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クエスト完了

9 クエスト完了

 まず最初は、昨日の俺とツバサの模擬戦の様子が放送される・・・ついに最終決着などといった仰々しいテロップがつくくらいだから、模擬戦とはいえ注目度は高かったのだろうな・・・。

 まあ三四郎とのやり取りのシーンは予想通り割愛されていたから、俺とツバサは檻の中に押し込められている時間つぶしの練習試合の意味合いでとらえられていたのだろう。


 ツバサが三角飛びどころか四角飛びで俺の背後に一瞬で回り込んだかと思うと・・・、今度は俺の股下を潜り抜けて瞬時に俺の前方に回り込み強烈な頭突きを仕掛ける。


 しかし俺はその瞬間身をかがめたので頭突き同士の痛み分けで終わり俺が勝ちを拾う・・・・、その時の俺のヘッドカメラにはツバサの胸があらわになりそうな場面が映っていたはずなのだが、このシーンはカットされていた。

 本日分の映像を検閲してくれた源五郎・・・サンキュー・・・、俺がツバサの胸を見ようと身をかがめたことがまるわかりで、レイに叱られるところだった・・・。


 その後いきなり画面が切り替わる・・・、どこかの河原か・・・?と思ったら、水などどこにも流れていない。

 ただ単に広い窪地が延々続いているだけの風景だ・・・、ところどころに何か立っているのが、橋梁なのだろうか・・・、そうだこれは源五郎たちが向かった、現場作業員のやる気がないという橋の工事現場の映像だろう。


 とすると・・・7日前の時のものか・・・?と思っていたら、そこには占い巨乳美女の姿も・・・そうしておもむろにボンボンのついた大きな骨だけの扇子を広げると、天に向かって祈り始める・・・。


『ポツッ・・・ポツッ・・・ズザッザザザザザザザザザッ』するとすぐに、大粒の雨が降り始めた・・・、しかも元川であろう窪地のみに雨が降っていて、川岸に上がってしまえば晴天状態だ。

『うおー・・・雨だ雨だ・・・』『よっしゃぁー・・・工事再開するでぇー・・』『働くでぇー・・・』するとそれまでテント小屋の中でくつろいでいた河童たちが、元気に飛び出していった。


「雨が降って河童たちが元気になっただけでは、工事が再開するかどうかわからないと言われかねませんでしたので、昨日は川岸で一泊して今朝の様子も収めてきました。」

 源五郎が笑顔で解説する。


『おりゃあっ・・・』『よしこいっ』河童たちは早朝から、その部分だけ雨が降っている川の中に入り、橋の工事の建築資材を運び入れていた。


「材料を運び入れてしまえば、後は水かさが増えるのを待つだけでっせ・・・、そうすればおのずと材料は浮かび上がって支柱に乗せることができ、橋を架けることが出来まっせ・・・。」

 工事現場の代表者であろう河童が、笑顔でコメントしていた・・・。


「川の方の雨は橋の工事現場の場所だけで、恐らく500メートルほどの距離分だけ雨を降らせておる。

 それでも1週間は降り続くように祈っておいたから、それなりの水量にはなると思っておるぞ。

 そうして雨が止むころには湖の方から川の水が流れ出すはずじゃ・・・、そうすれば河童たちは急いで工事を完了させることだろう。


 今回の依頼は彼らのやる気を取り戻すことだけで、橋の工事を完了させることではなかったはずじゃな・・・。

 そうであればクエストは完了しておるはずじゃぞ・・・。」

 本日の冒険放送が終わった後、占い巨乳美女がコメントしてくれた・・・。


 そうか・・・だから戻ってくるのが遅くなったというわけだ・・・、先に川に寄って向こう側にも雨を降らせていたとは・・・、水が大量にありさえすれば河童たちは元気を取り戻すわけだから、何も湖まで戻ってそこで雨を降らせる必要性はなかったというわけだ。

 やる気を取り戻しさえすればよかったわけだからな・・・。


「あっ・・・ああ・・・・どうやらそのようだな・・・、誤解をしていたようだ・・・許してくれ。」

『ガチャガチャッ・・・ギィッ』三四郎はそういうとすぐに檻の南京錠を開錠し、扉を開けてくれた。


「クエストは完了しているのだから、君たちは自由の身だ。

 さあ冒険を続けるなり別の地へ行くなり、自由にしてくれ。


 これで君たちへの本来のクエストも発生する・・・、だがそれは下流の橋が完成してからになるがね。」

 そうして嬉しそうに笑顔で告げる・・・。


「ありがとう・・・、じゃあまずは占い師さんを送ってくるよ。

 もう夜だから泊って行ってもいいんだが・・・、やはり檻の中だと寝心地は悪いだろうからな・・・途中で野宿するさ・・・。」

 ようやく全員囚われの身から解放されたというわけだ・・・、よかった・・・。


「ああそうか・・・・、だったらすぐに客室の準備をするぞ・・・、泊まっていけばいい。」

 すると三四郎は部屋を準備してくれると言い出した。

 別にそんなつもりで行ったわけではないのだが・・・。


「いやいいさ・・・今まで囚われていたしね・・・、疑うわけではないが気が変わるというか、中央の奴らの指示が変わったりすると厄介だから、とりあえずお世話になった占い師さんは船まで送ることにするよ。

 これ以上迷惑をかけるわけにはいかないからね・・・。」


 巨乳美女の寝息が聞こえるくらいの距離で夜を過ごせるというのも、なんとも甘美な気持ちになってうれしいのだが・・、やはり檻の中では周りから見られているし、下手に興奮して恥ずかしい姿をさらすわけにもいくまい。


 それに、中央の連中は何とか理由をこじつけてでも俺たちを不適としたいようだから、なるべくその配下の者の世話にはならない方がいいだろう。

 今は俺たちのことを案じてくれている様子だが、それでも最後まで突っ張ってくれるようには到底思えないからな・・・。


「だったら、もう一度ここへ来てくれ・・・、君たちがこなすべきクエストがある。

 橋ができてからがいいが、そうでなければ今から3日以内なら間に合うだろう。」

 すれ違いざまに三四郎は小声で俺にそう告げると、そ知らぬふりをして村の奥へと歩いていった。


『タタタタタッ・・・ガチャッ』俺も知らぬふりをした方がいいだろうと解釈して、そのまま村の外に停車している中継車まで駆けていき、ドアを開ける。


「悪いが、これから東部大陸中央の海岸線に停泊している船まで戻れるかい?

 とりあえずクエストは完了とみなされたから、俺たちは晴れて自由の身だ。

 だから占い師さんを、船まで送っていきたい。」

 中にいるテレビスタッフに、申し訳ないがこの時間からの出動をお願いする。


「ああ、構いませんよ・・・、ですが、途中で野宿になりますね。」

 すぐに笑顔で了解してくれる。


「じゃあ、皆早く乗車してくれ・・・、東部大陸中央まで戻るぞ!」

 そうして皆を呼び寄せる・・・ぐずぐずしていると、本当に地竜の里で一泊することになってしまう。


「だったら、あたしにいい考えがあります。」

 すぐにツバサが前方のドライバーにルートを説明している。


 どこかに近道でもあるのだろうか・・・、道とはいっても草原や砂漠に山道を走っているので、それほど迂回しているとも思えないのだが・・・。

『ブロロロロロロロッ』山道を下っていき、途中の河原で停車する。


「本日はここで野宿となります。

 賢者のトンネルの中で寝るのもどうかと思いますし、またその先は砂漠ですから、草原のこちらの方が野宿にはいいでしょう。」


 ドライバーが賢者のトンネルの脇に駐車して、ここで野営することを告げる。

 出発が遅かったから、やむを得んな・・・。『ザッザッ・・・カンカンッ』すぐにツバサたちのためのテントを設営する。

 さて弱ったぞ・・・、テントは少し大きめだが2人用だ・・・。


「レイ・・・今日はパパと一緒に見張り番をしよう・・・、いいね?」

 すぐにレイを呼び寄せる・・・、テントは占い巨乳美女に使っていただかなければならないため、いつものようにツバサとレイが組んでしまうと、寝るときにどうしても一人余ってしまうのだ。


「パパも最近は寝る前に軽い運動をしているんだが、レイに少し運動の成果を見てもらいたいと思うんだ・・・、いいかな?」


「うん・・いいけど・・・?」

 真の理由のわからないレイが小首をかしげる・・・。


「外で寝るのはあたしでいいですよ・・・。

 どうせトレーニングを、みっちりこれからやるつもりですから。」

 するとツバサがやってきて、自分はどうせトレーニングでほとんど寝ないからいいのだと言い出す。


 仕方がないのでトレーニング禁止令を出す・・・、1日2時間以上トレーニングをしたら、もう2度と手合わせをしてやらないと脅すことにした。

 これは効果てきめんで、しょんぼりと肩を落として、すごすごとテントに入って仮眠についた。


 強い相手と組手とか模擬戦をしたいのだろうが、レイは魔法使いだし源五郎の武器は弓矢だ。

 格闘家として戦うには相手は俺しかいないのだ・・・、選択肢がないわけだ。

 これも体への負担を最小限にする気づかいなのだと、理解してくれるとありがたいのだが・・・。


「わしはテントなどいらんぞ・・・、青空の下で寝るのが一番だ。

 ここへ来る途中も野原でテントなしで寝ると言っていたのに、無理やりテントに押し込められたがな・・・。」


 最後に一番青空の下が似合わなそうな人物が現れた・・・、この白い肌は日焼けなどさせられないだろうに。

 源五郎たちも手を焼いたのだろうな・・・。


「いえいえ・・・ただでも野宿は申し訳ないのに、せめてテントで寝てください。

 周りで寝る俺たちが緊張してしまいますから、お願いいたします。」

 そういって深々と頭を下げる。


 これは本心からだ・・・、彼女が俺たちと一緒に外で寝たなら、気になって気になって5分に一回はその様子を見ようとしてしまうだろう・・・実際は表立ってする勇気がないから、横目で見る程度ではあろうが・・・。

 寝返りなど打とうものならもう大変だ・・・、寝間着の胸のはだけ具合など想像するだけでも鼻血が出そうになってしまうだろう。


 そんな興奮している姿を、とても人には見せられない・・・ましてや一緒に娘がいるのだ・・・、そんな人間性のテストのようなことは堪忍してほしい。


「ううむ・・・そこまで言うのであればテントで寝ることにするが・・・、わしは別に寝相は悪くもないし、いびきなどかいたりはしないのじゃぞ・・・。」

 占い巨乳美女は、俺の気づかいに別な解釈をしているのか、少し申し訳なさそうに頭を下げ、テントに入っていった。


「じゃあ、まずは交代でランニングして体を温めるか・・・、その後柔軟をして・・・。」


 どうせ魔物たちが襲ってくることはないだろうから、交代制の見張り番などといっても、どちらかというと筋トレの時間になってしまう。

 軽く体をほぐすようレイと交代で走ることにして、その後柔軟体操だ。


 とはいっても、トレーニングを始めて気づいたのだが、100mダッシュなど一瞬で走り切ってしまうし、この体は経験値が最高値を超えているせいか、人間離れどころか超人離れといっていいくらいの力を発揮する。

 恐らくレイもちょっと体を動かすと、そのすさまじいばかりの運動能力が面白くて、毎日トレーニングを楽しんでいるのではないかと考えている。



「じゃあ、出発しよう。」

 翌朝、弁当の朝食を済ませた後、テントをたたんで出発する。

 賢者のトンネルに到着すると、5番目の扉から出て隣の4番目の扉を源五郎が開けようとする。


「あっ、待ってください、正面の扉へ向かいましょう。」

 すると突然ツバサが、鍵のかかっていない正面側の扉へ向かうと言い出す。

 そこは、出発点ともいえる始まりの村の西の賢者のトンネルだ・・・。


「ああそうか・・・そうだな、ついでという事なんだろうが、まずは占い師さんを送り届けた方がよくはないのかな?」

 堤の魔物との戦いで源五郎が瀕死の重傷を負ってしまい、復活の木の葉を1枚使ってしまったことを思い出した俺は、早々にとりに行くのだろうとすぐに理解をした。


「はいそうですよ・・・、占い師さんを送り届けます。さあ、行きましょう・・・。」

 ツバサが笑顔で答える・・・、だがしかし・・・船は東部大陸中央にいるのだぞ・・・、もしかするとツバサが船を離れるときに、ファブの港へ向かうよう指示をしていたのだろうか?


 いや、そんなはずはないな・・・、源五郎とレイたちが占い巨乳美女を迎えに行ったわけだからな・・・、だったら源五郎がお願いしておいたのかな?

 よくはわからんがレイに指示を出して扉が並んでいる側と反対側中央にある扉を開けさせる。


『ガチャッ』レイと源五郎が乗り込むと出発だ。

 スロープを何度も折り返して昇っていき、賢者のトンネルを出ると一路東へと向かう。


「そういえば・・・いつも船に乗っている設定なのですよね・・・、今回のように陸路を旅することは初めてですか?」

 道中暇なので、占い巨乳美女にいろいろ聞いてみることにする。


「いや・・・、わしはこのゲームの世界の各種設定ができた時点で全ての地域を順に回り、ダンジョンも全て確認したから、中央諸島のことも知っておるぞ・・・。」

 すると占い巨乳美女は平然と答えを返す。


「へえ・・・・、そうするとあなたもこのゲームの製作者側の方なのですか?

 誰かの分身というわけでしょうか?」


 ゲームをアシストする側のキャラクターだから、ツバサが言っていたようにロボットのような設定をされているだけと思っていたのに、少し意外だった・・・。


「ああ・・・制作者・・・ではないが、制作に関係するというか・・・、そうじゃな・・・一度通信異常でこの世界が次元を超えて実体化したときに地球では状況説明会が行われたのだが、わしはその中で説明者側の列の中にいたのじゃぞ・・・。


 その後、通信が回復してこちら側とコンタクトをとったから、その時の記憶も持って居る。」

 占い巨乳美女は笑顔で答える・・・ううむそうなのか・・・、確かに大空翔たちのほかに、プログラマーの集団らしき若い男女が壇上後方にいたものな・・・、その中の1人というわけか・・・。



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