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ファブから始まりの村へ

10 ファブから始まりの村へ・・・

「へえそうですか・・・、占い師さんにとっても中央からの指令は絶対なのでしょうか?」

 彼女が制作者側であれば俺たちの味方をしてくれるかもしれないな・・・、念のため直接聞いてみる。

 まあ、彼女が本当のことを言っているとは限らないのだがな・・・。


「ああ・・・三四郎のことを言っておるのだな・・・、仕方がないのじゃ・・・奴は様々な人間の記憶や感情を合成して作り上げたプログラム上のキャラじゃ・・・、だから中央からの指令には基本的に逆らうことはできない。


 一度実体化して以降その記憶を引きずっておるものじゃから、自我が生まれて意見はしておるようじゃがな・・・、それでも表面だって逆らうことはないだろうな。


 だがのう・・、この世界の中に冒険者以外で個人の分身として来ているのは・・・確か数えるほどしかおらんぞ・・・。

 しかもそれらがすべてお主たちの味方をするとは限らん・・・、何せ最初の通信障害を引き起こした魔神の反乱だって魔神以下個人の意識を持った者たちが起こした、いわばクーデターのようなものじゃったわけだからな・・・。」

 占い巨乳美女は厳しい顔で告げる


 そうだな・・・最初のトラブルはあの定男とかいう奴が引き起こしたんだったな・・・、後で事情を聴いて驚いた・・・・。

 別にゲーム上の不安点があったのであればそれを事前に打ち明けて、その上で皆で対策を協議すればよかっただろうに・・・、あんな反逆のようなゲームの世界を書き換えるようなまねをするとは・・・。


 あんなことしなければ、このゲームが世界中に公になるようなことはなかっただろうし、もしかすると今でも俺は週末にはこちら側の世界で冒険を楽しんでいたかもしれないと、たまに想像したりしていた。

 もちろんその時には娘のレイも一緒に連れてきたりもするなんて、想像は膨らんだわけだ・・・。


「あの・・・すいません・・・、この世界をおつくりになった関係者という事ですが、大空翔さんはお知り合いでしょうか?」

 すると突然ツバサが口を開いた・・・、大空翔と言えば青空商会の社長だ・・・、関係者だったら知っているだろうというテストのつもりだろうか・・・?でも、俺だって知っている相手だぞ?


「どっちの翔かな・・・?年寄りの方か若い方か・・・?年寄りの方じゃったら・・・ごにょごにょ・・・。」

 ところが占い巨乳美女の答えは意外なものだった・・・、大空翔という人物は2人いるという事か?


 年寄りか若いかと聞くくらいだから、ご先祖様とかいう事ではなくて、今現在も生きている2人という事なのだろうな・・・。


「あっああ・・・、ありがとうございました。」

 ツバサはその答えに満足したように笑顔で席に戻っていった。


 ううむ・・・、最後の方は耳打ちして小さな声でしゃべっていたから聞き取れなかった。

 いや別に・・・人の内緒話を聞きたいというわけではないのだが、それでもゲームの進行にかかわりそうなことであれば知っておきたいものだ・・・、まあ、個人情報であれば聞かない方がいいか・・・。


「もうすぐファブの港町に到着しますよ・・・。」

 中継車のドライバーが、俺たちに向けて声をかけてくれる。


 そうか・・・、始まりの村を通り過ぎてファブの港町までやってきたのだ。

 島の中の道は整備されているのだが、所詮は馬車用の道なので、あまりスピードを出すことはできないのだが、それでも中継車であれば半日かからずに到着できるから便利だ・・・。


「あれっ?船がありますよ・・・。」

 源五郎がふと前方を眺めながらつぶやく。


「そりゃ、港町なんだから船ぐらいあるだろう。」


「いえ・・・僕たちが乗る船ですよ・・・、あの帆船・・・。」

 源五郎が指さす先には、巨大な帆船が停泊していた・・・あれは俺たちの帆船ではないのか?


 だが・・・あの船は東部大陸中央の海岸線に停泊していたはずだ・・・、あそこからここまで数日で移動してきたという事だろうか・・・?誰がそんな約束を船長とかわしたのだ?

 源五郎の顔をのぞき込むが、源五郎はいえいえ自分じゃありませんと首を振る・・・。


 まさかレイじゃないだろうし・・・、一体だれが?


「冒険者用の船ですから、賢者のトンネルを使って移動したときには、移動先の一番近くの港まで船も一緒に移動するのです・・・、以前の冒険でそれはわかっていました。」

 ツバサが、自慢げに説明してくれる。


 ああそうか・・・だったらファブまで来るのが一番いいわけだ・・・、賢者のトンネルと港までの距離が東部大陸中央よりもはるかに近いわけだからな。


「ああそうか・・・だったら俺たちは常に東部大陸北部にいたわけだから、船も本当は北部にいたわけだね?

 だったら、どうして俺たちはいちいち賢者のトンネルを使って、中央の海岸まで2日半かけて移動していたんだい?


 北部の港はもっと遠くにあったという事なのかい?」

 だったら移動時間をもっと短縮できていたはずなのだ・・・、そうすれば俺たちだって源五郎たちだって、もっと楽にクエストをこなせていたのかもしれない・・・。


「それができなかったのです・・・最初に東部大陸北部に賢者のトンネルを使って移動したときにはご存知の通り、まだ船は干物状態で復活していませんでしたから、あたしたちの移動に伴って港へ移動することは行われなかったわけです。


 その後のクエストですが・・・あたしとサグルさん・・・、源五郎さんとレイちゃんと、2回ともにチームメンバーの半分しかクエストに参加しなかったので、完成した船でも移動に際して反応せず、船は依然として東部大陸中央の海岸線に停泊していました。


 今回ようやくチームメンバー全員で一緒に賢者のトンネルを使って移動したので、船も一緒についてきたというわけです。」


 ツバサが船の移動条件を説明してくれる・・・、そうか・・・そりゃそうだよね・・、チームメンバーの一部が単独で移動した場合は、船はどちらに従って移動すればいいか判断に迷うわけだ・・・、その場合は移動しないのが一番というわけだろう。


『ギギギギギィッ・・・ガッシャンッ』『ブロロロロロロッ』中継車が港に到着すると、船のフェリーゲートが中継車を向かい入れるかのようにゆっくりと開き、そこへと入っていく。


「じゃあどうも・・・本当にありがとうございました。」

 中継車を降りたところで、チームメンバー全員で深々と頭を下げて占い巨乳美女にお礼を言う。

 本当に助かった・・・、1時はどうなることかと思った・・・。


「ああ、わしで協力できることなら構わんぞ・・・、いつでも言ってくるがいい。」

 そういい残して占い巨乳美女は、車庫から船倉の部屋へと続く階段を下りて行った。


「じゃあ、まずは復活の木の葉をもらってこようかな?」


 ツバサに今後の予定を聞いてみる・・・、まさかファブへ戻るとは思ってもいなかったので、今後の予定もたっていない・・・、三四郎がクエストがあると言っていたが、橋が完成するころだと言っていたので、一週間・・・いや2週間は先だろう。


「そうですね・・・木の葉をもらうついでに、申し訳ありませんが始まりの村まで戻る必要性があります。」

『ガチャッ』ツバサはそういうと、おもむろに中継車に乗り込んだ。


 まあそうだろうな・・・・、占い巨乳美女を船まで送り届けるのが最優先なわけだから、途中で寄り道は言いづらかったのだろう。

『ブロロロロロッ』一緒に中継車に乗り込み、船から出てまずは東の森へと向かう。


「復活の木さん・・・、葉っぱを下さい。」

「復活の木さん・・・、どうか木の葉をお与えください。」


 レイが巨木の前で祈ると、その手のひらの上に一枚の葉が舞い降りてくる。

 なぜかツバサも同時に祈り始め、その手のひらに1枚の葉が舞い降りてくる・・・、やはり堤の無敵魔物の攻撃で、ツバサも瀕死のダメージを受けていたという事なのだろうか・・・。


<冒険は順調に進んでいるようだな・・・?>

 すると天の声ならぬ復活の木の声が辺り一面に響き渡るように聞こえてきた。


「はい・・・おかげさまで・・・、木の葉のおかげで助かっています。

 また、協力していただける人物も見つかってきました。」

 とりあえず木の葉のお礼を言っておく。


<そうか・・・協力者が現れたというのは心強いな・・・、だが、本当に信用していい人物かどうか、よく見極めることを忘れるな・・・、誰が味方で誰が敵なのかは、最後まで行きつかなければなかなか判断は難しいのだからな。


 それからツバサ・・・訓練を積むのもいいが、あまり危険な訓練を己に課すことはやめるのじゃ・・・、命がいくらあっても足りんぞ・・・いいな?>

 復活の木はあくまでも用心することを忘れないよう告げる・・・、それとツバサにも・・・。


 まあ、誰かの分身として送り込まれてきているものだって裏切らないとは言えないと、占い巨乳美女も言っていたわけだからな・・・、こうなるともう・・・全てを疑っていかなければならないので、かなり面倒くさい。


「はい・・・、申し訳ありません・・・。」

 ツバサが頭を下げるところを見ると、思い当たる点があるのだろう・・・、なにせ俺との選抜戦に敗れてからトレーニング量を増やしたはずだからな・・・、2時間制限を付けたから今後は少し控えるだろう。


「では、失礼いたします。」

 丁寧にあいさつして東の森を後にする。


「それで・・・、始まりの村には何かあるのかい?クエストとかかな・・・?」

 ツバサに始まりの村での目的を確認する。

 この前にギルドを確認した限りでは、中央諸島でのクエストはすべて完了してきたはずだったがな・・・。


「はあ・・・、行けば分かりますよ。」

 ツバサは、あまり話したくはない様子だ・・・、中継車内だとテレビスタッフに聞かれることを懸念しているのだろうか・・・。


「ギルドに到着しました。」

 中継車のドライバーが、始まりの村のギルドに到着したことを告げる。


『ガチャッ』ここで中継車を降りるという事は、やはり新たなクエストの当てがあるのか?

『ガチャガチャッ』ところがツバサは、今度は中継車後方に結び付けている葛籠を外した。

『ブロロロロロッ』そうして中継車はテレビ局の支社へ向かうのか、走り去っていった。


「すいませんが、まずヘッドカメラとマイクの電源を切ってください。」

 ツバサの指示で、各々ヘッドカメラとマイクの電源を切る。

 なにか、秘密の作戦行動でもするのだろうか・・・?


「こっちです。」

 ツバサはそういうと、葛籠を引っ張りながら村の中へと歩きだした。


 そうして村の端まで来ると、そこにある小屋の中へと入っていく・・・。

 何かの店かと思ったが、小屋の中には地下へと続く階段があるだけだ。


「ここに何かあるのかい?」


「ここは村の牢屋です・・・、冒険者用の施設というより、本当のこの星の住民・・・つまりあたしたちの使う施設で、次元の違う冒険者は使えないはずなのですが、なぜかここだけアクセス可能なので使わせてもらっています。


 といっても、この星最強の超人であるイエローマンがお遊びで作った施設で、使われたことはたったの一度・・・、それも皆さんが最初の冒険で次元移動してしまった時に、冒険者の一部が村の人たちに暴挙を働こうとした時に反省を促すために、使用されただけです。」


 牢屋・・・というと・・・、鉄格子がはまった施設・・・だな?いや、地竜の里では太い木枠だったか・・・。

 収容された囚人から情報でも頂こうというのか・・・いや、以前の冒険の時使われたきりだと言っていたからそれはないな・・・、じゃあ一体どうして?


『カッカッカッ』「・・・・・・・・・・」

 ツバサと一緒に葛籠を持ち上げながら階段を下っていくと、どこからか話し声が聞こえてくる。

『キャッキャッ』降りていくにしたがってその声はだんだんと大きくなり、子供たちの歓声のような声も聞こえてきた。


「そうしてだな・・・飛行機という乗り物を使うと・・・、はるか遠くの国まで一気に飛んで・・・おおっと、どうやらお客様が来たようだな・・・。」

『カッカッカッ』降りた先は、通路の左右に鉄格子がはまった部屋がいくつも区切られていた。


『ふわっ・・・』突然俺たちの体の間をいくつもの影が通り過ぎて行ったような気が・・・、気のせいか?


「こっちです・・・。」

『ゴロゴロゴロッ』葛籠を降ろすと、それを引っ張ってツバサは歩きだした。


「お久しぶりです・・・、ご無沙汰しております。」

 一番奥まで行くと、ツバサはそこで深々と頭を下げた。


「ああ・・・ツバサ君か・・・、久しぶりだな・・・元気だったかい?」

 鉄格子の向こうには、白髪でしわくちゃの顔の一人の老人の姿が・・・、珍しいな・・・ゲームキャラの中には年寄りキャラもいることはいるのだが、ここまでの老人にしなくてもいいような気が・・・。


「はい・・・理由はわかりませんが、昔のメンバーが助けに来てくれました。

 これでもう安心です。」

 ツバサが笑顔で答える。


「おおそのようだな・・・以前のメンバーがそろったという事だ・・、それはさぞかし心強いだろう。

 次元の向こう側の世界の住民たちが願ったかいがあるというわけだ・・・、皆も喜んでいるようだ。


 だが、相手は強大だ・・・膨大な経験値をも付加されてやってきている。

 油断ならない相手だぞ・・・、十分に気を付けることだ。」

 おじいさんは、今回の騒動のことを知っているのか、ツバサに注意喚起をする。


 それに・・・、何か気になることを・・・


「あっあの・・・、向こうの世界の住民が願ったというのはどういう事でしょうか?

 向こうの世界のツバサが願ったことで俺たちに対して、この世界の異常事態が伝わったのではないのですか?」

 取り敢えず、まずは一つ目の疑問点を聞いてみる。



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