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半魚人の村

14 半魚人たちの村

「ふむ・・・行き先をな・・・、本来冒険者の向かうべき地を直接アドバイスすることは禁じられておるのだが・・・、今回の目的地は通常のクエストとは異なるようじゃの・・・。

 よかろう特別に占ってしんぜよう・・・お主たちの行き先は・・・。」


 占い巨乳美女は大きな一枚板の重厚なデスクの席に着くと、おもむろに子供の頭ほどもありそうな大きな水晶玉をのぞき込む。


「おおそうか・・・お主も知っているはずじゃな・・・、探している者たちと初めで出会った場所だ・・・。

 そこにそいつらはいるようじゃ・・・わかるな?」

 占い巨乳美女は目線をこちらに向ける・・・、ううむ・・・見つめられると心臓がどきどきして、息が苦しくなるような・・・。


 だが奴らはせっかく海まで出られたというのに、またあの砂漠の真ん中へと戻ったという事なのか?

 初めて出会った場所というのだから、もちろん奴らの元いた村というわけではあるまい・・・、あそこへは十四朗たちを送っていったわけだからな。


 しかしまあ、なにを好んで炎天下の砂漠へ行くかね・・・、しかも今回は屋根代わりに使っていた、干物の帆船もないわけだからな・・・、灼熱の直射日光をもろに浴びるわけだ・・・。


「はいっ、あの渦の中ですね?ありがとうございます。」

 ところがツバサは嬉しそうに笑顔で答えると、深々と頭を下げる。


 あれっ・・・奴らと出会ったのは砂漠の真ん中じゃなかったのか・・・?ああそうか、以前の冒険の時に色々と邪魔をされたといっていたな・・・、その時に出会った場所という事か・・・。


「行きましょう。」

 ツバサに再度引っ張られ、通路を通り今度は階段を上がっていき、操舵室までやってきた。


「すいません、ここから南西へ向かうと大きな渦があります。

 その渦の中へ突っ込んでください。」


 すぐに船長に、とんでもないことを告げる。

 渦に突っ込むだって?小さな渦ならなんともないだろうが・・・、大きな渦なら船ごと木っ端みじんだぞ。


「ああ・・・半魚人たちの棲み処の渦だね・・・、久しく行っていなかったが・・・まだあの場所にあるのかな?

 ちょうど海流に乗って西向きの航路をとっていたところだ、行ってみるとするか。」

 ところが船長は、そんな無茶な要望にも笑顔で答えてくれる。

 ううむ・・・懐が深い・・・。



「この先に大きな渦が見えます。」

 辺りが薄暗くなってしばらく経ってから、見張り台からの連絡だろう、中継車に戻っていると車庫に備えられたスピーカーに前方の様子が伝えられる。


「じゃあ、行きましょう。」

 再びツバサに連れられて、今度は甲板へ向かう。


「おおっ・・・かなり大きな渦じゃないか・・・、大丈夫なのか?」


 この帆船も車も詰めるしかなり大きいのだが、それよりも十倍は大きいだろう・・・、更にその流れの速さと言ったら・・・、洗濯機の渦じゃないけどこんな中に入って行ったら、それこそ・・・と思うのだが船は平然と進んでいく・・・、やがて渦に巻き込まれぐるぐると回転し・・・。



『ピチャーンピチャーンッ』ふと気が付くと、ひんやりとした岩肌に横たわっている自分がいた。

 遥か高い天井部分から垂れ落ちるしずくの音で目が覚めたようだ・・・、どこだ・・ここは?


 はっ・・・ツバサは・・・?そう思って辺りを見回すと、右手方向へ大きな矢印が描かれている。

 恐らくツバサがその辺の小石を使って、地面の岩肌に書き記しておいたのだろう・・・、そのまま歩いていくと少し先に人影が・・・、そっと近づいていくとやはりツバサだった。


「どうしたんだい?」

 恐らくずいぶん前に気が付いて周囲をうかがっていたのだろう・・・1mくらいの高さの岩陰で身を低くして、はるか向こうの明るい方を覗くようにしているツバサに声をかける。


「シッ・・・静かにお願いします・・・ここでは小さな物音も、反響して大きくなりますから・・・。」

 ツバサがすぐに唇に人差し指を当てて、音を立てないよう注意を促す。


 ああそうか・・・誰かを見張っているわけだな・・・どれどれ?

 ツバサがのぞいている方向を注意深く目を凝らしてのぞき込むと・・・、そこには小さな影が2つ。


「どうしただ十四朗?あいつらを探し出すだなんて言って村さ出てきて・・・、あいつらだって馬鹿じゃないはずだ・・・、今頃オラたちに騙されたことに気が付いて、怒っているはずだぁ・・・。

 それなのに、どうしてわざわざあいつらに会いに行かなければ、なんねえんだぁ?」


「そんただこといったって・・・、せっかく手に入れた宝箱・・・おらたちじゃあ開けらんねえべさぁ・・・。

 あの宝箱は、冒険者たちの手でしか開けらんねえように、細工がされているだぁ・・・。

 仕方がねえから、あいつらをもう一度見つけ出して、宝箱のふたさ開けさせるだぁ・・・。


 なんせ中には村の宝にできる宝剣が入っていると聞いているかんなあ・・・、そいつさ持って帰れば、晴れておらは次の村長だぁ・・・、そうしておめはおらの嫁っこだぁ・・・。」

 声と話しぶりからして、恐らく十四朗とナナセだろう。


 無理やり横取りしたともいえる宝箱が開かずに、焦っているのだろう。

 それにしても、どうしてこんなに声が大きいのだ?いくら洞窟内で反響するにしても、2人まで相当距離があって、2つの影としか認識できないほどだというのに、会話だけははっきりと聞き取れる。

 まるで現況を、ここに隠れている俺たちに聞かせる為のようにも感じるのは、考えすぎか?


「でも、どうやってあいつらに会うだぁ・・・?今頃別の土地さ行っちまっているはずだろ・・・。

 あいつらは車っちゅうもんに乗って移動していたし、おらたちの足じゃあ到底追いつけねえだぞ。」

 ナナセがなおも問い詰めるように十四朗を促す。


「ああ・・、どうすっかだなぁ・・・。」

 十四朗が恐らく宙を仰いでいるのだろう、まさか何の考えもなしに出てきたというわけじゃあないだろうな・・・?


「行きましょう。」

 すると、ツバサがおもむろに立ち上がり歩き始める。


 おいおい・・・いいのか?せめて何らかの作戦を立ててからにした方が・・・とか思うのだが、ツバサがすたすたと歩いていくので、仕方なく後をついていくしかない。

 どうも2人になってからはツバサに引っ張られっぱなしだ・・・、そんなに俺は頼りないのだろうか・・・。


「あなたたち・・・あたしたちを騙して、水源の堤を破壊させようとしましたね?

 あたしたちと一緒に来て、証言してください。

 それと、持ち去った宝箱を返していただきます。」


 ツバサが2人の前にすっくと立ちはだかり、用件を告げる。

 おいおい・・・いくらなんでもストレートすぎるんじゃあ・・、これじゃあ地竜の村でのやり取りを放送するのを控えてもらった意味がなくなってしまう。


「ああ・・おめたち・・・、来てくれただか・・・そりゃあありがてぇ・・・。

 歓迎するだよ・・おらたちの新しい・・・いや、おらたちの本当の村へようこそ・・・こっちだぁ・・・。」


 ところが十四朗はツバサの言ったことは無視して、俺たちを歓迎すると言い出した。

 そうしてゆっくりと歩きだす・・・、仕方がないので俺とツバサも一緒についていく。


 洞窟内を奥へと進んでいくと、すり鉢状の窪地を降りていく階段があり、降りた先は平らになっているようだ。

 深さが5mほどで周囲が50mほどの楕円形だろうか、円周状にかがり火がたかれているようで、奥の壁面には横穴があるようにみえ、恐らくは居住スペースなのだろう・・・、入り口は小さいが中は奥行きもあり広そうに感じる。


「暗くてすまねえだな・・・、なにせ照明も没収されちまったもんだからなあ・・・。

 だがまあ、あれから十年だあ・・・、次の照明も恐らくそれなりにできているはずだぁ・・・。

 おめたち悪いが、照明さ取ってきてくんねぇか?そうすりゃあ・・・、この村のお宝さ渡すだぁ・・・。」


 なんと突然クエストを申し込まれてしまった・・・、しかし元々この地は奴らの村ではないはずだ。

 そんな奴らからの依頼をクエストと、認められるのだろうか・・・?


「その・・・照明というものを取ってきていただけるお宝というのは・・・、先日海水につけて船が膨らんできた途中で出現した宝箱のことかい?

 その時のお宝を頂けるというのかい?」


 まあ何にしても、宝箱を返してくれるというならありがたい、クエストと認められなくても、ひとつくらいなら望みをかなえてやらんこともない。


「それは教えらんねえなぁ・・・、村にはお宝がいっぱいあるだかんなあ・・・。

 まあ、照明を持ってきてからのお楽しみっちゅうことで・・・。」

 ところが十四朗はにやにや笑みを浮かべるだけで答えようとはしない。


「だったら照明は取ってきてあげませんよ・・・、あなたが持って行った宝箱は、あたしたちの冒険に必要なもののようです、ですから返してください。」

 すぐにツバサが要求する・・・、だから・・・それじゃあまりにもストレートすぎるって・・・。


「ふうん・・・おめたちの冒険に必要なアイテムだか・・・、それじゃあそれなりのものを頂かねえと、返せないだなあ・・・。」

 ほら、こんなふうに交渉に利用されてしまう・・・。


「いや・・・あの宝箱は本来俺たちが頂くはずのもので、君たちが持って行ってはいけないはずのものだ。

 だから別に照明とやらを持ってきてやらずとも、このまま力づくで取り返しても構わないんだ・・・、何だったら今から探させてもらおうか?」


 こんなつまらんことで時間を使ってはいられない・・・、いう事を聞かないなら力づくで・・・ということにして、居住区と思われる横穴に入っていこうとして見せる。


「おおっと・・・分かっただ・・・、おめたちが強いことはよくわかっているだ・・・、船から持ってきた宝箱を渡すだ・・・、だから照明さ持ってきてほしいだ・・・。」

 すぐに十四朗は態度を改める・・・・、だがしかし、心の中ではどう思っているのか油断はできない。


「じゃあその・・・、照明とやらの在処を教えてくれ、これから行って取ってきてやる。」

 まあともかく話を進めよう・・・、ぐずぐずしてはいられないのだ。


「おや?知らねえだか・・・?こりゃまあ・・・、大変だぁ・・・。」

 俺が照明の在処を聞こうとすると、十四朗がにたりとほくそ笑む・・、どうにも癇に障る態度ばかりをとる奴だ。


「行きましょう。」

 すると突然ツバサが俺の手を引いて歩き出す・・・、先ほど来たのとは反対方向の斜面の階段を上がっていくようだ。

 そうしてその先に開いている洞窟に入っていこうとする・・・、先の見えない真っ暗な洞窟だ。


「仕方がない・・・、ヘッドライトを使用するぞ・・・。」

『カチッ』インカムと一緒に装着してもらっている照明用のライトを点灯する。


「走りますよ・・・。」

 ツバサもヘッドライトを点灯し、すぐに走り出した・・・そうか、彼女は照明の在処を知っているわけだ。

 そのまま洞窟を走り続け、少し開けた場所に出ると道が分岐しているが、そこを右方向へ進んでいく。


 まあ、魔物なんか出てこないわけだから・・・とか考えていると、『バシュッバシュッ』前方で時折炎が舞い上がる・・・、ツバサだ・・・ツバサが襲い掛かってくる魔物たちを瞬殺しているのだ・・・。

 そうか・・・このような海底の洞窟内では雑魚魔物も残っているというわけだ・・・とか考えているうちに、光る池にたどり着いた。


「この池の底に照明がありますから、取ってきてください。」

 はいはい・・・ツバサに命じられるままに池の中に潜り、底から突き出ていた電球の玉のようなものがついている棒を根元から切り落とす。


「取ってきたよ・・・。」

『ザー・・・、ジュルジュルジュル』ツバサに照明を見せようとしたところ、俺の背後では池の水が抜けいく。


「急ぎますよ。」

 すぐにツバサが駆け出し、俺も急いで後を追う。

 ツバサは先ほどの分岐を折り返し、今度は左の道へと下っていく。


『バスッバスッ・・・』今までよりも大きな炎が舞い上がるようになったが、ツバサのスピードは落ちていかない。

 途中、大岩が正面から勢いよく転がってきたが、ツバサが跳躍したのに続いて俺もジャンプしてみたら躱すことができた。


 さらに洞窟の左右から炎が間欠泉のように飛び出してくるところでも、跳躍したり回転したりしながら素早く身をかわしていくのをまねながらついていく・・・、このところのトレーニングの成果かな?というより膨大な経験値のおかげか・・・。


 その後も魔物に襲われているようなのだがツバサ一人で瞬殺していく、まあ楽でいいのだが・・・。

 そうして最下層ともいえる広い空間に出てきた・・・、洞窟の遥か上方には小さく丸い穴が開いているのが見える。


「あの、丸い魚のようなものを切ってください・・・、恐らくあたしの光の爪では歯が立ちません。

 サグルさんの鋼鉄の爪に光の魔法を付加して頭から切ってください。」


「分かった・・・、光剣(ペカ)!」

『シュッパァーンッ』言われた通りに、地面に横たわる丸い魚のようなものを真っ二つに切り裂く。

『チャリーンッ』すると魚の体の中からいくつもの指輪が・・・すぐにツバサと二人で拾い集める。


「魚のしっぽを切って、持ってきてください。」

 はいはい・・・言われるがまま尻尾を切り落とすと、先ほどの分岐をまたもや右方向へ上っていき、池のあったところでツバサに指示されるまま、伸びているつたにしっぽを結び付けて垂らし、そのままダッシュで半魚人たちの村へと戻ってきた。


「ほら、これが照明だろ?」

 十四朗に電球のような明かりが付いた棒を手渡す。


「ああ・・ありがてえだ・・・、照明がやってきてこれでこの村も明るくなるだ・・・今夜はお祝いだ・・・、あんたたちも泊って行ってくれ。」

 すると十四朗は大変喜んでくれて、泊って行けと誘ってくれる。


「だめです、あたしたちには時間がありません、すぐに宝箱を渡してください、そうして一緒に来てください。」

 ところがツバサは、厳しい表情のまま首を振る。


「おらたちの村の恩人を、そのまま帰したとあっちゃあおらたちの名が廃るだ。

 そうさなあ、もう今日は遅い時間だし、明日ならおらたちも一緒に行ってもいいだ・・・だから今晩は泊まるだ。」

 それでも十四朗はしつこく泊まるよう勧めてくる・・、まあ期限までに間に合いそうだから泊ってもいいのだが。


「分かりました・・・、それではあなたの気が変わらないように、今この場であたしたちを騙して水源の堤を壊すよう、わざとああいう言い方をしたのだと認めてください・・・それと宝箱も持ってきておいてください。」

 すると今度はツバサがいろいろと要求し始める。


「ああそんなことだか・・・、あれは確かにおらたちの話しぶりが悪かったかもしんねえなあ、勘違いさせただか?

 だがまあ、おめたちもあの最強魔物たちから逃げ延びられたんだから、おめたちは強運の持ち主だあ。」

 十四朗は笑顔を浮かべながら話す。


「ありがとうございます、早く宝箱も持ってきてください・・・、それから、あたしたちが泊まったところで、地震などは発生しませんよ・・・、すでに、地震を発生させる魔物は退治してあります。」

 再度宝箱を催促し、ツバサは魔物から出てきた指輪を袋から取り出して十四朗たちに見せた。


「ばっ・・・馬鹿な・・・、あんな短い時間でどうやって・・・、まあそんなことどうでもいい、だったらこのまま帰すわけにはいかねえだ・・・、おらはおめに決闘を申し込むだ。」

 そういって十四朗は俺の顔をにらみつける・・・決闘って・・・そんな馬鹿な・・・。


続く



半魚人たちの村で、またまた変なことに・・・、十四郎との決闘はどうなるのか?そうして、レイや源五郎たちは救出できるのか?

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