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クエストの地へ

4 クエストの地へ

「じゃあ、今晩は申し訳ないが4人ともにこの牢の中で過ごしてもらって、明日の朝いちばんで2人には出発していただくことになるよ・・・。

 食事もちゃんと出すしベッドも4つある・・・といっても屋根はないがね・・・、まあ雨の季節ではないから大丈夫だと思っている。」


 三四郎は俺とツバサもレイたちと同じ檻に入れると、ついでに小型のテレビを手渡してくれた。

 支給された弁当を食べながら、本日分の冒険放送を眺める。

 会話部分など結構編集しているので、レイと源五郎には実際の状況を場面ごとに説明してやる。


 ついでに占い巨乳美女のこと(放送は不可として流していない)と、アドバイスとして教えてもらったタイヤとガソリンと水のことも説明しておく。

 そうして歯を磨いてからベッドで就寝・・・野宿するより快適だ・・・、といってもベッドに横になったとたんに、翌朝になっているのだが・・・。


「今度は君たちが冒険に向かってくれ・・・ここから山を下りて川沿いを下っていくと・・・、今は干上がった川だが、そこに橋を架ける工事を行っている場所がある。

 だが、何ケ月経っても一向に橋が完成しない・・・、どうにもやる気が出ない様子だ。


 実をいうと工事が遅延しているおかげで、湖の水が堰き止めていた堤を越えそうになっていたもので、本当は困っていたところだったんだ。

 なにせせっかく途中まで作った橋梁などは補強工事もされていないから、今川の水を戻してしまうと、そのまま流されてしまいかねない。


 早急に橋を完成させる必要性があったわけだが、村の者が催促しに行っても、やっているやっているの返事だけで進んでいく様子が見られなかった。

 工事を請け負ったやつらは気性が荒く力もあるので、村の者たちでは気迫で負けてしまい交渉も難航していた。


 俺が行きたいところだったんだが・・・、俺にはやってくる冒険者をダンジョンまで連れていくという役割があったものだから、行くに行けないでいたところだが、俺が行っておくべきだったと後悔しているよ。

 だが君たち冒険者がうまいタイミングで堤を壊し、そうしてこの地にやってきたわけだ。


 そこで君たちが出向いて行って彼らにやる気を取り戻させてくれ・・・、堤の件は・・・実をいうと助かったという気持ちもあるのだ・・・。」

 三四郎が源五郎たちに、考え考えクエスト内容を告げる・・・。


「はあ・・・工事関係者たちのやる気を出させるわけですね・・・、やる気がなかったのは川が干上がる前からですか・・・?」

 とてもクエストとは思えない依頼だが、源五郎は引き受けるつもりなのか詳細を確認しているようだ。


「いや・・・川が干上がる前は張り切って工事準備を進めていた・・対岸が見えないくらい広い川幅で、橋がなければ手漕ぎのボートで半日以上かけてようやく渡れるくらいのところだった。


 そこへ橋を架ける計画が出来上がり、地域住民から寄付金を募り工事が開始されたのだが・・・、とっくに寄付金は底をついたにもかかわらず、橋の形さえ見えておらん・・・橋梁がいくつか川の中に見えるだけだ・・・。


 当たり前のことだが川の水があるままでは橋梁など作れないから、川を干上がらせる必要性があったわけだが、いざ工事を始めたとたんにペースがガクッと落ちてしまったのだ。

 その原因を探り、彼らにやる気を起こさせてほしい。」

『ガチャッ』三四郎が檻のカギを開け、源五郎たちを表に出しながら、今度は俺とツバサに檻の中に残るよう促す。


「分かりました・・・彼らのやる気が出るよう、何とか努力してみます。」

 源五郎は意外と自信があるのか、平然とクエストを引き受けた・・・、おいおい・・・大丈夫なのか?


「じゃあ期限は7日後だ・・・、まあ工事現場までは車だと半日もかからんはずだから・・・、意外と簡単に終わってしまうかもしれんし、こんなに長くは必要ないのだろうがな・・・。」

 三四郎が余裕の笑みを浮かべる。


「じゃあねえ・・・、待っていてね・・・。」

 レイもうれしそうに、檻の外で手を振ってくれる。


「大丈夫です・・・きっとクエストを完了させて戻ってきます。」

 源五郎ひとり真顔で少し緊張気味だ・・・、まあ、これがあるべき姿だろう。


「じゃあ現場までは魔物たちが多く襲ってくる可能性があるので、俺が一緒について行ってやる。」

 三四郎が同行を申し出てきた。


 どうやら東部大陸北部では魔物たちは出現する様子だ・・・、中央諸島も東部大陸中央もダンジョン以外では魔物などほとんどいなかったのにな・・・。

 それとも半魚人たちの村の奥の洞窟では魔物たちが生息していたように、地域ごとで差があるのだろうか?


「いや・・・それはしなくても大丈夫だ・・・、レイも源五郎も高い経験値を持っているから、簡単にやられてしまうようなことはない。

 君が一緒に行くというのが筋書ならば・・・・、おそらく君は今は無敵モードだろう。


 それだったらそのモードを切らないように、君はこの村から離れない方が無難だ・・・、そうすれば君がいれば村は守れる・・・。」

 気持ちはありがたいのだが、すぐに三四郎を引き留める。


「おおそうか・・・以前の冒険の時にも俺が無敵モードとか言われたような気がするが・・・、それはどういう事なんだい?

 その時も同行を断られたんだが・・・、一緒に行くと都合が悪いのかい?」


 三四郎が不思議そうに首をかしげる・・・、以前の冒険の時にも同じような筋書きがあったという事なのだろうな・・・。


 彼は俺たちと違い誰かの分身というわけではないのだろう・・・、プログラムというかAIと言えばいいのか・・・、だから設定として堤の魔物たちが堤を守っているときの状態が無敵であることは知っていても、自分がそうなっているかどうかの判断はつかないのだろう。


 まあ、まだ魔物と戦っているわけではないし、確かめようもなかっただろうしな。

 そうしてそれが筋書を進めていけば消えてしまうという事も、自分のことだけに理解できていないのだろう。


「そうだな・・・詳しく説明するのは難しいところだが・・・、まあ、今の戦闘状態を維持するには一緒に行ってはいけないという事だ。


 一度行ってしまうと、今より弱くなってしまう可能性があるから、何かの時に村を守れなくなるかもしれない。

 だから、行かない方がいい。」

 あくまでも推測だが・・・行かない方がいい。


「そうですね・・・僕たちのことは心配はいりませんから、三四郎さんは引き続きこの地を守ってください。

 じゃあ、行こうか・・・。」

『ガチャッ・・・・ブロロロロロロロッ』レイと源五郎が中継車に乗り込み、地竜の里を後にしていった。


「じゃあ・・・俺たちは、彼らが期日までに戻ってくることを信じて待つとしようか・・・。」

 太い木枠を格子状に組み上げた檻は、恐らく最大経験値の俺の力でも簡単には壊せないだろう。


 当然のことだが、中に入るときに冒険者の袋は取りあげられたから、素手でこんなもの壊すだけの自信はない。

 武器や防具も一緒に没収されたが、源五郎とレイには先に宝剣をこっそりと手渡していたので助かった。


 下は地面だが・・・、太い木枠は地中深くまで突き刺さっていると想定され、少しばかり地面を掘っても抜け出すことは難しいだろう・・・、更に四方は素通しで村の中から見通されているのだ。

 源五郎たちも逃げようとすることはあきらめただろうな・・・、何より逃げるには周囲を守っている竜人たちと戦うことになってしまう。


 できる事なら彼らを傷つけることは避けたい・・・、格子の隙間から差し込む日差しに目を細めながら、源五郎たちが無事帰ってくるよう祈るのみだ・・・。

 とはいっても・・・工事している奴らにやる気を起こさせるだなんて・・・、本当にクエストといえるのか?


 しかも俺たちがしでかしたことは・・・、どちらかというと工事が遅れて取り返しがつかないことになるところを、助けたという意味合いがあるのではないのか?

 それを感謝されこそすれ・・・犯罪者のような扱いとは・・・、いったいどういう事なんだ?



『ブロロロロロロロッ』「この先に何か見えますよ・・・。」

 しばらく走った後、源五郎たちを乗せた中継車のドライバーが後部席に向けて声をかける。


「どれどれ・・・?」

 すぐにレイが前席へ駆け寄ってきて前方を眺めると、そこにはいくつものテント小屋が作られていた。


「うーん・・・なんだか工事している様子はなさそうだね・・・、テントには人影がちらほら見えるが、川岸には全く見えないから・・・、お昼休み中かな?」

 源五郎はそういいながら、中継車内の丸時計を眺める・・・。


「まだ、11時ですよね・・・。」

 半日の距離とは言っていたが、早朝に出発してかなりスピードを出していたから、予定よりずいぶんと早く到着したようだ。


『キキキィッ・・・ガッシャンッ』『ガチャッ』テント小屋のすぐわきに中継車が停まり、源五郎とレイが中継車から降り立つ。


「あっ、カッパさんだぁー・・・、わーいわーい。」

 レイが中継車を降りるなり、満面の笑顔を浮かべながらテントの方へと走っていく。


 そう、テントの中の人影は緑色をしていた・・・甲羅を背負って頭のてっぺんがツルツル・・・、伝説の河童そのものの姿をしていた。


「わぁー・・・カッパさん・・・、本当に甲羅を背負っているんだぁ・・・重くない?

 あと・・・頭のてっぺんのお皿はピカピカ光るって本当?」


 レイは河童に出会えたのがよほどうれしいのか、テントの中のソファでくつろいでいる河童のもとへ駆けていき、笑顔で話しかける。


「なんじゃあー・・・、おどりゃあー河童なめとんのかぁ・・・?」

『バッチィーンッ』すると声をかけられた河童は、よほど虫の居所が悪かったのか、すぐに起き上がりレイの頬においきりビンタをかました。


「なっ・・・!」

 これには後ろをゆっくりと歩いていた源五郎も驚き、すぐに弓を袋から出して装備すると、ダッシュでテント小屋へと駆けていった。


「いたたたたたたっ・・・」


「大丈夫?」

 ところがすぐに右手をおさえてうずくまったのは、レイの頬を思いきり叩いたはずの河童の方で、レイは逆に痛がっている河童を心配そうに眺めている。


「うッ・・腕の骨が・・・・」

 河童の手首はよほど強い衝撃を受けたのか、あらぬ方向へ曲がっているように見える。


「そうだ・・・、あたしは回復魔法が使えるんだよ・・・えっとねえ、全回復(ゼンカイ)!」


「あれっ・・・痛くねえ・・・、これ・・・姉ちゃんが治してくれたんか?

 いや・・・そんなはずはねえ・・・、いっ・・いってえ何しに来やがった!

 ここは、俺たちの仕事場だ!用のないもんはとっととけえんな!」


 レイが回復魔法を唱えた途端にカッパの右手はまっすぐに戻り痛みも消えた様子だが、それでも河童の機嫌は治らないようだ。


「僕たちは、竜人の依頼でここへきました。

 この川に橋を架ける計画があるそうなんですが、工事が一向に進んでいかないので、進捗を早めるよう依頼しに参ったものです。」

 源五郎が駆けてきて、先ほどの河童に告げる。


「ああん?この工事は俺たちが請け負った工事だ!しかも期限も決められちゃあいねえ!

 だから、俺たちが工事を進めようが遅らせようが、俺たちの勝手というわけだ!

 かえったら・・・、地竜の里の連中にそう言ってやりな!」


 そういってから応対していた河童は、向こう向きになって再びソファに腰かけた。

 どうやら取り付くしまもない様子だ・・・。


「それはそうと・・・、さっきあの人にかなり強く殴られたようだけど、大丈夫かい?

 まさか攻撃されるとは思っていなかったから、守れなくてごめん。」

 交渉は難航しそうなので、とりあえずレイの身を気遣う。


「うん、大丈夫だよ・・・なぐられたというより、なぜられた感じかな・・・全然痛くなかったし・・・、それなのにカッパさんはすごく痛そうに曲がった右手を見ながら涙を浮かべていた・・・。

 かわいそうだから、魔法で治してあげたんだよ・・・。」


 レイは少し神妙な顔つきで答える・・・、源五郎が念のためにレイの左ほほをじっくりと観察するが、赤くなってもいないし、ミミズばれなどもなさそうだ・・・本当に何ともない様子で少しほっとした。


「レイちゃんは河童に対してすごく優しく接してあげたというのに・・・、対する河童の反応はひどいね。

 何が機嫌を悪くしているんだろうね・・・、それを突き止めれば工事が遅れている原因も分かるかもしれないな。」

 源五郎はそういいながら、テント小屋の中を眺める。


 十メートル四方はあるだろうか、地面に打ち付けたポールを土台にテント生地を乗せた、屋根だけのテント小屋がいくつも河原に並んでいるが、どのテント小屋も満員の様子で、多くの河童たちがテント内に置かれた休憩用のソファに座ってくつろいでいる。

 つまり、誰一人工事現場で働いている者はいないという事のようだ・・・一体どうして?


「カッパさんは・・・たぶん頭のお皿が乾いているから機嫌が悪いんだと思うよ。

 完全にお皿が乾くと、お皿が割れて死んでしまうの・・・、だから日陰で休んでいるんだよ。」

 すると突然レイが河童に関して豆知識を披露する・・・。



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