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思わぬ事態

久しぶりの投稿です。このまま中途半端にもしておけないので、何とか完結まで持っていきたいと考えております。(まだ、構想は全くまとまっていないので、どうなることやら・・・)

再出発ついでに、サブタイトルを変更いたしました。


1.思わぬ事態

「問題になっているって、一体どういうことなんだい?」

 綾瀬の言葉が気にかかり、状況の説明を求める・・・ううむ・・・一体何が・・・。


「ああ・・・細心の注意を払い秘密裏に行ったつもりだったんだがな・・・昨晩俺たちが倒産して管理物件になっているビルに立ち入った理由を明確にしろと、今朝になって破産管財人であるうちの事務所に債権者団体から問い合わせがあった。」


 電話口の向こうで、綾瀬は小声で説明してくれる。

 周囲にだれかいるのであろうか、気を使っている様子だ。


「誰かに見られたということなのかい?俺と娘が入った時には、あのあたりに人通りはなかったはずだが・・・。」

 通りに面したオフィスビルとはいえ、駅や繁華街に近いというわけではなく、コンビニもないあの辻には、人影は見えなかったはずだ。


「ああ・・・俺たちが入った時にも、定男たちを呼び寄せた時にも人通りは全くなかった。

 あの辺りはオフィスビル街とはいえ大半が空き家で、残りは倉庫が多いからな・・・なにせ青空商会が自社ビル以外に借りていた物件と、扱っていた商品の関連企業の出張所が占めていた通りだからな。


 青空商会が倒産してしまってからは夜にはゴーストタウン化するから、近隣から治安維持のためにも企業誘致を早く進めるように、役場に陳情が上がっているくらいの場所だ。


 だから・・・俺たちもほとんど心配はしていなかった・・・これまでにも何度もあのビルに債務整理確認のために入っていたわけだしな・・・何か持ち出さない限りは、出入りを許されていたわけだ。

 もっとも・・・そんなチェックすら行われていなかったしね・・・。


 ところが会社が倒産してから初めてゲーム機を使ってアクセスした途端に苦情が上がってきたことを見ると、どうやら監視されていたのだろうな・・・。」


 綾瀬の声がさらに小さくなる。

 ううむ・・・今更ながらだが、青空商会がいかに大きな企業であったかということを再認識させられる。


 オフィス街の一角を、単一企業とその関連企業だけで、ほぼ独占していたということなわけだ・・・ううむ、すごい・・・だが、そんな会社が、あっさりと倒産してしまったわけだ・・・。


 だが、そんなことよりも・・・

「監視・・・?」

 そうか・・・綾瀬が小声で話しているのは、この会話も誰かに聞かれている可能性があることを気にしているのだな?


「そうだ・・・誰かがあのビルへの立ち入りを監視しているだけではなく、ゲーム機の使用に関してモニターしているのだろうな・・・どうやってそんなことができるのか・・・ゲーム機の通信はインターネットを通じているわけではないからプロバイダー契約も関係ないしな。


 しかも銀河系間通信とはいっても、通常のアマチュア無線よりもはるかに小さな出力の電波しか使ってはいない。

 だから通信電波を傍受するなんてことも、不可能なわけだ・・・。

 そのため青空商会のショールームに監視カメラでも仕掛けられているのかと、今では疑いを持っている。


 もちろん警備用の監視カメラはビルの入り口に設置されてはいるが、当然のことながら警備会社との契約はとっくに切れているし、通電されていない・・・昨晩もその点は確認した。


 ショールーム内には、何か工事をしたような形跡もなかったのだが、だがまあ今はカメラだって手のひらサイズどころか、小指の爪よりも小さなものになっているって聞くしな・・・どこかに仕掛けられたら、プロでも雇わなければ見つけられないだろう。」

 綾瀬の声はますます小さくなり、そうして口調が速くなっていく。


「そうか・・・だが、ゲーム機を使っていたかどうかぐらいは、監視カメラを使わなくても外部からモニターはできるぞ。


 ゲーム機は家庭用ではあるが電気を使うから、100Vの電源コンセントが必要になる。

 その電源ブレーカーを監視するとか、あるいはコンセントというかテーブルタップだな・・・延長コードのようなものに、電源の入り切りできるものがある。


 中にはスマホで外からリモートできるものがあって、留守にする時でも夜になると部屋の照明をつけたりすることができるわけだ・・・防犯用だね。


 そのテーブルタップにはモニター機能がついているものもあるから、通電されているかどうかもスマホで監視できるはずだ。

 それをゲーム機の電源コンセントに仕込んでおけば、ゲーム機を使用したかどうかを容易に判断できるはずだ。」

 監視カメラの小型化だけではなく、テーブルタップだって進化しているのだ。


「そっ・・・そうなのか?それならさっそく今晩にでも、ゲーム機の電源コードを確認してみるよ・・・確かにショールームに設置している関係上、延長コードは使っている・・・。

 それを付け替えてしまえばいいわけだな?」

 綾瀬の声が少し大きくなってきた。


「ああ・・・廃棄してしまうとかえって怪しまれるから、何か別な家電の電源に切り替えてしまえばどうだ?


 扇風機とかだな・・・残務整理しようとして、あまりに暑くて・・・エアコンなど使うと電気代がかかるし、オフィスビル用だから音も大きいし目立つから、扇風機を持参してきて帰りは持ち帰ったなんて言い訳はどうだい?

 このところ、少し気温が上がってきていたからね。」


 ごまかしというか、うまく言い逃れる術を伝授する・・・。

 ゴールデンウィーク前とはいえ、すでに夏日が何度か観測され、夜も寝苦しい日々が続いているのは事実だ。


「おおそうか・・・それだったら、ゲーム機は動かしていませんっていう主張も可能だな・・・。

 ちょっとその方向でやってみるとするか・・・ありがとう、助かったよ・・・何か事情が変わったら連絡する。」


 そういって一方的に電話が切れた・・・ううむ・・・忙しそうだな・・・それはそうだろう。

 倒産してしまい、管理物件となっているビルに夜中に忍び込んで、扱っていた商品を再起動させたのだからな。

 もはやある意味犯罪行為なのだが、やっていること自体は間違っているとは考えていない。


 なにせ誰かの陰謀というか、ゲーム機を没収された後に不正なアクセスが大量にあり、そのおかげで正常にゲームを開始することができなくなってしまったわけだからな。

 そのおかしくなった状況を修正しようとして、俺たちが冒険の世界に再び飛び込んだわけだ。


 向こうの世界の俺たちがうまく立ち回って解決すれば、再びゲーム機が正当なものであることを証明することだって可能となるわけだ・・・まあ青空商会の面々が、今更それを望むかどうかは別として・・・。


 ゲーム機の延長コードが監視できるタイプのものかどうか確認していないから何とも言えないが、電源ブレーカーを監視していたとしても結果は同じ事だ。

 その延長コードを付け替えて扇風機を使っていたと主張すれば、それこそ監視カメラでもつけていない限りは反論できないはずだ。


 俺だったら倒産したビルのショールームに監視カメラを仕込むよりも、その電源を監視するだろう。

 なにせ電源の入り切りを見るだけなのだから、それこそ01の判定で、自動プログラムでアラームを発せられるようにすればいいだけなのだから・・・。


 監視カメラでは人の出入りだけではなく、何をしているのかを人が見ていちいち判断しなければならない。

 そんな手間のかかることを、10年間も継続して行っていたとは考えにくい・・・人が中に入ったことでフラグを立てて、その間だけモニターするにしても、その担当者は常に24時間待機していなければならないのだからな。



「どうだった?次はいつあのビルに忍び込むの?」

 家に帰るなり娘のレイが駆け寄ってきた・・・今日綾瀬に電話して確認してみると、今朝話しておいたからな。


 レイの場合は、ゲーム機にアクセスしているときの記憶が全くないから、ゲームの世界へ行くことよりも、倒産して使われなくなったビルに夜半に忍び込むという、禁断の所業に興味を持っているようだ。


「ああ・・・俺たちが忍び込んでゲーム機を動かしたことが、今問題となっているようだ。

 あの時にいたおじさん・・・綾瀬っていう人のところに、どうしてゲーム機を動かしたんだって、問い合わせの電話があったらしい。


 それで何とかうまい言い訳を考えてみたんだが、うまくいくかどうかはまだわからないね。

 失敗すれば、2度とあのゲーム機に触ることすらできなくなるだろう。


 また、仮に相手がそれでわかったっていってくれたとしても、すぐには何もできないだろうな。

 暫くおとなしくしていることになるだろう・・・。」


 事情が複雑化してきたので、レイにもなるべくわかりやすく現状を説明する。

 源五郎にも、奴が海外出張から帰国次第、説明しておいてやらなければならないな。


「ふうん・・・そうなの・・・残念だね・・・ゲームの世界の様子を早く知りたいのに・・・。」

 少しでもゲームの世界のことを知りたいレイは、当面お預けとなってしまいそうな気配を悔しがる。


「それもこれもゲームの世界に行った俺たちが、向こうの世界のおかしなところを直してしまえばいいはずだ。

 だから、これから風呂に入って一緒に祈ろう・・・俺たちの冒険がうまくいきますようにって・・・それから冒険の様子が伝わってきますようにって・・・。」


「うん・・・わかった・・・。」

 そういって娘は脱衣所に行って服を脱ぎ散らかし始めそのまま風呂場へ・・・それを拾って脱衣かごに入れると、俺も服を脱いで風呂場へと向かった。



 そのまま2ヶ月、綾瀬からは何の連絡もなかった。


 こちらから電話を入れたいところだが、事情が変わったら連絡するといわれている手前、催促するようなことはできない・・・それこそ電話がモニターされているということはないだろうが、あの件で監査を受けている最中に、俺のようなものが電話してその関係を問いただされると、そこから芋づる式に・・・となりかねない。


 言い逃れが通じたのかも気になるところだが、俺たちが不正アクセスしたことが、すでに明るみになっているかもしれない。

 その場合は、俺たちは犯罪者となってしまうのか?


 海外出張から帰ってきた源五郎も、状況を説明すると少し顔が青ざめた。

 奴もまた、ゲーム機にアクセスするということを俺同様、軽く考えていたようだ。


 俺や源五郎は軽く考えていたとはいえ、倒産した会社に忍び込むことに罪悪感は感じていたし、不正であることも承知していたのだが、娘のレイは何もわからずにただついてきただけだ。

 どのような結果になるにしても、娘だけは守らなければならない。


 源五郎は綾瀬達から、今でも時折以前の事業内容確認のために青空商会ビルに立ち入ることはあると聞いていたらしく、そのためゲーム機を深夜の目立たない時間にアクセスするくらい問題ないだろうと受け止めていたようで、強引に頼み込んだことを反省していた。


 奴があらかじめ手をまわしていたからこそ、俺が何とか綾瀬を探し当てて連絡したときに、あっさり使用許可が出たのだということを、改めて思い知った。



「よう・・・今電話大丈夫かな?」

 7月も中旬過ぎたころになって、ようやく綾瀬から電話があった。


「ああ・・・会社から帰ってきて、娘と息子と一緒に風呂に入ってこれから晩飯というところだ。

 電話しながらの晩酌は、子供たちの手前行儀が悪いから席を立つが、電話は問題ない・・・あれからどうなった?

 ゲーム機への不正アクセスしたことは、ばれてしまったかい?」


 生まれたばかりの息子の入浴は、俺とレイの担当となっている。


 もちろん喜んで、させていただいているわけだが、レイの奴はさすがに女の子なのか、小学生にしてすでに母性があるようで、俺が抱きかかえている息子の岳斗の髪を洗ってあげたり体を洗ってあげたりと、何も指示しなくても手伝ってくれるので、すごくありがたい。


 とか、アットホームに浸っている場合ではない・・・娘の将来がかかっているのだ。


「おおそうか・・・家庭円満・・・うらやましい限りだね。

 どうやらサグルの推測通りだったようだな・・・青空商会の事務内容確認のために夜半まで資料を漁っていて、あまりにも暑かったために持参した扇風機をまわしていた。


 夜遅くだし、ビル用の大きな空調を使うと音が響いて周りに目立つので扇風機にしたのだが、ショールームで行っていたので、ゲーム機の延長コードを使ったが何が問題だったのか?と言ってみたら、すんなり信じてもらえたようだ。


 ああ、そうだったのですか・・・倒産してしまった会社ビルに人影があるという問い合わせが、所轄の警察に入り連絡があったので、念のための確認でした・・・で終わった。


 向こうだってゲーム機への電源を監視していましたなんて言えるはずもないだろうから、それ以上の追及もなかったし、これで終了と考えていいだろう。

 言い訳のための理由付けといい、さすが・・・読みが深いね・・・助かったよ。」

 綾瀬の口調は明るい。


「助かったのは、お互い様だよ・・・俺たちだって言ってみれば共犯だからね。

 なんにしても、隠し通せたのはよかったといえるな。

 その報告なのかな?今日の電話は・・・それとも何か、10年前のゲーム機不正アクセスに関して、わかったのかい?」


 何にしてもよかったよかった・・・源五郎にもすぐに電話して、安心させてやらねばならんな。

 とりあえずの報告のための電話だったのかな?それにしては、ずいぶんと時間が経っているようだが・・・。


「ゲーム機への不正アクセスの調査に関しては、何の進展もない・・・何せ2度目ですら9年も前のことだからな・・・調べるにしても困難を極めているよ・・・しかも表立って行えるわけではないからな・・・こっちだって不正にアクセスしようとして見つけたわけだから・・・。


 それよりも・・・青空商会の買い手が現れた・・・。」


「買い手だって・・・?」


「ああそうだ・・・破産した青空商会は、会社更生法の適用を申請したのだが、借金の引受先が見つからなかった・・・なにせありもしない別惑星へのアクセスを謳ったゲーム機で破綻したわけだからな。


 ゲーム機を購入したユーザーたちには、翔たちが私財をはたいて半分ほどの購入費用を返却して収まったことは収まったが、ゲーム機自体の制作費用などは負債として残ってしまった。


 それなりに最新鋭の技術を使って、睡眠の快適性などを追及した極上仕上げだったのだからな・・・通信に関してはあの星の特異性により願いがかなったにしても、ゲーム機自体の設計製作に関しては、相当な開発費を投じていたのは間違いがない。


 そのため連鎖倒産をも引き起こしたのだが、その借金自体はいまだに解消されてはいない。

 追加募集用のゲーム機も製作途中のものすべて政府に没収されて、廃棄されてしまったからな。


 低金利政策の中であり、借金に対して利息はそれほど生じていないが、それでも負債としてあのビルは抵当がつけられたまま残っていたというわけだ。

 そんな会社を、そのまますべて買い取るといってきた企業が現れた。


 ビルを買い取るという提案ならまだしも、会社ごとすべて買い取るといってきたのだから驚きだ。」

 なんだか、とんでもないことを告げられているようなのだが、うまく事態が呑み込めない・・・。


とりあえず、出来るだけ進めますので、よろしくお願いいたします。

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