基幹プログラムの書き換え
2.基幹プログラムの書き換え
「へっ・・・クエストを引き受けるのに金が必要になったのか?」
「はい・・・供託金として必要なのです。」
そういいながら受付嬢は、深く頭を下げる・・・おおっと・・・目の毒目の毒・・・。
「仕方がないな・・・。」
冒険者の袋を開ける・・・あれ・・・?
「今・・・1000円って言ったよね?1000Gの間違いなんじゃないのか?」
いくら何でも地球の・・・しかも日本の円がこの星に流通しているはずがない・・・プログラムのバグだな・・・それにしてもこのレベルのクエストであれば報奨金は数十Gから百Gのはずだから、申し込み料が高すぎだぞ・・・。
「いえ・・・1000円です・・・供託金として課金が必要なのです。
供託金はクエストが成功している限り1ヶ月間有効ですが、クエスト失敗となると没収されます。
このギルドでのクエスト難易度クラスは全てCかDですが、冒険を進めていきますとクエストの難易度上位クラスも選択可能となっていきます。
難易度クラスはS、A、B,C、Dとございまして、それぞれお気に入りの子のお持ち帰り期間が7日、5日、3日、1日、お持ち帰り不可となっておりまして、SからCクラスのクエストをお申し込みの場合は、供託金を納める都度、攻略のヒントがもらえるようになります。
難易度Sクラスを選択されましても、5回のヒントでどなたでも攻略できる安心設計となっております。
大変申し訳ございませんが、お客様の通帳残高にはGはありますが円はありません・・・課金をお願いいたします。」
そういいながら受付嬢は再度頭を下げた・・・何ということだ・・・課金が必要だなんて・・・そんなことこのゲーム始まって以来のことだぞ・・・。
いや・・・確かにこのゲームも通信費として毎月支払いがあったはずだな・・・再開後すぐに使えなくなってしまったからすっかり忘れていたが・・・それでもクエスト時の課金などはなかったはずだ・・・。
いやまて・・・そうか・・・この色っぽい格好の受付嬢やバニーガールたちも、クエスト成功時にはお持ち帰りができるということだから・・・だから課金制ということなのだろう・・・実際にHできなくても、かわいらしい受付嬢や美人でスタイル抜群のバニーガールたちを裸に引ん?くだけでも十分楽しめるだろうし・・・仮にHも可能なんて事にでもなれば・・・妄想が膨らみ過ぎて固まってしまいそうだ・・・。
さらにさっきの冒険者たちが言っていたように、世界中を回ってその土地のかわいこちゃんをゲットということだな・・・しかも難易度クラスという経験値とは別のランク分けがされてきた・・・お持ち帰り期間が変わるのだから、難しいクラスを選択したくなるだろう・・・そのためにはレベルも上げなければならないし、冒険を続けていく必要性が生じるわけだ・・・海王シリーズの武具とか・・・わけのわからん話しもしていたが・・・。
純粋に冒険を楽しむだけならDクラスを選択すればいいだけで、その場合はクエストを失敗さえしなければ月に1000円で済むわけだ。
ギルドへ来るたびに目の保養にはなるしな・・・。
つまり、お楽しみには現金を払えということなのだろう・・・だがしかし、いつからこのゲームはそのようないかがわしいものになったのだ?健全な冒険ゲームではなかったのか?
決してお持ち帰りが目的ではないのだ・・・普通にクエストを引き受けることはできないのだろうか・・・?
「ああそうか・・・残念だが、俺達は地球からの課金はできないんだ・・・悪いがクエストは取り下げるよ・・・。」
地球との通信を絶たれている身の上なのだ・・・課金など出来るはずがない・・・というよりも、お持ち帰り目的のクエストなど、とてもできないのだ・・・娘が一緒に来ているのだぞ・・・。
がっかりしながらギルドを後にする。
「どうして?どうしてクエスト出来なかったの?」
しつこくレイに聞かれるのだが、何も答える気にもならない。
「まあいいじゃないか・・・とりあえず銅剣を研ぎに出すとしようか・・・。」
レイの問いかけを無視して、ギルド隣の武器屋に寄る。
「銅剣の研磨依頼ですね・・・20Gですが、見学なさいますか?」
「へっ・・・?」
「どうぞこちらへ・・・。」
武器屋もいつものおやじではなく、タンクトップに超超ミニスカートのかわいらしい女の子が出てきて、銅剣を受け取るとなぜか俺の手を引いて奥の部屋へと連れていかれる。
そうして俺の目の前で胡坐をかいて・・・当然ミニスカートなのでパンツは丸見えだ・・・そのまま銅剣を砥石で研ぎ始めた・・・身をかがめるので、立っている俺の目線から大きめのタンクトップの隙間からそのふくよかな胸の先が丸見えとなる・・・。
「大変ありがたいのだが・・・武器は明日の朝に取りに来るので、それまでに研いでおいてくれればいいから・・・。」
そういって焦って部屋を出ていこうとする。
「そうですか・・・課金して武器を購入されますと・・・その・・・サービスとして・・・一緒にお部屋までお届けに上がります・・・そのまま一晩・・・。」
背後から武器屋の女の子が色っぽい声をかけてきた・・・ううむ・・・風俗・・・これが、さっきの冒険者たちが言っていた高級な武具の特典という事なのか?
「どうしました?顔が真っ赤ですよ・・・。」
「はぁはぁはぁ・・・ああそうか・・・源五郎も矢を買い足したとしても、一緒に奥の部屋にはいかないほうがいいぞ・・・。」
恐らく耳たぶまで真っ赤になっているだろう・・・。
「皮のグローブの修復ですね・・・見学なさいますか?」
「いえ・・・明日の朝取りに来るので、それまでに仕上げておいてください。」
ツバサが皮のグローブの修復を、マッチョマンの青年に依頼したようだ・・・まあ皮のグローブの修復では色っぽい格好は想像できないしな・・・特に男ではな・・・。
「あたしはー・・・炎の杖だねー・・・。」
レイは炎の杖を購入した・・・昨日投げてしまったからな・・・。
こうなると防具屋も同じ感じなのだろうな・・・皮の鎧もかなりダメージを負っているのだが・・・。
「皮の鎧と兜の修復ですね・・・了解いたしました・・・見学なさいますか?」
予想通り防具屋でも髪の長い美しい顔立ちの女の子が、やはりタンクトップと超超ミニスカート姿で手を引っ張っていこうとする。
「いや・・・悪いが明日の朝取りに来るので、それまでに仕上げておいてくれ。」
そういって防具屋を後にする・・・源五郎はブレザーとスラックスを、レイはセーラー服を、ツバサも初級の拳法着をそれぞれ修復に出したようだ。
「じゃあ、まだ時間も早いから村の中でも散歩しようか・・・プライベートだからカメラもインカムも外そう・・・。」
誰に断るでもなく、なるべくさりげなく言ってからヘッドカメラなどを取り外し、村はずれまで周囲の目を気にしながら歩いていく。
「おやおや、どうしたのかな・・・?ずいぶんとラフな格好をして・・・。」
村はずれの地下牢へ降りていくと、五郎じいさんが物珍しいものでも見るかのように、丸い眼鏡を右手指先でつまみ上げながら、何度も俺たちの格好を見返した。
「はい・・・話せば長く・・・いや長くはならないか・・・昨日の朝から突然、俺たちは弱くなってしまったのです。
恐らく経験値はほとんどなくなったでしょう、初級の武器防具しか身につけられなくなってしまいました・・・それすらも今修復に出していますがね。
しかも不思議なことに・・・昨晩は強さが戻ったのです・・・そうして今朝になるとまた弱くなった・・・およそ12時間で変化しました・・・。
更に・・・信じられないことに俺達以外に冒険者たちがやってきました・・・ただし・・・一緒にクエストをこなす・・・といった感じではありませんでしたがね。」
五郎じいさんのことも考え、なるべく悲惨にならないよう明るめに、しかも簡潔に説明する。
「おお・・・なんだか冒険者たちが突然弱くなってしまったようだと、次元の向こう側の村の子供たちが言っていたが、事実というわけか・・・それはまた大変だな・・・そうすると今晩、また強さが戻るということなのかな?」
「ああ・・・そうなってくれるとありがたいですがね・・・。」
期待はしているが、昨日起きたことがまた今日も・・・とはならないのが世の常なのだ・・・。
「気になっているのが弁当なんです・・・何せ朝飯食ったら突然弱くなってしまったわけです・・・何か悪いものでも食べたとしか考えられない・・・。」
弁当箱を冒険者の袋の中から取り出して五郎じいさんに見せる・・・今朝食べたのと同じのり弁当だ。
「いや・・・弁当を食べたからと言って、急に弱くなるとは考えられん・・・何せ経験値というのは絶対に下げられないようにプロラムの基幹部分で制御されているはずじゃからな・・・それをやってしまったら商用プログラムとは言えなくなってしまうし、しかも強くなったというのも同じ弁当を食べた晩飯後なわけだろ?
そんなことが起きたとすれば、プログラムの基幹部分を書き換えたとしか思えないが、それには誰かがこの星にやってきて手動でコンピューターを操作して書き換える必要性がある。
ネットワークを使ってのリモートでは、書き換えられないようプロテクトしてあるからな。
そうして、この星には他星から誰も訪ねてくることがないよう祈ってあるから、実質的にプログラムの書き換えは不可能なわけだ・・・。
ゲーム機を使って自分の分身をこの世界に送り込むことは可能じゃが、それはあくまでもデータ上のことだから、その分身が中央を制圧して制御したとしても、プログラムの基幹部分は書き換えることは不可能なのじゃ。
おお・・・うまいなあ・・・。」
五郎じいさんは平気でその弁当を受け取ると開封して食べ始めた・・・まあそうだな・・・五郎じいさんには、高い経験値など設定されてはいないだろうからな・・・。
「そうなると・・・一体どうして・・・。」
話しながら冒険者の袋の中から、貯めこんだ弁当を取り出して葛籠に入れていく・・・北部大陸で無駄に時間を使ったせいか、期間が開いたので葛籠の中身は空っぽだった・・・申し訳ない。
ただ、その分貯めにため込んでいたので、今度は数ヶ月分はあるだろう・・・結構各地のご当地弁当も入っているから、色とりどりで見栄えもいいはずだ。
「まあ事実を事実として受け止めるとしたならば・・・誰かがプログラムの書き換えを行ったとしか考えられないわな・・・更にプログラムを書き換えたことにより、新たなゲーム機で冒険者たちを送り込んできている・・・どうやったのか方法はさっぱりわからんがね・・・もう一個食べてもいいかね?}
五郎じいさんはのり弁当を瞬く間に平らげると、2つ目に手を伸ばした。
「そうですか・・・やはりプログラムをね・・・しかもその方法は制作者側のあなたにもわからないと・・・参りましたね・・・俺たちの経験値を奪った方法が分からないと、取り戻すことも難しいということになってしまう。
仮に今日も夜時間は強さが戻ったとしても、それが恒久的なものかどうかも信じられないですしね。」
ううむ・・・一体何が起こっているというのか・・・ギルドも武器屋も防具屋もやたらと色っぽくなっていたが、確かにこのゲーム機を購入した当初のように、独身で彼女なしの俺であったなら、それこそ天国のように感じたことだろう。
だが今は娘も一緒にいるし、何よりこの世界に来た目的が、このおかしくなった世界を取り戻すということなわけだ。
ますますおかしくなってきてはいる・・・早急に取り戻すよう行動しなければならないわけだが、経験値をほとんど奪われてしまい、さらに課金しなければクエストを引き受けられないために、クエストをこなして経験値を上げたり、ストーリーを進めることすらままならないわけだ。
「いいじゃない・・・これは神様の思し召しなんだよー・・・せっかく地球のテレビ番組を見られるようになったんだから、その時間くらいは休みなさいって・・・そう言っているんだよ・・・だからテレビ放送を受信している時間は、弱くなっちゃったんだよ・・・。
冒険は、テレビ放送が終わってからやればいいってことなんだよー・・・。」
すると突然レイが口を開く・・・しかも何とも意外な言葉が・・・
「そっそうか・・・テレビ電波か?
こっ・・・このゲームを動かしている基幹プログラムがインストールされているコンピューターは、この星のどこかの大陸にあって厳重に守られていますよね?
そのコンピューターとの接続を絶ったとしたら、このゲームの世界は成り立ちますか?」
ううむ・・・俺の推測が正しければ・・・。
「いや・・・それは無理だ・・・確かにメインコンピューターは基幹プログラムだけで、実際にこの世界を作り上げているコンピューター・・・というか、実はこの星で願うことにより実現した、スーパーコンピューターよりもすごいミラクルコンピューターなわけなんだが・・・基幹プログラムがなければ動かない。
基幹プログラムはいわばベースであり、そのプログラムを一定間隔で読み取りながら、ミラクルコンピューターがこの世界を作り出しているわけだ・・・土台がなければ、この世界は崩壊してしまうよ・・・。
ミラクルコンピューターは中央制御室で操作可能だが、メインコンピューターの置いてある場所には、分身ではたどり着くことは出来ないようにしてある。」
五郎じいさんは、自信満々で首を振る。
「では・・・その基幹部分のプログラムを、地球から電波で送ってきているとしたなら・・・?」
「電波だって・・・?だが、かなりの情報量を処理する必要性があるから、一つの周波数帯だけの情報量では・・・恐らく足りないだろう・・・光通信だとしても無理だな・・・。」
それでも五郎じいさんの答えはノーのようだ・・・。




