中央の奴らの焦り
9.中央の奴らの焦り
「そういえば・・・お伝えを忘れておりましたが、実は新しい宝剣を手に入れたのです。
これにはどのような効果があるのか、鑑定お願いできますか?」
突然ツバサが冒険者の袋から装飾が施された剣を取り出す・・・先日、富士さんを倒した時に手に入れた宝剣だな・・・そう言えば鑑定がまだだった。
「ああっと・・・そういえば、僕も宝剣を持っていますが、こちらも鑑定がまだだったようです・・・。」
すぐに源五郎も思い出したかのように宝剣を取り出して、ツバサと共に占い巨乳美女の前に並べた。
そういや・・・ペレヘス湖北のアンテナ施設のクエストに向かっている時に、宝剣を手に入れたのだったな・・・あまりにも随分と前だったから、すっかり忘れていた・・・。
「おおそうか・・・どれどれ・・・???
これは・・・与力の剣じゃな・・・その名の通りに持つものに力を与えてくれる。攻撃の破壊力が増すわけじゃな。
攻撃力が倍増される。
攻撃力を増すということは、その反動に体が耐えねばならんということだから、当然のことながら持つ者の体自体も強固に変えてくれる・・・つまり防御力も上がるというわけじゃな・・・最重要アイテムじゃから持ち主を吟味して決めるのじゃぞ・・・。
もう一方は・・・これは連射の剣じゃな・・・連続攻撃の速度を倍加する・・・疾風の剣と似た効果ではあるが、どちらかというと投てきや弓矢などの飛び道具向き・・・といった感じじゃの・・・。
魔法使いが初級魔法を連発する場合にも役立つぞ・・・・もちろん、狙いを定めて精密狙撃をするときの邪魔にはならんよう、工夫されておるから安心じゃ。」
占い巨乳美女が、宝剣の名前と効能を教えてくれる。おおそうか・・・どちらもツバサと源五郎のためにあるような剣だ、そのまま持っていてもらえばいいだろう・・・。宝剣は持ち主を選ぶというか・・・その時のクエストで活躍して宝箱を開けた冒険者の能力を補填するような効力・・・と言った気がするな・・・。
「基幹プログラムが書き換えられた状態でも、我々がある程度戦える状態になったことは、非常にうれしいことです。
ですが・・・中央の奴らに対抗するには、これでは全く足りません・・・。
奴らは神出鬼没ですからね・・・今のままでも町民に混じって昼時間に襲い掛かって来れば、ツバサ以外は簡単に倒されてしまうでしょう。そうならないのは、ゲーム性を破壊してしまうと、この世界の存続が危ぶまれるという危惧と、我々がお色気路線にいずれは走るであろうと、中央の奴らの目論見に乗ったふりをしているからです。
でも・・・我々が冒険の旅を取りやめてしまえば、今でも超強力な魔物たちに占拠されているパラボラアンテナ施設の工事は進みません・・・それでは地球からの電波をいつまで経っても24時間受信することは叶わないということです。
我々の冒険は・・・主要なクエストを進めて行くたびに、各地のパラボラアンテナ施設が魔物達から解放され、建設工事が進み完成して行くという皮肉な運命なわけですが、お色気に走って危険なクエストに立ち向かっていかなくなれば、立ち行かなくなってしまうのです。
何もしなければ我々は魔王城を目指していたはずですから、中央の奴らが望む通りにストーリーを進めるためにクエストをこなし、世界各地のパラボラアンテナ施設を開放して回ったはずです。
基幹プログラムの書き換えは、全てのパラボラアンテナ施設が解放されて建設工事が進み、24時間地球からのテレビ電波が受信できるようになってからでもよかったはずですよね?
我々の冒険の旅も紆余曲折あって、確かに回り道も多くて進行が遅いという節はありましたが、どれだけ遅くてもあと半年以内には、恐らく魔王城までたどり着けるくらいまでストーリーは進んだはず・・・つまり半年待てば全てのパラボラアンテナ施設は完成すると予想はできたはずです。
ところがそこまで待たなかった・・・中途半端な12時間だけテレビ電波の受信がかなうとなった時点ですぐに基幹プログラムの書き換えをおこない、最大経験値であったはずの我々の経験値を初期値に戻してしまうという大改革を敢行した訳です・・・。
これによりテレビ電波受信による基幹プログラムの書き換えができるということを、我々は気づいてしまった・・・。
以降、パラボラアンテナ施設開放のクエストに対して、我々は慎重になりますよね・・・先ほども言いましたが、パラボラアンテナ施設はこの世界の重要な施設と思われるので、その開放というのはストーリー上でも重要な意味を持ち、進めていく上で必須のクエストではあるのでしょうが、別の方策を検討するかもしれないわけですよ・・・。
それならなぜ12時間だけ受信できるようになった時点で、基幹プログラムを書き換えたのでしょうか?」
ううむ・・・中央の奴らの考えが全く読めない・・・わざわざ手の内を晒して・・・何を考えているのだ?
「このままお主たちに冒険を継続させておき、24時間連続受信可能になってから初めて基幹プログラムを書き換えてしまえば・・・そうなるとお主たちの経験値は完全に初期レベルとなってしまい、そこからいくらクエストをこなして経験値を積んだとしても、地球から送られてきた超強力な魔物達に敵う事はなくなったじゃろう。
昼時間だけ経験値を初期値に戻す事で充分と考えたのか・・・確かにお主たちはずいぶんと危ない目にあった様じゃからな・・・ツバサが合体していなければ、恐らく全滅していたという推定は間違っていないじゃろう。
まあ、テレビスタッフたちにも助けられた様じゃがな・・・その辺りが、中央の奴らの読み間違いとも言える。
中央の指示によって行動する筈のゲームスタッフ達が自我を持ったことにより、夫々の考えで行動することが起こっている訳じゃからな・・・まあギルドや防具屋や武器屋など、中央直結のスタッフは表だって反旗を翻す事は出来んじゃろうが、自由に行動できるテレビスタッフや帆船スタッフ達などは、冒険者の味方になってくれると考えていいじゃろう。
テレビスタッフの役割は冒険者たちの冒険の様子をテレビ放送して、次元の向こう側のこの星の住民たちを満足させることであって、中央の奴らのご機嫌を取ることではないからな。帆船のスタッフたちの役割も同様に、お前さんたち冒険者のサポートに徹することとなるから、彼らは信頼できると考えてよいじゃろう。
少なくとも、冒険を続けていくということに関して裏切ることはあり得ない。
味方もそれなりにいるし、今ならまだ半日だけの変更じゃから・・・対抗できる手段は残されている・・・夜になれば中央の奴らに引けを取らない強さに戻るわけじゃからな・・・作戦次第では十分に戦える。
じゃが・・・そう言った懸念点もあったはずなのに、なおさらなぜこのタイミングだったのか・・・?ということじゃな・・・?多分焦っていたのじゃろう・・・。」
「焦っていた・・・ですか?」
「そうじゃ・・・ゲーム機というのは名ばかりの、超人兵士を作り出す装置であると世界中にその危険性を訴え、装置の検証に入る事になったら、その前に超強力な魔物たちを送り込んで、プレーヤーたちの初期保存も不可能にさせてしまう。
そうして兵器ではなかったが、他の星へ分身を送り込んで冒険を満喫するなどとは、全くのまやかしであるとのレッテルを貼り、使えもしないゲーム機を高額で販売する不徳な会社と見せてしまった。
当然そのような会社はつぶれてしまうわな・・・その後、その会社を乗っ取って、今度は自分たちが新たなゲーム・・・まさにお色気満載のゲームじゃな・・・を世に送り出してひと儲けしようと考えた。
恐らく背後に資本を持った大きな企業がいたはずじゃな・・・投資の約束をさせた後、計画を実行に移したのじゃろう。
ところが、すぐに基幹プログラムを書き換えて、新システム導入する筈が、肝心のパラボラアンテナ施設が完成しない・・・自分たちが送り込んだ超強力な魔物たちに占拠されてしまった訳じゃからな・・・。
じゃあどうしてこのように面倒な事になったのか・・・と言う事なのじゃが・・・魔物たちが地球からのテレビ電波を受信するパラボラアンテナ施設が、中央の奴らにとって重要な施設ということに気づいたのじゃろうと推測する。施設を占拠して、何か優位な交渉をしようと考えておったのではないかな。
高い経験値をもって送られてきた魔物たちにははっきりとした自我があるからな、当初はそれでも中央の言いなりになっていたのだろうが、やがて欲が出てきたのかもしれない。」
占い巨乳美女が、あごに手を当てながら難しい顔をしながら推測する。そうか・・・魔物だから重要な施設を占拠して邪魔するのは当然と考えていたのだが、そうではなく魔物たちが中央に対して何かを要求しようとして・・・。
「じゃあその要求というのは何なのですか?」
すぐに源五郎が尋ねる。
「それは分からん・・・魔物たちの本能は向かってくる冒険者の抹殺しかないのじゃからな・・・そうプログラムされていて、破壊の元凶のように思われておるが、実は冒険者を攻撃するとき以外の施設破壊はしない。
何もないときに破壊を続けていると、冒険者が救出する民や解放する施設が消滅してしまうからな・・・。
何もしなくてもシナリオをこなしていれば冒険者がやってくることは分かっているのだから、わざわざパラボラアンテナ施設を占拠して、冒険者を待つというのは異常だ・・・中央の奴らが画策したことにより、冒険者がこの地に来なくなってしまったことに腹を立てていたのかもしれないがな。
早く冒険者たちを連れて来いと要求しておったのかもしれんな。
じゃがそんな要求をのむことはできるはずもない・・・冒険は冒険でも、中央の奴らが考えている冒険は、魔物を退治していくというより、それに付随するご褒美を欲する気持ちに訴えかけ課金させる商用プログラムということじゃからな・・・超強力な魔物たちと必死になって戦うことなどあり得んわけじゃ・・・。
できれば、ある程度のところで退治されてくれるような、中央の奴らの思惑通りに動いてくれる魔物たちだけが必要だったわけじゃ・・・。
恐らくは・・・ほぼあきらめかけていたのじゃろう・・・ところが十年経過してツバサのリセット回数が千回を超えてしまい、ツバサを救うために次元の向こう側の住民たちがお願いをして、お主たちが最高経験値でやって来た。
そうしてお主たちの活躍により、一部のパラボラアンテナ施設が魔物たちの手から解放されて完成した・・・なんと十年越しという訳じゃ・・・。
予想外のことじゃが冒険者がやってきて、さらにパラボラアンテナ施設に巣くう魔物たちも退治してくれた。中央の奴らは町民で来ているから、魔物を倒してもシナリオは進まずにすぐに再生してしまうのじゃからな、冒険者でなければ駆除はできなかったわけだ。たから、お主たちのことを中央の奴らはありがたいと感じていた面もあるのじゃろう。
このまま待っていれば、お主たちは、この世界をもとの状態へ戻す為にシナリオを進めようと、どんどん各地のパラボラアンテナ施設を開放してくれる。すべての施設を開放してアンテナ施設が完成して24時間テレビ電波が受信できるようになってしまえば、後は中央の奴らの思いのままだ。何せ基幹プログラムでさえも書き換え可能なのじゃからな。
ところが、恐らく投資を約束した会社も待ったなしの状態じゃろう・・・十年待って話も立ち消えかけたところに突然、こちら側世界にある程度目途が立ったわけじゃからな・・・投資するからにはそりゃあもう・・・すぐにでも運営開始と迫ったのではないかな・・・。
なにせ新基幹プログラムと合わせて、お色気ゲームプログラムの製作費だってかなりの金額じゃろうし、テレビの放送電波に紛れてプログラムを送信する為に、電波枠を既に購入していたはずじゃからな・・・もう少し様子を見てから・・・ということにはならんじゃろ。
新たなゲーム機が完成してしまえば、それこそ自分たちが最高経験値の冒険者としてやってきて魔物たちを退治してしまえばよく、脅威はどんどん小さくなっていくと見込んでいるのじゃろう。
別にお主たちが頑張らなくても、パラボラアンテナ施設は完成して行くという訳だ・・・もしかすると既に最高経験値の冒険者たちが来ていて、パラボラアンテナ施設を開放して行っているのかもしれんぞ・・・。」
占い巨乳美女が、この世界に起きている異常事態の根本原因を、これまでの状況から説明してくれる・・・なるほど、そう言った訳であれば話のつじつまが合ってくる。俺たちは中央の奴らに反発して、この世界を直そうとしていたのだが、それらは全て奴らのためでしかなかったということだ。
ファブの港に停泊している戦艦は、お色気目的の新たな冒険者たちが船旅中の夜時間に強力な魔物達に襲われない様、武装していたのだろう・・・夜だけ守りきれば、昼間は安全なダンジョンのクエストをこなしていけばよい・・・。
「なるほど・・・送られてきた超強力な魔物たちがパラボラアンテナ施設を占拠していた訳は、自分たちの要求を通すため・・・例えばどこか自分たちが暮らせる島とかを要求していたのかもしれないですね・・・その要求を通すため、地球からのテレビ電波を受信できない様に妨害していた可能性があると・・・。」
「何を要求しているのかはわからんがな・・・あくまでもわしの勝手な推測じゃが・・・じゃが・・・これだけのことをするには・・・誰か開発者側の人間が、向こうについていると考えられるな・・・。」
「開発者側の人間・・・ですか?」
ううむ・・・段々と状況が見えてきた・・・そりゃあ経験値が高いだけの分身を送り込んだところで、中央を乗っ取ることは難しいだろうし、そもそも乗っ取った後で管理するにはそれなりの知識が必要だ・・・そこが今まで引っかかっていた点なのだ・・・言葉は悪いが、誰かが裏切って・・・。
まさか、また定男が・・・?なにせ、前回のトラブルの発端は、サーダが仕掛けたクーデターだったらしいのだからな・・・しかも奴は、美人のお姉ちゃんたちを囲ってハーレムもどきの世界を作り上げようとしていたらしい・・・ううむ・・・奴ならあり得ないことはない・・・。
俺たちがこの世界へアクセスして来た時に、奴も手伝ってくれたのだが・・・実はそ知らぬふりをして・・・と言うことも、考えられなくもない・・・なにせ、ある意味、俺たちのおかげでパラボラアンテナ施設が解放されて、昼時間限定ではあるのだが新基幹プログラムが受信できるようになったわけだからな。
「でも・・・そうなるともう僕たちには打つ手がありませんね・・・クエストをこなして冒険を進めて行くにはパラボラアンテナ施設に巣食う魔物たちを倒していかなければなりませんが、そうすることによって受信時間はどんどん伸びて行き、やがて24時間とも基幹プログラムが書き換わってしまいます。
かといってパラボラアンテナ施設のクエストをこなさずに停滞していたら、後から来る新たな冒険者たちに先へと進まれてしまいます・・・僕たちが動かなければ状況が進展しないのであれば、じっくり吟味して行動を・・・という事もできたのですが、そんなことすらできなくなってしまいました・・・。」
源五郎ががっくりと肩を落とす・・・この世界の状況が見えてきたところで、何の解決にもなっていないどころか、俺達の存在理由すら危ぶまれてきているのだ・・・何のために高価な武具を揃えたというのか・・・返金は可能か?




