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やはり経験値が・・・

14 やはり経験値が・・・

「あっ・・・ありがとうございました・・・おかげさまで危ないところを助けられました・・・。」

 ツバサが深く頭を下げる・・・。


「いやいやいや・・・こっちこそツバサ一人に戦わせようとしてしまい・・・猛反省だ・・・この城の魔物が2体もいることが分かって・・・しかも物理攻撃力も防御力もAAということだから、一人では到底かなわないとテレビスタッフに無理を言ってここまで送ってもらってきた。


 塔へ横づけどころか1階まで中継車ごと突入してくれたから、ここまで到達するのは結構楽だったよ・・・。」

 本当に、テレビスタッフたちには助けてもらった・・・。


「でも・・・皆さんは経験値が1になってしまったのに・・・。」


「ああ・・・なんだかよくわからないが・・・この階に上がって白富士さんと戦っている間に強さが戻ったよ・・・おかげで活躍できた・・・。」

 本当に・・・理由はわからないが、あの時に突然力が戻ってツバサを救えたことに感謝している・・・。


「だ・・・だって・・・経験値1になって・・・すっごく弱くなってしまったのに・・・どうして・・・あたしなんかを助けようとして・・・命を懸けてまで・・・。」

 ツバサは目に涙をため、今にも泣きだしそうだ・・・。


「ばっかだなあ・・・仲間じゃないか・・・それに経験値1になった俺たちより、ツバサが助かったほうが今後の冒険だって有利だと思ったわけだ・・・ちょっとの間だけでも2体の魔物を引き離せれば・・・それでツバサなら何とかしてくれると思ったんだ・・・。


 それに・・・経験値が1でも奥義が使えることに気づいたから・・・だから強さが戻ってなくても、何とか魔物を引き離すことはできていただろ・・・?

 そりゃあ・・・強さが戻ったから勝てたとは言えるんだが・・・。」


 まあ冷や冷やだったのは確かだ・・・だがなぜか怖さは感じなかったな・・・ツバサを助けることだけで、それだけを考えてただ体が動いていた・・・。


「そうですよ・・・リーダーがツバサさんを助けに行くと言った時には驚きましたが、でも僕もレイちゃんもすぐに賛成しました・・・だってツバサさんは僕たちの大切な仲間ですからね・・・。


 それに・・・リーダーの言うことは正しいですよ・・・戦えなくなった僕たちよりも、戦えるツバサさんを何とかサポートしたいと・・・次へ進む礎になろうとしたことは確かです・・・でも、強さが戻りましたけどね・・・」

 源五郎も、明るい笑顔でツバサに答える。


「ありがとうございます・・・ありがとうございます・・・こんなあたしのために・・・。」

 ツバサはその場に泣き崩れてしまった・・・よほどうれしいのだろう・・・そうしてこの塔での一人だけでの戦闘は、それだけ過酷だったということだろうな・・・。


 だが・・・忘れてはいけない・・・もともと俺たちは、ツバサを助けようと片道切符でこの世界にやってきたわけだからな・・・ツバサを助けて果てるなら・・・それはもう本望といえるわけだ・・・。


「あれぇ・・・おかしいなあ・・・どれだけ待っても・・・宝箱が出てこないよ・・・。」

 するとレイの奴が、先ほど紅白富士さんが仕留められた辺りの畳を見つめながら不思議そうに首をかしげている。


 ううむ・・・それは大変だ・・・レイの立っているところへ歩いていくと、そこは数枚の畳が変形してへこんでいた・・・ちょうどその形は巨大な人型に見えるので、恐らく紅白富士さんがツバサの奥義で畳にたたきつけられた時の衝撃を物語っているものと考える。


 その周りを見ても畳の表面はどこも毛羽立っていて、この部屋の中で長時間に及ぶ戦いが行われていたという事実を容易に納得させる。


「ううむ・・・今回のクエストの題目は、富士城の清掃だからなあ・・・念のためにクエスト票を見てみるか・・・なになに戦闘後はきれいに清掃のこと・・・との記載があるぞ・・・やはりそうか・・・キレイに清掃をしないとクエスト終了とは認められないということのようだな・・・。


 畳職人ではないから畳をきれいに作り替えることは無理だ・・・仕方がないから、表面の毛羽立ちくらいはきれいに掃きとってやろう・・・変形した畳は、形を治して取り敢えず元通りに納めよう・・・。」


 以降は4人で清掃作業に取り掛かった・・・バッテリー式の掃除機に加え箒もはたきも塵取りも当然のことながら購入済みで持っているので、手分けして取り掛かった。


 一番大変だったのは一階部分で、なにせ中継車で突入したため床の痛みは一番激しかった。

 どの階も襖は半分以上壊されていて、焼けこげたり矢で穴だらけになったり中継車に破壊されていたものは全て表に出して燃やしてしまった。


 クエスト内容は清掃であり、復元ではないので襖はない部分はないままにした。

 そうしてようやく燃やした襖の灰の中から宝箱が出現した。


「一つは・・・鍵が入っているね・・・もう一つは・・・剣だね・・・。」

 レイが目ざとく宝箱を見つけ中を確認した・・・賢者のトンネルのカギと宝剣だ・・・宝剣はやはり一番活躍したツバサに持ってもらうことにした。


「さてこれからどうするかだな・・・取り敢えずカギの開く扉の先へ行ってみるとするか?」


「うーんそうですね・・・力は戻ったようですからそれでもいいのですが・・・力を失った原因もまだわかっていませんし、ちょっと不安ですね・・・。」


 確かにそうだ・・・最高経験値であったのが一瞬で消えてなくなったのと、さらにまた復活したのだ・・・そのどちらの原因もわかってはいない。

 もし魔物との戦闘の最中にでも同じことが起こったら、致命傷になりかねないわけだ・・・。


「一旦、中央諸島へ戻りませんか?あそこだったら船にもすぐに乗れますし・・・何より相談相手もいますから・・・。

 次の土地へ向かうのはそれからでもいいと思います。」

 ツバサがマイクを手で押さえて、声が入らないようにしながら提案する。


「そうだな・・・よく考えたら復活の木の葉も手に入れておく必要もあるわけだな・・・まずは中央諸島だな。」

『カチャッ・・・・バタン』『ブロロロロロッ』中継車に乗り込み発車させる。


 城内清掃をしている間に、本日分の冒険放送は終了したと言っていた。

 そのまま南下して、野宿する。


 もちろん2人ずつ交代で見張り番をすることにした・・・レイとツバサ、俺と源五郎という組み合わせにして、さらにテレビスタッフも中継車のマシンガン操作できるものが1人ずつ、ついてくれることになった・・・これなら夜中に突然レベルが落ちても平原の魔物であれば対処してくれるだろう・・・。


  

「何事もなく夜が明けましたね・・・。」


「ああ・・・夜中に突然レベルが下がった状態で、魔物たちに取り囲まれるんじゃないかと冷や冷やしていたんだが、杞憂だったようだな・・・。

 昨日、突然レベルが落ちたように感じたのは、何か食べ合わせでも悪かったのかもしれんな・・・。


 クエストの旅の最中なので弁当が主体となってしまうのだが、食べる前に傷んでいないかどうか、よーく確かめてから食べるように習慣づけるとしよう。

 すぐにレイたちも起きてくるだろうから、しっかりチェックしてから食事をして出発するとしよう。」


 俺たちについて見張り番をしてくれたスタッフが、朝食の炊き出しの準備を始めたが、俺たちは弁当なのでもう少しレイたちを寝かせられると思っていたら、早々にレイたちは起きてテントから出てきた。


「ふあー・・・おはよう・・・突然弱くなっちゃう夢を見ちゃった・・・なあんて・・・夢を見るひまもなく起こされた感じだけど・・・。」


「おはようございます・・・よかったです・・・力は戻ったままですね・・・。」


「じゃあ、早いとこ飯食って出発しよう・・・。」

 すぐにテントを片付け、朝食をとり中継車に乗り込む。


『パチッ』「えへへへ・・・」


「うん?どうした?揺れる車内で小さなモニターを見ていると、気分が悪くなると言っただろ?」


 中継車に乗り込むと同時に車内中央のモニターのスイッチを入れて、シートに座るレイに忠告してやる。

 車酔いで、今日の授業が滞っては困るのだ。


「うん・・・わかってるけど・・・朝の連続テレビ小説だけはいいでしょ?

 8時から電波が来るってことは、15分待てばちょうどみられるってことだものね・・・この辺りは平原であまり揺れないから平気だし・・・ねっ・・・いいでしょ?」


 レイが両手を合わせて拝むようにしてくる・・・昨日は朝から大ごとで命を失いかけたり逃げまどったり・・・命がけの救出劇を繰り広げたりと、落ち着けたのは夜遅くになってからだったからな・・・まあ・・・30分くらいならいいか・・・。


<8時のニュースです・・・>

 真っ黒で何も映さなかったモニターに突然街の風景が映し出されてニュースの文字が・・・いつもなら通勤時間帯だから、この時間にテレビを見ることなど長期休暇中しかないのだが、なんだか懐かしい感じがするな・・・。


「なんだか、また体がだるくなってきました・・・。」

 源五郎が口を開く。


「ああ・・・俺も同じだ・・・昨日同様、なんだか鎧が重い・・・。」


「あたしもー・・・ローブを着ていると、動けないくらい重い・・・。」


「あたしもです・・・道着を着ていられません。」


 昨日同様、突然装備が異常に重く感じて、そのまま身に着けていられそうもない。

 早々に鋼鉄の鎧を脱いで下着だけとなり、レイとツバサが着替えられるように、やはり下着姿になった源五郎とともに中継車の後部座席の前に野営用の毛布を天井から吊るして、前方部分と遮蔽した。


 そうして作務衣に着替えて皮の鎧と兜を装備する・・・腰にはもちろん銅剣だ。


 ううむ・・・どうしてこのようなことになってしまうのか・・・まったく心当たりがない・・・弁当は痛んでいないかどうか何度も確認して・・・さらに自分の分だけではなく、全員が全員分の弁当をチェックしたのだ・・・一人や二人ぐらいなら見落としがあったにしても、全員が気づかないというのはおかしすぎる・・・。


 何より冒険者の袋の保管能力であれば、常に新鮮出来立ての状態で保管できるはずなのだ・・・。


「おかしいですね・・・確か昨日の朝も、今と同じく8時ちょっとすぎぐらいから調子が悪くなりましたよね・・・。

 野営の時は交代で見張り番をする分、いつもより長めに睡眠時間5時間ずつにしているので朝食時間が朝の8時前後になるわけですが、今朝はレイちゃんたちがずいぶん早くに目を覚ましましたからね・・・。」


「朝起きて弱くなってると怖いから・・・自然と目が覚めちゃったんだよー・・・。」


「そうですね・・・あたしも気になっていたから早くに目が覚めてしまって・・・。」


「ウーム・・・一体どういうことだ?ずいぶん昔のロープレゲームで、ある場所に行くと突然経験値が今回同様1に戻されてしまうということがあった。


 その時は浴場に秘密の入り口があって、そこに入れば次元がきり変わって経験値もすべて戻ったはずだが、今回も富士城のボスステージで戻ったから、同じような設定だったのかもと思っていたが違った。


 確か昨晩力が戻った時間も、恐らく夜の8時頃だったはずだぞ。

 魔物たちを片付けて富士城の内部清掃を終えて戻ったら、9時からの冒険放送が終わった時間だったからな。


 そうなると俺たちの力はちょうど1日のうちの半分しか持たないということになるな・・・そんなプログラムがあったのかね?

 しかも昼間の冒険時間ではなく夜の時間だけ力が戻るなんて・・・この世界の冒険プログラムがくるってしまったんじゃないのか?」


『ガガガガガガガガガガッ』中継車の前方と後方から2筋の帯のような形で銃弾が連射され、飛来する黒い影が薄らぎ、青空が透けて見えてくる・・・『ガガガガガガガガガッ』なおも連射しながら、中継車は走行を続けている・・・雑魚魔物の襲撃に際しては、俺たちに頼らず中継車で処理してくれるのだろう・・・ううむ有難い・・・。


「そうですね・・・原因はわかりませんが、時間によって僕たちの経験値が変わってしまうという推測は正しいでしょう・・・恐らくプログラムのせいでそうなっているのでしょうが、昼夜逆転といった異常ではないように感じます。


 夜時間は主に睡眠に当てていますが、野営の際は交代で見張りをしていましたが、今までに防具など装備を重く感じたことはありませんでしたからね。」


「じゃあ、なぜなんだよ・・・一度与えた経験値は、絶対に変更できないはずだろ?」


「そうなんですよねー・・・理由はわかりませんが、プログラムの基幹部分が書き換えられてしまったのではないかと・・・。」


 源五郎が力なくうつむく・・・おいおい・・・ちょっと待て・・・この世界の司令塔でもある中央の奴らは、魔物たちや冒険プログラムを変更することが可能だ。

 異常に高い経験値の魔物たちを送り込んで、この世界へ冒険者たちがやってくることを拒絶したのちに、さらに高い経験値で自分たちの分身を送り込み、中央の制御を把握したわけだからな。


 その異常な世界を取り戻すために俺たちはやってきたわけだ・・・頼みの綱は、俺たちの経験値は誰にも触れないということだった・・・どんな敵であろうとも最高経験値の強さで戦うつもりできたわけだ。


「じゃあ俺たちは・・・。」

 と言いかけてやめた・・・レイやツバサが一緒にいるのだ・・・。


「白い建物が見えてきました・・・。」

 昼食を終えたあたりで、ドライバーが目的地に近づいたことを告げる。


『キッキィー』『ガチャッ』「待ってください、あたしが降ります。」

 席から立ち上がろうとした源五郎を制して、ツバサがカギを受け取り中継車を降りていく。

 そうだな・・・俺たちじゃあ魔物たちが襲ってきたらまともに戦えないものな・・・。


『ブロロロロロロロッ』中継車が長い通路をたどって出てきたのは、6番目の扉だった。

『バタンッ』「じゃあ、一旦中央諸島へ戻りましょう。」


 中継車に戻ってきたツバサが指示して、出てきた正面側にある扉から入って長いスロープを何度も折り返して登っていき、中央諸島の賢者のトンネルの建物を出ると、そのまま東へ中継車は走り続ける・・・始まりの村へ向かうのだ。


 途中、巨大なアンテナ施設が見えた・・・俺たちがこなしたクエストの塔のあたりには、すでに大きなパラボラアンテナができていた・・・この中央諸島でも地球からの電波を受信し始めたのだろうな。

 東京タワーの何倍もの高さがあるような、巨大なアンテナの隣にパラボラアンテナ施設の白い建物が建っている。


『ガガガガガガガッ』やはり中央諸島でもパラボラアンテナ施設工事が終了したのであろう、雑魚魔物たちの襲撃を受けるが、中継車のマシンガンが簡単に追い払ってくれた。


「始まりの村に到着いたしました。

 我々は資材の補充などありますので、一旦支局に戻ります。」


『ブロロロロロッ』はじまりの村に着くとテレビスタッフたちと一旦分かれる・・・マシンガンの弾など消耗品を補充しなければならないだろうからな・・・。


「では、行きましょう。」

 ツバサを先頭に村へ入っていくのだが、気が重い・・・何せ経験値を簡単に書き換えられてしまったのだ。


 もうおしまいだ・・・俺たちは簡単に抹殺されてしまうだろう・・・クエストという形で・・・。

 なにせダンジョンに入った途端に経験値を1にしてしまえばいいのだからな・・・最高経験値であったはずが一気に初期経験値に戻されてしまう。


 俺たちがこの世界に来て中央を制圧した奴らと戦える唯一のよりどころであった、一度取得した経験値は減らせないという基幹設定が崩れてしまったのだ。リセットが効かない俺達では、もうどうしようもない。


 雑魚魔物相手だって全く歯が立たないだろう・・・こうなると、もはやロープレゲームでも何でもないのだが、外観上は何も変わらないため、冒険放送で見ているだけでは全く伝わらないだろう。

 今回は運よくボスステージに乗り込んだ時点で経験値が復活したが、もしかするとこれは脅しなのかもしれない。


 すなわち、いつでも経験値は書き換えられるのだと・・・俺たちがこれ以上協力を拒めば容赦しないという・・・うーむ・・・参った・・・これで完全に中央の奴らの好き放題ということになってしまいそうだ。

 奴らの目的も何も把握することすらできなかった・・・悔しいが仕方がないな・・・次の地へ進むのも恐ろしい。


 これで、俺たちの冒険も終わってしまうのだろうな・・・五郎じいさんに相談したところで、中央の操作を封じる手段などないのだ・・・あればとっくにやっているさ・・・。



続く。


突然経験値が初期レベルにまで落ちてしまったサグルたち・・・一体どうなってしまうのか・・・注目の次章は・・・明日から連続掲載いたします。ご期待ください。

いつも応援ありがとうございます。ブックマークの設定や感想などは掲載を続けていく励みになりますので、よろしかったらお願いいたします。

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