最初からやり直し
1.最初からやり直し
『パンパカパーン』「皆さま!おめでとうございます!」
はじまりの村へ到着し、(村に入って何もしないで、いきなり村はずれへ向かうと怪しまれるため)まずはギルドへ立ち寄ったところ突然ファンファーレが鳴り響き受付嬢に祝福される・・・俺たちの無事生還が、そんなにめでたいのか?いや・・・そんなに意外だったとでもいうのか?
「サグル様はXにレベルアップされました。
源五郎様はXにレベルアップされました。
レイ様はXにレベルアップされました。
ツバサ様はVにレベルアップされました。」
受付嬢が俺たちのレベルアップを告げる・・・ああそうだった・・・俺たちは経験値をはく奪されてしまって、1からやり直しとなったから、富士城でのクエストの経験値でレベルアップとなったわけだな・・・。
あれっ・・・でも・・・レベルZがXになったということは一気に2段階ではあるのでが、最初のころは少ない経験値で大きくレベルアップしていくのではなかったのか・・・?凄まじく強力な魔物を倒したというのに、それなのに一体どうして・・・?一気にAにレベルアップしていても、いいくらいだと感じる。
「やはり僕たちは経験値を初期値に戻されてしまったようですね・・・それで富士城での経験値を加算されてXに・・・でもちょっとレベルアップが少なすぎませんか?
雑魚魔物たちはともかくとして、あの富士さんたちを倒したわけですからね・・・ツバサさんのアップ率が高いのは一人だけでクエストに挑んだ時間が長かったからでしょうが、最終ボスを倒した時は全員が一丸となって倒したわけですからね。」
源五郎が不満を漏らす・・・そうなのだ・・・最終ボスは物理防御力も攻撃力もAAだったわけだ・・・さらに合体して特AAになった・・・そいつを倒した事による獲得経験値は、ずば抜けて高いはずなのに・・・。
「あのう・・・俺たちの経験値は、富士城でのクエストが加算されているはずだよね?・・・手続き上、清算後1日経たないと反映されないとかいうことはないよね?」
念のために受付嬢に確認してみる。
「はい・・・富士城でのクエストでの経験値がすでに加算されております・・・ですが・・・その・・・サポートカーの攻撃による魔物たちとの戦闘経験値は、申し訳ございませんが加算されないことになりました。
ですので皆様方の経験値は・・・カンダラ南方平原での魔物襲来による戦闘経験値と、富士城でのクエスト経験値ですが、ツバサ様だけは1階から4階までの戦闘経験値が加算されますが・・・サグル様、源五郎様、レイ様たちは・・・1階での戦闘経験は無効となり、2階から4階までの戦闘経験値のみとなります。」
受付嬢は少し言いにくそうに口ごもりながらも説明を終え、深く頭を下げる・・・おおっと・・・その姿に思わず目をそらす。
これまで受付嬢の服装は、どこのギルドでもカッターシャツに濃紺のベストとタイトスカートという、清楚な事務服を着用していたのだが、なぜか今日は思い切りラフというかセクシーというか・・・だぼだぼのタンクトップ・・・恐らくノーブラ・・・に超超ミニスカート・・・座っただけでパンツが見えそうな・・・格好で、先ほどから目のやり場に困っているのだ。
どちらかというと堅苦しい事務所的な雰囲気のギルド内部だったのだが、今ではクラシック音楽が流れ、美しいバニーガールやイケメンのボーイがサービスドリンクをふるまいながら歩き回っている。
ギルドに入った途端、一瞬カジノに舞い戻ってきたのかと思ったほどだが・・・ここのバニーガールの衣装は黒の超ハイレグでTバックレオタードの腰の部分の両脇が大きく開いていて、その上蓮の花ビラのような1/4球形のカップで受けている胸は半分も隠れてはいないし、以前見たカジノのバニーガールの衣装よりもかなり過激だ。
ボーイはというとムキムキのマッチョマンがシャツの胸元を大きく開けて胸毛をちらつかせている状況で、レイにはあまりちらちらと周りを見ないようにと注意した。
しかも受付カウンター背後には気になる貼り紙が・・・<バニーガール、受付嬢ともにお触りOK(もちろんボーイもOK)クエスト達成後はお持ち帰りも・・・>と記載されているではないか・・・。
「あ・・・あの・・・その・・・お触りOKって・・・???」
恐る恐る受付嬢に聞いてみる・・・今の格好からみて、いきなりビンタを食らうことはなさそうだ・・・。
「はっ・・・はい・・・・、・・・・・・、・・・・・・・このようなことになってしまったようです・・・。
中央からの指示で・・・・・・・・我慢するよう命令されております・・・・どうぞ・・・・・。」
受付嬢は少し涙目になりながらも中腰になり、そのふくよかな胸を俺の目の前に突きだす・・・と、だぼだぼのタンクトップゆえに、その胸の先っちょが見えてしまいそうで思わず目をつぶる・・・。
いや・・・どうぞって言われても、明らかに嫌がっているではないか・・・嫌がっていなければ・・・と言うわけでは決してないつもりではいるのだが・・・。
「いやいやいや・・・申し訳ない・・・貼り紙の意味を確認したかっただけで、決してお触りをしたかったわけではない。
悪かった・・・。」
非常にもったいないのだが、丁寧にお断りして頭を下げる・・・。
「そっそうですか・・・ありがとうございます。」
ほっとしたのか受付嬢は深々と腰を折り頭を下げる・・・と、また胸の先が見えそうになり思わず目をつぶる・・・どうにも心臓に悪い・・・。
「おいおい・・・早くしてくれよ・・・ここは君たちだけの施設じゃあないんだ・・・用事を済ませたなら、すぐに下がって次に開けてくれないと困るよ・・・。」
受付嬢に事情を聞いていると突然後方から声をかけられた・・・すわ・・・中央の奴らか?と思い身構えたが、町民がギルドに何の用事だ?・・・あれ・・・いや・・・町民ではない・・・キラキラと輝く真新しい武具に身を包んだ冒険者たちのようだ・・・見ると2列に並んで、数十人の冒険者たちがいるようだ・・・一体どうして?
「あっ・・・ああ・・・申し訳ない・・・あなたたちは冒険者なのか?」
「当り前だろう・・・この世界はクエ・・・何とかいうのをこなしてレベル・・・とかいうのを上げて行くゲームなのだろう?・・・そうして世界中のかわい子ちゃん達とお友達に・・・と言う楽しみがある訳だな?
君たちは見たところ・・・あまりいい武具を身につけておらんようだが・・・開発者側のバグ取り担当者とかなのか?
ご苦労様な事だ・・・クエ・・・何とかをこなして、レベルを上げて行く試行をしているというところかな?ご苦労ご苦労・・・じゃあ・・・君たちがしっかりと確認を終えるまで、我々は待っていた方がいいのだろ?
まだゲームができたばかりで試運転中という事だったからな・・・まあ仕方がない・・・だが、その間はお楽しみ・・・があるという事だったな?」
外観は若いのだが、随分と横柄な態度をとるやつが後ろにいる仲間に振り返る・・・ううむ・・・クエストも知らないやつが一体どうして・・・?
「そっ・・・そうですよ・・・海王シリーズの武具のオプションとして付加されておりますので、1ヶ月間はどれでも好きな女の子を選んで毎晩お楽しみ・・・と言う事のようですよ。
しかも宿泊施設は豪華スイートで、世界中のグルメが堪能可能となっております。
海王シリーズの武具は中級クラスの魔物に対抗しうる能力を有しておりますので、初級クラスのクエストをこなす必要性はございません・・・すぐに次の地へ向かってもよろしいのですが、バグ取り中であれば少々お待ちいただけますかね?
この地はこの地なりに美しい子やかわいらしい子が沢山いますので、お楽しみいただいてから次の地へ進まれるのがよろしいかと・・・。」
すると彼の仲間が随分と丁寧な言葉で応対している・・・仲間というよりはお付きのようだな・・・なんだかとんでもない事を話しはじめた・・・クエストをこなすと女の子を持ち帰り・・・という特典ではないのか?
「よしっ・・・いいだろう・・・まずは今晩相手をしてもらう子を選んでみるとするか・・・。」
すると男は受付嬢の体を舐め回すようないやらしい目で見た後、部屋の中を歩き回っているバニーガールたちに視線を移した・・・ううむ・・・参ったね・・・。
「ここ以外でも武器屋や防具屋・・・道具屋にも女の子はいますのでね・・・一度見回ってから検討されてはいかがでしょうか?」
「おお・・・そうしようか・・・。」
そう言って俺のすぐ後ろにいた4人グループがギルドを出て行くと、我も我もと言う事なのか・・・後続の冒険者たちも付いて行った。
はあー・・・何が起こっているのだろうか・・・。
「どうだったんですか?」
カウンターから戻ってくると源五郎が声をかけて確認してきた。
「いやあ・・・どうも何も・・・中央の奴らは俺たちを片付けようとして失敗して、仕方がないから今度は色仕掛けできたのかもしれんな・・・。」
受付嬢の格好と、お触りを促されたことに動転して何も確認できてはいない・・・何せ文句を言おうにも・・・下半身が熱くなって言葉が出ないというか・・・見入ってしまうというか・・・思わず目をつぶってしまうというか・・・このままではクエストに出向くよりも、ギルドに入り浸ってしまうことになりそうだ・・・だがしかし、そうか・・・・
「ああ・・・よーく思い出してみてくれ・・・合体した富士さんを倒したのは俺たちの強さが戻ってからだから、その時の経験は、今の経験値をはく奪された俺たちには加算されないのだろう。
富士城のクエストで経験値が加算されたのは俺たちは2階から4階だけで、ツバサが1階から4階ということだから、そうなのだろうな・・・つまり経験値最大値の俺たちと経験値がはく奪された今の俺たちとは、冒険上は別人扱いということのようだ。」
「じゃあ、また今晩8時になると、僕たちの強さは元に戻るということでしょうか?」
源五郎が眉をしかめながら尋ねてくる・・・とても信じられないといった様子だ。
「いや・・・今日も強さが戻るかどうかは別として、昨晩強くなった時の俺たちと今の俺たちは別人扱いということだ。
今晩またもや強さが戻れば、その時に倒した魔物の経験値は、強さが戻ったレベルの俺たちが受け取るということだ。」
恐らく俺の推測は正しいのだろうと思う。
「ふうん・・・そうですか・・・でもまた、どうしてこんなややこしいことを始めたのでしょうか・・・?
僕たちが邪魔で倒してしまいたいのであれば、経験値をはく奪するよりも、そのままプログラム上から消滅させてしまえばよいような気がするのですが・・・。」
「ああ・・・だがまあ・・・俺たちを倒すのはあくまでも冒険者として・・・クエストの一環としてでないと、この世界が成り立たなくなるからだろうな・・・だが・・・それがどうして半日だけなのかが理解し難いがね。
それよりも・・・源五郎たちも見ただろ?俺達以外の冒険者がいたぞ・・・しかもみな立派な武具を装備していた。」
「ああそうですね・・・ダミーの冒険者ではないのですか?・・・中央の柱のクエスト票をただ眺めているだけで、それを持って行こうとしなかったようですし・・・僕たちが来てカウンターに並んだことにつられて、後ろに一緒に列を作って並んでいた様子でしたよ。」
さすが源五郎・・・奴らの動きもしっかりと把握していた様子だ・・・だが会話までは聞こえていなかったようだな。
「いや・・・どうやら違うようだ・・・俺のすぐ後ろで並んでいた奴らの会話が聞こえたんだが・・・奴らは正真正銘の冒険者たちだ・・・というか・・・どうにも事情は分からないのだが・・・お色気関係目当てのようだ・・・。
よくわからんが、お持ち帰りお持ち帰りって・・・その話ばかりだったぞ・・・。」
「いやらしいんだよー・・・あたしがクエスト票を探しいていたら・・・へえ・・・君みたいなかわいい子もお持ち帰りできるんだ・・・じゃあ君で良いよ・・・って言って、あたしの手を引っ張って連れて行こうとしたんだよー・・・。」
俺が奴らの会話の内容を伝えようとしていたら、レイが頬を膨らませながら駆け寄って来た。
「すぐに、あたしが気が付いて呼び止めたんですが、今度はもう一人の男の人が出て来て、じゃあ僕は君が良いよって言ってあたしの手を掴もうとしたものだから・・・つい・・・。」
ツバサが顔を赤くしながらうつむく・・・。
「ツバサお姉さんがあっという間に2人を床に這わせてしまったから、ちょっと驚いていたみたいだけど、あたしたちは冒険者だよって言ったら・・・失礼しましたって言って皆と一緒に出て行った。
でも・・・一瞬だったし・・・音もほとんど出なかったから皆も気づかなかったでしょ?」
レイが少し笑みを浮かべる・・・あまり怒ってはいないようだな・・・ツバサ・・・ありがとう・・・随分と高級な武具を装備している奴らのようだからな・・・ツバサの攻撃を食らってもダメージはほとんどなかったのだろう・・・怪我が無きゃよしとするか・・・。
なにせレイはセーラー服だしツバサも今はブレザーにスカートの制服姿だ・・・このギルド内の設定から考えて、お色気用のお持ち帰りの女の子と間違えられても仕方がないと言えば仕方がない・・・。
それにしても子供の教育上随分とよろしくない形態になってしまった様だぞ・・・しかも俺達のレベルはかなり低めだ・・・最初からやり直すにしても・・・。
「クエストのレベルはどうなっていた?」
そういえばクエストレベルが異常に跳ね上がっていたから、あのままでは今の俺たちでは引き受けられるクエストは存在しないわけだ・・・。
「ここにあるのはクエストレベルZとYのものばかりだったよー・・・どこかのお宅の屋根の雨漏りの修繕とか、迷子になったペットの捜索とかだねー・・・。」
中央の柱に行っていたレイが、小さく首を振る。
マッチョマンのボーイに変な目で見られないよう、部屋の奥へと追いやっておいたのだが、かえってトラブルに巻き込まれてしまったようだ。
「ああそうか・・・とりあえずレベルYのクエストでもこなしてみようか?
少しでもレベルを上げて、せめて鉄の防具と武器ぐらい装備できるようになりたいからな・・・。」
どうやら俺たちのレベルに合わせて、クエストレベルも格段に下がったようだ、そうであればやることは一つだ。
試しに『東の森で行方不明になったマーリンちゃんを探せ』というクエスト票をもって、受付カウンターへ歩いていく。
「了解いたしました、リーダーの変更はございませんか?では・・・おひとり様1000円頂戴いたします・・・。」
うん?今なんて言った?




