関所
9.関所
「パパー・・・宝箱が出現したから開けてみて・・・。」
人使いの荒いレイが、ドルシャチがいたあたりに宝箱が出現したのを見つけ、上方から指示を出す・・・ハイハイ・・・どうせお目当ては乗り物券なのだろうがな・・・。
「おお・・・やはり遊園地の乗り物券のようだな・・・それと・・・こっちは紙切れだ・・・。」
乗り物券4枚と片面に?と裏面に3の数字が書かれた紙片が入っていた・・・これで順に並べると753だ・・・お宮参りか?
「ようやく仕留めたか・・・最近のクエストの中では断トツの難易度だったな・・・3日がかりか?・・・2種類の魔物が絡んでいたからな・・・。
しかもアメフラシは体が柔らかすぎるのと透明なので攻撃はきかなかったし・・・ドルシャチは体が小さすぎて攻撃しづらいといったふうに、その身体的特徴でてこずった・・・今後もこのような魔物たちが増えてくるかもしれないな・・・。」
恐らく数十メートルは深く掘られていることだろう・・・巨大ドルシャチが開けた穴の上からロープを垂らしてもらい、ツバサと一緒に何とか這い上がり中継車へ戻っていく。
「念のためにクエスト票を確認してみるか・・・ドルシャチ・・・ドルシャチ科の昆虫の魔物・・・何と昆虫だったのか・・・体は小さいが、強烈なあごと鋭い歯を持ち狂暴・・・主に浅い池や湖に生息。
大きな動物も集団で襲い掛かることにより捕食・・・巨大な水牛も数分で食い尽くす・・・なんだかシャチというよりアマゾン川のピラニアを彷彿とさせるね・・・。
水が減り始めると共食いをはじめ、巨大ドルシャチへ変身する・・・単体での物理攻撃力AZ、防御力ZZだが、集団では物理攻撃力AA,防御力AZ、巨大ドルシャチへ変身後は物理攻撃力特AA、防御力特AAだとさ・・・これだけでも結構な強敵だったわけだが・・・さらにアメフラシの魔物までいたから・・・手間取ったわけだな。
アメフラシの魔物に関しては、やはりクエスト対象ではなかったのか情報は出てきていない・・・退治しなくて正解だったと言えそうだな・・・。」
ううむ・・・湖に水を供給していたアメフラシ自体は、今回のクエスト対象外だったわけだ・・・こんな感じのクエストも登場するということなのだな・・・。
「じゃあ・・・いよいよ・・・カンダラへ向かことになるな・・・。」
中継車のドライバーに、南東へ向かうよう指示を出す。
「えー・・・ちょっと待ってよ・・・カンダラへ行ってしまったら、次の大陸へ向かうことになるわけでしょ・・・、その前にいったんアレヘスまで戻って、遊園地で遊んでからにしない?
パパたちだってカジノの金券をもらったから、カジノで遊びたいでしょ?」
ところが突然、レイが異議を申し立てる。
「おいおいレイ・・・ここに来るまでに一体何泊したと思っているんだ・・・これからドルパカ経由で戻るにしても、1週間以上かかるわけだぞ・・・往復で2週間と少し・・・そうまでして遊園地で遊んでも仕方がないだろ?
確かに俺たちの冒険は期限がない・・・なにせ、ほかに冒険者がいるわけでもないし、誰かの命がかかっているとか事態がひっ迫化しているわけでもないからな・・・そうはいってもこの異常な世界を取り戻すためにも、休まずに先へ先へと進んでいくしかないわけだ・・・。」
「えー・・・でも・・・今までだって散々休み休み来たわけだし・・・今回も戻ったところで、そんなに影響はないわよ・・・だって・・・もう十年以上もこの世界はおかしくなっていたわけなんだから、今更急がなくても問題はないでしょ?
ねっ・・・勉強だってだってわがまま言わずにちゃんと毎日やっているし、だから・・・いいでしょ?」
確かにそうではあるのだが・・・レイにうまく言いくるめられてしまいそうだ・・・まずいぞ・・・。
「先へ進みましょう。
レイちゃん・・・北部大陸は、以前の冒険の時は魔王が住んでいる南部大陸へ行くための、重要な施設がある場所でした。
今回の冒険では以前とは地形やダンジョンなど大きく変わっていますが、賢者のトンネルの場所だけは変わっていないように感じています。
賢者のトンネルの鍵を手に入れなかったので言いませんでしたが、以前の冒険の時にはペレンの町の近くに賢者のトンネルがあって、そこからだと中継車で2日もあればアレヘスの町までたどり着けたはずです。
今回も冒険を進めていく上で北部大陸は重要な場所であると考えています・・・だから必ず戻ってきますよ・・・。
それに・・・前にも言った通り冒険の先行きに行き詰った時に、遊園地などの娯楽施設に寄って気持ちをリフレッシュさせるということも大事だって、以前の冒険の時にサグルさんも言っていましたから、そのようなときにはペレンのトンネルの鍵を手に入れる前でも、船でも何でも使って戻ってきましょう。」
ツバサが、俺の代わりにレイを説得してくれる。
レイの説得は大変だったが、それでもクエストをこなしてさえいれば、また北部大陸へ戻ってくることになるだろうと、ツバサの予言めいた言葉もあり、しぶしぶではあるが納得してくれた。
「では・・・カンダラに向けて出発してくれ。」
「はい、わかりました。」
『ブロロロロロロロロッ』中継車が、平原をゆっくりと走り始めた。
「あれ?この先に湖がありますね・・・ドルダラ湖は先ほどの戦いで無くなったはずですが・・・。」
中継車のドライバーが前方を指さしながら首をひねる。
確かに前方には延々と続く湖が・・・ふと先を見ると、その先はいくつもの雨雲が垂れ込めていた。
「僕たちが移動させたアメフラシですね・・・彼らのおかげでまた湖ができかけているのでしょう。」
源五郎が後部座席から前方へやってきて、フロントガラス越しに湖を眺めながらつぶやく。
どうやらそのようだな・・・まだ2日くらいなのだが、それでも広範囲にわたって水たまりというか、湖が形成され始めているようだ。
「あれ?行き止まりですね・・・。」
湖を越え延々と進んでいくと突然、中継車が急停車した。ドライバーが不審そうに地図を片手にルートを確認しようとする。
行き止まりというよりも前方には左右に延々と続く高い壁が・・・そうして道の先には巨大な門扉が見える。
「何でしょうかね・・・情報はありませんが、地図にはドルダラの関所と記載があります。」
いつものテレビスタッフがドライバーに代わって地図を探り、この地点の記載内容を告げた。
「関所?関所って・・・江戸時代に他の国へ行くときに通ったゲート・・・今でいう国境の通関のような場所か?
俺たちは冒険者だから、パスポートなんて持っていないぞ。」
ないとは分かっていても、とりあえず冒険者の袋の中身を確認しながら叫ぶ。
「ぱ・・・パスポート・・・ですか・・・食べ物でしょうか?」
いつものテレビスタッフがとんでもないボケをかます。
「いや・・・だからパスポートというのはだな・・・例えば日本という国から外国へ行くときに・・・」
パスポートを知らない人に説明するのなんて初めてだな・・・どのように説明すればいいのか・・・。
「パスポートというよりも、この世界には国という概念自体がないのではないですか?
もともと中央諸島と北部大陸しかなかったって言っていましたからね・・・一つの国しかなければ、国境なんて言うものもないでしょう・・・ましてやパスポートなんて・・・。
まあ、この星の住民の性格からいうと、たとえ国がいくつかに分かれていたとしても、互いの行き来に制約を設けたりはしないでしょう・・・なにせ貿易なんてことも行っていないでしょうからね・・・。
農業をしたり漁業をしたり・・・お店を切り盛りしたりとか・・・この星の人たちは、別に生活に不自由はないのに、余暇を楽しむために働くって・・・ツバサさんから教えてもらいましたよね?
だから、ここにこんなゲートがあるということは不思議ですね・・・魔神とか特別なダンジョンへ続く境界でしょうか・・・。」
一旦後部座席へ戻っていった源五郎が、再度前方へとやってきた。
「まあ、なんにしても、どうすればこの門を開けて向こう側へ行けるのか・・・何か特別なクエストをこなさなければならないのか・・・近くへ行ってみるとするか・・・。」
『ガチャッ』中継車の中で議論していても始まらないので、降りて門扉へ近づいていく。
「うわあ・・・おっきぃー・・・。」
レイが遥か見上げるほどの門扉を見上げながら、ため息をつく。
壁よりも少し低めの門扉の上方には、鉄条網がらせん状に張り巡らされていて、簡単に乗り越えられるような塀ではなさそうだ・・・。
「これを見てください・・・こんな大げさな門扉の割に、カギはダイヤル式ですよ・・・。」
門扉の取っ手を確認に行った源五郎が、俺たちを振り返って叫ぶ。
ダイヤル式・・・?確かに見てみると、門扉の取っ手部分には3桁のダイヤル錠が・・・ダイヤル式のロックだって?なんでわざわざダイヤル式に・・・?。
「そうか・・・753だ・・・ダイヤルは3桁だから・・・恐らく753で開くだろう。」
「はいっ・・・わかりました・・・753ですね・・・。」
『クルクルクル・・・カチッ・・・ガラガラガラガラガラ』「開きましたー・・・」
源五郎が大きな両開きの門扉を開けながら振り返る。
やはりそうだ・・・クエストの宝箱に入っていた紙の番号は、ここのロックを外す番号だったのだ・・・。
「ほうら・・・クエストをこなしてきて、正解だったでしょ?」
レイが自慢げに胸を張る・・・まあ確かにそうだな・・・だがまあ、3桁の番号であれば0から9までの数字の組み合わせでも1000通りだから、根気さえあれば何とかなるぞ・・・。
「うーんそうですね・・・0から9までの数字のほかにアルファベットが大文字と小文字まであるようですから、番号がわかっていなければ難しかったでしょうね・・・。」
ダイヤルを回していた源五郎がつぶやく・・・おおそうか、数字だけじゃないわけだ・・・だったら何通りの組み合わせに・・・?
「まあいいさ・・・大きな門扉だから中継車も通れそうだし、先へ進もう。」
恐らく何十万とかの組み合わせか・・・?だがまあ、今回は全部数字だったから結構早かったか・・・いや一つ一つ試していく場合は・・・。
『ブロロロロロロロッ』『ガッシャーンッ』中継車で門扉を越え走り出すと、後方で大きな音が聞こえたので振り返ると門扉が閉まっていた・・・ありゃりゃ・・・確かこっち側にはダイヤルがついていなかったはずだぞ・・・だからこそ開けたままにしておこうと考えていたのに・・・自動で閉まるとは・・・。
「後方から、巨大な黒い影が追ってきています。」
門扉を通ってしばらく平原を走行していると、中継車のドライバーがサイドミラーを見ながら深刻な表情で告げる。
「どうやら魔物たちのようです・・・中継車を襲われると危険ですから、すぐに道路わきに停車させてください。」
『キキィッ』ツバサの指示により、中継車は急ブレーキをかけ路肩に停車した。
『カチャッ』ツバサが急いで中継車から降りていくので、遅れないようついていく。
「おお・・・この冒険で平原の魔物たちに出くわすのは、初めてじゃないか?
帆船で航海しているときに北極の海では魔物たちがそれなりにいたが、そのほかではダンジョン以外にほとんどであったことがない。
中央の奴らも遊園地やカジノでは俺たちを引き留められないとわかり、本格的に旅を妨害するよう仕掛けてきたということなのかもしれない。
レベルはそれほどではないにしても、数がまとまればそれなりに厄介だ・・・十分注意するように。」
もしかすると、あの高い壁で区分されたこちら側では、村や町の外で魔物たちが出現するのかもしれないな・・・。
西の空が真っ暗になるくらいの軍勢を見上げながら、メンバーに注意を促す。
「きゃあっ・・・なにこれ・・・。」
言ったそばから、レイが悲鳴を上げる。
『ズバッ』すぐさまツバサが駆け寄り、光の爪で仕留めた。
すぐに魔物は消滅してしまったが、大きな巻貝のような貝殻をもった、サソリのような魔物だったと思う。
みると遠間から地面を真っ黒く埋め尽くすようにしながら、巨大なうねりが迫ってきていた。
「地上と空中からの2段攻撃だな・・・俺とツバサが地上からの攻撃を受け持つから、レイと源五郎が飛んでくる奴らを相手にしてくれ・・・相当数が多いが、頑張ってくれ。」
『はいっ、わかりました!』
すぐに各担当を決めて魔物たちと対峙する。
平原の魔物たちとなら恐らく大きなレベル差があるはずだが、何せ数が多い。
途中で疲れてしまわないか、体力勝負となるだろう。
「来ます!」
『シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ』真っ黒い雲の塊のようになって襲い掛かって来る魔物たちめがけて、源五郎が矢継ぎ早に矢を射かけていく。
「神の裁き(ライデン)!神の裁き(ライデン)!神の裁き(ライデン)!神の裁き(ライデン)!」
レイも、魔物たちめがけて雷の魔法を発した。
『ズババババババズバババババズババババッ』すると源五郎の矢は、そのうちの一本で襲い掛かってくる巨大なカラスの体を貫き消失させ、その後も飛び続け複数の魔物たちを粉砕していく。
『バリバリバリッドーンッ、バリバリドーンッ、バリバリドーンッ、バリッドーンッ』さらにレイの魔法で、空を埋め尽くしていた真っ黒な影の、半分ほどが消え去った。
「えっ・・なんだあ・・・。」
『わさわさわさ』空を見上げながら唖然としていたら、貝殻を背負い大きなハサミを持ったサソリのような魔物たちが襲い掛かってきたので、鋼鉄の剣で切りつける。
『シュッパパーンッパパパーンッシュッパーン』すると、数撃で目の前にいた魔物たちは消滅してしまう。
ありゃりゃ・・・これはまた・・・・。
「おおい・・・なんだかここの魔物たちは、ずいぶんと弱いようだぞ・・・。」
源五郎たちに振り返る。




