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クエスト?

6 クエスト?

『どうするだ十四朗・・・、オメの態度があんまりだから、あの人たち気を悪くしてオラたちを邪魔者扱いだあ・・・、このままじゃオラたちは、ここから一歩も動けずに干物になっちまうだぞ。』


『そんなことにはなんねえだ・・・大丈夫だナナセ・・・、あいつらだって鬼じゃない、すぐにおらたちを中に入れてくれるはずだ。』


 俺たちに聞こえるようにわざと大声で叫んでいるのか、あるいは地声なのか・・・、中継車の外で2人の半魚人がささやくというか怒鳴りあっているようだ。


「なんだかクエストっぽくないので、どうにも信用できないのだが・・・どうする?」

 とりあえず皆の意見を聞いてみることにする。


「あたしは彼のいう事は信用できないので、無視してこのまま東へ向かった方がいいと思います。

 もしかするとダンジョンが見つかるかもしれませんし・・・。」


 ツバサは即答だ・・・、やはり以前の冒険の時のイメージがよろしくないのだろう。

 まあ、今の態度を見ていても、それはわかるのだが・・・。


「僕もツバサさんの意見に賛成ではあるのですが、ただ・・・今のところ何の当てもない訳じゃないですか。

 だったら彼らを連れて北へ向かってみても、いいのではないでしょうか?

 東へ行って何もなければ結局は北と南に行ってみるはずですからね。


 用心しながら行動することにして・・・、行ってみて状況がおかしく感じれば、彼のいう事に従う必要性もないわけですから、無視すればいいだけです。

 何だったら、彼らを元の村に置き去りにして、僕たちは別の地へ向かえばいいわけです。


 こんな砂漠の真ん中に置き去りにするよりよっぽど安全ですよ。

 それに、一応はクエストを申し込まれているわけです・・・、それを無視するのもどうかと・・・。」

 今度は源五郎が少し考え考え、話しだした。


「あたしもダーリンの意見にさんせーい。」

 すぐにレイが相槌を打つ・・・、まあ、レイの場合は何も考えてはいないのだろうが・・・。


「うーん・・・ここで多数決という事は決してないのだが・・・、ツバサが持っている過去の経験というのは貴重という事は俺も感じている。

 だがまあ一緒に行くだけなら危険性もないだろうし、あいつらを連れて北へ行ってもいいかと俺も考えている。


 一応クエスト依頼といっていることだしね・・・引き受けるのは本当だと信じられてからにするとして、行くぐらいは問題ないと思うのだが・・・、どうかな?」

 ツバサの方を見て話しかける・・・、やはりツバサの同意はとっておいた方がいいだろう。


「あたしは・・・別に彼らを嫌っているとか意地悪をしたいとか、そういった気持ちから言っているのではありませんから、皆さんが一緒に行っても構わないというのであれば、あたしも従いますよ。」

 ツバサは、さほど抵抗する様子はなく妥協してくれた。


「じゃあ、悪いがあいつらを乗せて北へ向かう事にするよ・・・、ただし、クエストを引き受けるかどうかは、もう一度話し合うことにしよう。」


『ガチャッ』「わかった・・、とりあえずお前の言う村までは一緒に行くとしよう・・、ここに置いて行っても干物が2つできることになるだけだろうからな。

 乗ってくれ。」


「ああそうか・・・、じゃあ乗せてもらうだ。

 ほれみろナナセ・・・だから大丈夫だと言っただろ。」

 そういいながら、2人の半魚人は中継車に乗り込み、先ほどと同じ席に座った。


「悪かったね・・・、北に向けて出発してくれ。」

「はい、分かりました。」


『ブロロロロロロッ』賢者のトンネルから北に向けて出発だ・・・、だが、はるか向こうに見える山脈までは、結構な距離があるはずだが・・・。



『キキィ・・・ガッシャンッ』突然中継車が停まる。


「今日のところはここまでとして、野宿しましょう。

 見回す限り、このあたりだけが平地のようですから・・・。」

 テレビスタッフが、野営を告げてくる。


「あと・・・。」

 さらにテレビスタッフが、中継車の前の方へと俺を手招きするので行ってみる。


「あの2人の食事と寝るところですが・・・、お邪魔でしょうから我々が引き受けますよ。

 食事に関してはコメを炊いておかずは缶詰になりますが、我々スタッフ用で1ケ月分はありますから、2人ぐらい増えても問題はありません。


 彼らは外で寝るのも大変でしょうから、我々と一緒に中継車の中で寝てもらえばいいですよ。」

 そう小声で告げてくれた・・・、俺たちを気遣ってくれているのだろう、ありがたい。


「申し訳ないね・・・。」

 両手を合わせて拝むようにして礼を言う。


 さんざんレイやツバサのセクシーショットは放送禁止だなんて言ったことを深く反省させられる・・・、まあ、真の目的は別にあるのだから、勘弁していただくしかないのだが・・・。


「お前たちの食事の面倒は彼らの好意で用意してくれるそうだから、いちいち文句を言わずに与えられたものを感謝していただくようにしてくれ。

 それと・・・寝るのはちょっと窮屈かもしれないが、このままシートの背もたれを倒して眠ることになる。


 彼らテレビスタッフも同じようにして寝ているのだから問題はないだろう。

 水分をきちんととってから寝てくれ・・・、何だったら俺たちと一緒に外で雑魚寝でも構わんがね、どうする?」

 十四朗のところに行って、食事と寝るところの説明をしておく。


「ああ・・、おらたちは食べ物の好き嫌いなんかはないから何でも食べるだ・・・、寝るところも、この車の中は涼しいから文句はないだ・・・。」

 十四朗は先ほどまでとはうって変わって、おとなしい様子でかえって不気味だ。


「じゃあ、後はよろしく。」

 本日放送分の形ばかりの検閲を終えて、中継車を降りていく。

 彼らの態度を含めて、会話部分は特に使用してほしいと願いながら・・・。


「テントを張っておきました。」

 源五郎が、レイとツバサ用のテントを張っておいてくれたようだ。

 テントは、中継車の後ろに結びつけている大きな葛籠に入れているので、出し入れには便利だ。


「じゃあ、今日の当番は・・・。」

「あたしは、またツバサお姉さんと一緒・・・。」

 すぐにレイの奴はツバサとくっつくようにして腕を組む。


「はい、じゃあまた一緒に頑張りましょうね。」

 ツバサが笑顔でレイの顔を見る・・・、ううむ一体何を頑張るというのだろうか・・・料理でも習っているのか?


 中継車から電源をもらって、冒険放送を見ながら弁当を食べる。

 本日の放送は、俺と十四朗の会話以外はほとんど砂漠しかないため、先日の湖での戦闘シーンがダイジェスト版で流された。


 ツバサが言っていたが、今回の冒険の旅は異常に魔物の登場が少ないらしく、冒険放送の運営も難しいようだ。

 登場してくる魔物たちは超強力ではあるのだが、対する俺たちの経験値はもっと上なので、戦闘シーンを見る限り、雑魚魔物程度にしか映らないのだ・・・、魔物と戦って経験値を稼いで・・・という本来の冒険の旅とははなから異なるわけだから、仕方がないことではあるのだが・・・。



「じゃあ、出発するぞ・・・。」

 昨晩中継車の中で就寝する半魚人たちのことを心配していたのだが、スタッフに対してぞんざいな態度をとることもせず、終始おとなくしていたという事だった。


 もしかすると、俺たち冒険者たちにはある程度わがままを言っても許されると考えているのかもしれないな・・・。

 だったら、あいつらの相手をするのをテレビスタッフに任せるという手もありなのかもしれない・・・。

 砂漠の中を走り続け、昼過ぎになってようやく山のすそ野が見えてきた。


「この先がおらたちの村だ・・・。」

 十四朗が突如ぽつんとつぶやく・・・確かに奴の言う通り、山裾にいくつかの建物が建っているようで、集落を形成している様子がうかがえる。


『キキィッ・・・ガッシャン』集落の入り口手前で、中継車が停車する。

『ガチャッ』「じゃあ、村の中を案内するだ。」


 ついた途端に、自分たちだけ先に降りて村の入り口ゲートに鍵をかけてシャットアウト・・・、なんて態度も予想されていたのだが、ずいぶんと従順な様子だ・・・十四朗たちとともに、村の中に入っていく。


「家財道具はすべて運び去ってしまったから、村の中には何もないだ・・・。

 海岸まで行きつくことができなくて、戻ってきた時のために畑には種をまいておいたから、今は大きくなって収穫時期を迎えているだな・・・。」


 十四朗が言う通り、どの家も入り口ドアは開け放たれていて、中をのぞいても家具など一切残ってはいない。

 無人のゴーストタウンといったところで、その割に畑や田んぼにはキャベツやレタス、ニンジンに大根などが大きくなっていて、まさに収穫時期を迎えていると言える。


「麦は何とか収穫できそうだが・・・米は少し早かっただな・・・、まあ、米の備蓄は蔵にあるからそっちを持っていけばいいだ。」

 十四朗がどんどんと村の奥へと歩いていく・・・、蔵もあるという事か・・・。


「ここが村の外れ・・・というか、切り立った断崖絶壁で、ここから先は進めねえだ。

 水はこの崖の切れ目から年中湧き出しているだ・・、ほれ、水ガメみんな満タンで溢れているだろ?」


 村の奥は切り立った崖が壁のようになっていて、その先へは確かに進めそうもない。

 崖の高さ1mくらいのところにくぼみがあり、そこから水が沸きだしているようで、節をくりぬいた竹を突き刺してあり、その先に水ガメがいくつも並べられている。


 水ガメは大きさの順にくっつけて並べられていて、それぞれ竹を半分に割った樋で結び付けられ、一つが満タンになると次へ水が回っていくという仕組みになっている様子だ。

 すでにどの水ガメも満タン状態で、溢れた水が地面を濡らしている。


「この水がめと、畑に育っている野菜を運べばそれでクエストは終了かい?

 魔物が生息するダンジョンにある宝箱とかはないのかい?

 あるいは、なにかどうしても必要なアイテムを山奥へ探しに行くとか・・・。」


 どうにも、こんな運送業者のような仕事がクエストとは思えない。

 何か隠していることがあるような気がするのだが・・・。


「ダンジョンっていうと・・・、洞窟とかのことかね?

 この村の周辺にはそんなものないだ・・・、見て分かるだろ?


 ただ・・・まあ、いいさ・・・、何にしてもクエストっていう奴は、ここにある水がめと野菜を運んでくれればOKだ・・・。」

 十四朗は何か言いかけたが、すぐに口をつぐんでしまった。


「ふうむ・・・、クエストというにはずいぶんと簡単というか・・・、戦闘とか謎解きとか何もない。

 先ほど、何か言いかけてやめたようだが・・・、なにを言おうとしたんだい?」

 何を言おうとしていたのか気になるところだ・・・。


「いやあ、あのことは・・・、おらの口からは言えねえだ・・・。

 蔵の中には備蓄用の米があるから、それを運び出しておいてくれ、おらたちは麦を刈り取るだ・・・。」

 そういったまま、十四朗たちは畑へと向かってしまった。


「ウーン・・・なんか気になるが仕方がない・・・、ぼうっとしていても何だから、米を運び出すとするか・・・。」

 崖のすぐそばに作られた、窓のない大きな木造の建物が恐らく蔵と言っているものだろう。

『ガラガラガラ』入り口の引き戸を開けると、奥の方に米俵がいくつも積み上げられていた。


「結構ありますね・・・中継車の中には入り切らないですよ・・・、後ろに括り付けてある葛籠に入れても米だけで埋まってしまいそうですよね。」

 蔵の奥を眺めながら源五郎がつぶやく・・・、何せ6俵もの米俵があるのだ。


「まあいいや、取り敢えず葛籠には入らないだろうから、中継車に入りそうな分として、一人一俵ずつ運び出そう。」

 そういいながら蔵の中に入って行って、米俵を担いでみる・・が、ひょいと簡単に持ち上がってしまった。


 本当に米が入っているのかと、少し手で押してみたが満タンに入っている様子だ・・、経験値も最大となると力も半端なくついているのだろうな・・・、60キロもの米俵の重さを全く感じないほどに・・・。


「まあ、屋根の上の荷台に括り付けることになるだろうな・・・砂漠地帯だし、雨は降りそうもないから問題ないだろう。」


 そのまま中継車のところに戻っていき、ツバサが中継車の屋根に上って荷台に米俵を積み上げる。

 2段にして何とか6俵積めたが、見た目からしてずいぶんと重そうだ・・・、スピードは出せないだろうな。


「野菜はすべて収穫して持っていくのかい?」

「ああ・・・、全部収穫してくれ・・・。」

 十四朗に野菜の収穫に関して確認してから畑に入る。


「へえ・・・、キャベツってこんなふうにして畑から生えているんだ・・・、あっ茄子は葉っぱも紫だ・・・。」

 一緒に畑に入ってきたレイが、珍しいものを見るように畑の野菜を興味津々で眺める。


 茄子の葉は光合成をするために葉の色自体は緑だが、葉脈と茎は確かに紫色だ。

 子供の情操教育には、畑など土に触れあうのはいいと聞いたことがあるが、本当のことだろうな。

 俺も野菜が畑になっている所を見ることは初めてではないが、収穫するのは初めてだ・・・ちょっとわくわくする。


「蔵の中に農具がありましたから持ってきました・・・、キャベツやレタスはこうやって根元をナタや鎌で刈り取ります。

 玉ねぎやジャガイモは一つ一つ手で収穫するのは大変ですから、クワかスキを使って掘り起こします。」


 ツバサが農具の扱い方を説明してくれ、教わりながら収穫をしていく。

 中継車の後部座席にも野菜類と水ガメがぎっしり詰め込まれることとなった。

 そりゃそうだろうな・・・、何せ集落の村人たちの何週間分かの食料と水なのだ・・・。



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