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ツバサⅡ

2 ツバサⅡ

「超人っていうのは・・・中央諸島にいたイエローマンとかいう超人の仲間ですかね・・・、彼らはツバサさんの知り合いで、確か世界最強って言っていましたよね・・・、しかも不死身だって・・・それがどうして倒されてしまったんでしょうかね?」


 源五郎が首をかしげる。

 確かにそうだ・・・世界最強の不死身の超人が倒されてしまっては困るのだ・・・、世界最強よりも強いやつがいるという事だろうか?


「そういえば・・・ツバサも格闘技では世界最強だが、それはあくまでも1対1での戦いの場合だといっていたな・・・、つまり複数で囲まれてしまうと、やられてしまうこともあるという事だ。

 さらに・・・千回リセットや死ぬことになると、その分身は使えなくなるとも言っていたな・・・。


 恐らく千回目がやってきたという事だろう・・・、そのため本人との通信が絶たれ、この回をもってツバサの分身は消えることになる。


 だがまあ・・・また別の分身を作り出せば済むことだ・・・、1からやり直しにはなってしまうだろうが、ツバサの場合は願いが叶う星でゲーム機を与えられているはずだから、問題はないだろう。


 初期キャラクターづくりを妨害する魔物たちも、クエストとして退治しておいたから、新キャラ作成を邪魔されることはないだろう。

 まあ、問題はないな・・・。」


 恐らく、別次元のこの星にいるというツバサ本人と通信ができなくなったために、これは一大事と考えて俺たちに何とかアクセスしようと、願いをかけたのだろう。

 俺たちだって、このゲームのことを一時でも忘れたことはなかったし、ゲームに関する情報を得られるならどんなことでもいいと願っていたから、互いの気持ちがリンクして、願いがかなったのだろうと想像する。


 まあ、だが・・・再度キャラを送れば済むのであれば・・・、問題は解決と言えるはずだ・・・最初からやり直しとなったにしても、本人はこれまでの冒険内容を覚えているはずだから、2度目はそつなくこなしていけるだろう、同じ結果という事にはなるまい。


「でも・・・ツバサさんは、裏コマンドを教えてもらっているのでしょうかね・・・。

 僕たちは裏コマンドを使って経験値99999999でキャラ設定しましたが、結局裏コマンドの操作方法は教えてもらえませんでしたよね。


 綾瀬さんが陰で設定した後で、自己キャラ作りから始めただけです。

 ましてや格闘技の世界最強という設定でしたよね・・・、そんな特殊な設定・・この星の住民であるツバサさんにできるとも思えませんね。


 ゲーム機では前回アクセス時の設定状況は確認できましたけど、利用できるのはあくまでもキャラ作成の外観データに限られて、経験値などは当たり前の話ですが、引き継ぐことはできませんからね。


 そうなると次にアクセスするときは、単に普通のキャラ設定でこの世界にやってくるわけですからね・・・、経験値00000001なのか0なのかわかりませんけど、それじゃあ、今の強力な魔物相手にしたら一瞬で消滅ですよね。


 千回復活できるにしても、クエストは一つもクリアできないでしょう。」

 源五郎がもっともなことを発言する・・・、そうだ、ゲーム作成者にしか知りえない裏コマンドを、一般のゲーマーに簡単に教えるはずなどないわけだ。


 ゲーム機を政府に回収され研究されるとなった時にも、恐らく百万程度の経験値を持ったキャラを作成する裏コマンドを教えた程度であろう。


 なにせバグ取り用のレベルという事だったから、それでも十分なはずだが、とんでもない経験値の魔物たちが多数送られていたがためにキャラ作りさえも行えず、もともと未知なる星にアクセスすることなどできない、まやかしの装置であったか、あるいは解析を妨害するためにゲーム機を不正に使用不能にしたかのどちらかと評価されてしまったわけだ。


 そうなると・・・確かに今いるツバサが最後で、以降はこの世界に冒険者キャラは存在しなくなってしまう・・・、俺たちを除いてだが・・・。


「あっ、始まりますね・・・。」

 これまでのいきさつを簡単に振り返ってから、本編放送が始まった・・・。


 それは本当に悲惨な戦いだった・・・とある小さな村の近郊に作られた巨大なパラボラアンテナ・・・、テレビ放送受信装置と銘打ってあるが、その装置が諸悪の根源だとして破壊を企てるツバサに対して、アンテナ施設を守らんとする黒い軍団・・・暗黒騎士団と名付けられているようだが・・・、数は多いわ強いは、ツバサはほとんど袋叩き状態で、施設の中に入ることも叶わずに入り口付近で断念し敗走した。


 恐らくその巨大パラボラアンテナで地球からの放送を受信しているものと考えるが、折角放送を受信できるようになったものをどうしてツバサが壊そうとするのか・・・、これではどちらが悪かわからない印象を受ける。


「お姉ちゃん、たった一人でみんなにいじめられて、かわいそう・・・。」

 レイが目に涙を貯めながら訴える。


 確かに黒光りする鎧を身にまとった巨大な騎士たちが、空手着のような軽装の美少女を集団で攻撃する姿というのは、見ていて忍びなくなる。

 何の事前知識もなくただ見ていたら、恐らく集団暴行にしか映らないだろう。


<いやあ・・・本日もツバサの突撃は失敗しましたね・・・、いや、でもまあよかったとも言えます。>

 またまた中継席からアナウンサーが、ため息を漏らしながら告げる。


<本当にそうです・・・、かわいいツバサちゃんは、お茶の間の皆さんのアイドルです・・・。

 いつも応援はしていますが・・・、だがしかしテレビ放送のためのアンテナ施設を攻撃してもらっては困ります。

 これでは地球からの放送が受信できなくなってしまう恐れがあります。


 いくら悪の組織暗黒騎士団が、パラボラアンテナ施設を根城としているとはいっても、アンテナ施設を戦いの場にしてもらっては困るのです。

 何とか話し合いででもして、場所をどこか遠くに移して戦ってほしいですよね。

 そうすれば我々としましても、心の底からツバサちゃんの応援ができるというものです。


 ツバサちゃん、明日こそ必ずどこか遠くで・・・お願いいたします。

 暗黒騎士団の皆さんにもお願いします・・・、いつまでもアンテナ施設に閉じこもっていないで、外に出てきて戦ってください。>

 アナウンサーに続いて、解説者が真顔で告げる。


<ところがですよ・・・以前に暗黒騎士団メンバーにインタビューできましたので、その内容をお伝えいたします。


 それによるとですよ・・・えーと・・・、アンテナ施設は精密機械の集合施設だから、できればここを主戦場とはしたくない。

 だが我々がここを離れると、ツバサがこの施設を破壊せしめんと攻撃を仕掛けてくる。


 そのため我々はここを離れるわけにはいかない・・・とおっしゃっているわけですよ・・・、これではどちらが悪役かわかりませんよね。>


 アナウンサーが手元の資料を読み上げる。

 ううむ・・・、やはりツバサは悪者扱いとなっているわけか・・・。


<あまりに何度も倒されて復活したがために、ツバサちゃんの分身の行動が少しおかしくなってしまったのでしょうかね・・・、本人とのアクセスもできなくなったようですから、修正も効きませんよね。


 ちょっと残念とも思えますが、それでも彼女の無事を祈らずにはいられない、ツバサちゃん大好き解説者のグンジでした・・・>

『カチッ』放送が終わりテレビのスイッチを切る。


「うーん・・・ちょっと困ったことになっているようだな・・・、どうしてツバサがあの巨大なパラボラアンテナを敵対視するのかわからないし・・・、更に暗黒騎士団といういわゆるゲームの悪役キャラだろ?恐らく魔王とか魔神の親衛隊のような・・・、綾瀬って人も魔王軍だったって言っていたから、そんな軍団だと思う。


 そいつらが、どうして地球からのテレビ放送を受信するためのアンテナ施設を守るんだい?

 悪役が守っているから、そこに何か陰謀があると考えてツバサが攻め込んでいるだけなのか・・・、わけがわからんな・・・。」


 何がどうなっているのか・・、やはりツバサに会いに行かなければならないようだ。

 だがしかし・・・、今日のような調子でツバサがいつまで無事にいてくれるだろうか・・・。


「南部大陸のヨランダ郊外ってテロップに出ていましたよね・・・、たしか賢者のトンネルを使っていける魔王城を北上していけばいいって定男さんが言っていたはずです。

 行ってみましょう。」

 流石源五郎・・・、記憶力が素晴らしい・・・。


「そうだな・・・また始まりの村まで戻らなきゃならんが・・・、行ってみるとするか・・・。

 じゃあ、本日終了とするか。」


「いらっしゃいませ、おひとり様50Gになります。」

 そのまま宿屋の受付カウンターへ歩いていき、宿泊の手続きを行う。



 ツバサはこのところ常に思っていた・・・今回を最後に、この冒険は終わってしまうのだと・・・。

 しかも、倒すべき悪の軍団の正体さえもつかめていない、初期段階で終わってしまうのだ。


 思えばこの冒険の世界がおかしくなり始めたのは10年前・・・、突然パーティを組んでいた仲間から一旦別れを告げられ、たった一人の冒険を強いられることになった。

 それでも構いはしなかった・・・今まで何度もやり直してきた、魔王のもとへ達して魔王と魔神を打ち倒す冒険を、今度はたった一人で行えばいいだけだった。


 ところがすぐに強力な魔物たちが冒険の世界にはびこり始めた・・・、そいつらはこれまでのどの魔王よりもどの魔神よりも強かった・・・、格闘技世界最強であるツバサでさえも、2体同時に相手にすることはとてもかなわないくらい強かった。


 少しの期間を置いて、必ずまたやってくると誓った仲間たちとも再び出会えることもなく、孤独な長い戦いが続き、その間何度もその命を失ったが、所詮ゲームキャラ・・・翌日には復活が可能であった。


 だがそれは先週までのこと・・・、もう宿屋で本日終了を告げて眠りについても、自宅のゲーム機の中で目覚めることはなくなっていた。


 自分本体との通信が切れたのだ・・・過去にもこういうことはあった・・・、リーダーたち地球からの冒険者たちが、この星の住民たちと仲良くなりたいと願い、そうしてツバサたちのいる次元へと実体化してしまった時に地球とのアクセスが叶わなくなったと、リーダーたちメンバーに教えてもらった。


 だがあの時と異なるのは、ゲーム機で通信しているのは今回はツバサであり、地球からの冒険者たちは一人も存在していない状況なのだ・・・、誰も別次元への移動を願いもしない。


 唯一考えられることは・・・長期間冒険を続けていると、やがて訪れるであろう出来事として、ゲーム機の扱い方法の説明とともにボディが教えてくれた、千回リセット若しくは死んで再生したときに、そのキャラには以降アクセスできなくなるという設定だ。


 もちろんツバサには、アクセスできなくなったゲーム機にキャラ設定からもう一度やり直す手順など、理解できてはいなかった・・・、ただ与えられたゲーム機に毎日横たわるだけだったのだから・・・。


 元々復活の効かない生身の体で冒険に参加した身の上でもあり、格闘技世界最強という設定はそのまま継続してくれる約束だったから、そんな回数気にもしてはいなかった。


 ところがそんな起こりえないことが現実になってしまった・・・、なにせ、魔物たちが強すぎるのだ。

 身の危険を感じてから復活の木の葉を手に入れようと、葉の提供を拒否する復活の木から強引に葉を奪おうとして、それだけで3回命を落とした。


 魔王城の近くの住民たちが先導して、地球のテレビ放送を受信すればツバサの冒険がなくなってももっと面白い放送を見ることができると、巨大なパラボラアンテナ施設建築を始めたときに、魔王城の魔王軍や魔物たちまで駆り出して工事をしていることを掴むまでに、すでに百回以上は命を落としていた。


 ここまで来るための賢者のトンネルのカギを手に入れるだけでも三百回は命を落とし、さらに遥か過去の時代へ戻れば、もっと面白い番組が見られるようになると宣伝して、毎日午後3時に時代をさかのぼるよう祈ることを、冒険世界の住民たちばかりか、ツバサたち願いが叶う星の住民たちにも願うよう指導し始めたことに反発し、テレビアンテナ施設を攻撃し始めたのはいいが、強烈な守護部隊に阻まれ、協力してくれた超人を失うとともにツバサ自身も6百回近くは命を落とした。


 ツバサ一人だけだった・・・ツバサ一人で何とかしなければならないのだが・・・敵は強大で数も多く、苦戦の連続だ。


 それでも奴らの願いが叶うことはない・・・、ツバサ本人自身は過去へ時をさかのぼるつもりはさらさらないし、ツバサの両親も同じ気持ちのはずだ。

 すなわち、全員がその願いすることはないと分かっているのだ・・・、それはこのゲームの世界でも同じで・・・、ツバサがいる限り願いがかなうことがないことは、誰もが承知の上のことだ。


 だがしかし、ツバサがいなくなっても願いがかなわないことが分かってしまったら・・・、ただ一人どうしても気持ちを同調させないキャラがどこかにいるはずだと、この世界中捜索が始まることだろう。

 あのおじいさんを守らなければならない・・・そのためにはツバサがいて、毎日強力な魔物たちと戦っている姿を見せつけていなければならないのだ・・・、だからこそ・・・負けられない。


 そう考えて頑張っているのだが相手が悪い・・・、超強力な暗黒騎士20体を一度に相手にしなければならないのはつらい・・・、更に以前手合わせしたときよりも、はるかに相手はレベルアップしているようなのだ。


 しかもクエストではないためか、一度倒した暗黒騎士が次に戦うときには復活しているのだ・・・、当初はツバサも復活できたためなんとも思わなかったのだが、自分の復活リミットが切れてしまうと、それが非常に悔しい。


 それでもツバサは戦わなければならない・・・この世界を守るために・・・、自分の戦いが間違っていないことを証明するためにも・・・、特攻ともいえる戦いを挑まなければならないのだ。

 巨大なパラボラアンテナが頭上に輝く白いコンクリート製の建物の前で、待ち構えていた暗黒騎士団に向かって果敢に攻撃を仕掛けていく。


「とうっ!」

『シュッパァーン!・・・シュッ、ガギッ・・・ゴンッ、ドガッ・・・』思い切り駆け込んで高く跳躍し、頭上から暗黒騎士の長いやり攻撃をすり抜けて、鋼鉄の爪をお見舞いする。


 一体を倒してすぐに体を返して、次の暗黒騎士に蹴りをお見舞いしようとしたところを盾で受けられ、長剣を腹めがけて振り下ろされる・・・、何とか左手の鋼鉄の爪で受け止めたがそのまま仰向けに地面にたたきつけられ、もう一体の暗黒騎士に長いやりで突かれるのを寝転がったまま体を回転させてかろうじて躱すが・・・、2撃目は体の中心めがけて振り下ろされてきた。


『シュッパパパァーンッ』万事休すと観念したが、ふと見上げると槍を構えた暗黒騎士が胴体から真っ二つに斬られていた。


「おまたせー・・・。」

 彼らはかつて地球のテレビ映画で見た、馬車が襲われているところを助けにきた騎兵隊のような・・・というか、実際に馬車でやってきていた。



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