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異変・・・

10.異変・・・

「そうですね・・・おそらくこの大陸に本来巣くっている、平原の魔物たちではないでしょうか・・・。

 たしか十年前の冒険の時に見たような魔物たちばかりです・・・最高経験値できた僕たちでは、簡単に倒せてしまいますよね。」

 源五郎もなんだか物足りなさそうに、発射し続けていた矢を止めた。


「ほんとだよ・・・全然手ごたえがないもの・・・これだったら初期魔法で十分・・・。

 強火炎弾(パチ)強火炎弾(パチ)!」


『ボワッ・・・ボワッ』初期魔法とはいえレイが唱えると、巨大な火の玉と化した炎が、一直線で魔物たちに襲い掛かっていき、一撃で残りをほぼ全滅させた。


「一体どういうことでしょうかね・・・僕たちに対して、こんな初期のころの魔物たちをあてがって、本気で邪魔ができると考えていたのでしょうか?」

 源五郎が首をかしげる。


「理由はわかりませんが・・・いずれにしろ魔物たちは残しておくことはできませんから、いくらレベルの低い魔物たちであっても、倒しておく必要があります。」


『タッシュッパパンッバンッパンッスッパンッ』ツバサが地上から襲い掛かってきていた魔物たちを、一匹残らず退治しながら告げる。


「まあそうなんだけどな・・・ただなあ・・・草原の魔物たちなんて、冒険者が草原に入り込むたびに本来なら出現するはずのものたちなんだ。

 だから退治しても退治しても際限なく襲い掛かってくるから無駄だよ・・・全滅なんてことはできない。


 今までこのような雑魚魔物たちに出くわさなかったことが不思議なくらいで、まあパラボラアンテナ施設建築のために、特定ダンジョン以外の魔物たちは全て召集されたということだったから助かっていたわけだけどね。」


 ある意味、パラボラアンテナ施設建築に助けられていたと言えないこともなかったわけだ・・・いくら弱いとはいえ、昼夜問わず襲われでもしたら、さすがにうっとおしい。


「この辺りは北部大陸のパラボラアンテナ施設からは距離があるので、魔物たちも召集されなかったのかもしれませんね・・・高い壁で仕切られていましたし・・・だから平原にも魔物たちがたくさんいるのでしょう。


 ここからが普通のRPGということになりそうですかね・・・魔物たちのレベルはずいぶんと低いものになりますが・・・。」

 源五郎が一人納得の笑顔を見せる。


「なんにしても、これから次の町に到着するまでは、夜は交代で見張る必要性があるということだな。」

 冒険に訪れた当初は、野宿する際は用心のために交代で番をしていたものだったが、平原の魔物たちはパラボラアンテナ施設に召集されて一匹も残っていないと聞いてからは、普通に寝ていた。


 ツバサだけは一人夜半に起きてトレーニングをしていた時もあったが、無理をさせないように過度なトレーニング禁止令を出してからは取りやめていた。


 最近は奥義取得のための特別訓練は行っていたが、深夜にまで及ぶような特訓ではなく普通に就寝していたので、昨晩までのように、ドルシャチの動向を監視するための野営だって久しぶりだったわけだ。

 当面は仕方がないな・・・雑魚魔物たちだから、2人組ではなく一人ずつの交代制でもいいわけだしな。


「よしっ・・・出発しよう。」

『バタンッ・・・・・ブロロロロロッ』中継車に乗り込み出発する。


 その後も何度か雑魚魔物に襲われ、野宿の際は一人ずつ交代で見張りをする羽目になった。


 途中、洞窟など見つけるたびに、ツバサが魔物たちを退治していかなければいけないと、寄り道を主張するのだが、クエストとして引き受けていないダンジョン攻略は無効にされてしまうだろうから、これから行く街で正式に引き受けて戻ってくるまでは我慢だと言い聞かせながら突き進んだ。



 長い旅になりそうな気もしていたが、翌日の昼には次の町が見えてきた・・・海岸にほど近く、港町のようだ。


『パーンッパンッパンッ』『パラパラパラパラッ』空砲が鳴らされ紙吹雪が舞う中、町のゲートをくぐって入っていく。

 ううむ盛大な歓迎だ・・・平原に巣くう魔物たちを退治しながやってきたことが、歓迎の理由だろうか?


「すごいですねえ・・・鼓笛隊などの盛大なパレードも行われていますよ・・・。」

 中継車の中からうかがうと、ちょうど中継車を先導するかのように鼓笛隊の長いパレードが続いているようだ。


「ううむ・・・こんな歓待を受けるようなことをしたわけではないのだがな・・・それとも、ここは北部大陸の外れのほうだから、来客自体が珍しいのだろうか?

 高い壁で仕切られていたことだしな・・・。」

 あまりにもすごい歓迎ぶりに困惑してしまう。


「違うみたいだよー・・・ほら、あそこに布がかかっている。」

 レイが突然、石造りの陸橋からつるされた垂れ幕を指さす。

 そこには・・・


<ついに完成パラボラアンテナ施設、中央諸島、東部大陸に続いて、北部大陸のパラボラアンテナ施設が完成。

 これにより朝8時から夜の8時まで、12時間に渡り地球からのテレビ電波受信が可能となりました。

 今夜のテレビ放送で呼びかけるので、地球からの電波の受信がかなうよう、皆さん祈りましょう。>


 と、大きな文字で書かれているではないか・・・そうか、俺たちが魔物から解放したパラボラアンテナ施設が完成したということか。


 その完成式典のパレードということなのか・・・恐らく、この星中のすべての都市で行われているのだろうな・・・もちろん次元の向こう側のこの星の真の住民たちも含めて・・・。


「やったあー・・・これで大好きなアニメが、毎日見られるようになるね!」

 レイが目をキラキラ輝かせて中継車のシート上で飛び跳ねる。

 ううむ・・・奥義の修業はまだしも、レイの勉強の妨げにならなければいいのだが・・・。


「やはり各地のパラボラアンテナ施設は、強力な魔物たちに占拠されてしまっていたということなのでしょうね。

 僕たちが魔物たちを退治してようやく完成したわけですから・・・そうなると中央と魔物たちとの関係はどうなってしまったのですかね。


 雑魚魔物といわれる弱い魔物たちはパラボラアンテナ施設に駆り出されていたところを見ると、中央の指示通りに動いていたのでしょうけど・・・そのアンテナ施設が完成したので、各地へ魔物たちが戻ってきて、僕たちがこの町へ来る途中ちょうどその移動の時に遭遇したのでしょうかね。


 ところが別途送られてきた強力な魔物たちの一部は、中央の意思に背いてパラボラアンテナ施設を占拠して工事の邪魔をしていた・・・それでクエストが発生し、僕たちが魔物たちを一掃した。

 物語としてはいいように感じますが、実際の主従関係というのはおかしくなっているように感じます。」

 源五郎が腕組みしながら、首をひねる。


 本当にどうなっているのか、いまだにわからない・・・第一、中央の奴らの目的もわからなければ、どんな奴らかすら分かっていないのだ。


 冒険を進めていけば明らかになっていくと考えていたのだが、今までの感じでは、ますます訳がわからなくなっていくといった印象だ。


「まあ、ともかく俺たちがこの星の文化に少しは貢献したと言えるわけだ・・・地球からの放送を受信できるよう、一緒に祈ろう。」


 カンダラの町について、ギルドや武器防具屋などの位置を把握した後、野宿の埃を払うため早々と宿をとりひとっぷろ浴びると、昼間からレイの授業となった。


 そうして予想通り俺たちの冒険放送終了時間に、地球からのTV放送電波を中央諸島と東部大陸及び北部大陸のパラボラアンテナ施設で受信できるよう祈りましょうという呼びかけ通りに、俺たちも手を合わせて祈った。

 これが、この後大変な事態を引き起こすとは夢にも思わずに・・・



「ここでのクエストは、さすがにアレヘスの遊園地の乗り物券とカジノのコイン券が褒賞というものはありませんね・・・あんな巨大な壁で隔てているし、行くにも日数がかかりすぎますからね。

 というよりクエストはほとんどなく・・・一つだけ褒賞が未記入のものがありました。


 富士城の城内清掃・・・清掃だけでクエストになるかわかりませんが、クエストレベルはATと以前のレベルに戻ったようですね・・・恐らくこのクエストが次へ進むためのキーとなるクエストでしょう。


 2週間のクエストとなっていますから、かなり遠くのようですが中継車がありますからね、恐らく2、3泊で富士城に到着できるでしょう。」

 源五郎がようやく探し当てたとばかりに、1枚のプラチナクエストを大事に握りしめながら中央柱から戻ってきた。


 昨日は場所の確認だけでギルドによらなかったので、今日になって清算を行ったらツバサはいつもの通りレベルアップし、VPとなった・・・あの雑魚魔物の分はほとんどレベルアップには寄与していないだろう。


「ようし・・・このクエストをこなして、次の大陸へ向かうとしよう。」

 源五郎からクエスト票を受け取り、受付へ向かう。


「富士城の城内清掃ですね・・・リーダーの変更はございませんか?

 では、頑張ってください。」

 笑顔のかわいい小柄な受付嬢に励まされ、ギルドを後にした。



「富士城は、恐らく北部大陸東部山脈の鍵型に曲がった最深部にあるものと推測されます。

 山脈を迂回していかなければならないので、中継車でも結構時間がかかってしまいますね・・・恐らく3日はかかるでしょう。」


 中継車に乗り込んで次の目的地を説明すると、いつものテレビスタッフが地図を覗き込みながら説明してくれる。

 おおそうか・・・まあ想定内だな・・・。

『ブロロロロロロッ』中継車が出発し、もちろん長い道中ではレイの課外授業が行われた。


 レイはテレビ放送の時間が伸びたのだから、移動中はアニメを見るのだと主張して譲らなかったのだが、どうせ揺られる車内でテレビなど見ていたら気持ちが悪くなるぞと脅してやったら、あきらめて主要なアニメを中継車のビデオで予約録画し始めた。


 このところレイの勉強会に時間がさけているので、俺が忘れていたことによる遅れ分は、かなり解消できてきているのではないかと自負している。

 このまま順調にいけば、もう少し遊ぶ時間も作ってやれるだろう。


 その後2日野宿して、朝目覚めて食事を終えたあたりで、俺たちの体に異変が生じた。


「なんだか体が重い・・・。」


「そうですね・・・胸当てが異常に重く感じます・・・これでは弓を持つことも難しいかと・・・。」


「あたしも・・・道着が異常に重く感じられて・・・。」


 俺も鋼鉄の鎧が・・・と言おうとした途端に皆に先を越されてしまった・・・なぜかわからないが、今まで重さを感じなかった鋼鉄の鎧が今朝は異常に重く、装備したままでは立ち上がれそうもない。

 レイもツバサも一旦テントの中へ引っ込んでしまった。


 仕方がないので装備を外し作務衣に着替える・・・これではさすがにスースーして不安なので、冒険者の袋をまさぐって、使うことはないが念のためにと購入しておいた、皮の鎧と皮の兜を装備する。


 天空の盾は重さを感じることはなかったが、冒険者の袋から取り出してみた鉄の鎧や鉄の膝あても重すぎて使えそうもない・・・一体どうしてしまったのだ?


 みると源五郎もブレザーにスラックス姿に着替えて、皮の胸当てと皮の帽子を装備している・・・なんだか10年前にこの世界に来たばかりの、初級中の初級の装備に戻ってしまったような感じだ。


 レイの奴は魔導士のローブからセーラー服に着替え、炎の杖を装備している・・・ツバサは初級の拳法着だろう、それほど違和感はない。

 全員天空の盾以外は、初期の防具しか装備できない様子だ・・・これは一体どういうことなのか?


「どうしました?」

 いつものテレビスタッフが、いつまでも中継車に乗り込まない俺たちを不審に感じたのか、中継車から降りてテントまでやってきた。


「いや、何でもない・・・。」

『ガチャッ』そういって中継車へ乗り込む・・・テレビスタッフには弱みを見せるわけにはいかない。


 今日の昼頃には富士城へ到着するだろうと昨晩ドライバーが言っていたな・・・昨日は到着が待ち遠しかったが、今朝は・・・憂鬱の種が増えた感じだ。

『ブロロロロロロッ』それでも中継車は走り始める・・・スタッフたちはさすがに俺たちの格好に違和感を覚えていることだろう・・・だが、誰もそれを指摘しようとはしない・・・。


「また、魔物が襲ってきたようですね。」

『キキィッ』ドライバーがすぐに中継車を路肩に停車させる。


「あたしは・・・多分大丈夫でしょうから、戦ってきます。」

『ガチャッ』そういってツバサが中継車のドアを開け、ステップを降りていく。


「そうか・・・悪いな・・・。」

 申し訳ないが平原で遭遇する雑魚魔物相手でも自信がない・・・何せ力が入らないのだ・・・。


『タタタタッ』『ドガンドゴッ・・バシュッシュッ・・ドッゴォーンッ』ツバサが魔物たちの群れに突っ込んでいき、華麗に跳躍しながら魔物たちを消滅させていく・・・ううむ・・・装備しているのは・・・何と皮の手袋だ・・・。

 それでも別次元のツバサ本体と合体しているので、世界最強の格闘家であることには変わりがないはず。


 最高経験値できた俺たちばかりか、このところ強敵との戦いでレベルアップしてきたはずのツバサでさえも、初期の冒険者レベルに戻ってしまった様子だ・・・これは何を意味するのか・・・。


「おかしいですよね・・・一度取得した経験値は後から操作できないようにプロテクトされていると、青空商会で説明を受けました・・・商業ソフトなので、後からレベル変更を行うことは絶対にできないようにしてあると聞いていました。


 だから中央のプログラミング施設を掌握されていても、最高レベルの僕たちのレベルを変更することはできないと言っていたはずですよ・・・。


 それなのに・・・恐らく僕たちのレベルは・・・経験値1ですよね・・・この大陸で取得できる鉄系の防具や武器ですら装備できませんから・・・。」


 源五郎がインカムのマイクを抑えながら小さな声で囁く・・・中継車に乗り込むと同時にテレビスタッフが装着してくれるので、見ている前で外すわけにはいかないのだ。


 確かにそうだった・・・その説明は俺がこちらの世界に来る直前に聞いた・・・だからこそ戦えると思って乗り込んできたはずだったのに・・・しかも、どうして今このタイミングなのか・・・?



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