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またまた地竜の里へ

13 またまた地竜の里へ

「そうだね・・・特に飛び道具の場合は加減なんか難しいのだから、絶対に人に向けて撃ってはいけないよ。

 それは練習でもなんでも一緒だ・・・、レイの魔法は味方に向けても攻撃できるから、特に気を付けなければいけないね。


 魔法の練習だったら、さっきの装置で練習すればいいからね・・・。」

 危ない危ない・・・ツバサの命も大切だが、愛娘に殺人を犯させるわけにはいかない。


「うん・・・もうしないよ・・・、お姉さんもさすがに危ないからって、それからはねえ水を入れるゴム風船を買ってきて、それをぶつけているんだよ・・・、水があればどこでも作れるからね・・・。」

 ほうそうか・・・流石に危険と判断してトレーニング方法を見直したというわけか、よかった・・・。


「多分なんですが・・・、ツバサさんは過去の冒険の時に経験値を増やさずに、トレーニングで力や技術力をあげていき魔神を倒したことを覚えていて、それを実践しようとしているのでしょう、ここへ来るときに定男さんと綾瀬さんがいろいろと、僕たちの冒険の内容を教えてくれました。


 それによると実体化していた時には、見かけ上の経験値などはクエストを攻略していけば上がってはいきますが、実際の体力技能に関しては、戦闘経験やトレーニングを積まないと身にはつかなかったんだそうです。


 そのためクエストをこなすのは必要最小限にして、レベルをあまりあげずに陰でトレーニングして技術を磨き、そうして簡単に魔神を倒してしまったんだそうです。


 ところがゲームの世界に戻ると、トレーニングを積んだ場合でもその分経験値に反映されてレベルが上がっていくことになるはずだったのですが、今回はなぜかトレーニングをいくら続けても経験値も技量も減額して評価されることになってしまったわけですね。


 ツバサさんはそんな設定が悔しいんだと思います・・・、だから頭ではわかっているけれどもつらいトレーニングをやめることが出来ないんだろうと、僕は思っています。」


 源五郎が過去の冒険のいきさつを説明してくれる・・・、確か少し前にもそんなことを話していたな・・・、恐らく俺の本体も聞いているのだろうが、その時はすでに俺はこっちの世界に来ていたから、聞きそびれていたというわけだ。


 これまでのチーム内では、経験値はともかくツバサが飛びぬけて高い技術とセンスを持っていたから、恐らく俺たちの誰かが本気でかかっていったとしても平気でいなしていたのだろうし、そういった練習を積んできたのだろう。


 ところが今回はこれまでと真逆で、俺たちが初期設定で最高の経験値をもってやってきてしまったから、ツバサとのレベル差が大きく、どれだけ加減したとしてもツバサにとっては致命傷になりかねないほどのダメージとなるわけだ。


 まあツバサは努力家だから、何とかその差を解消しようと努力するだろうし、俺たちもサポートして、なるべくツバサに優先的に経験値を積ませるようにしていけばいい。

 だがそれは、あくまでも冒険のクエストを通してという事になるが・・・。


「じゃあまずは、軽くバイクでも漕いで体を温めるとしようか・・・。

 トレーニングをいくらしても身体能力が上がることは厳しくなったわけだが、まあ精神面の・・・いわばストレス発散だな・・・、そのためのトレーニングとしてあくまでも続けるぞ・・・。」


 準備運動のストレッチをしっかりした後、俺とレイが2台ある自転車に乗って漕ぎ始めると、源五郎はバタフライで上半身の筋力強化を始めた。


「そうだ・・・今回も特にこれと言って冒険をしたわけではないし、もちろん始まりの村でのカットはカメラを止めていたし放送できるものではない。


 放送する内容もないからトレーニング風景を放送することにするか・・・、経験値や技能アップに貢献することはほとんどないよう設定されているが、ツバサ含めみんな頑張っているという事を強調してみよう。」

 トレーニング終了後、ふと自分のヘッドカメラが回りっぱなしになっていることに気が付いて、提案してみる。


「いいですね・・・、もしかするとトレーニングの様子を流すことにより、中央の考え方が変わるかもしれませんしね・・・、やりましょう。」

 源五郎も乗り気だ。


 この日は、昨日の湖での祈祷シーンが放送された。

 明日からは俺たちのトレーニングメニューを放送できるよう・・・、放送に際してツバサから各トレーニングが体のどこに効果があるかなど、細かく聞いたうえでテロップなど準備するようスタッフにお願いしておく。



「さて・・・これからどうするか・・・、予定よりずいぶん早く乗船できたからね・・・。

 三四郎という竜人は、ずいぶんと意味深なことを言っていた・・・、橋ができてからか若しくは三日以内って・・・、だから今から向かえば、ぎりぎり三日で間に合うことは間にあう・・・。


 地竜の里へ行ってみるとしようか?ほかに予定がなければだが・・・。」

 翌朝、朝食を終えた後食堂でミーティングだ。


 これと言って確定の予定があるわけでもないので、みんなの意見を聞くことにする。

 船が手に入ったのだから、船旅というのもよさそうだしな・・・。


「そうですね・・・、とりあえずは地竜の里に向かうのが一番いいと考えます。」

 ツバサの一言で、またまた地竜の里へと戻ることになった・・・一体何往復目だ?



『ブロロロロロロッ・・・キィッ』『ガチャッ・・・バタンッ』結局船は使わず賢者のトンネルを使って東部大陸北部を目指し、地竜の里へ到着して中継車を降りる。


「よう・・・意外と早かったね・・・、占い師さんはちゃんと送り届けられたのかい?」

 中継車を認めて、ひときわ体の大きな竜人・・・三四郎がやってきた。


「ああ・・・ちゃんと船まで送って来たさ・・・、それよりもまだ3日目だから、間に合うよね?」

 三四郎に念を押すように確認する。


「ああ・・・クエストのことか・・・、恐らくまだ大丈夫だろう・・・、

 じゃあ着いた早々悪いが、早速目的地へ向かうとするか・・・、俺も同行させてもらう。」

 そういって三四郎は中継車へと向かい始める。


「おいおいっ・・・前にも言ったが、せっかくの無敵モードが解除されてしまう恐れがあるから、俺たちと一緒にはいかない方がいい。


 場所と目的さえ教えていただければ、俺たちは自力で現地へ向かうから、その方がいいだろう。

 テレビ局スタッフがいるから、地名さえわかれば行けるはずだよ・・・。」


 いずれ何かあるかもしれないので、三四郎の無敵モードは温存しておきたい・・・、まあ本当に無敵であるかどうかも、実のところ分かってはいないのだがな・・・。


「いや・・・テレビ局のスタッフではこれから行く先の道はわからないだろう・・・、橋ができてからならともかく、今から通常ではないルートを通っていくから、俺が一緒に行って案内するしか方法はない・・・、地図など書けるような単純なルートではないからね。


 本来ならこの場で源じいがこの村の困りごとをつぶやきながらクエストの案内をするはずなのだが、悪いが割愛させてもらって裏道を使って目的地へ行こう。


 その方が向こうも準備が整っていないかもしれないから、君たちにとっても有利に働く可能性がある。

 折角早く戻ってきたのだから、その方がいい・・・さあ行こう・・・。」


『ガチャッ』そういいながら三四郎は俺たちの制止を振り切り中継車へと乗り込んだ。

 ううむ・・・何か怪しいのだが・・・下手に拒否しない方がいいだろう・・・、注意して観察するようにして、向こうの出方に合わせて対処するしかない・・、そうしなければシナリオは進んでいきそうもない。


「仕方がない・・・、皆も乗るんだ。」

『・・・・バタンッ』『ブロロロロロッ』レイたちを呼び寄せて中継車に乗り込み、出発する。


「そこを曲がって、堤防沿いを進んでくれ。」

 しばらく川沿いを進んでいくと、突然三四郎が堤防に上がるよう指示を出す。


「はいッ」

『キィッ・・・ブロロロロロロロロロッ』中継車はギアを落として、堤防の急こう配を登っていく。


「おおよかったな・・・、この辺まではまだ水が来ていないようだ。

 下流の橋の工事現場で雨を降らせるよう祈祷してもらってから、川幅に沿って連日四六時中雨が降っていると聞いた。


 山奥の水源は標高が高いから川の水は流れ落ちていくのだが、この辺りからはすでに平野のため、海岸線と高低差はそれほどない。

 そのため遥か下流で降った雨が川に溜まると、海へ流れ込まずに上流下流へと水が分散していくだけだ・・・、そうなると干上がった川でも渡れなくなってしまう。


 今回クエストは、この川向こうの地で発生している。

 本来は橋ができてから行うクエストだが、橋の工事をしている今だけなら、川の水が干上がっているから、車でも川を渡ることが出来るというわけだ。


 だが対岸の堤防沿いにびっしりと防風林が植えられていて、中継車が抜けられるような隙間がある場所は、この長い川の中でもほんの数ケ所しかない。

 それを知っているのは地竜の里の民以外居ないのだから、俺が一緒に来てそのポイントを教えなければならないわけだ・・・。


 さらに、この後ダンジョンまで向かう道も相当に複雑だから、まあ俺に道案内させてくれ。

 じゃあ申し訳ないがこのまま川の中に入って、向こう岸まで突っ切ってくれ。

 もう何ケ月も水はない川だから、川底も乾いていて、タイヤがとられることはないだろう。」


 三四郎が口元を緩ませながら、俺たちの方へと振り返る。

 ふうむ・・・何かの陰謀というわけではないのだと、強調しているのだろうか・・・?

 だがまだ油断はできない・・・。


「分かりました・・・。」

 中継車のドライバーがゆっくりと堤防を下り、川の中へと入っていく・・・。


『ブロロロロッ』確かに川の底は乾いていて、中継車の走行には何の支障もない様子だ。

『ブロロロロロロロッ』そうしてしばらく景色が消えた後、中継車はエンジン音を吹かせて急こう配を登り続け、反対側の岸の堤防まで駆け上がった。


「じゃあ、ここから堤防を降りて防風林の隙間を越えてから、すぐに左へ曲がってくれ・・・、そこから百メートルほど進んで次は右へ曲がる・・。」


 対岸へ渡り切った後、三四郎は細かく道を指示していく・・・道といっても、どのみち舗装されたアスファルト道路ではなくほぼ獣道なのだが、それでも車が何とか通れる程度の道を選んでいる様子だ。

 そうしてしばらく進むと・・・


「見えてきた、あれが今回のクエストのダンジョン・・・パラボラアンテナ施設だ。」

 三四郎が指さす先には、巨大な半月型のオブジェが・・・、真っ白なオブジェは所々切り欠いていて、更に足場なのか黒い骨組みに囲まれている。


「事務局本部の話だと、この星の各大陸の北と中央と南の夫々にパラボラアンテナを設置しないと、地球からの安定した放送受信はできないという事だ。

 この星は自転しているので、一ケ所だけのパラボラアンテナでは、24時間連続して放送受信ができないらしい。


 今現在パラボラアンテナ施設として機能しているのは、南部大陸東のアンテナ施設だけだ・・・、中央諸島のアンテナ施設の建設が再開されたから受信時間が伸びる予定だが、現行は夕方5時から8時までの3時間のみの受信に限られている。


 東部大陸北部にアンテナが設置されることにより、朝の時間の受信が可能になるという事だが、工事進行を加速させるには資材搬入のための橋の完成が待ち望まれていた。

 ところが施設付近にはもともと強力な魔物が巣くっていたため、魔物を退治しなければ安心して工事は進められない。


 何とかグリーンマンに守ってもらいながら細々と工事を進めているのだが、魔物たちの一掃が望まれている・・・、というのがクエストの筋書きだな・・・、本当の理由はわからん・・・。」

 三四郎がいかにもとってつけたようなクエストだと強調するように、手に持ったメモを読み上げる。


「ああそうか・・・橋が完成して資材搬入が頻繁に行われるようになっても、魔物に邪魔されて工事が進められないというわけだね・・・、グリーンマン一人だけの警護じゃあ、確かに複数地点をガードするのは難しいからね。


 分かった・・・この地の魔物を退治すればいいわけだね・・・、それにはパラボラアンテナ施設に入っていかなければならないわけだ・・・、魔物は強いのかい?何匹ぐらいいるかわかるかい?」

 とりあえずどんな魔物が潜んでいるのか、分かるものなら聞いておきたい。


「ああ・・・魔物は強い・・・、無敵だと聞いている。


 グリーンマンでさえも手を焼いているらしく、一対一なら何とか追い払えるそうだが、倒すことはできず数は減らないらしい・・・、更に数十の魔物がいるとかあるいは巨大な魔物が一匹だけいるとか、相反する目撃証言が出ているので、魔物の正体はわかっていないのが現状だ。


 だが、かなり強敵だと気を引き締めて立ち向かった方がいいだろう。」

 三四郎が厳しい表情で告げる。


「そうか・・・工事現場には人影が見えないようだけど・・・、今は休んでいるのかい?

 魔物が頻繁に襲ってくるから、工事着工できないとかかな?」


 工事現場を見る限り、やり掛けという感は伝わってくるのだが、何もかもそのまま置き去りといった感じで、工事をしている人たちも見えない。

 まるで何かのトラブルで、工事現場の人たちが避難していなくなってしまったような雰囲気だ。


「いや・・・さっきも言った通り、このクエストの本当の発動は橋が完成してからの予定だ。

 だから今はまだ正式にはクエストが発動していないから、現場の作業者たちはまだ来ていない。

 だが、すでに魔物は仕込まれているし、倒してしまえばクエストが完了することは間違いがない。


 現場作業者たちがいる場合は彼らの安全にも気を使う必要性があるが、誰もいなければ思い切り戦えるというわけだ・・・、それに恐らく俺の無敵とやらが切れるのも、実際にクエスト発動したのちに君たちを案内してきてからという事になるだろうから、それまでは俺も無敵でいられるというわけさ。」


 三四郎はそういって笑みを浮かべる・・・、ほうそうか・・・急いだのにはそれなりのわけがあるというわけだな・・・、彼の無敵が俺たちを案内してきても消滅しないのであれば、それは今後の地竜の里の安全のためにはありがたいことだ・・・。


『ガチャッ』中継車を降りると白亜の施設を見上げる・・・、作りかけの半月というか三日月ぐらいのパラボラアンテナは、それでも遥か見上げるほどの大きさで、確かに遥か彼方の銀河からの電波を受信するという事を想像させる・・・、だが・・・?


「そういえば、よく考えてみれば、地球も自転しているし、更に太陽の周りをまわっているわけだから、日本からの電波は一日中この星の方向には発せられていないはずだよ・・・、地球の裏側になっている時間帯は電波がどのみち届かないのでは?・・・太陽の影になったりすることも・・・??」

 ふとそんなことが思いついた・・・。


「そうなのか・・・?そのような細かなことは俺にはわからんね・・・。」

 三四郎はそっけない返事を返す・・・、まあ、そうだね・・・元々遥か彼方の銀河からテレビ電波受信っていうこと自体が、荒唐無稽な話なわけだしね・・・。



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