖底の急な流れに流されないように葛籠に重しをつけて強烈な渦の中を進んだのだが、渦を出た後で不要になった重しを一つずつ外して行き、その場に放置するつもりだったのだが、環境問題にうるさい源五郎に睨まれてしまい・・・、仕方なく各自の冒険者の袋の中に1時的に詰め込んだのだった。
あの重しも冒険アイテムの様で冒険者の袋に収納できたのだった・・・その後処分を忘れて、そのまま袋の中に入れたままのはずだ。
「ようし・・・、早速先ほど気絶させた魔物の所に行きましょう。」
すぐに源五郎と一緒に再び土俵上に上がるとともに、『シュッシュッシュッシュッ』『シュッパァーンッシュッパッシュパッ』源五郎が矢を射掛けると同時に、俺が土俵上に飛び込み数回切りつけて相手を弱らせてから素早くカンガルーの体を抑え込み位置をずらすと、『ウィンッ』そのまま真っ黒なドームに覆われる。
すぐに照明をつけると、源五郎が土俵中央に重しを並べて行く。
『ウィンッ』十数個重しを置いただけで、ドームが開いた・・・。
「ようし、どうやら重しを置くだけでこのトラップは解除できそうだ。
2人ともすぐに上がって来てくれ・・・こいつを倒そう。」
『ウィンッ』じたばたと逃げ出そうと暴れるカンガルーを抑え込んだまま、すぐにレイとツバサを呼び込み源五郎が重しの位置をずらしドームを閉じる。
「おりゃあっ・・・!」
『シュッパァーンッ・・・シュパッ』『シュッシュッシュッシュッ』『シュタッ・・・ドッゴォーンッ・・・ドッガァーンッ』すぐに魔物の体から離れると、そのまま斬りつける。
源五郎とツバサも攻撃を開始した。
「よくも、あたしを閉じ込めたわね・・・神の裁き(ライデン)!」
『ドッゴォーンッ・・・バリバリバリバリバリッ』最後は、レイの恨みがこもった一撃が炸裂。
そのまま魔物は消失した。
『ウィンッ』「重しを12個置けば、どうやら人ひとり分の重さと解釈するようです。
重しは一つ5キロくらいだから・・・、大体60キロくらいですね・・・。」
源五郎が、フックをひっかけて積み重ねた重しを指しながら告げる。
「あたしはそんなに重くはないよー・・・、60キロだなんてとんでもない。」
ところがレイはおかんむりだ・・・、そうか・・・さっき彼女がトラップに引っかかっていたからか・・・。
「ああそうだね・・・まあ、重さでも人でも両方で検知しているのかもしれないね。
レイの体重はもっと軽いのだろうけど・・・重しだけでトラップを解除するには、60キロほどの重さが必要ということなだけさ。」
すぐにフォローに入る・・・、小さいとはいえやはり女の子なのだ・・・。
「そっそうだよ・・・、レイちゃんの体重の事では決してないよ・・・。」
源五郎も慌ててフォローする。
「じゃあ重しはまだあるし、次々と倒して行こう・・・。」
すぐに次の土俵へ、4人で前後左右から取り囲むようにして上がって行く。
別に一人ずつ戦わなければいけないという決まりもないだろうし、卑怯とも思わない。
「神の裁き(ライデン)!」
『ドッゴォーンッ・・・バリバリバリバリバリッ』俺たちが土俵に上がると、すぐに魔物を取り囲んでいた見えない壁が消失する為、間髪を容れずにレイが雷撃を放つ。
「とうっ!」
『タタッ・・・シュタッ・・・ドゴッ・・・バゴーンッ』ツバサが雷撃を食らってよろめくカンガルーの頭上から襲い掛かり、『シュッシュッシュッシュッシュッ』源五郎が雨のように矢を射かける。
「たありゃあっ!」
『シュパパパァーンッ、シュッパァーンッ・・・シュッパンッ』最後は俺が一度に数回の斬撃を放ち、魔物は消滅した。
そうしてそこでも土俵中央に重しを置いて、次へと向かう。
それを繰り返して、4つの土俵上にいた魔物たちは退治した。
どの魔物も、まずは逃げ出すことを考えていたようで、俺達とまともに組み合おうとするのはいなかった。
その為、ほとんど苦労もなく倒して行けた・・・、ちょっと拍子抜けしたくらいだ。




