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冒険再開

2 冒険再開

 進む派と留まる派2対2だったのが3対1になってしまい、やむなく冒険の旅へ出ることに・・・。

 俺だって別に・・・この地でずっと一生を終えようなんて考えていたわけじゃあない・・・、ただ単に、もう少しダンジョンの有効な情報があってもいいのではないかと、それを探ろうと提案していただけなのだ。


 にもかかわらず・・・チコリ村を南東に行った先には人が近づくことが出来ない恐ろしい魔の巣があるだぞー・・・、といういかにもダンジョンがありますよといった村人のコメントのみで、洞窟なのか城なのか塔なのか、あるいは沼なんてことも考えられるのだが、そのダンジョンの概要すらわかっていない状況だ。


 普通であれば、ダンジョンがあると分かると喜んでその地へ向かうわけだ・・・当たり前の話、俺たちは冒険するためにこの地に来ているわけだから・・・、だがそれがおよそ攻略不可能と考えられる形容をしているはずなのだ。


 しかも、その形すらわからないわけだから、準備するにも何もできないではないか・・・。


 これが普通のRPGであれば、『いやあ、だめだったか・・・、でも惜しかったなあ・・・もう一度』なんて言って、今度はこんな道具を持って行ってみようとか、この時はこんなふうに戦えばよかったなんて反省してやり直せばいいのだが、今の俺たちには2回目という言葉はない。


 全て1度でクリアしなければならないわけだ・・・、しかも犠牲者を一人も出さずに。

 こうやって考えれば、実体化したときの俺たちは、よくぞ一度も失敗せずにゲームをクリアできたものだと、感心してしまう・・・しかも2度も・・・。


 そりゃあ確かに攻略不能のダンジョンという訳ではなかっただろうが、それでも当時のレベルから考えると、魔物たちの強さや魔王や魔神たちの強さから考えても、何度か全滅してもおかしくはなかったはずだ。


 それなのに誰一人欠くこともなく・・・メンバー4人どころか、一緒に冒険していた他のチームメンバーたちも全員無事に、最終ステージまで行きついたという事なわけだ。

 どのような凄い采配をしたのかわからないが・・・、恐らく運だけで乗り越えたとは到底思えない。


 格闘技では無敵の少女であるツバサの存在は、それこそ大きかったといえるのだろうが・・・、そのほかにも全員がそれなりに頑張ったのだろうと想定できる。


 だがしかし、その時の貴重な経験が、まったく生かされていないわけだ・・・、記憶していないのだから・・・。

 これは大きな損失だ・・・。


 今や俺たちは最高レベルで、しかも経験値は言い方はおかしいがMAXをさらに超えているはずだ・・・。

 あんな巨大な海竜に思いきりかみ砕かれようとしても平気な体を持っているし、恐らく致命傷なども簡単に受けることはないだろう。


 それなのに・・・何を恐れているのかというと・・・、やはり生きながら閉じ込められてしまう事だ・・・。

 考えてみれば、最初の冒険らしい冒険で人魚のような美しいトシミさんたちから、沈没船の中に閉じ込められようとしたわけだ・・・。


 彼女たちのような美しい娘たちが、ずっと相手をしてくれるのだったら・・・、まあそれなりに楽しかったのだろうが・・・とか不謹慎なことを最近はよく考えるようになった。


 魔物たちで倒せなければ閉じ込めてしまえ・・・という安易とはいえ、それなりに脅威の作戦・・・しかも、向こうも俺たちが最強レベルであるという事を把握したであろうから、それこそ無敵の魔物たちを集団で送り込み、更に攻略不可能なダンジョンを用意しているはずなのだ。


 以前の冒険の時と難易度の比較はできないが、恐らく今回の方が有利であるとは決して言えない・・・、むしろ前回の記憶が全くない分不利なくらいだ・・・、どのように皆の意見を取りまとめて行動したのか・・・、その指針さえわかれば、同じ合議をするだけでも少しは希望が見えてくるのだが・・・。


 なにせ簡単には死ねないのだ・・・、閉じ込めるといえばそれだけのことのように思えるのだが、その閉塞空間の中で永遠の時を過ごすかともうと、まともな精神状態を保っていられるとは到底思えない。


 しかも一緒に娘もいるのだ・・・、先の見通しのない絶望の状態で、それでも娘を励まして生きていくことが、果たして俺にできるだろうか・・・、そう考えると・・・なかなか一歩を踏み出せないでいるのだ・・・。


「早く行こうよ・・・、いつまでもこんなところにくすぶっていたら、お尻に根が生えちゃうよ・・・。」


 早朝の宿屋の玄関でレイが一人居残っている俺を手招きする・・・、ううむ・・・昨日まではテレビを食い入るように見ていたというのに・・・、連載が終わってしまえば、もう旅支度という訳か・・・現金なものだ・・・。


「仕方がないな・・・だが、行ってみてちょっとでも危険を感じたら、引き返してくるぞ。

 確かにダンジョンも見ずにここでじっとしていても仕方がない・・・、どんなダンジョンか分かれば、村人たちからも情報が引き出しやすくなるかもしれないからな。」


 おもむろに立ち上がって身支度を整える・・・、と言っても身支度も何も、装備と冒険者の袋以外はほとんど手ぶら状態だ、旅行カバンがあるわけでもない。


「えー・・・また戻ってくるの?

 いいじゃない・・・そのままダンジョンをクリアしちゃえば・・・別にここが最後ってわけじゃあないんでしょ?

 大事に取っておく必要はないよね?」

 すぐにレイが頬を膨らませて、不満げな態度をとる。


「そっ・・・そうですよ・・・、もうこれ以上頑張っても情報が入ってくる見込みは薄いですよ。

 何度も言いますが三四郎さんだって、最近はダンジョンに関する情報が入ってこなくなって来たって言っていましたよね!


 とりあえず行ってみましょうよ・・・、やってみれば意外と簡単だったっていう事も・・・。」

 すぐに源五郎がフォローに入る。


 本当にやる気満々だ・・・、それはそうだ・・・久しぶりに冒険をするためにこの星へ来ているのだ・・・、ツバサからのメッセージを受け取ったというお題目はあったにしても、冒険する気がなければここへきているはずはない。


 しかも・・・、攻略不能と思われるダンジョンをも恐れることなく・・・、

 見習わなければいけないな・・・、ちょっと怖いがやるしかないか・・・。


「じゃあ、行ってみるか・・・、だけど・・・本当にいいんだね?

 ダンジョンに閉じ込められてしまって、出られなくなってしまうかもしれないけど・・・本当にいいんだね?」

 念を押して全員に確認する。


「はい・・・、問題ありません・・・。」

 源五郎は至極まじめな表情で答えを返す・・・、奴は奴なりに閉じ込められた状況を十分に考えたうえでの結論だろう。


「あたしも・・・戦いに敗れて命を落とすのもダンジョンに閉じ込められるのも、どちらも冒険継続できなくなるという事では同じなので、構いません。」


 ツバサも同様だ・・・彼女にとって冒険というのは修行の一環だから生活の一部であり、それを欠くことはどんなことよりもつらいのだろう。

 だからこそ、どれほどの危険が待ち受けていると分かっていても、立ち向かっていくのだ。


「あたしは・・・ダーリンと一緒だったらどんなところでも楽しいからいい!」

 レイ一人だけ、どちらかというと閉じ込められることをいとわない発言だ・・・。


 まあなあ・・・、俺だってトシミさんたちとだったら・・・・なあんて不謹慎な考えが頭をよぎるわけだから、この辺は遺伝なのだろうか・・・。


 石橋をたたいて叩いて・・・なかなか渡らない・・・くらいの慎重さが必要と考えていたのだが、もう限界のようだ。

 ここで立ち止まっていても、この先で閉じ込められて動けなくなるのも、考えてみれば事態に大きな違いはない。


 どこに帰る家があるわけでもないし、冒険をクリアすれば地球に帰れるという保証もないわけだ。

『ガチャッ』宿屋のドアを開けて表に出る・・・、考えてみれば外に出るのは一週間ぶりだ・・・。


 ツバサや源五郎がダンジョンへ向かおうと誘うのに対して、村人たちや受付嬢などから情報を集めてこないとだめだと拒否し、テレビにかじりついているレイと二人でずっと宿屋で過ごしていたわけだ。

 なんだか、太陽がまぶしい・・・。


「ようやくお出ましですか・・・よかった・・・、航海中の魔物たちとの格闘ビデオも底をつきかけてきて、弱っていたのですよ。

 いよいよ次なるダンジョンへ向かうわけですね?」


 一週間ぶりに4人そろって宿屋から出てきたためか、外で待ち受けていたテレビ局スタッフたちが色めきだし始めた。


「ああそうだ・・・、ずいぶん待たせてすまなかったが、ようやく決心がついた。

 ダンジョンに向かうよ・・・、悪いが南東にあるというダンジョンに向けて出発してくれるかい?」

 いつものテレビスタッフに頭を下げ、そうして車を出してくれるようお願いする。


「そりゃあもちろんですよ・・さっ気の変わらないうちに早く乗ってください。」

 すぐにテレビスタッフが中継車のドアを開けて、俺たちに乗り込むよう促す。


 彼らも、この1週間気が気じゃなかっただろうな・・・、悪いことをした・・・。

『ブロロロロロッ』そうして中継車が走り出した。


「チコリ村の東側一帯は、以前は山脈が連なっていて、かなり南へ下らなければ山間を抜けて東へ向かう事は出来ませんでした。

 ところが現在は高い山脈はないのですが、延々と竹林が続いています。


 竹林とは言っても密度が濃く、人が通れる隙間もないほどぎっしりと群生していて、結局は南へ下らなければ東へ向かう事は出来なくなっています。


 北部大陸は、元からこの星にあった大陸ですが、今は元の星とは次元を隔てた別の環境にあるせいか、地形すらも大きく変わっているようです。

 それは、中央諸島でも経験しましたから、お分かりとは思いますが・・・。


 竹林に沿って途中から南東へ車で2時間ほど進むと、ようやく人がひとり通れるほどの道というか竹林の隙間があります。

 そこを進んで行くと・・・濃い霧の中を進んで行くのですが・・・、前後も分からないほどの視界の悪い中ですので・・・、いつの間にか入った入り口に戻ってしまい、どんなダンジョンへ通じているのか、未だに判りません。」


 ツバサが、この先の状況を説明してくれる・・・、以前は・・・と言われても俺にはその時の冒険の記憶はないし、この星生まれでもないから地形の違いなど、問題視するつもりはないのだが・・・。


「そうそう・・あの竹林には僕も何度かトライしたのですが、やっぱり入り口にいつの間にか戻ってしまって、ダンジョンには行きつきませんでした。」


 すぐに源五郎も相槌を打つ・・・そうか・・2人とも、いつまでも腰を上げない俺の態度に業を煮やして、自分だけでもとダンジョンへ向かったという事のようだな・・、ところがダンジョンにはたどり着けなかったという訳だ・・、果たして何か仕掛けがあるのだろうか・・・?


 壁のような竹の群生に沿うようにして中継車は進み、夕方ごろになってようやく竹林の切れ間にたどり着いた。


「ここですね・・・、ここから先へは中継車では進むことは出来ません。


 人がひとり通れる程度の道幅しかありませんのでね・・・、一応方角的には北へ向かっているようですので、恐らくチコリ村南東のダンジョンへ向かうと考えているのですが・・・、中へ入った途端に霧に包まれてしまいまして・・・、何とか前へ前へと進もうとするのですが、いつの間にかここへ出て来てしまうのです。


 何度か入りなおしましたが駄目でした・・、恐らく僕一人だけで入ろうとしたから駄目だったんじゃあないかと・・、メンバー全員で入ったらどうなるか試したくて、何度も誘っていたのです。」

 源五郎が、人ひとり通れるのがようやくと見える竹林の隙間を指さしながら説明してくれる。


「あたしの時にもそうでした・・・、霧で右も左も分からなくなってしまい、手探り状態で竹林の隙間をさまようようにして歩いて行くのですが、やはりいつの間にかこの入口に戻ってしまうのです。」

 ツバサも同様な説明を返しながら頷く。


「分った・・・、じゃあ行ってみよう。

 悪いが、ここで待っていてくれるかい?

 中の様子は中継車内のモニターで見られると思うから、悪いけど、俺達の帰りがあまりに遅い時は確認してみてくれるかい?


 どこかで俺たちが閉じ込められてしまった場合は、決して君たちで対応しようとはせずに、悪いが船に戻って占い師さんに相談してみて欲しい。

 彼女は船倉の一番奥にいるから、行けばわかるはずだ。」


 テレビスタッフに、ここでの待機をお願いし、同時に俺たちの様子をモニターしていただくようお願いする。

 万が一、どこかで閉じ込められてしまった場合に、助けを求めてくれるようお願いいする。


 まあ、占い師が何かしてくれるかどうか怪しいものだが・・・、彼女が五朗爺さんの分身であるとすれば、俺達の味方である可能性は高い。


「えっ?検閲前の映像を覗いていてもよろしいのでしょうか?」

 テレビスタッフが、不思議そうに首をひねる。


「あっああ・・・、そっその・・・、レイやツバサのちょっと破廉恥な映像など・・・、世界中に放送されては困るので検閲させてもらうが・・・、放送さえ控えていただけばいい。


 だが・・・やはり嫁入り前の娘たちの事なので・・・、映像確認するのは俺たちの帰りがあまりに遅すぎて、なにかあったと考えられる場合に限って欲しい。

 守れるかい?」


 検閲に関してはあくまでもレイとツバサのセクシーショット厳禁という立場を貫く必要性があるため、緊急時のみという条件付きで帰りが遅い場合は、俺達の状況確認の為に映像を確認いただくことを許可することにした。

 これも万一の際の保険の一つだ・・・。


「分りました・・・今晩はもう遅いので、恐らくどこかで野営されるでしょうから、明日の晩になっても戻られない場合は、映像確認させていただくことにします。

 では、行ってらっしゃい・・・。」


 テレビスタッフは、色々と注文を付ける俺に対しても、真摯に対応しようとしてくれる。

 本当にありがたい限りだ・・・だがしかし、恐らく彼らの中には俺たちの行動を邪魔しようとする者が混じっていることは、ほぼ間違いがないのだ・・・、それが誰か分らない限り、全面的に信頼を寄せる事は出来ない。


 テレビスタッフにヘッドカメラとインカムをセットしてもらい、中継車を後にして左右が壁のように竹林が整列しながら綺麗に道を形作っている隙間をゆっくりと進んで行く。


 冒険の再開に際して、宿だけではなくダンジョンへ向かう時と訓練時以外は、移動の最中も含めてヘッドカメラは外すことを申し入れた。


「流石ですね・・・、最悪の事態を予想してテレビスタッフにモニター確認をお願いするとは・・・、そこまでは気が回りませんでした。」

 すぐに源五郎が寄って来て、笑顔を見せる。


「まあ・・、保険と言えるかどうか・・・、占い師さんの力でもどうしようもない事はあるだろうからな。」

 本当に・・・気休め程度でしかないことは、あらかじめ断わっておく。



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