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裏切り

14 裏切り

「じゃあ、行こう・・・。」

 三四郎が先頭に立って、巨大な施設の方へと歩きだす。


「いやいやいや・・・ちょっと待ってくれ・・・、施設へ入るのは俺たちだけでいい・・・。

 君は無敵のままかもしれんが、地竜の里を守る役割があるのだから、一緒に戦わない方がいい。」

 焦って三四郎を押しとどめる。


「いや、そうはいかない・・・何せこの施設は、俺たちの村にも関係のある施設だからな。

 橋が完成すれば俺たちの村からも本格的に村人たちがやってきて、工事に従事することになっている。

 この施設の完成日は定められていて、もうあまり期間がないのだ・・・橋の完成が予定よりずいぶんと遅れているからね。


 その上、魔物の被害により工事は中断しているし、ここに巣くう魔物を退治するという事は、地竜の里の存続にかかわる大事な仕事なのだ。


 だから君たちにだけ任せておくという無責任なことはできない・・・、以前は強力な魔物相手だから、俺では太刀打ちできないだろうと考えていたのだが、無敵状態という事を聞いて俺も戦いに参加することにした。

 そうすれば、間違いなく魔物は退治できるだろ?


 なにせ無敵対無敵なわけだから五分と五分だ・・・、そこへ君たちが加わることにより、圧倒的にこちら側が有利に立てる。」


 三四郎は笑顔でそう答える・・・そうかぁ、下手に無敵状態の可能性があると教えない方がよかったな・・・、かえって戦う気にさせてしまったという事か・・・。


「そうかわかった・・・、だが、戦うのはあくまでも俺たちに任せてほしい・・・、何せこっちは本職というかそのつもりでこの地に来ているわけだし、何より圧倒的経験値を持っているし、ツバサだって世界最強の格闘家だ。

 無敵だって倒せる手順は聞いたところだし・・・、おそらく君の手を煩わすことはないだろう。


 何より、魔物を倒すことによって得られる経験値やレベルアップ及びアイテムなど、君が参加することによって減額されるのも困るわけだ。


 だから、どうしてもというのであれば、君は詳しそうだから案内役として同行してくれるのは構わないが、戦いには参加しないで後方に控えると約束してくれ。

 あくまでも魔物たちを倒す役割は、俺たち冒険者の特権であることを忘れないでほしい。」


 彼は頑固そうだから、俺たちだけで行くと言ったら、自分一人だけででも入っていこうとするだろう。

 無敵状態の可能性は高いのだが、それでも絶対にやられないとは言えないし、彼の安全のためにも、魔物退治は俺たちの生業だという事を強調しておくことにする。


「ううむそうか・・・俺が戦いに参加することで、君たちに迷惑をかけるわけにはいかないな・・・。

 分かった、君たちが十分戦えている間は、俺は後方で控えておくことにする・・・。」


 すると三四郎が意外にあっさりと引いてくれた・・・、やはり経験値やアイテムが減ると言ったのが効いたのだろうか?


「ちょっと待ってください・・・、冒険者の袋を没収されていたので渡せませんでしたが、これを・・・。」

 ツバサが銀色に光り輝くリングをつまんで見せる・・・、なんだっけ?


「海竜の民の村で手に入れた身代わりの指輪です。

 致命傷を受けたときに、代わりに指輪が砕けて救ってくれます。

 あたしは・・・10個持っています。」


 おおそうか・・・

「俺も10個持っているから、4人で一人当たり5個ずつ配るとするか・・・、はい・・・。」

 すぐに、レイに5個握らせる。


「指にはめていませんと効果がありませんから、この場で装備してください。」

 源五郎に5個手渡しながらツバサが指示を出す・・・、はいはい・・・左手のすべての指に一つずつつけましょう。


「こっちだ・・・。」

 準備が整ったところで、三四郎はコンクリート製であろう白く巨大な建物の入り口へと歩いていく・・・、と思ったらそこから急転回・・・、ちょうどこんもりと盛り上がった丘を半分切り崩してその前に建物を建てているようなのだが、その丘に開いた洞窟の中へ入っていこうとしているようだ。


「あれ?魔物はパラボラアンテナ施設の中にいるんじゃあないのかい?」

 駆け足で追いつくと、三四郎にどこへ行こうとしているのか確認してみる。


「ああ・・・橋ができてクエストとして発動した場合には、魔物たちは迷路のようになったパラボラアンテナ施設中にばらまかれて生息する予定だ。

 迷路でなかなか先へと進めない上に、突然無敵の魔物が通路の影から出現してくるのだから、かなり厄介なダンジョンと言えるだろう。


 だがしかし、まだクエストが発動していない今は、魔物たちの大半はこちらの洞窟内の最下層に押し込められている。

 いわば巣だな・・・、その巣をたたいてしまえば一網打尽というわけだ。」

 三四郎は洞窟の中へと足を進めながら答える。


「君はダンジョンの仕組みとか、中にいる魔物たちの様子とかを全て知っているというのかい?」

 冒険者たちのサポート役とはいえ、あまりにも裏事情を知りすぎているような気がしてならない。


「ああ・・・、我々は冒険者たちの冒険が滞りなく進んでいくようにサポートする役割だからな。

 全てとは言わないが、冒険者が立ち向かうダンジョンの仕組みとか、冒険者に対してどのようなことを考えさせるよう仕向けようとしているとか、また、ダンジョンに巣くう魔物たちとそれに立ち向かう冒険者たちのレベル状態も比較できるような情報は把握している。


 だがまあそれも・・・、前回・・・というか今回冒険のほんの最初部分までで、9年ほど前から我々にもダンジョンの詳細などは伝わってこなくなった。

 それでも我々はプロだからな・・・、わずかに流れてくる情報だけでもある程度の見当はつく。


 その情報と冒険者たちのレベルを鑑みて、常識的な範囲内でのヒントを与えるとか、補助するとかは許されているわけだ・・・、まあ、我々にはその常識的な範囲内というのがどこまでなのか、いまだにわかってはいないがね・・・。


 今回はできる限りのサポートをさせていただこうと考えている・・・、信用して従ってくれ。」

 三四郎は笑顔を見せながら快活に答える。


 ふうむそうか・・・ダンジョンのことはあらかた予想がつくと・・・そういった情報があったから、あの半魚人たちは俺たちのクエストであった帆船を勝手に持ち出したり宝箱を横取りしたりして、冒険を邪魔しようと企てたという訳だな・・・。


 そうして三四郎の見立てでは、こちらに回り込めば迷路のような建物に悩まされずに、一気に魔物たちを片付けられるというわけだ・・・、これはいいかもしれない。


「あっ・・・そういえば・・・、これはリーダーが持っていた方がいいのでしょうね。

 戦闘がなかったために効果のほどはわかりませんが、それでも弓矢よりも剣のスピードを上げる方が有利でしょう。」

 洞窟の入り口で源五郎が思い出したかのように声をだし、疾風の宝剣を俺に手渡す。


「ああそうか・・・、ありがたく持たせていただくよ・・・。」

 そういいながら宝剣を袋にしまい込む。


「じゃあ、こっちも・・・。」

 源五郎につられてか、レイも慈恵の剣を俺に手渡そうとする。


「いや・・・この剣は回復系の魔法効果を高めるものだからな・・・、俺でもいいがやはりレイが持っていた方がいいだろう。」

 宝剣をレイの手に戻す。


「ふーん・・・分かった・・・。」

 レイが宝剣を袋に戻す・・・、装備していなくても効果を発揮するというのは面倒がなくていい。


『カツーンッカツーンッ・・・』建物のすぐ右わきにある洞窟の中は、結構ひんやりしていた・・・。

『カチッ』洞窟内は照明がついておらず真っ暗なので、ヘッドカメラ脇の照明用のライトを点灯させる。


『カツーンッカツーンッ・・・』洞窟は少し先へ進むと、スロープになっているようで、だんだんと地下へと下がっていくようだ・・・、やがてそのスロープが緩やかに左方向へカーブを描いて曲がっていく・・・。

 そう・・どうやらパラボラアンテナ施設の地下の方へと、進んでいくようだ。


「ここだ・・・この扉の向こう側には、強力な魔物たちがひしめいているはずだ。

 魔物たちを外へ出さないために、中に入ったらすぐにドアを閉めてくれ。」

 先頭を進んでいた三四郎に促されてドアの前へ向かうと、ドアノブに手をかける・・・。


「いくぞっ・・・、準備はいいかい?」

「はいっ、大丈夫です。」

「おっけー・・・」

「いつでもいいですよ・・・。」

「ようし行くぞ。」


『カチャッ・・・ダッ・・・・・・バタンッ』みなに声を掛けると、おもむろにドアノブを回してドアを開けるとともにダッシュで駆け込む・・・、後のメンバーも全員が中に入って扉が閉まった。


『っぐぅぉー』『がおーっ』『ぐおーっ』三四郎の言う通り、ドアの向こう側には、無数の魔物たちがひしめいていた・・・、水牛のような角と頭部を持ち、二足歩行して両手には斧をかかえた魔物・・・、ミノ○ウロス風の奴がぎっしりと10メートル四方ほどの広さの部屋中を埋め尽くしていた。


「まさか・・・無敵の魔物がこんなにたくさんいるのか?」


 焦って三四郎に振り返るが、中に一緒に入ってきたのは俺のほかには源五郎とツバサとレイだけで、三四郎の姿が見えない・・・、あの大きな体だ・・・誰かの影になっていることはあり得ない・・・。

 しまった・・・騙されたのか・・・?と思ってドアを見ると、案の定ドアノブは内側にはついていなかった。


 頑丈な鋼鉄製のドアが岩壁に取り付けられているので、ちょっとやそっとの衝撃では壊すことはできないだろう・・・、まいったなあ・・・。


 三四郎が一緒に戦うだのと言っていたので仲間意識が生まれていたのだが、もしかすると俺たちが奴を気遣って戦わせないだろうという事を見越していたのかもしれないな・・・思惑通り、経験値取得を理由に俺たちだけで戦うと宣言してしまったという訳だ・・・、それで奴は自然と最後尾に位置して・・・。


「来ます!」

『ヒュッ・・・ドッゴォーンッ・・・ドガッ』ツバサが叫ぶので振り返ると、目の前に真っ黒い回転物が・・・、慌てて身をそらすと、岩壁に勢いよく当たって、岩の表面を削り取りながら斧が跳ね返っていき地面に落ちた。

 危ない危ない・・・あんなの直撃を食らったら、すぐに復活の木の葉のお世話にならなければならないだろう。


『フッ・・フッ・・フッ・・・』すぐ目の前の魔物たちの、荒い息づかいが聞こえてくる。


「仕方がない・・・戦うしかなさそうだ・・・、いいか、みんな離れるな・・・、相手は無敵だから一撃だけでは倒せないし、更にすぐに回復してしまうから1体ずつ連続攻撃をかけるしかない。


 しかも、やみくもに攻撃するのではなく、的確に相手の急所を狙わなければならない・・・、難しいことばかりだが、やらなければこっちがやられる・・・、気をしっかり持って順に打ち倒していくぞ。


 まずはレイが攻撃魔法・・・雷攻撃で相手をひるませて、そこへ源五郎が矢を射かけ、俺とツバサが飛び込んでいって倒していく・・・、この流れだ・・いいね?」

『はいッ』すぐに返事が返ってくる。


「行くぞっ」


「神の裁き(ライデン)!神の裁き(ライデン)!神の裁き(ライデン)!」

『ドッゴォーンッ、ドッゴォーンッ、ドッゴォーンッ・・・バリバリバリバリッ、バリバリバリバリ、バリバリバリバリッ』すさまじいまでの衝撃音と、目もくらむような閃光に辺りが一瞬包まれる。


『シュッシュッシュッシュッシュッシュッ』『ズボッズゴッズバッズボッズバンッズバッ』さらに源五郎の放つ矢が雨のように魔物たちに襲い掛かっていく。


「とうっ」

『シュタッ・・・タッ・・シュッパァーンッ、タッ・・・シュパァーンッ、タッ・・・』ツバサが華麗に宙に舞い上がり、1体目の魔物の斧攻撃をかわすとそのまま光の爪で喉笛をかき切り、次の魔物の腹を引き裂く・・・、ツバサは息をもつかせぬ速さで跳躍しながら魔物たちを飛び越え次々と攻撃していく。


「おりゃあっ・・・」

『ダダッ・・・シュッパァーンッシュパッシュパッ、ダダダッ・・・シュッポォーンッシュパッ・・・』ツバサが仕留めた一体目の腹を裂くとそのまま心臓めがけて剣を突き刺し、剣を抜いた勢いで右側の魔物を袈裟懸けに切り下すとそのまま左わき腹に追撃の一打を放つ。


 何とかツバサに遅れないよう後を追い、疾風の宝剣の効果か複数回攻撃で、俺が確実に魔物たちに止めを刺していく。


「神の裁き(ライデン)!神の裁き(ライデン)!神の裁き(ライデン)!」

『ドゴォーンッ・・・バリバリバリバリ』『シュッシュッシュッ』『シュパッジュパッズゴッ』『タッ・・・シュッパァーンッ、タッ・・・シュパッ』『ダダダッ・・・シュッパァーンッシュポッ』攻撃を重ねるたびに、打ち倒した魔物は消滅し、だんだんと視界が晴れてくる・・・、そうして部屋中央まで進んできた。


『ぐるぉー』『ぐぉー』『っぐぉー』だいぶ数は減ったが、それでも部屋の中にはいまだ多数の魔物たちがひしめいているようだ・・・。


「まずいな・・囲まれてしまった・・・、周りから一斉攻撃を仕掛けられたら、連続攻撃で仕留めていくことなどできないぞ。」

 しまった・・・かといって前に進まなければ攻撃はしかけられなかったし・・・。


「まっかせてー・・・えーとっ大津波(ツナミ)!」

『ザッパァーンッ』レイが唱えると、俺たちを取り囲むかのように、大波が渦状に魔物たちに襲い掛かる。


「それからえーと・・・そうだ、絶対零度(ゼロK)!」

『ピッキィーン』大波で一瞬魔物たちの動きが止まり、さらに周囲の空気が凍てつくように真っ白に凍り付く。


『バギバギバギバギッ』『ぐるぉー』『ぐぉー』やったと一瞬思ったが、すぐに魔物たちは氷塊を崩して雄たけびを上げる・・・、ずいぶんと毛皮が厚いので、氷攻撃には強いのだろうな・・・。


「まずい・・・レイ、やはり雷攻撃だ・・・。」


「うん、分かった・・・神の裁き(ライデン)!神の裁き(ライデン)!神の裁き(ライデン)!・・・」

『ドッゴォーンッ・・・バリバリバリッ、ドッゴォーンッ・・・バリバリバリッ・・・』レイが回転しながら周りの魔物たちに雷撃を食らわせていく。

『ぶひぃー』『きゅーんっ』すると魔物たちは、頭から煙をあげながら悲鳴のような鳴き声を上げる。


「そうか・・・凍らせることはできなかったが、体が濡れているから雷攻撃の威力が倍増だ。

 一気に畳みかけるぞ。」


『はいッ』

『シュッシュッシュッシュッシュッシュッ・・・』『ズゴッバゴッシュボッジュバッシュパッ・・・』源五郎もレイとともに、回転しながら矢を射かけていく。


「とうっ」

『タッ・・・シュッパァーンッ、タッ・・・シュパンッ』ツバサが宙を舞いながら連続攻撃を仕掛け、

「だありゃあっ」

『ダダッ・・・シュッパパァーンッシュパッ、ダダダッ・・・シュッパンッシュッ』俺がとどめを刺していく。


 レイの魔法攻撃の成果か、攻撃回数はずいぶんと少な目で倒して行けた。


『ダッ・・・・シュッパァンシュパッ』

「はぁはぁはぁ・・・、これで全部か・・・。」

 最後の魔物を袈裟懸けに葬り、部屋の中から魔物の姿が消えた。


「みんな無事か・・・はぁはぁ・・・」

 もう精も魂も尽き果てたとはこのことだ・・・、何とか踏ん張って立っているのがやっとの状態で辺りを見渡す。


「うん・・・大丈夫だよ・・・はあはあはあ・・・。」

 レイの声が小さく聞こえる。


「はぁはぁ・・・何とか無事のようです・・・はぁはぁ。」

 源五郎も大丈夫の様だ。


「あたしは・・・、まだ行けますよ。」

 ツバサだけは・・・元気だ・・・、さすがだ・・・。


「ようし・・ちょっと集まってくれ・・・。」

 みんなを部屋中央に呼び寄せる。


全体回復(ターカイ)!」

 そうして回復魔法を唱える・・・、レイに唱えさせてもいいのだが、まだこの先何があるかわからないので、彼女の魔力消費は抑えておいた方がいいだろう。


 ふう・・・これといった攻撃を食らった覚えはないのだが、それでもダメージはあったのだろう・・・、痛みと一緒に疲れも多少回復していくようだ。



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