クエスト完遂
8 クエスト完遂
「じゃあ行くか・・・。」
『はいっ!』
ヒーリングゾーン内で本日終了としていない為ほんの一瞬でしかなかったが、先ほど受けた傷も回復し、かさぶたも取れた。
どのみち本日終了としても、眠った感覚などないのだからこれで十分だ。
『ギィッ』ゆっくりと石階段を上っていき、天井部まで到達し扉を開け振り返る。
「じゃあレイ、また全体攻撃やってくれ。」
「はーい、まっかせてー・・・全体光攻撃!」
『ぺかーっ』レイが両手を高く伸ばしながら唱える・・恐らく、待ち構えている魔物たちの一部に効果があるはず。
「じゃあ、行きます!」
『タッ、シュタッ』すぐにツバサが大跳躍して、階上へと上がっていく。
「よしっ俺たちも続くぞ!」
『ダダダダダッ』こうなりゃ勢いで・・・階段を駆け上がっていき、最終フロアに到達する。
うん?何もいないぞ・・・まさかレイの全体攻撃で・・・、こっち側にまとまって待機していたのか?
ふと見ると、ツバサも慎重に辺りの様子をうかがっている様子だ。
「今のうちだ・・・、上がってくるんだ。」
すぐにレイと源五郎を呼び寄せる。
『ゴゴゴゴゴゴッ』すると地響きとともに石でできた床が大きく揺れ・・・というか塔全体が揺れているような感じだ・・・、だんだんと揺れが激しくなっていくとともに床がところどころ盛り上がってきた・・・、ううむ、これは液状化現象か?
そうして盛り上がった床がだんだんとある形に・・・、大きな頭に角が二つ・・・そう先ほどまでの白い悪魔の上半身の形が、いくつも出現しだした。
『ピカッ・・・ピカッ』すぐに様々な方向から光線が発射される。
「一つ所に固まっているな・・・、狙われるぞ。」
『ダダダダダッ』走りにくい波打つ床だが、何とか足をもつれさせないように駆け出し、床から生えている悪魔の一つに向かっていく。
『ゴーッ』『シュタッ』すると突然そいつは口から真っ赤な火炎を吐いた・・・、危うく右旋回してよける。
「角からの光線以外に口から炎を吐くぞ、気をつけろ!」
『シュッパァーンッ』叫びながら、まずは一匹目を袈裟懸けにたたき斬る。
「雷撃!雷撃!雷撃!雷撃!雷撃!雷撃!」
『シュッシュッシュッシュッシュッシュッ』炎を吐くので雷付加に切り替えたようだ・・、源五郎の放つ矢が的確に悪魔たちを消滅させていく。
「光攻撃!光攻撃!光攻撃!」
『ぺっかー、ぺっかー、ぺっかー』レイも単体攻撃で悪魔たちを仕留めていく。
『シュタッ・・・ズバッ、ズゴッバゴッ』3m以上はありそうな巨大な悪魔の上半身よりも高く跳躍したツバサは、鉄の爪で連続攻撃を仕掛け、なんとか悪魔を葬っていっている。
『ダダダダッ』『シュパパァーンッ』『シュッポォーンッ』2体固まって出現していた間に割って入り、悪魔の右わき腹を水平切りすると、返す刀で隣の左わき腹を水平切りして仕留める。
「ふうっ・・・。」
その後も浮き上がってくる悪魔たちを葬り続け・・・辺りに動く気配を感じなくなり、ほっと息を吐く。
『ゴッゴッゴッゴッゴッ』すると、先ほどよりもさらに大きな地響きが始まり、皆緊張して身構えると『ドッゴォーンッ・・・ヒューンッ・・・・バラバラバラバラバラッ』床が崩れ落ち一緒に落下し、更に天井も崩れ落ちてきた。
「塔が壊れちゃいましたね・・・ごほっ・・・。」
『ぱんっぱんっぱんっ』全身にまみれた埃を払いながら、源五郎がせき込む。
「ああそうだな・・・、最上階部分の悪魔たちがこの塔の根っこだったという事のようだな。
みんな無事かー・・・?」
辺りを見回す・・・と、レイもツバサも埃まみれで真っ白だが、大丈夫そうに笑みを浮かべている。
「あっ・・・、なんかあるよー・・・。」
目ざといレイが塔の中央部分だったあたりを指さす。
「おお、鋼鉄の盾と光の爪に光の杖と射者の胸当てか・・・、なんか敵がすごく強力なんだから、もっといい防具を出してくれてもよさそうな気が・・・、といっても裏技でインチキしてきているわけだから・・・、それに対応する武器や防具もないという事か・・・、仕方がないな・・・。」
文句を言っていても何も変わらないので、ありがたくいただいた盾を装備する。
「まあ、何とか一撃で倒せているわけですから、あまりぜいたくを言っても・・・。」
源五郎も胸当てを装備しながら笑顔を見せる。
「光の杖って強いのー・・・?」
「ああ、そうだな・・今いた悪魔系やお化け系とかの魔物に対して大きな効果があるようだぞ。
光の攻撃魔法を使うときに杖を装備していれば、威力が増すはずだ。」
杖の取説を見ながらレイに説明してやる。
「ふうん・・・、じゃあ持ってるー・・・。」
レイも光の杖を装備した。
「あたしは・・・、鉄の爪より強力な武器であればありがたいです。」
ツバサも光の爪を装備したようだ。
「じゃあ、戻るか・・・今日はここまでにしておいて、明日はファブへ行ってみよう・・・、ちょっと危ない場面もあったから、やはり復活の木の葉は欲しいところだな・・・。」
「そうですね・・・機嫌が直っているかもしれませんから、行ってみましょう。」
中継車で始まりの村まで送ってもらい、ギルドに向かう。
『パンパカパーン・・・』「ツバサ様・・・、レベルZXにアップされました。」
ギルドで本日分の精算を行うと、ファンファーレが鳴り響きツバサのレベルアップが告げられる。
それだけ遥か上のレベルを相手にツバサは戦っていたのだという事を、改めて認識させられる・・大したものだ。
ギルドを出て、剣を研ぎに出したついでに防具屋で穴の開いた鎧の修理もお願いした。
ツバサも鉄の爪を研ぎに出し、源五郎は矢を補充する。
その後、中継車にあるモニターで本日分の冒険放送を見てから、もう一度ギルドに戻って本日終了とした。
「じゃあ、出発だ・・・。」
武器屋と防具屋で剣と鎧を受け取り、中継車でファブの港の東の森まで送っていただく。
馬車では1日かかる距離も中継車でなら半日もかからないので助かる・・・。
森の入り口からうっそうと茂る木々の中を歩いていくと・・・、やがて開けた空間にたどり着き、そこには天に届かんと伸びる巨大な木が生えていた。
「復活の木さん・・・、葉をお与えください・・・。」
木の下で目をつぶって祈りをささげる・・・。
<ならん・・・冒険者などの助けをすることはやめたといったであろうが・・・、更に今回は、以前懲りることもなく何度も力づくで葉を手に入れようとした馬鹿な娘を連れてきおって・・・、また力づくで攻めようというのか?容赦せぬぞ!>
天からの野太い声は、前と変わらず・・・というより前回よりもなお激しく拒絶する。
やはり、無理やり葉を奪おうとしたのはツバサだったようだ・・・。
「ごめんなさい・・・あたしが悪いんです・・・、最初のころは葉を頂けたので、危険なダンジョンに潜入するときには葉を咥えて行ったのです。
そうすれば復活することもあると信じて・・、おかげさまで命を落とす回数は激減しました。
ところがひどいときには日に2度もあたしが葉を頂いていくものですから、復活の木さんが怒りだしまして・・・、なにを無駄に葉を消費しているのだと・・・、復活の木の葉を消費しているという事は瀕死の重傷を負っているという事であり、あたら命を危険にさらしてまで冒険を続けてはいけないと説教されたわけです。
それでも死んでからの復活ではGが半減してしまいますし、あたしはあくまでも復活の木の葉に頼り続けました。
ところがある日、葉を頂けなくなってしまったのです・・・、無理やりよじ登って葉を頂こうとして3度命を落としました・・・。」
ツバサが目を閉じて、申し訳なさそうにうつむく。
「やっぱり無理やり葉っぱを落とすしかないよね?
あたしが光の魔法で太い枝ごと落とせば・・・、十回分くらいは使えるよ。」
レイが大木の下で光の杖を構える。
「レイ・・・だめだ、やめなさい・・・。」
すぐにレイをたしなめて、向こうへと追いやる。
「残念ですね・・・、また来ます・・・。」
復活の木に別れを告げる。
<またの機会などない・・・お前たち冒険者たちが、あたら命を粗末にする限り協力することはあり得ん。>
野太い声は、追い打ちをかけるように告げる。
「お言葉ですが・・・我々は冒険者です・・・、冒険ですから多少の危険は伴うわけでして・・・、時として命を失いそうになる場合もあり得るわけです。
そのような時に助けとなるのが、復活の木の葉というものではないのでしょうか?
折角のアイテムを得られなくなってしまいますと命を失ってしまい、本当に復活するしかなくなってしまいます。
しかも復活できる回数には制限があるのです・・・彼女はすでにその制限を超えてしまい、この命が尽きると復活が効かず、冒険を続けることができなくなってしまいます。
まあ1度限りの命なのは、我々も同じなのですがね・・・。
そのため、安心材料として復活の木の葉は必須アイテムと言えるのです、決して無駄に消費しないと約束します。
ですから、何とか1枚だけでも与えていただけないでしょうか・・・、葉を与えていただけないことで、無駄に命が失われることになってしまいかねません・・・。」
すると突然、普段はおとなしい源五郎が大木に向かって意見する。
<ふむ・・・葉を与えないことで、余計に冒険の旅に危険が伴うと申すのか?
だったら、そんな危険な冒険の旅など取りやめるのがよかろう・・・、そうではないのか?>
「いえ、それでは冒険者としてこの世界にやってきている意味がないではないですか。
冒険者としてこのゲームに参加しているわけですから、危険はつきものでも冒険の旅を続けるのは当然です。
何もしないで日々を過ごしていて何の意味がありますか?
ましてやこの世界はこれまでと違い、異常に強い魔物たちや町民たちが送り込まれてきています。
それらが送られてきたことによりゲーム機の解析が不能となり、地球からの冒険を続けられなくなったことからも、何らかの悪意が感じられます。
その目的をはっきりとさせて何らかの陰謀を感じた場合は、それを阻止する必要性があると考えているわけです。
そのためにも復活の木さんの協力が必要なわけです・・・、何とかお願いします。」
そういって源五郎は両手を差し出し頭を下げる。
<・・・・・・・・・・・・・・>
長い沈黙が続く・・・。
<お主たち3人は、その高い経験値をもってすれば、わしから無理やり葉を奪い取ることも、簡単なことではないのか?どうして無理やり葉を奪おうとしない?>
野太い声は威圧的な語調はやめて、おとなし目に尋ねてきた。
「ほらやっぱり・・あたしたちに挑戦してきているのよ・・・、だから力づくで・・・。」
「だからだめだと言っているだろ?やめなさい。」
張り切るレイを押さえつけて、その口をふさぐ。
「俺たちは、おかしくなったこの世界を元に戻すために来ました。
復活の木の葉の奇跡は、やはり復活の木さんの協力がなければいけないわけで・・・。
ですから、力づくでという事は考えておりません。」
復活の木と戦うつもりは毛頭ないことを、はっきりと告げる。
<そうか・・・わが葉を無理やり取得した場合・・・、わが葉はこの世で一番の猛毒と化す。
持っているだけでその命が減っていき、ひとたび口に入れればたちまち命を失い、リセットも復活も効かず消滅する・・・そうしなくて正解だ・・・。
この世界が・・おかしくなっているというのか?そうしてそれを是正しようと活動していると・・・。
そのためにこの子娘は、何度も何度もその命を落としながらも頑張って戦ってきたと言うのだな?
大変申し訳ないことをしたようだな・・・、だが、あまりにも多い葉の消費には苦言を呈するしかないのだ。
命を失いかけるという事は・・・、それだけ痛みを伴っているという事だからな・・・。
だがそれが、この世界のためだったとはな・・・いいだろう、葉を与えるとしよう。>
うん?差し出した俺の掌には、なんと復活の木の葉が2枚も乗っているではないか。
「こっこれは・・・、葉を複数枚頂けるという事でしょうか?」
なんともうれしいことだ・・・。
<いやそうではない・・・、恐らくここにやってきたのはクエストがらみだろう?
1枚はクエスト用だ・・・、葉を所持できるのは一人1枚だけだ、このルールは変わらん。>
野太い声が告げる。
「そうですか・・・、それでもありがたい・・・。
ほら、レイもツバサも願いなさい・・・源五郎は・・・っと、すでにもらっているな。」
源五郎の差し出した手には1枚の葉が乗っていた。
「ふっかつの木さん・・・葉っぱをください。」
「復活の木さん・・・、もう無駄に命を落とすような無茶はしません。
頼もしい仲間が来たから大丈夫です、ですから葉を1枚お与えください。」
レイとツバサの差し出す手のひらに1枚ずつ葉が舞い降りてきた。
「ありがとうございました・・・。」
復活の木に別れを告げて、始まりの村へと急ぎ舞い戻る。




