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冒険終了?

11 冒険終了?

「きたっ・・・」

『ジョリジョリジョリジョリジョリ・・・』レイが竿に手ごたえを感じ、リールを巻きあげる。

 魚群探知機で無数の魚影を確認したポイントで、糸を垂らしてアタリを待っていたのだ。


『ざぱーんっ』すぐに生きのいい魚たちが4匹、ボートに上がってきた。

 体長は70センチほどで、湖岸で釣っていた時よりも少し大型だ。


『シュタッ・・・ザシュッ、バシュッドゴッ』すぐにツバサが光の爪で襲い掛かり、最後は渾身の蹴りでブラックダンプを消滅させる。

『シュッパァーンッ』『シュッシュッ』俺は鋼鉄の剣を一閃、源五郎は2撃でブラックダンブをそれぞれ葬り去る。


「えーと・・・こうやって・・・。」

 ところがレイはというと、絡まった糸をほぐそうと下を向いていて戦いに参加しようとしない。

『タッ・・・シュッパァーン、ジュバッ』すぐにツバサが跳躍し、回転しながら光の爪2撃でブラックダンプを粉砕した。


「ああ、ありがとう・・・レイは一つのことに夢中になると、周りが見えなくなってしまうからな。

 まあでも・・・釣竿一本で釣れるのは4匹が最大だ・・・、レイだったらまとめて魔法で消滅させることもできるのはわかっているから問題ない。


 どうだろう・・・俺たちがさぼるようで申し訳ないが、ツバサが一人で倒してみないか?

 もちろんサポートして一度に襲い掛からないように分断する・・・、体力が続く限りという事で構わんのだが、ツバサのレベルを向上させるためにも、特訓のようなことをやってみないか?」


 経験値から言って俺たちとツバサとでは、レベルに雲泥の差ができてしまっているのが現状だ。

 もちろん俺たちがインチキをして・・・いわゆる不正組という事なのだが、正規に冒険を続けてきているツバサに対する評価が、非常に低く見積もられているのが悲しい。


 少しでも追いついていただくためにも、戦力的に余裕のあるクエストに関しては、ツバサに任せてもいいのではないかと考えたわけだ。


 どのみち1対1で戦えばツバサは格闘技に関しては世界最強なわけだから、特訓というのもおこがましいのではあるが、それでも強い魔物たちに囲まれてしまった場合には、少しでもレベルが高い方が有利なのは間違いがない。


「いっ・・・いいのですか?

 皆さんを差し置いて、あたし一人で魔物たちを倒してしまって・・・。」

 ツバサが申し訳なさそうな顔をする。


「ああ・・・就寝前のランニングなどは経験値への評価は低くされているとギルドの受付嬢は言っていたが、流石にクエストで魔物たちと戦う経験値は見合った評価が受けられると思っている。

 だから、ここはツバサに任せようと思っている・・・決して俺たちが楽したい訳ではない・・・、皆もいいだろ?」


 あくまでもツバサのためであることは強調しておくが・・・あまり恩着せがましくしたくはない・・・、その上で源五郎やレイにも同意をもらっておく。


「そうですね・・・矢を魔物のすれすれに射かけることで、動きを制限したりすることは可能ですから、ツバサさんに一度に複数の魔物が襲い掛からないよう、サポートすることは可能と思いますよ。

 それだって、僕の射的の訓練になりますからね。」

 流石源五郎はどんな場合でも、自分を成長させる行動をとるよう前向きだ。


「あたしは・・・釣りが面白いから・・・、これだけでいい・・。」

 レイは魚を釣り上げることに快感を覚えたのか、釣竿を離しそうもない様子だ。


「ありがとうございます・・・、頑張ります。

 なんだか最初の冒険の時の特訓を思い出しますね・・・、あの時は後続の冒険者たちのレベルを上げるために、皆さんがそれぞれ協力して、魔物たちとの戦いをサポートしたんですよ。」


 ツバサは嬉しそうに笑顔を見せながら頭を下げる。

 やはり彼女は、ひたむきに日々の訓練を積んで、少しでも強くなるという事に貪欲なのだ。


 それにしても・・・どうやら同じようなことを前にもやっていたという事か・・・、まあ同じ奴がやっていることだからな・・・、場面は違えど考えることは一緒というわけだ。


「じゃあ、レイ・・・続けてくれ。」

「おっけー・・・。」

 レイは嬉しそうに、湖面に糸を垂らす・・・。


「つれたっ」

『シャリシャリシャリシャリシャリ・・・』ほとんど間をおかずに、レイがリールを巻きあげ始める。


『ザバッ・・・・ドンッ、ゴッ・・・シュッシュッ』すかさず俺が一体に体当たりし、続くもう一体は剣の鞘で払いのけ、源五郎が矢を魔物すれすれに射かけて足止めする。


『シュタッ・・・タッ、ジュバッ・・バズッ』すかさずツバサが足場の悪いボートの上ということを感じさせないほど華麗に宙に舞い上がり、一匹のブラックダンプを仕留める。

『ダダッ・・・シュッポンッ・・・』そうしてすぐさま次の標的に向かっていく・・・。



「もう魚影は見えなくなりましたね・・・。」

 釣り上げては倒すを繰り返し、恐らく20匹以上は倒しただろう、魚群探知機には魚影が見えなくなったようだ。


「じゃあ次のポイントを探すか・・、源五郎は魚群探知機を引き続き確認してくれ。

 レイ・・・糸を巻き上げろ・・・、次に向かうぞ。」


「はーい・・・。」

『シャリシャリシャリシャリ・・・』『ザッザッ・・・』レイが糸を巻き上げ終わったのを確認して、またもツバサと2人でボートを漕ぎ始める。


「あっ・・・ここは魚影が濃いです・・・。」

 モニターを食いいるように眺めている源五郎が、指示を出す。


「よーし・・・じゃあ、ここでまた始めるか・・・。」

 レイに糸を垂らすよう指示をしてアタリを待つ・・・そんなこんなを繰り返し、広い湖面を一周して戻ってきた。


「ずいぶんと倒しましたよね・・・2百は余裕で超えていると思いますよ・・・、ここだけでこんなに魔物がいるんじゃ、送られてきたはずの強い魔物たちの半分はここに潜んでいるという事になりますね・・・、確か5百匹くらいだって言っていたはずですから・・・。」

 源五郎が、モニターから目を離さずに告げる。


 確かにそうだ・・・湖を一周したとはいえ、まだこれから内側へ入っていかなければならない。

 湖岸一周でこれだけいるわけだから内側にもたくさんいることだろう・・・、そうなるとこの地で俺たちの冒険も終わってしまうな・・・なんてことを考えながら、ボートの進路を湖の中心部分に向ける。


「いました・・・。」

「じゃあ、レイ・・・たのむ。」

「よっしゃあ・・・。」


『ジャー・・・』レイが勢いよく糸を垂らし、『シャカシャカシャカシャカ』すぐにリールを巻き上げ始める。

『ざっばぁーんっ』まさに入れ食いなのか、4匹の魔物がボートの上に出現する。

 今度は体長が1メートルほどで、少しずつ大きくなっていくようだ。


『シュタッ・・・ザシュッ、シュッパァーンッ』ツバサが華麗に跳躍し、一匹目を瞬く間に倒す。

 1対1での戦いでありさえすれば、魔物の大きさに寄らずツバサは余裕で対応できるようだ。

『ドゴッ、バゴッ・・・シュッシュッ』そのツバサのフォローを俺と源五郎が、続けていく。



「もうすでに5百を越えましたね・・・やはり送られてきた魔物たちは、この湖に集結していたと考えられます。

 これでもう危険な魔物たちは一掃できたはずですから、どうですかね・・・直接魔王城へ向かっても大丈夫ですかね。」


 源五郎がモニターから目を外して、こちら側に問いかけてくる。

 湖面を渦巻き状に少しずつ内側に向けて進んできて、恐らくすぐ先がこの湖の中心部分だろう。

 ブラックダンプの大きさもすでに2メートルを超えているが、ツバサは十分戦えている。


 それでも倒した数からいって、もう打ち止めという事のようだ・

 なるほど魔物たちをすべて倒しきってしまえば、とりあえずの脅威はなくなるはずだし、後は魔王城に行ってパラボラアンテナ施設を警備していた魔王軍とやらを退治してしまえば、もう主力の魔物たちはいなくなるわけだ。


 そうなるとどうなるのだろう・・・、魔王や魔神に向けての道が開けるのか・・・?


「いえ、恐らく違うと思います・・・前に言った通り、あたしは魔王城にたどり着くまでの最低限の賢者のトンネルのカギを収集しました。

 クエストレベルが急激に上昇して引き受ける事ができなくなり、冒険を続けていくことができなくなったからです。


 それでも賢者のトンネルのカギを取得できるダンジョンの魔物たちは強力で、その周囲を守る魔物たちにも倒されて何度も命を落としました。

 あたしは正式にクエストを受けてダンジョン攻略したわけではありませんから、恐らくその魔物たちは今でも生きていると思っています。


 つまり、まだまだ世界中のダンジョンには狂暴な魔物たちがひしめいているはずです。

 この湖の魔物たちは、そのほんの一角でしかないと考えています。」

 ツバサがポツリとつぶやくように話す。


 確かに、凄い苦労をして南部大陸の魔王城にまでたどり着いたという話は聞いた。

 だがしかし、それはツバサのレベルが低いために相手が強力に映っただけであり、通常の冒険の最終局面レベルの魔物でしかないはずだと、俺も源五郎も想定している。


 ツバサが感じていることは、ツバサの冒険に対する経験値への評価の低さに起因しているのではないだろうか。


 だが、もしツバサのいう事が本当だったとしたら・・・一体どれだけの強烈な強さの魔物たちがこの世界に送られてきているというのか・・・、どのような方法をとったのかすらわからないが・・・逆に言うと、この地にだけ集中させる理由もないわけだから、素直に考えれば・・・という事ではあるのだが・・・。


 なにせボスキャラとして送られているわけでもないのだ・・・、ダンジョンに繰り返し出現する魔物レベルとして送られてきているのだから厄介なわけだ・・・、常にボスキャラとの戦いを続けなければならないわけで息を抜けないわけだ・・・、極限までの経験値を保有している俺たちは別にしての話だが・・・。


「分かった・・・ツバサのいう事を信じよう・・・、まだまだ強い魔物たちはいるはずだし、この湖の中だって油断はできないわけだ。

 源五郎・・・引き続き魚群探知機の確認をお願いする。」

 源五郎には申し訳ないが、もう少しモニターを注視していただこう。


「分かりました・・・あっそうですね・・・、先ほどまでとは色が違う魚影が・・・、大きさは2メートルはなさそうな感じですが・・、ちょっと細身の魚のようです・・・。


 もう少し先の・・・、湖の中央部に向かって泳いでいくようですね。」

 モニターを再確認した源五郎が魚影を発見する・・、どうやら魚の種類で色を変えて表示されるようだ。


「ようし、じゃあ、中央方向に向けて、再出発だ。」

 すぐにツバサとともに、ボートを漕ぎ始める。

『ズザザザザザザッザッパーァーンッ』うんっ・・・、何か悪い予感が・・・。


「大変です、この先に大渦が発生しました。」

 モニターを注視していた源五郎が顔をあげて叫ぶ。


「えっ?」

 すぐに後ろを振り返るが、もうすでに渦はボートのへさきに接触していた。


「巻き込まれるぞ・・・しっかりボートのヘリにつかまって放さないように・・・、はぐれたら大変だ!」

 すぐに大声で叫んで、皆に注意を促す。


『ギュルギュル・・・ザバーァーンッ』湖面に浮かぶ枯葉のような存在でしかない小さなボートは、大きな渦に巻き込まれて何回か回転した後、横波を食らって転覆した。

『ブクブクブクブク・・・』沈んでいくボートは見捨てて、何とか湖面に浮かび上がろうともがくが、なかなか体が浮かび上がっていかない。


 渦の中にいるため、湖底へと導いている水流が強すぎるのか、自由が利かないようだ。

 ふと見ると、レイが竿を握りしめたまま湖底へと沈んで行くではないか、やばいやばい・・・すぐに後を追って潜水する。


 左右を見ると、源五郎とツバサも俺に平行に泳いでレイの姿を追っている様子だ。

『ブクブクブク』すぐに源五郎とツバサに目をやりながら、のどの部分で水平に手のひらを振り、息が続くか確認すると・・2人ともOKサインを返してくる・・・、ふむ・・すると心配事はレイだけか。


『ザシュッ』すぐに湖底に向けて大きく両手でかいて加速する・・・、うん?何か人影が・・・一体どうして?

 さらにバタ足で加速して沈んでいくレイに追いつこうとするが・・・、果たして彼女の体をかかえたまま、この渦の中を浮上できるのか・・・、ちょっと不安がよぎる。


 すると、さっきからちらちらと見える人影のようなものがはっきりと見えてきた・・・、人魚?

 それはまさに人魚だった・・・、髪の長い若い女性が何人も沈んでいくレイの体にまとわりつくように集まってきている。


 しまった、魔物か?すぐに剣を抜いて咥えると、両手両足でもがいて加速する。

『シャラーンッ』何とか人魚たちに追いつくと剣を持ち構える・・・が、ありゃりゃ・・・これはまたきれいなお姉さんたち・・・、とても斬りつけることなんかできそうもない・・・。


 すると、お姉さんたちはレイの体をかかえてどこかへ連れて行こうとしているようだ・・、俺にも手招きしてくるが・・・、その視線の先には何か菱餅を巨大にしたようなものが・・・、お姉さんたちはレイの体をその巨大菱餅の下側へと運んでいくようだ。


 ううむ・・・・よく見ると巨大菱餅に見えるのは大きな船の船底部分・・・、つまり大きな船がひっくり返って沈んでいるように見える・・・、あれが沈没船なのか?

 何にしても仕方がない、レイを追って沈没船の下側へ向かって泳いでいく。


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