枯葉魔物
9 枯葉魔物
「わかった・・・、えーと・・・大津波!だったかな?」
『ザッパァーンッ・・・・・ピキィーンッ』巨大な水流が燃え盛る枯葉魔物を押し流すような勢いで襲い掛かるが、枯葉魔物は結合を分断したのか、水流の中を漂うかのようでダメージは受けていない様子だ。
「ぶもぶもっ・・・ぶもぶもっ」
『フシュッ』しかし水流の効果か一瞬で鎮火し、すぐに枯葉魔物は攻撃を仕掛けてこようと合体する。
「それと・・・絶対零度(ゼロK)!」
辺りの水分がすべて凍り付くような冷気の中、白い靄のようなものが晴れた後には、真っ白い人型の塊がそこに立っていた。
「よしっ・・・一斉攻撃だ。
光剣!光剣!光剣!光剣!」
『シュッパァーンッ、シュッパァンッ、シュパーァンッ、シュパパパァーンッ』このところ忘れ気味だったが、光の魔法を付加した攻撃を試してみると、どれも会心の当たりの様子だ。
しかも、回転が速く凍り付いた枯葉魔物を寸断していく。
「雷撃!雷撃!雷撃!雷撃!雷撃!」
『シュッシュッシュッシュッシュッ』『バギバギッバギバギッバギッ』
さらに源五郎も、雷系の魔法効果を付加した矢を射かけていく。
矢が突き刺さった部分は、雷撃で火花が散っている様子だ。
「とうっ・・・」
『シュッパンッ・・・シュッパンッ・・・シュポッ』さらにツバサが宙高く舞い上がりながら、凍り付いた枯葉魔物の頭上から連続攻撃を繰り出すと・・・、見る見るその姿が小さくなっていく。
「ようしっ・・・、光剣!光剣!光剣!光剣!」
『シュッパパーァーンッ、シュパンッ、シュッパァーンッ、シュパッ』攻撃の効果があるようなので、一気に畳みかけるべく連続攻撃だ。
「雷撃!雷撃!雷撃!雷撃!雷撃!」
『シュッシュッシュッシュッシュッ』『バギバギッバギバギッバギッ』
「絶対零度(ゼロK)!・・・・絶対零度(ゼロK)!」
源五郎も、レイも攻撃の手を緩めない。
『シュッパパンッ・・・シュパンッ・・・』どれくらい攻撃を継続したのか・・・、何分か何十分か・・・、こんなに長い間思い切り剣を振り回していると体力を消耗して倒れてしまうと思えるのだが、流石に最高レベルの経験値を持っている俺たちの体力は底知れない様子だ。
もちろんツバサに関しては言うまでもないだろうが・・・ふと見ると、目の前の白い塊は霧散してその姿は見えなくなってきた。
結合を解いて個々の葉に分割したのではない・・・、なぜなら宙を舞う枯葉も存在しないのだ。
倒したのか・・・?慎重に辺りを見回す。
「ぶもっ・・・」
『フシュッ・・・』『シュッパパァーンッ』突然盛り上がる枯葉の塊めがけて光の爪がさく裂。
最後はツバサの会心の一撃が決まったようだ。
枯葉魔物の気配は、この場から完全に消え去った。
「ふうー・・・何とか倒したようだな・・・、これまでの魔物と違って、圧倒的なレベル差で簡単に倒せる相手とは違ったな・・・。
魔物も、レベルを少しずつ上げて送り込んでいるのかもしれないな。」
辺りに動くものの気配がなくなったことを感じて、ほっと一息をつく。
「そうですね・・・僕なんか突然強烈な一撃を食らって、意識を失いましたよ・・・。」
源五郎が頬を赤く染めながら頭をかく。
「ダーリンは魔法の力じゃ回復しないから、復活の木の葉を食べさせたんだよー・・・。」
レイが本当に大変だったと言わんばかりに、頬を膨らませながらつぶやく。
そうか・・・無警戒のところに攻撃されたものだから、致命傷になったようだな。
「あたしも・・・、レイちゃんの回復魔法で助けられました。」
ツバサも恥ずかしそうに頭をかく。
「ツバサお姉さんは全回復ですぐに気が付いたからよかった・・・、葉っぱは一枚しか持ってなかったからねー。」
何にしてもレイの活躍に助けられたな・・・結合したり分離したりする魔物でも、凍らせて固めてしまえば連続してダメージを与えることができるという事だ。
今後の戦い方の参考にできるだろう。
「なんか出てきたよー・・・。」
枯葉魔物がいたあたりが、光り輝き始めた。
「おお・・・アイテム出現のようだな・・・、かなりの強敵だったから、いいものが期待できるぞ。
あれ・・・?なんだあ・・・」
なんと、光が消えた後には何も出現していなかった。
「どうしたんだ?枯葉魔物を倒したときのアイテム設定を、まさかし忘れたんじゃないだろうな・・・。」
なんだか拍子抜けしてしまった・・・、いくら何でも期待だけさせて裏切るというのはひどい。
常にアイテムが出てこなければいけないというわけではないのだが、なにか裏切られたような気がしてしまうので、思わせぶりな状況を演出するのはやめていただきたいものだ・・・。
「えーとえーと・・・。」
レイが目を凝らしながら、枯葉魔物がいたあたりを一生懸命にのぞき込んでいる。
「レイ・・・、どうやらアイテムはお預けのようだ・・・、次を期待しよう。
それよりも、彼らが言っていた堤を壊す方法を考えよう。
この辺りはくぼんでいるから、このまま堤を壊してしまうと、水に流されて遥か下流まで連れていかれてしまいそうだ。
何とか安全に堤を壊す方法を考えなければいけない。」
目の前の分厚い木の板で作られた堤を破壊する方策を検討に入る。
もちろん俺かツバサが鋼鉄の剣や光の爪を振るえば、木の板程度であれば壊すことはできるだろうが、壊した途端に鉄砲水を食らって、一緒に押し流されて溺れてしまう可能性もある。
「あたしだったら堤を壊してすぐに飛び上がれば流されない自信はあります・・・、万一流されても泳ぎは達者ですし・・・。」
ツバサが意欲満々に身構える。
「いや・・・それは危険だからやらない方がいい・・・、泳ぎだったら俺だって潜水記録だの遠泳だの、やたらとアンケートに書き込んだから、恐らくオリンピック級の泳者と言えるだろうし、更に膨大な経験値を保持しているから自信もないことはないが、これだけの水源から一気に流れ出る水の勢いにはかなわないだろう。
巻き込まれたら助からないと考えた方が無難だ。
それよりも・・・このはめ込まれた堤を何とか引っ張り上げるような手段だな・・・、それを見つけた方がいいだろう。
といっても・・・なにせ水は満タンだからすごい水圧がかかっているわけだ・・・、人力じゃあこの堤を引き上げようとしても上がらないだろう。
機械的な方法がなければ、やっぱり壊すしか方法はないのだろうがな・・・。」
遥か見上げるほどの高さの、頑丈そうな堤を恨めしそうに眺める。
「これじゃないですかね・・・、恐らくここで堤を上げ下げできるのじゃあ・・・。」
堤の更に左側は小高い丘になっていて階段が設けられ、その上にいる源五郎が何かを指しながら叫んでいる。
階段を昇って行ってみると、そこには鉄製の大きな回転する水栓のようなものが・・・。
「そうだろうな・・・これを回すことにより、堤を上げ下げできるとみて間違いがないだろう。
枯葉魔物は恐らくこの水門の栓を守っていたのだろうな・・・。
じゃあ、早速開けてみよう。」
直径15センチはあるだろう、コンクリートの床面から突き出る鉄棒には螺旋状にねじが刻まれ、その心棒を回すための直径3メートルほどのハンドルがついている。
いうなれば船の舵を床面と水平に置いたような形だが、その外側に伸びたハンドルから突き出た鉄棒をそれぞれがつかんで動かそうとする・・・が、簡単には動かない。
「ふう・・・水圧がかかっているから、息を合わせてタイミングよく力をかけなければ、開けられないぞ。
行くぞっ・・・・・せーのっ!」
大きな声で掛け声をかけ、みんなでタイミングを合わせて水門を開けようとする。
『ギッ・・・ギギッ・・・・ギギギギッ』『ゴゴッ・・・ゴオッ』何度も繰り返し、もう夜時間に入ったころ・・・・。
「やりましたね・・・、水門から水が勢いよく流れだしましたよ・・・、後は水の勢いで何とかなるでしょう。」
『バギバギッ』源五郎が言う通り途中まで開いた水門から勢いよく水が放出され、その強烈な水流に負け、流れをせき止めていた木製の堤は真ん中から折れ曲がり、今にも壊れてしまいそうだ。
『ゴゥォー・・・』さらに勢いづく水流は、俺たちが来た方向へと流れていく。
「行ってみましょう。」
行ってみましょうって言ったって・・・、俺たちが来た道は今では川の流れの対岸で、こちら側から行くには湖を迂回しなければならず、簡単には戻れないぞ。
「とうっ・・・。」
そう思っていたらツバサはそのまま木製の堤の上端に飛び乗った。
まさか・・・堤をわざと壊して、サーフィンしようっていうんじゃあ・・・。
「さっ、早く!」
どうやらそのつもりのようだ・・・、今にも決壊しそうな堤の上で、ツバサが催促してくる。
「仕方がない・・・行くぞ!」
レイを小脇に抱えて、一緒に堤の上に飛び乗る。
「えいっ」
源五郎も乗り移ってきた。
「とうっ」
『バギッ』ツバサが思い切り右足で蹴りを入れると、哀れ木製の堤は真ん中から真っ二つに折れ崩壊した。
『ザッバァーンッ』堤が流されるタイミングで、ひょいとうまく飛び上がり、壊れた中でも大き目の板を見つけて中央付近に乗り移る。
あとは予想通りサーフィンの要領でバランスをとって水流を乗り越えていくだけだ・・・と思ったが・・・よく考えると、この先は・・・。
「おいおいっ・・・この先は崖じゃあ・・・?」
「はいっそうでした・・・忘れてました・・・」
別の木の板に乗り移ったツバサがニコリと舌を出す・・・、何だって・・・!
といっても猛烈な水流に流されている身の上・・・、もちろん止まることなどできるはずもない・・・、見る見る崖との距離は縮まっていく・・・。
「あーれー・・・」
『ヒューンッ・・・・・・・・・・・・・ザッバァーンッ』流れの勢いそのままに崖から飛び出した木の板は、そのまま放物線状の弧を描いてはるか下の水面に到着した。
おお・・・何とかなるもんだな・・・、ツバサ・・・は大丈夫か・・・、源五郎・・・も大丈夫のようだ。
俺とレイが乗る板の後ろで、うまく木の板を操り波に乗っている頼もしい仲間たちの姿を見つけてほっとする。
うん?あれは・・・?ふと後方へ眼をやると、崖下めがけて水は滝のように流れ落ちてきている。
俺たちが泊まった半魚人たちの村を飲み込んで・・・、水源は村の真上にあったという事だろう。
まあ、崖下へ漏れた水が沸き出ていたくらいだからな・・・、あの堤は村へ水の供給を止めていたというよりも、村を守っていたと考えた方がよさそうだ。
堤を壊したことにより村は壊滅してしまったわけだからな・・・、これじゃあ堤を壊して水源を手に入れても村へ戻ることはできないだろう・・、それなのにどうして・・・?
彼らには、こうなることが予想できなかったのだろうか?
まさか半魚人たちの村を壊してしまうことが、俺たちのクエストとは到底考えられない・・・、どういう事なのだろうか???
『キィッ・・・ガッシャンッ』
「じゃあ、ここまででいいよね・・・。
我々は、シメンズメンバーを迎えに戻るから・・。」
「ああ・・・ありがとう、ついでに水や米など降ろしてもらえると助かるだ・・・・。」
砂漠の中にポツンと出現した長屋のような建物の前まで十四朗たちを送り届けたテレビスタッフは、更に米や野菜に水ガメまで降ろすのを手伝わされた。
半魚人たちは、米はこっちだとか野菜はこっちだとか口だけで、自分たちは一切運び入れようとはしないのだ。
それでも十四朗たちを送り届けることは、シメンズとの約束なので、仕方なく詰め込んだ野菜類を全て降ろして建物内へと運び入れた。
「じゃあ、もういいね。」
「ああ・・、助かっただ・・・ありがとう。
帰りは・・・もう少し脇へそれて走っていった方がいいだ・・・、何せちょっと嫌な予感がするもんでな。」
『ブロロロロロッ』「あんなこと言われましたが、どうします?」
「ああ・・・、気味が悪いから、ちょっと道を外して進もう。」
少し謎めいたことを告げられ戸惑いを感じながらも、中継車のルートを数メートル横へ移して走らせることにしたようだ。




