アイテム活用
5.アイテム活用
「おい皆・・・どうやら、この洞窟内をものすごいスピードで飛び回っているのが、イソギンチャクもどきの様だぞ・・・天空の盾が反応して開き、そこにぶつかって落ちて分かった。
飛んできたのをうまく叩き落せば、捕獲は簡単だ。」
他のメンバーにもものすごいスピードで飛んできた、イソギンチャクもどきのことを説明しておくことにする。
『ドガッ』「キャッ・・・痛いっ!えーん・・・何とかして!」
『ガンッ・・・ガンッ』「その・・・イソギンチャクもどきですか?
イソギンチャクといえば軟体動物と思っていましたが・・・かなりのスピードでぶつかってくるせいか、その衝撃は、すさまじいものがあります。
しかも前後左右どちらから飛んでくるのかわからず矢の的も絞れませんし、盾も一方向からの攻撃しか防げないようで、何とも対応できない状況です。」
レイと源五郎が泣き言を吐く。
『シュッ・・・シュッ』「精神を集中させれば飛翔体を避けることは可能ですし、向かってきてくれるのであれば肘や膝でガードも可能でしょうし、反撃も十分に行えるはずです。
しかし・・・イソギンチャクもどきの捕獲となると・・・つぶしてしまってはいけないわけですよね・・・。
そうなると、対応が難しくなります。」
さらにツバサまでもが・・・確かに捕獲なんだから倒してしまってはいけないわけだ・・・消滅してしまうからな・・・そうなると厄介な相手だな・・・。
「よし、まずは精神統一と行こう・・・俺と源五郎は無想攻撃の構えだな・・・レイとツバサの場合は心眼だ。
攻撃はしなくてもいい・・・まずはものすごいスピードで飛んでくる、イソギンチャクもどきを避けることから始めよう。」
「うん・・・わかったぁ・・・」
「はい、わかりました・・・奥義・・・無想射撃!」
「はい・・・。」
各自精神を集中させて、イソギンチャクもどきの動きを探ろうとする。
『ビュッ』『スッ』『ビュッ』『スッ』左側から飛んできた飛翔物を半歩下がってぎりぎりでかわし、右後方から飛んできた飛翔物を、右足を半歩前に出して体をひねって避ける。
わずかな空気の流れにも神経を集中させていると、何とか高速で飛んでくるイソギンチャクもどきの動きは把握できてきたようだ。
だが・・・これでは攻撃を避けるだけで捕獲には至らない・・・・さっきは運よく天空の盾にぶち当たって、相手が気絶したのか落ちてくれたからよかったんだが・・・漁師の投網でも投げてみるか?
いや・・・まてよ・・・そうか・・・ふと気が付いて冒険者の袋の中をまさぐる・・・もちろん周囲へ注意を張り巡らせておくことは忘れずに・・・。
『ビュッ』『スッ・・・パアンッ』左斜め前方から飛んでくる飛翔体を、左足を後方へ引き気味に体をかわしながら左手を伸ばし、後方への体重移動とともに引き気味に受け止める。
「よしっ・・・うまくいった・・・野球のグローブだ・・・高速の飛翔体を受け止めるのだから、キャッチャーミットかファーストミットがいいのだが・・・コスチューム屋で俺以外に購入した奴はいるか?
ミットで・・・できるだけ柔らかく受け止める・・・つまり受ける時にミットを後ろへ引きながら、ぶつかるときの衝撃を減らすわけだな・・・わかるか?」
左手のキャッチャーミットで受け止めたイソギンチャクもどきを、捕獲用袋の中に収容しながら皆に説明する。
俺が持っているのは野手用のグローブとキャッチャーミットだけだ。
「僕は、アイスホッケーのキーパーのグローブを買っています。」
すぐに源五郎が、顔よりも大きなミットを冒険者の袋から取り出して掲げた。
「あたしはー・・・ラクロスのラケットを買っていたー・・・。」
レイは目の粗いザルというか篭のようなものが付いた短めの棒を持って構える。
「あたしのは・・・これで大丈夫でしょうか・・・。」
ツバサは分厚い親指だけ独立した綿入れの布手袋を冒険者の袋から取り出した・・・よく見ると、レンジ料理用のミトンのようだ。
「ううむ・・・まあいいだろう・・・取り敢えず手持ちの使えそうな道具でやってみよう。
では、もう一度精神統一・・・奥義・・・夢想斬撃・・・」
『ビュッ』『スッ・・バンッ』正面から向かってきた飛翔物を、腰をかがめ気味にミットでキャッチし、すかさず捕獲用袋に収容する。
『スパンッ』『パーンッ』『ズボッ』源五郎たちも、各自受け止めたイソギンチャクもどきを、配布した捕獲用袋に入れていっているようだ。
『ズバンッ』「これで、洞窟内を飛んでいるものは、あらかた片が付きましたね。」
源五郎が、最後の飛翔物を捕獲用袋に収納しながら振り返る。
「そのようだな・・・終わってみるとあっけないが・・・高速で飛び回っているということと、捕獲しなければならないということから、厄介な相手ではあった。
クエスト票を確認してみるか・・・なになにイソギンチャクもどき・・・その名のごとく外見は磯によくいるイソギンチャクに酷似。
通常は岩に貼りついて生活しているが、標的が現れると足場を蹴って高速で飛翔し敵を攻撃。
攻撃力AA、防御力BZ、合成でAZ。
攻撃力に比べて防御力が弱いのにもかかわらず肉弾戦を仕掛けるため、反撃したり防御しようとするとつぶれてしまうことがある。
捕獲に際しては綿の厚い布団を準備し、そこに当てて落とすのがよい・・・だとさ・・・後だしでそんな情報を入れられても困るよな・・・。
それでも意外と使えそうな小物を各自用意していたようだね・・・俺の場合は暇なときにキャッチボールでもしようかと、グローブとミットとボールを買っておいたのが幸いした。」
「あたしは・・・ただちょっとおしゃれな感じがしたから、買っておいたんだよ・・・。
あっ・・・宝箱。」
レイが目ざとく宝箱を見つけて駆け寄っていく。
「えへへへへ・・・乗り物券ゲット・・・。」
嬉しそうに4枚の回数券を高く掲げる。
「もう一つあるね・・・こっちは・・・あれ?また紙が1枚だけだね・・・。」
レイが持ってきたA5サイズの紙の片面には?と裏側には5の数字が書かれていた。
「うーん・・・丸数字の順で行くと、75と続くようだね・・・何かの番号キーかな?
まあいいや・・取り敢えず北方面のクエストはこれで終わりだから・・・一旦戻ろう。」
これでドルパカの町へ戻ることにする。
「ドルパカ南の赤城山に生息する鬼百足の駆除と、ドルパカ南東のドルダラ湖に生息するドルシャチの駆除ですね。
リーダーの変更はありませんか・・・?頑張ってきてください。」
4日かけてドルパカまで引き返し、そのまま宿も取らずにすぐに次のクエストを申し込む。
どうせ野宿になってしまうのだから、このまますぐに出発したほうが時間短縮になる。
幸いにも防具や武器の消耗は少なかったので、源五郎が矢を買い足した程度で出発だ。
例によってツバサは今回もレベルアップし、VVとなった。
「あれがそうではないでしょうかね。」
中継車のドライバーが、前方の岩山に開いた洞窟を指さす。
ドルパカを出てから2晩野宿してようやく到着のようだ。
あまりにもクエスト間の日数が空きすぎて取りだめした映像も底をつき、このところ夜の特訓内容を中継せざるを得なくなってしまっていた。
座禅シーンなどなど数分も放送できないため、視聴者サービスで組み手をやったり、覚えたての奥義の試演をしたりして間をつないでいる状況だ。
このところのクエストは当初窮地に追い込まれるのだが、終わってみると実にあっけないというか、奥義や道具の工夫で解決してみたりと、壮絶な斬り合いや撃ち合いにならないため、放送内容に乏しい限りとテレビスタッフがいつも嘆いているようだ。
「ようし・・・ではクエスト票を確認してみるぞ。」
洞窟のはるか手前で中継車を降り、そこからは駆け足で洞窟へ向かい、その手前でいつものように朝会を始める。
「鬼百足・・・ムカデに羽が生えたような形状の魔物・・・集団で獲物に襲い掛かる。
女王鬼百足は牙を持たないが、兵隊鬼百足は牙に猛毒をもち噛まれると死に至ることもある。
物理攻撃力ZA、毒攻撃力AA、防御力AZとなっているな・・・どうやら牙で噛む毒攻撃に特化した魔物のようだ・・・しかもアリのように集団で襲い掛かってくる・・・。
ううむ・・・どのように対処すればいいのか・・・小さな虫が数で攻撃してくるとなると剣や爪や矢などで攻撃してもなかなか当たらないだろうし、そのうちに噛まれて毒攻撃を受けると重症ということだな・・・。」
ダンジョンに入る前のクエスト票の不完全な情報だけでも、ちょっと厄介な感じがしてくる。
なにせ虫のような小さな魔物たちが数で押して来たら、さすがにすべてを斬り捨てることは難しい。
「大丈夫だよ・・・あたしが炎の魔法ですべて燃やしてあげるから・・・。」
レイが余裕の笑みを見せる。
「いや・・・確かにレイの火炎魔法は強力なことは認める・・・だがなあ・・・無数の小さな虫たちが押し寄せてきたときに、それらすべてを攻撃することは、並大抵なことではないぞ・・・一つも逃さずに完璧にということは、恐らく不可能だろう。
レイを先頭に魔法を発して、その漏れた分を俺たちが引き受けることになるのだろうが、小さな虫を大きな刀や爪や矢で攻撃するわけだからな・・・的確に仕留められるかどうか怪しいところだ。
物理攻撃は難しいと考えていたほうがいいかもしれない・・・なにせ飛び回る蚊を仕留めるために日本刀を持ち出すようなものだからな。」
小さな虫だからといって侮ることはできない・・・噛まれると死に至ることもある猛毒を持っているのだ。
「だったら、その小さな虫相手としての対処をすればいいのではないでしょうか・・・コスチューム屋で購入しましたよね・・・村の害虫駆除のクエストが発生しても大丈夫なように購入した・・・。」
すると突然源五郎が、変なことを言い始めた。
「うん?害虫駆除・・・???おおそうか・・・殺虫剤と散布用の防護服だな・・・確かにコスチューム屋で色々漁っているときに、何でも屋向けのアイテムとして購入したんだったな・・・。
確かにあの防護服ならゴーグルどころかヘルメット一体型だったから、虫に刺されるというか噛まれるような隙間もないな・・・そうだな、あれで行ってみるか。」
すぐに冒険者の袋を漁って、殺虫剤の散布用のタンクとスプレーとホース及び散布用の防護服を取り出す。
鎧を着たままでは防護服は着用できないので、鋼鉄の剣を装備から外し、鎧を脱いで防護服に着替える。
そうしてタンク内に手押しポンプで空気を入れ、内圧を高めれば準備完了だ。
「みんな準備はいいか?」
『はい・・・大丈夫です・・・。』
インカム装着しているので、ヘルメットをしていても会話は問題ない・・・ヘッドカメラだけは互いにヘルメットのオデコ部分に取り付けることにした。
「じゃあ行こうか・・・なんだかクエストという感じではなくなってきたが、まあ仕方がないな・・・。」
華麗に剣や魔法攻撃で魔物の群れをバッタバッタと斬り捨てていくのがいいのだが、まあ、なりふり構ってはいられない・・・我々の目的は冒険ではなく、あくまでもこの世界の開放なのだ・・・。
宇宙服とまではいかないが、それなりに分厚い白の布地で作られたヘルメット付きのつなぎを着て、洞窟内に入っていく。
『シャー・・・』縦横2m角位の洞窟入口へ入ると、すぐに殺虫剤の散布を始める。
取り逃した鬼百足が洞窟外へ逃げていかないよう、洞窟入り口には大目に殺虫剤を散布しておく。
『チュージ・・・チュージ』『チュージ・・・チュージ』洞窟奥から虫の鳴き声のようなものを聞こえてきたので、奥に目をやると、暗がりの中にいくつかの明るく光る点が見えてきた。
ううむ・・・鬼百足というのは、その体が発光するのか?
『ガガガガガガガガッ』岩がむき出しの洞窟の地面を、大きな音を立てながら巨大な物体が近づいてきた。
「きゃー・・・!」
その物体は瞬時にレイの体を抱え上げると、奥のほうへと飛んで行った。
「れっ・・・レイ・・・」
一体何が起こった・・・?今のはなんだ?
「巨大なムカデのような魔物がレイちゃんを咥えて行ってしまいました・・・あたしもすぐに跳躍して反撃しようとしたのですが、この防護服が動きづらくて・・・。」
ツバサが申し訳なさそうに頭を下げる・・・いや・・・ツバサが謝るようなことではない・・・なにせ、こっちは何が起こったのかすら把握できなかったのだからな・・・。
「まずいですね・・・防護服を着ているとはいっても、あんな大きなムカデに噛まれたのでは・・・。」
源五郎も頭を抱える。
「ちいっ・・・。」
すぐに防護服を脱ごうとするが、胸のあたりを探ってもチャックもボタンも見当たらない・・・そうだ・・・防護服は背中にチャックがあるタイプだった・・・。
「源五郎・・・悪いが背中のチャックを開けてくれ・・・。」
「はっ・・・はい・・・。」
すぐに源五郎にチャックを開けてもらおうとするが・・・源五郎も指先まで一体型の防護服を着こんでいるため、小さなチャックがなかなかうまくつかめず、チャックを下までおろすのに一苦労した。
それでも何とかヘルメットを外して上半身を出すと、後はズボン部分はそのままジャンプして脱ぎ捨てる。
「ようし・・・レイッ・・・大丈夫か?」
冒険者の袋から鋼鉄の剣をとりだすと一目散に駆け出す・・・鋼鉄の鎧を装備している余裕などない。
シャツとパンツだけの上に裸足で、どうにも風通しがよくてスースーするわ、岩でごつごつしているために足の裏が痛いのだが仕方がない・・・レイを救わなければ・・・。




