ガリパーエックス
2 ガリパーエックス
「これが宝箱だぁ・・・・はやいとこ中身をもって、ここから出て行ってくれ・・・。」
十四朗が村についた早々、宝箱を運んできた。
どうやら俺たちにこの地から少しでも早く立ち去ってほしい様子だ・・・、海竜が倒されたことで、堤を守っていた魔物からこの地を守護する存在が消えたことを気にしているのだろう。
まあ・・・堤の魔物はもし現れるとすれば無敵のはずだし、そうでないとしても、海竜の十倍から数十倍の経験値のはずだから、海竜がいてもいなくても実際は変わらないのだがね・・、まあ、そんなことは言わないでおきましょう・・・。
「じゃあ・・・俺たちは帰るぞ・・・、もし堤の魔物が来たら俺たちは東部大陸の北部へ向かったといっても構わないからな・・・、そういえばうまくすれば許してもらえるかもしれんぞ。」
魔物が来るわけはないのだが、脅し代わりに十四朗に告げておく。
「こっちです。」
ツバサに案内されて、来た時に気が付いた場所から反対方向へ進み、洞窟の岩壁に作られた階段をひたすら上っていく。
「おおこれが手に入れた宝剣か・・・、こちらは疾風の剣だな・・・、こっちの剣は慈恵の剣だ。
疾風の剣は持つものが繰り出す攻撃のスピードを上げる効果がある・・・、一度の攻撃で2撃3撃を繰り出せるといった感じだな。
慈恵の剣は・・・守護系の魔法効果をより高める・・・つまり、2倍3倍の効果を生むものだな・・・。
回復魔法だけではなく、魔導に対しても効果があるはずじゃ・・・。
お主たちの今回の冒険は、エックスガリパーを探す旅というわけだな・・・。」
占い巨乳美女が、俺たちが持ち込んだ宝剣を眺めながら、今回の冒険の趣旨を説明してくれる。
半魚人たちの村から戻り鋼鉄の鎧はすぐに防具屋に修復に出したのだが、東部大陸に戻るまで1日近くかかるため、本日は船中泊となりその前に宝剣の鑑定をお願いに来たのだ。
なにせ船に戻った時には夜が明けていたようだ。
「エクス○リバーですか?あの伝説の宝剣・・・、岩に突き刺さった剣を抜くという・・・。」
「うん???何を言っておる?エックスガリパーじゃ・・・、ガリパーを知らんのか?」
占い巨乳美女は、ふいに近寄ってきて真顔で俺の顔をまじまじと何度も眺める・・・、だから・・・近いって・・・ドキドキして本当に心臓に悪い・・・。
「が・・・ガリパー・・・ですか・・・?知りません・・・。」
ようやく答える・・・、ううん・・・・いいにおい・・・。
「そうか・・・お主は相変わらず無知じゃのう・・・、10年も経てばそれなりに知識も・・・、と言っていても始まらぬか・・・まあ仕方がない、教えてやろう。
ガリパーというのは伝説の刀工じゃ・・・、実用的な剣も多数残したが、その剣を持つだけで付加効果のあるいわゆる宝剣じゃな・・・、それを10本も作成したと言われておる。
中でも10本目が最高傑作と言われておってな・・・、それをエックスガリパーという・・・まあガリパーエックスと称する場合もあるがな・・・。」
占い巨乳美女は仕方なさそうにため息をつきながら、ゆっくりと説明してくれる・・・、ううむ・・・態度は悪いのだが・・・巨乳美女がやることなので、ちっとも腹が立たない・・・。
そうか・・・ガリパーという刀工が作った10本目の宝剣というわけだな・・・、だからXというわけだ。
「あっああそうですか・・・、だったら紛らわしいので、ガリパーエックスと呼ぶ事にしましょう。
じゃあ、その10本目の宝剣を求めての旅という事になりそうですね?」
呼び名なのだから、ちょっとくらい譲歩していただこう・・・。
「おお・・・まあ、お主がそういうならそう呼ぶことにしてもかまわんのだがな・・・。
先ほど申した通り、その宝剣を持っているだけでその付加効果を得られる。
つまり・・・敵はそれだけ強力という事だ・・・、そのことは覚悟しておいた方がよいぞ・・・。」
占い巨乳美女は、眉間にしわを寄せながら厳しい目つきで教えてくれる。
それだけ強い・・・まあ、俺たちだって最高経験値で来ているわけだからな・・・恐ろしく強いわけだが、そのことを彼女は知らないのだろうか・・・。
なにせ半魚人の村を守っていた海竜に食われかけても、俺の体には傷ひとつつかなかったのだからな。
だが、堤を守っていた魔物たちと戦った時に、やけに剣の振りがスムーズというか素早く矢継ぎ早に、しかも的確にクリーンヒットしていたのは、疾風の宝剣とやらの効能なのかもしれないな。
1撃放ったつもりが、数撃のダメージを与えていたものな・・。
「ああそうですか・・・、何にしても今回の冒険の趣旨が分かったのは収穫ですね。
それと、宝剣を持つことによって付加効果が得られるという事が分かったことも、今後の戦いを有利に進められます。
宝剣を持っているものだけに効果があるのですか?それともチーム全員に効果が?」
宝剣の効果についてもう少し聞いておこう。
「さすがにチーム全員というわけにはいかんだろう・・・、宝剣を持っているものに効果が付与されるはずじゃ。
しかし直接持っていない場合でも、持っているものと体を密着させていれば、その恩恵にあずかれるとは聞いておるがな・・・。
何にしても伝説の宝剣じゃ・・・その効果や詳細に関しては、持っているものが直接感じ取っていくしかないのだろうな・・・。」
占い巨乳美女は小さく首を振りながら答える。
「そうですか・・・疾風の剣と慈恵の剣とおっしゃいましたが、そのほかにはどのような宝剣があるのですか?」
機能を聞いておけば、その付加能力が特に役立つものに宝剣を持たせるよう配分できるはずだ。
「伝説の宝剣の付加効果は・・・疾寒熱恵力翔連軟硬と伝えられておる。
実をいうと9本分までしか伝わっておらず、肝心のガリパーエックスに関しては効果が分かっておらんのじゃ。」
占い巨乳美女は眉をひそめながら、少しトーンを下げた小声で答える。
「はあ・・・、しつかんねつ・・・なんこう・・・ですか・・・。
なんだか家電製品か、あるいはぬり薬のような名前ですね・・・。」
付加効果とやらが、なんともぴんと来ない・・・。
「お主は相変わらず飲み込みが悪いのう・・・仕方がない、宝剣を手に入れるたびに見せに来るがよかろう・・・、その時にわかる範囲で効能も説明してやる。
それと・・・、準備しておいた方がいいものがあるぞ・・・。」
自分が聞いたことに答えてもらったのだが、何とも反応できずにいたらあきれられたのか、またもやため息交じりに告げられた・・・、まあそうだな・・・いちいちお伺いに来た方がよさそうだ・・・。
それとメモ用紙に走り書きしたものを頂いた・・・。
「ありがとうございました。」
深々と頭を下げると占い部屋を後にし、操舵室に出向く。
「明日の早朝には、東部大陸中央の海岸線に到着するはずだ。」
船長が、俺とツバサが入ってきたのを認めて報告してくれる。
「目的地は東部大陸北部なんだから、直接そっちの海岸線を目指せないのかい?」
行きは帆船がまだ完全に出来上がっていなかったから仕方がなかったにしても、もう船としての機能は果たしているのだから、直接北部へ行ってもらおう・・・なにせ賢者のトンネルまで東部大陸中央の海岸線から2日もかかるのだから。
「いや・・・東部大陸と北部大陸の接近している箇所には多くの岩礁があって、船はそこを通ることはできない。
そのため北部大陸西部側を大きく迂回して回ることになってしまうから、恐らく3ケ月くらいはかかるのではないかと思うがそれでもいいのかい?」
船長が、少し言いづらそうに説明してくれる。
「ええっそうなのかい?
あの大渦は東部大陸の西側のかなり沖合にあるとツバサの手書きの地図でおおよその位置関係を掴んだんだが、あの距離を1日くらいで航行しているだろ?
だったら、迂回したところで数日くらいなんじゃ・・・、どのみち期日には間に合わないから今回は無理だがね。」
今回は仕方がないにしても、どうして北部大陸を迂回すると何十倍もの日数がかかってしまうのだ?
「いや・・・距離から考えて、この帆船の最高スピードでもそれくらいはかかるよ。
大渦はご存知の通り海流のぶつかり合いによって生じている。
東部大陸からの海流と中央諸島からの海流が、あの大渦のところで激しくぶつかり合っているわけだ。
その海流の流れを何度も航海するうちに我々も把握することが出来たから、前回の冒険の旅からこの海域に関しては格段に航海術が向上したわけだ。
東部大陸から大渦へ向かうときは東部大陸からの海流に乗って移動し、東部大陸へ戻る時には中央諸島からの海流に乗って戻るわけだね。
これにより、3倍ほどの速度で航海ができ、片道1日かからずに到着できるようになった。」
船長が自慢げに胸を張った。
「そうか・・・3日かかる距離をたった1日でって・・・?今この船に乗ってから何日目かわかるかい?」
「ああ・・・二人が乗船されてから今日で3日目だよ・・・。」
船長は、何のことかわからずに首を傾けながら答える。
げげっ・・・、約束は7日間だからすでに明後日が期限だ・・・、これはまずいことになった・・・。
「分かったありがとう、じゃあ東部大陸中央の海岸線は明日の朝には到着するんだね?」
「ああ、風向きもいいから早朝には到着するよ。」
「じゃあ、お願いします。
俺たちは中継車で待っているから、到着次第後部ハッチを開けてくれ。」
船長にお願いしてから車庫へ向かう。
「明後日までに、地竜の村まで戻らなければならない・・・、何とかなりそうかい?」
中継車に乗り込むと、すぐにドライバーに確認する。
「明日の早朝到着するのであれば、すぐに出発して夜通し砂漠を縦断すれば何とかなりますよ。」
ドライバーが頼もしい一言を返してくれる。
来た時は砂漠で2泊したのだが出発も遅かったし、また交代で運転していただけば、恐らく明後日の昼か夕方には到着可能だろう・・・なんの邪魔も発生しなければではあるが・・・。
「それはそうと、最近の放送内容はどうなっている?」
「はい・・・海竜の村での映像に関しては検閲されていないため昨晩は放送できず、大渦に巻き込まれるところで放送は終わっています。
この時点までは戦闘シーンもなく激しい動きもありませんでしたから・・・、検閲していなくても大丈夫であろうと・・・、なにせ、それまでは我々と一緒にいましたからね・・・、問題のシーンがあれば何か言ってからいったはずと思いまして・・。」
いつものテレビスタッフが少し不安そうに上目遣いで答える。
「ああそうか・・・、だったら今日の放送分の映像を確認しておこう。」
そういって、半魚人の村での内容を確認する。
ありがたい・・・、時間を稼げるぞ・・・。
時間的にはまる1日程度だったろうが、何せダンジョン内はほぼかけっこ状態だったので、内容は濃い。
特にツバサカメラでは、次々と襲い掛かってくる魔物たちの姿が映し出され、ツバサがほぼ瞬殺していく様子が克明に映し出されていた。
あまりにも早すぎるので、そのままでは何が起こっているのかわからないが、スロー再生なら倒す魔物の姿も何とか認識できるし、倒すところもギリギリ見えそうだ・・・。
「とりあえず、本日分はここまでにしておいてくれ。」
十四朗に決闘を申し込まれたところまでを本日分にしておいた。
こうしておけば、まだ俺たちは半魚人たちの村にいることになるから、明日東部大陸を縦断するときに邪魔は入りにくいだろう。
「じゃあ俺たちは部屋に行って休むから、君たちも好きな部屋で休むといい。」
船長に聞いたところによると、船の空き部屋はどれを使ってもいいらしいので、ツバサに聞いて以前俺たちが使っていた客室を今回もそれぞれ振り分けることにした。
干物になっていた帆船ではあるが、大きさといい内装と言い、以前使っていたものと全く同じだそうだ。
そうして就寝する・・・、今回はこれといった戦闘も謎解きもなかったのだが、なんだか疲れた・・・。
翌朝・・・というか、割り当てられた部屋のドアを開けたところまでは覚えているのだが、次の瞬間もう朝になって廊下に立っていた。
腹は満たされているし疲れも取れてはいるのだが、なんだか損した気分だ。
鋼鉄の鎧の修復は1日で完了していたようで、穴だらけだった鎧も、どこに穴が開いていたのかわからないくらいきれいに修復されていた。
ツバサは光の爪を研ぎに出していたようで、俺も念のために研ぎに出した鋼鉄の剣を同時に受け取る。
「ツバサも・・・、昨日は部屋のドアを開けたとたんに朝になっていたパターンかい?
さすがに船の中じゃあトレーニングはできなかっただろ?」
同じ境遇とは思うが念のために確認しておく。
「いえ・・・昨日は部屋に入る前に軽くトレーニングルームで汗をかいて、従業員用のシャワーでその汗を流してから食堂で昨日の冒険放送を見ながら食事をして寝ましたけど・・・?」
ツバサが不思議そうな顔をして見上げる・・・ああ、やはりそうか・・・、宿と同じで宿泊手続きをしてはダメというわけね。
船の場合は自分の部屋に入ろうとしたら、もう翌朝に切り替わってしまうというわけだ。
俺だってトレーニングしたり食事もしたいと思っていたのにな・・・、ちょっと悔しい。
「そうか・・・トレーニングルームなんてのがあるのかい?」
「ええ・・・2回目の冒険の時に器具をあたしたちで揃えて、空き部屋を1室使わせてもらっていたんです。
サグルさんは車から降りてすぐに部屋に向かってしまったし、自信もなかったので誘いませんでしたけど、昨晩確認に行ったら同じ部屋に器具がそのまま置いてありました。」
ツバサが笑顔で教えてくれた。
ううむ、貴重な情報をありがとう。
『ギギギギギギギギッ・・・ガッシャーンッ』そんな話をしながら中継車に乗り込むと、車庫の後方のゲートが開いた・・・海岸に到着したのだろう。
『ブロロロロロロッ』早速ゲートから上陸して、中継車は砂漠を走り出した。




