タコ真珠貝3
9 タコ真珠貝3
パチンコは絶好調で、途中デリバリーした昼飯も台でバニーガールたちに食べさせてもらいながら継続し、午後3時にはなんと5万発を超える出玉を獲得した。
昨日の分と合わせて、合計で7万発近い貯玉となった・・・100コイン券を2枚持っているから、900コイン近い持ちコインとなる。
あと少し・・・と思って少し打ち込んだため実際には7万発を割り込んで貯玉になってしまったが、上々の出来だろう。
源五郎も戻ってきたので聞いてみたが、浮かぬ顔をしていたので何事かと、バニーガールたちに確認したところ、奴も絶好調でボーナスとARTを絡めて大勝ちしたらしい。
こっちも850コインほどに持ちコインを増やしたようだ・・・そうか・・・これだと明日にはアイテムゲットとなるので、うなだれているのだな・・・。
「すまない・・・すぐ終わる・・・本当にすぐ終わるから・・・だから・・・やらせてくれ・・・」
うん?なんだかこれと同じようなシチュエーションが、少し前にもあったような気がするのだが・・・早朝のギルド前でツバサを拝むようにしてお願いする。
「いやあ、クエストをこなさずにカジノだけなんて・・・冒険者としてあるまじき行為ですよ・・・僕は反対です。
まずはクエストを申し込みましょう。」
ところが源五郎は、このところの行動に反して反対をする・・・やはり奴の場合はカジノではなくクエスト目的・・・しかも幻覚を受けるクエストを繰り返し行いたいのだ・・・。
「あたしも反対ー・・・だってぇ・・・昨日でもう乗り物券ほとんど使っちゃったものー・・・。
今日1日遊ぶだけの乗り物券がないから、クエストして乗り物券をもらうのー・・・。」
更にレイも加わってきた・・・もはやクエストが遊園地の乗り物券を手に入れるための手段と化して来ている。
「どうします?」
ツバサがあきれ顔で俺の方へ向き直る。
「ああ・・・まあ仕方がないな・・・。
俺も源五郎も、あとほんの少し連荘すればいいだけだから、上手くすれば1時間もかからないかもしれない。
だから今日はクエストをこなしてからでも十分だろう・・・カジノのコイン券は取得できないのは分かっているが、乗り物券目当てにクエストに向かうとするか・・・今日が最終日のつもりで行おう。」
ここは妥協するしかないだろう・・・源五郎だって、今日だけという制約を付けたとしても、表立って反対はできないだろうからな。
「仕方がないですね・・・今日のところは、これまで同様クエストとカジノと遊園地という事にしましょう。」
ツバサは、あきらめたようにため息交じりで答えた。
「アレヘス南西のアンヘス湖に眠る、タコ真珠貝の採取3ですね・・・リーダーの変更はございませんか?
また、このクエストに関しましては捕獲用袋をお渡しできませんが、よろしいでしょうか?」
受付へクエスト票を持っていくと、なんと今回は先手を打って捕獲用袋は渡さないと言われてしまった。
ここまで開き直ってくれると、ある意味気持ちがいい・・・。
「わ・・・わかった・・・それがこのクエストの条件であれば仕方がないな・・・。」
「では・・頑張ってきてください・・・。」
かわいらしい顔を少しゆがめながら、受付嬢が見送ってくれる・・・彼女もまたつらいのだろうな・・・。
『ガンガンガンガンッ』「すいませーん・・・またまたタコ真珠貝の採取にやってまいりました・・・。」
アンヘス湖に到着後、湖畔の貸しボート小屋の扉をいつものように強めに叩いて呼びかける。
どうせ巨乳美女は、湖にガスが充満して貸しボート営業が出来ず、ふて寝しているのだろうからな・・・。
『ガラッ』「はい、いらっしゃい・・・貸しボートで・・・うん?あれ?あんたたちか・・・?
まだこの辺りに重要なクエストがあるのかい?それとも、憩いのひと時を湖の上で過ごすのかな?
遊んでばかりいないで、早いところ次の地へ向かった方がいいと思うのだがね・・・ああそうか・・・わざわざバケツを持ってきてくれたという訳だね?
あげるといったのに・・・ずいぶんと義理堅い・・・。」
巨乳美女は、長い前髪を少し耳の後ろへかき分けると、俺が持っているバケツの取っ手へと手を伸ばした。
「えっ・・・いやあ・・・申し訳ないが、このバケツはもう少し貸していてほしい・・・。
なにせ、またまた発生したタコ真珠貝を採取して帰らなければならないからね。」
巨乳美女に訪問の目的を告げる。
「いやいやいや・・・5日前にはこもっていたガスも晴れてきて、3日前にはもう湖の上に行っても問題はないことが確認されたから、一昨日から貸しボートと釣り船の営業を開始したところだ。
今朝だって、確認のために湖の様子を見て回ったが、穏やかその物で、何の問題もなかったぞ。」
巨乳美女は笑顔で首を振る。
「いえ・・・またまたタコ真珠貝が発生したようですよ・・・ここからでも湖の上に靄がかかったように毒ガスが噴出しているのが確認できます。」
源五郎が、桟橋の向こうの湖面を指さしながら話す。
確かに湖のいたるところからブクブクと、あぶくが浮かび上がり、それが湖面で割れると白いガスと化して、湖上へと上がっていくのが見える。
「ば・・・馬鹿な・・・念のために今朝だってボートを出して、数ケ所で湖底を掻いてみたのに・・・一体どうして・・・?」
巨乳美女は茫然自失・・・といった感じで固まってしまった。
「うーん、でもおかしいな・・・今週の頭からこのクエストは発生していて、昨日順番通りに引き受けようとしたのを急遽変更したわけだから、遅くとも昨日の朝にはタコ真珠貝が大量発生していたと思うのだがね・・・。」
昨日はツバサの提案で1日カジノで稼がせてもらったからな・・・こっちのクエストを放っておいて、申し訳ないとすら感じていたくらいだ。
「だから・・・昨日どころか今朝だって湖はなんともなかったよ・・・・はっ・・・あんたたち・・・このクエストを引き受けたのは何時ごろなんだい?」
何かに気づいたのか、巨乳美女は真剣な顔をして聞いてくる・・・ううむ・・・やはり美しい・・・。
「ああ・・・今朝はちょっと皆の意見調整に手間取ったから・・・いつもより30分か40分は遅くなって8時ころだったかな?
それから車を飛ばしてやってきたから、今が9時くらいのはずだろ?」
ちょっと遅くなった分、ドライバーが中継車のスピードを上げてくれたのだ・・・まあ、カウンターでもめなかった分、ギルドの受け付けは先週よりも手早く済ませたからな・・・。
「ああそうだろうな・・・朝の見回りは7時半には終わっていたからな・・・つまりだな・・・最初のクエストはともかくとして、2回目からは、あんたたちがクエストを引き受けた直後にタコ真珠貝が発生しているという事だ。
つまりは・・・あんたたちがクエストを引き受けさえしなければ、このタコ真珠貝の発生はなかったという事になる・・・先週分も含めてな・・・あんたたちに感謝して損した気分だよ・・・。」
巨乳美女は、またもや前髪を耳の後ろ側へとたくし上げながら、悔しそうにした唇をかんだ・・・なんと・・・これはまた・・・衝撃の事実が・・・。
「そうだったのか・・・申し訳ない・・・すでにタコ真珠貝は発生しているようだから、今更クエストの撤回はできないし、取り敢えずタコ真珠貝は採取させてくれ。
もちろん、貸しボート代はお支払いする・・・。」
深く深ーく頭を下げながら、巨乳美女にお願いする。
「あっ・・・いや、まあ・・・タコ真珠貝が発生したのは、別にあんたたちがやったことではないのだから、いいよ・・・たまたま何度も同じクエストを引き受けたからというだけだからな・・・。
まあギルドに行ってクエスト票がかかっていれば、引き受けてしまうわな・・・それはそれで仕方がないのだから、あんたたちを責めるのはお門違いというもんだ・・・。
貸しボート代はいらないから、悪いがタコ真珠貝は採取していってくれ・・・駕籠かき用の道具を持ってくるから、ちょっと待っていてくれ・・・。」
そう言って巨乳美女は、長い髪をなびかせながら奥へと引っ込んでいった・・・。
サードクエストまで引き受けた理由が、カジノで儲けようとしているためとは・・・ちょっと言い出せなくなってきたな・・・。
「はいこれ・・・悪いが先週同様、稚貝も全て採取していってくれ。」
そう言って目の細かい網が付いた、駕籠かき棒を持ってきてくれた・・・本当に申し訳ない・・・。
「じゃあ悪いが、毒ガスが発生しているんじゃあ、あたしは桟橋まで近づけないので、勝手にボートを出してくれるかい?」
そう言いながら笑顔で送り出してくれる・・・ううむ・・・胸が痛くなってきた。
「では・・・防毒マスクのフィルターを忘れずに交換して・・・ボートに分乗してタコ真珠貝を採取するとしよう・・・だが・・・採取した後どうするかだな・・・。
ひもで縛っておいても、そのひもを切ってしまったほどだからな・・・。」
採取した直後はおとなしくても、岸に近づくと暴れ出すのだからな・・・それを防ぐためにひもできつく縛ったというのに・・・何の役にも立たなかった・・・。
「タコ真珠貝のベロというか足の部分がヤスリのようにザラザラしていましたから、恐らくそれでひもくらいは切ってしまったのだろうと思っています。
今回は針金で縛ってしまいましょう・・・昨日道具屋で購入しておきました。」
源五郎が大きな輪になって巻かれている針金と、それを切って縛るためのペンチを手渡してくれる。
おおそうか・・・流石に針金なら大丈夫だろうな・・・。
「おーえすおーえす・・・。」
ツバサとボートに乗り込み、湖へと繰り出す・・・。
まだタコ真珠貝は発生したばかりなのか、湖表面のガス濃度はさほど濃くはなく、見通しが利くため湖面に浮いてくる気泡は見つけやすそうだ。
『ザッザッザッ・・・シュタタタタッ』『ガラガラガラガラ』湖面を掻いては中の石ごとボート内に開け、タコ真珠貝だけバケツに入れると残った石は湖に戻す・・・網の目が細かい分だけ小石が多いが、それでもこの作業にも慣れてきた。
防毒マスクのレンズを通すと視界は狭く感じていたが、慣れるとどうという事はない。
そうして、先週よりも随分と早く湖底をさらい終えた・・・。
「また今週も50個は入っているな・・・全て針金で十字に縛ったから、手も足も・・・というかベロも出せない状態のはずだ・・・。」
5個ずつ分配した真新しいステンレス製のバケツ一杯に入ったタコ真珠貝を見て、満足げに頷く・・・。
「どうでしたか?こっちは大漁ですよ・・・。」
源五郎たちのボートも寄ってきて、満タンに入ったバケツを掲げて見せる・・・ううむ・・・向こうも同じくらいだな・・・。
「では・・戻るとするか・・・。」
本当に楽勝のクエストだったな・・・こんなクエストであればまた来週も・・・と思ってしまったが、巨乳美女に悪いな・・・。
『ブーン・・・ブーン・・・』うん?なんだなんの音だ・・・?何か振動するような音が聞こえてくる・・・。
ボートが桟橋へ近づいてくると、どこからか重低音が響いてきた・・・辺りを見回してみると・・・なんとバケツから音がしている・・・タコ真珠貝を針金で縛って入れてあるバケツが、小刻みに振動しているのだ。
タコ真珠貝たちが、岸が近づいたことを感じて暴れ出そうとしているのだろうが残念だったな・・・稚貝も含め針金できつく縛ってあるから、身動きは取れないだろう・・・ちょっとかわいそうだが仕方がない。
『ブーンブーン・・・ブーン・・・ガタガタガタッ』岸に近づくにつれ、その振動音が大きくなってきて、やがてバケツごと大きく揺れ始める。
「無駄なあがきだというのに・・・針金できつく縛ってあるから何もできないぞ・・・といっても、貝たちには聞こえないか・・・。」
「いえ・・ちょっと待ってください・・・貝たちが光り出しましたよ・・・。」
ツバサがちょっと不安そうに、バケツを注視しながら話す。
「そうか・・・先週同様光を放って目つぶしするタイプなんじゃないかな?
だがしかし・・・たしか貝が開いて中の身がまぶしく光り輝いたはずだ・・・貝を閉じたままでは目つぶしにはならんさ・・・それに貝を開けなければ真珠玉も発射できないしね。」
今週こそは奴らの思い通りにはならなくて済みそうだ・・・。
『ブーン・・・ブーン・・ブーン』ところが、だんだんと重低音の振動の間隔が一定の周期に変わってきた。
それに伴い、貝が放つ光も強まってきたような気が・・・貝殻越しに薄く光っていたものが、赤黒い色から赤くなり黄色くなり・・・だんだんと白っぽく変わりつつある。
同時に、何だか焦げ臭いにおいも・・・。
「なんだか、煙のようなものが上がってきましたよ・・・それに臭いも・・・。」
ツバサがそういいながら、バケツへと手を伸ばす。
「熱いっ!」
ところがバケツに触れた瞬間、叫んで手を引っ込めた。
「ふぅーふぅー・・・ただ光っているだけではないようですね・・・熱を発しているようです・・・しかもかなり高温ですよ・・・。
焦げ臭いにおいは、恐らくタコ真珠貝を入れてあるバケツが高温になって、樹脂製のボードが焦げているのだと思われます。
このまま温度が上がり続ければ、ボートは燃えだしてしまうかもしれません。」
ツバサは、やけどをしたのか真っ赤になった指先に息を吹きかけ冷ましながら、横目でバケツの状況を見つめる。
ううむ・・・このままではボートが沈んでしまうな・・・。




