地球からのテレビ電波受信の訳
3.地球からのテレビ電波受信の訳
「だからこそ・・・のテレビ電波の受信なのですよ・・・デジタル放送だと何百チャンネルと分割できると聞いたことがありますからね・・・しかもすべてのチャンネルが埋まっているわけでは全然ない・・・地球からテレビ電波のほかに、このゲームの基幹プログラムを送信しているのではないでしょうか?
データ放送なんて言うのもありましたから、その部分にプログラムを仕込んでしまえば何チャンネル分も使える。
だからこそ俺たちの力が弱くなってしまうのも、テレビ電波が受信できている時間に限られてしまうのでしょう。
なにせ、おかしなことは起きているのですよ・・・俺たち分身の体は基本的に食事をしなくても死にはしませんが、弁当を食べることによって、体力や魔力を回復させたりすることができますが、排せつはしません。
また、生殖機能は持っていないはずですが・・・ギルドや武器防具屋では課金してクエストをこなしたり、課金して武器や防具を購入すると、女の子をお持ち帰りにできるといった表示が出ているのです・・・これは俺たち分身に生殖能力・・・というか、SEX機能が付与されたとみて間違いがないと考えます。
なにせ先ほど話した新たな冒険者たちは、この付加機能目当てに来ているような会話をしていましたからね・・・」
最後の方はツバサやレイには聞こえないように小声で話す。
もしかするとツバサに結婚を迫った中央の奴らは、このような状態変更も視野に入れていたのではないのかな・・・。
以前、ダンジョンで催眠効果で眠らされたことがあり、何とか耐えたツバサが俺を起こそうとした時に、なんと・・・ツバサの胸を触ったことがあった・・・確かに指先には触感や温感があり、温かく柔らかいものを触っていたという感覚はあったが、女の子の胸をまさぐったという行為そのものに興奮しただけで、肉体の一部がどうこうなったわけではない。
つまり、俺の意識が高揚しただけのことだった・・・あの時と今は全く異なる。
「おお・・・そのようなことを・・・なんということだ・・・子供も一緒にできる健全なゲームを作ろうとしていたのだがな・・・まあゲーム機自体が高額になってしまい、子供が・・・といった考えは難しくなってはいたのだが、コンセプトだけは変えるつもりはなかった。
だが・・・恐らくその推測は正しいのだろうな・・・世界中に建設中のパラボラアンテナ施設には、そのような意味があったわけだな・・・。」
五郎じいさんは力なくうつむき首を振る・・・そりゃあそうだろうな・・・この星と宇宙全体の平和を願い、地球からゲーマーを募ろうとしていただけで、決して金儲けのためにあれやこれやの付帯能力は考えていなかった・・・というか、絶対につけるつもりなどなかっただろう。
「恐らく既にゲーム機も作っていて、販売を始めるのでしょう・・・いや、すでに売り出そうとしているのかも・・・俺たちが見た一団がデモ・・・と言うか、関係機関のお偉いさんたちの接待を兼ねたデモンストレーション・・・と考えれば納得がいきます・・・強力な武具を装備しているようなことを言っていましたからね。
半日しか基幹プログラムを操作できなくても門限を作っておいて、テレビ電波でプログラムを送ってきている時間以内に、必ず村や町に戻ってきているようにすればいいわけですよ・・・これまでのように、何日もかかるようなクエストは発生させない。そうして夜時間は分身を眠らせておけばいい。
都市間の行き来なども夜時間のうちに安全に移動できるようにしてしまえばいいわけです・・・この星は夜時間でも太陽は登っていますからね、夜間移動しても違和感は出ないでしょう。そうして半日限定で昼時間のみ冒険やお楽しみをさせればいいのです。
こういったゲームは基本的には男性ファンが多いのですが、俺の妻だったレイやツバサのように女性が参加することもありますが、それを見越してマッチョマンの男性も準備されていましたし、夫婦で参加する場合は、互いの分身で楽しむこともできるでしょうし、それぞれ別の相手をお持ち帰りすることもできるわけです。
いわば倦怠期対策・・・というか、若き日を思い出して・・・何せ分身は自分の好みで外観設定できますしね、しかも年齢不詳で体力はありますから、いくらでも・・・という夢のような毎日が送れるわけです・・・まあ本当に夢の中の世界でではありますがね・・・その体感は毎日送られてくるわけですから・・・恐らく病みつきになってしまうでしょう。
本当の浮気と違い子供ができる心配はありませんし、何よりバーチャル・・・と言った安心感がある訳です。
ですが・・・通常ネットゲームの課金とは、無料ユーザーに差をつけるちょっと格好のいい装備とか、忙しくて毎日参加できない人のためのお助けアイテムを購入するためのもので、ゲームのストーリー性やキャラクターなどでユーザーを
獲得するのでしょうが、今回はストレートにお色気目的の客を取り込もうとしています。
お色気路線が嫌いというわけではないのですが、あまりに安直というか・・・仲間を募って・・・と言ったことがかなりやりづらくなるでしょうね。」
ううむ・・・俺たち以外に冒険者たちが来てくれることは本当はうれしいことなのだが、ゲームに対する目的が異なってしまうと同調できないし、やりにくくなってしまうだろうな・・・。
そのゲーム機を、地球の俺は購入するだろうか・・・?青空商会はつぶれてしまったはずだから、別の会社が売り出すのだろうが、果たして地球の俺がこのことに気づくのだろうか・・・?ということだな・・・。
「君の考えは正しいのかもしれん・・・なにせ、ここまでのことが起きているわけだからな・・・だがなあ・・・ゲーム機もまた、青空商会で制作したもの以外では、この星と通信できないよう願っているはずだ。
つまり青空商会が復活しない限り、ゲーム機の製作はできないし販売もできない訳だが、たとえ青空商会が復活したとしても、わしの孫たちは、そのようなゲームを製作しようとはしないだろう・・・いくら金に困っていようが、決してそのようなことはしないはずだ・・・。」
五郎じいさんは渋い顔をしながら否定する・・・確かにそうだ・・・彼らがこのようなゲーム機を製作するとは考えられない。
「企業乗っ取り・・・というか、どこか別の会社が青空商会を買い取ったとしたらどうなりますか?
青空商会は莫大な負債を抱えて倒産したため、その負債額が大きすぎて買い取り先が見つからず、9年間もずっとそのまま放置されていたはずです。
その負債ごと買い取ったとすれば、その会社は青空商会を名乗ることが出来ますから、そこで製造したゲーム機は、この星と通信できるのではないでしょうか?」
すると突然、源五郎が口を開く・・・なるほど・・・さすが経営者らしい発想だ・・・そうか・・・どこか別の会社が買い取って・・・。
「いや、ちょっと待て。
大空一家が再起を図ってもう一度ゲーム機を製造するならともかく、別の会社が買い取って再度ゲーム機事業を起こそうなんてこと、考えるとは到底思えない・・・なにせ世界中の科学者たちが寄ってたかってゲーム機を解析して、他の星へ分身を送ってゲームに興じるというのは完全なまやかしだと認定したわけだからな。
そんな怪しい事業のために巨額の負債を肩代わりしてまで買い取るような、奇特な会社など存在しないだろう。」
一瞬すごい発想だなと感心してしまったが、使えないゲーム機のために大枚はたく企業があるとは到底思えない。
「いえ・・・そもそもゲーム機が使えないと判定されたのは、不正アクセスして強力な魔物たちをゲームの世界に送り込んであったからです。
つまり、その魔物たちを送り込んだ人たちが所属する会社であれば・・・あのゲーム機は本当は使えることが分かっていますし、さらに自分たちが送り込んだ魔物たちですから、どれだけ強力でも処理可能なはずです。
恐らく何年も前から用意周到に計画された・・・。」
源五郎が、悔しそうに下唇をかむ。
「その発想は俺だってないことはない・・・だが・・・強力な魔物たちを送り込んでから10年・・・さらに最高経験値の自分たちの分身を送り込んで早9年だぞ・・・その間何をしていたんだ?
いくら何でも時間がかかりすぎだろ?
普通だったら・・・青空商会が倒産してすぐに買収にかかるだろ?なにせ9年間に負債の金利はどんどん増えていっているはずだから・・・ここへ来る前に俺も心配して調べてみたが、融資元の銀行は、どこも負債請求を取り下げてはいなかったし金利も据え置いたままだったはずだ。
なにせ融資額も膨大なだけに負債請求を放棄してしまうと、今度は自分たちの損益として計上せざるを得なくなってしまうわけだからな。
銀行としては未回収の資産としてそのまま計上していたほうが、見かけ上の資産は目減りしないわけだ。
通常は、いくつかの銀行が経営の安定化のために早々に損失計上して負債請求を取り下げていき、ある程度負債額が減免されて土地や建物の資産額と見合うようになったら企業売却となるのだろうが、青空商会の場合はどこの銀行も負債請求を取り下げず、いわば他銀行の動きを待っているようなお見合い状態が続いていたわけだ。
つまり時間がかかった分だけ、より大きな買い物になってしまっているのだ・・・。」
時間の経過とともに買収がますます困難になっていくというのに、どうして手をこまねいていたというのか?
「そこなんですよね・・・僕も悩んでいるのは・・・。」
源五郎が腕を組む・・・わざわざ借金の金利が膨らむのを待っていたということは考えにくいし、ほとぼりが冷めるのを待って・・・と言うのも、ちょっと違うような気がする。
なにせ世界レベルで、使えないゲーム機のレッテルを貼られていたわけだからな・・・。
「こういうのはどうでしょうか?・・・ツバサさんが原因でしょうかね?
ツバサさんがゲームの世界にいたから・・・彼女が存在する限り、いかがわしいゲームに移行することが難しいという判断・・・をしていた訳です。
そのツバサさんも千回リセットして、もうあと一回戦いに負けてしまったら復活できないとわかって、ようやく買収に踏み切ったと・・・そんなところではないでしょうかね?」
源五郎が、何とかつじつま合わせの言い訳で取り繕う。
「ふうむ・・・プログラムの基幹部分を変えることによって、分身たちの経験値を操作したりできるようになったが、分身自体を消すことはできない・・・まあそうだろうな・・・ツバサの冒険は次元の向こう側の世界に毎日放送されていたわけだから・・・突然その放送がなくなってしまえば、それは異常に映るだろう。
そうなると、このゲームの世界の存続も危ぶまれることになってしまう・・・何せ次元の向こう側の住民たちが、この星の真の住民であるわけだからな・・・俺たちはその場所を借りているに過ぎないわけだ。
なんか引っかかるが・・・ともかく現状の異常事態は別のゲーム機・・・というか、青空商会の発想とは別のゲームになろうとしているのは間違いがないだろう。
その理由として青空商会が買い取られてしまい、買い取った会社がゲーム機販売に乗り出したとする推測も恐らく正しいだろう・・・しかも今回は超人的な身体能力を有する冒険ゲームではなく、完全なお色気路線だからな・・・。
どの国も、兵器製造とは想定しないだろう・・・。」
ううむ・・・大変なことになってしまったようだ・・・。
「この世界に送られてきている僕たちを、敵は本気で排除にかかるでしょう・・・なにせ僕たちがいる限り、いかがわしく変わったこの世界の状況が、向こうの次元世界に放送されてしまうわけですからね。」
「いや・・・まあ・・・その・・・お色気路線が全くダメということはないだろう・・・たまにはそういった楽しみも・・・ということもありなのだろうが・・・すべてがお色気では、向こうの世界の視聴者たちが不満を漏らすだろうな。
だからこそ俺たちを抹消して冒険放送を取りやめる・・・それでも地球からのテレビ放送受信が長時間にわたってできるようになっていれば住民たちから不満はでないだろう・・・うまいこと冒険放送を最終回にもっていけばいいわけだ。」
こんなことになるのなら・・・北部大陸へやってきてから無駄に過ごした3週間・・・いや、北極海を周遊していた3週間だって時間がかかりすぎた・・・。
さらにカジノ狂いというか・・・あれは源五郎が幻覚を見たいがためということもあったが、アレヘスでも3週間近く時間を費やした・・・無駄に過ごした時間だけでも1ヶ月半はあるな・・・この分頑張って冒険を続けていたなら、今頃魔王までたどり着いていただろうか?・・・最高経験値で来ていたわけだからな・・・ううむ・・・悔やまれる。
「それはそうと・・・お前さんたち・・・昼間は弱くなったと言っていたが、それでどうやってここまでたどり着いたんじゃ?
超強力な魔物たちがいるわけなんだろ?経験値をほぼなくされて、どうやって戦ってきたというのじゃ?」
すると突然五郎じいさんが口を開く・・・そうか・・・詳しい状況を説明していなかった・・・。
「いやあまあ・・・超強力な魔物はクエストの中ボスとして存在するだけで、クエストを引き受けさえしなければ問題はなかったわけです。
それでもクエストを引き受けなければ賢者のトンネルの鍵も手に入りませんし、ここまで到達することもかなわなかったわけです・・・なにせ途中から巨大な関所が作ってあって後退できなくなっていましたからね。
さらにアンテナ施設建築が一段落したのか、平原の魔物たちが戻ってきて・・・雑魚魔物ですが今の俺たちには強敵でした・・・ですが・・・俺たち全員の経験値ははく奪されてしまった様なのですが、ツバサだけは・・・彼女だけは向こうの世界のツバサ本体と合体しているのです。
そのためツバサ本体の力は健在ですので、それで何とか強力な魔物を倒して賢者のトンネルのカギを入手しました。」
経験値を失ってからの、ここまでの経緯を大まかに説明する。
「いえ・・・あたしの力というより・・・あの時は夜も更けて、皆さんの経験値が戻ったから・・・経験値が戻る前も皆さん奥義だけは使えたので、それで戦っていたようです・・・あたしはどちらかといえば・・・逃げ回って時間稼ぎをしていただけですよね・・・。
本当に身の危険も顧みない、皆さんの勇気のおかげで、助けられました。」
ツバサがすぐに首を振って否定しながら笑顔を見せる・・・謙虚なツバサらしい態度だが、そんなことはない、本当にツバサに助けられているのだ。
「がっ・・・たい・・・向こう側の次元の本体と、合体しているというのかね?
そうか・・・子供たちが確かに合体合体と騒いでいたな・・・本当に・・・この星では何でもありだね・・・それで、経験値をはく奪された状態でも、ツバサだけはまともに戦えるというわけか・・・何せ世界最強の格闘家なのだからな。
だがまあ、どうなのだろうな・・・ゲームとはいえ戦っているわけだから、いわば命のやり取りをしているわけだ。
こちらの世界のツバサが戦いに敗れて命を落とすことになったら、本体はどうなる?危険ではないのか?」
五郎じいさんは厳しい表情で告げる・・・ツバサの合体には否定的な様子だ。
「そうですね・・・その点に関しては俺たちも思案しました・・・なにせゲームの世界のツバサに引っ張られて、ツバサ本体も移動しているようですし、食事や睡眠もこちら側の生活が反映されるようです。
そうなると、こちら側の世界で敗れてしまい命にかかわることにでもなったら・・・と俺も想像してみましたが、ゲームキャラの俺たちは死ぬことはありません。
食事をしなくても元気がなくなり動きが悪くなるだけで、もちろん死にませんが、戦いに敗れても死にません・・・瀕死状態までなら復活の木の葉で復活しますが、復活できない状態であったとしても、リセットや保存して再度ログインすることで元通りに復活します・・・保存した場合は、獲得したGが半分になってしまいますけどね。」
五郎じいさんに、ツバサの身の安全性の説明を始めることにした。




