源五郎の真意???
7 源五郎の真意???
「おお・・・流木は俺とツバサの2人ですでに5ケ所にまとめてある。
堤防から見渡せるはずだから、存分に憂さを晴らしてくれ・・・。」
「わかったー・・・奥義・・・究極火炎・・・バースト!!!」
『タタタタタッ』駆け出したレイが、堤防端から海岸を見下ろして奥義魔法を唱える。
『ドッゴォーンッ』『ブワッ』真っ白い高温ないくつもの火の玉は、海岸中に散っていき各所で巨大な火柱をあげた。
「楽勝のクエストだなんて言っておいて・・・毎回毎回幻覚にかかって迷惑をおかけして申し訳ありません。」
源五郎は起き上がると、俺とツバサに向かって深々と頭を下げる。
「いやあ・・・あれも魔物の攻撃と考えれば仕方がないさ・・・。
うまくすれば幻覚を見続けさせて、この地に埋めてしまおうという腹なのだろうが・・・何とか幻覚を断ち切ることが出来たとしてもそれなりのダメージが残る。
肉体的なダメージはさほどなくても、レイのように精神的なダメージを感じてしまう事もあるわけだからね。
だからまあ・・・そんなに気にしなくてもいいさ・・・。」
卑怯な手のようにも感じるが・・・まあこれも戦法と言われてしまえば否定はできない・・・何せ一定以上の効果をあげているわけだからな・・・こちらにはたまたまツバサが居て、2人分の意識であるため耐性が強いから何とかなっているだけなのだ・・・。
「そっ・・そうですよ・・・幻覚のことなんてきれいさっぱり忘れてしまうのがいいですよ・・・。」
やはりツバサは、源五郎の幻覚のことを気にかけている様子だな・・・そうか・・・このところ源五郎がカジノへ行きたがるのを不審に感じていたのだが・・・あれはパチスロをやりたいがためではなくて、このクエストで幻覚を見ようとしていたのかもしれない。
深層催眠とかで失われた過去など・・・幼い時の記憶とかすっかり忘れてしまっている出来事を思い出させるなんてことを聞いたことがある・・・あれを行おうと考えていたのか・・・?だからこの地でのクエストにこだわっていたのだ・・・。
「あっ・・・宝箱が出て来たよー・・・今度は2つも・・・。」
『タタタタタッ』すべての流木が燃え尽きたのか。宝箱を見つけてレイが海岸へと駆け下りていった。
「やったあー・・・乗り物券だぁー・・・それと、100コイン券が出て来たよー・・・。」
レイが嬉しそうに宝箱から数枚の紙片を取り出して高々と掲げる・・・クエスト票通りに褒賞が出てきたようだ。
これでまた今日もカジノ行きだな・・・。
「あらん・・・昨日はもう当面の間来ることはないだなんておっしゃってお帰りになったから、すでにほかの土地へ冒険の旅に行かれたと思っていたのに・・・戻ってきてくださったのねぇ・・・うれしいわぁ・・・。」
カジノへ着くなり、バニーガールたちが抱きついてくるわ、ほっぺにチュッしてくれるわ・・・大歓迎してくれた・・・そういえば、昨日真面目な顔してお別れをしたばかりだったのを忘れていた。
「いやあ・・・またカジノ券が手に入ったものでね・・・いつまで来られるかわからないが、君たちに会いに来られるだけ来るよ・・・。」
とりあえず、お愛想のセリフを・・・。
「あら・・・うれしいわぁ・・・で?今日もいつもの台なの?」
「ああ・・・いつものだ・・・。」
なんだかどこぞのスナックで、ちいママと会話しているような気持になってくるが、バニーガールたちと連れ立っていつもの島へと向かう。
昨日はずいぶんと回りが悪くて、台選びが大変だったからな・・・今日は回復してくれているといいのだが・・・。
と思っていたのだが・・・やはり今日も全然回らない・・・ボーダーまで回る台を探して、最初はカニ歩きだ・・・。
回らない割に当たれば単発・・・これではコインを消費するだけで、とても増やすことなんてできそうもない。
昨日アイテムと交換して残った7千発ほどの貯玉は瞬く間になくなったところで単発当たり・・・時短もスルーして持ち玉をのまれ追加投資を強いられる。
100コイン目もなくなりかけたところで、ようやく確変を引いて4連荘・・・台が上向いてきたのでこれからと思っていたところに源五郎がやってきた。
「どうですか・・・。」
「ああ・・・全然だめだ・・・残っていた貯玉も使い果たし、追加投資でせっかくもらった100コイン券1枚使い切りそうなところでようやく当たって、少し戻したところだ。」
源五郎の問いかけに力なく首を振る・・・、回りが悪くてどうしようもない・・・。
「そうですか・・・僕の方も同様ですよ・・・なんだかスロットはこのところ設定1しか入っていないのではないかと思い始めました・・・。」
源五郎もなす術なく玉砕した様子だ・・・門限が迫っているようなので、あきらめて帰路に就く。
「そうですかダメでしたか・・・それでまた明日からもサードクエストとやらを続けるつもりですか?」
カジノからの帰り道、ちょうどレイたちと合流できたので、一緒に帰りながら戦況を報告すると、ツバサは冷ややかな目つきで俺と源五郎のことを見つめてきた。
「あたしはー・・・全然大丈夫だよー・・・まだまだ当分の間ここに残って毎日毎日クエストをやって・・・午後から遊園地・・・で大満足・・・。」
今日も半日遊び倒したのか、レイの奴は上機嫌な様子だ・・・まあホームシックにかかって泣き出すこともなくなったし、よかったよかったなのだがな・・・。
「あっああ・・・申し訳ない・・・今週までは我慢してみてくれ・・・。」
源五郎とともに、両手を合わせてツバサを拝む・・・。
俺はカジノでパチンコ三昧が楽しいので、できればこのままずっと・・・とすら考えているのだが・・・源五郎はどうなのだろうな・・・夢に出てくる彼女たちのことを思い出したなら、すぐさま彼女たちに会いに行きたくなるのだろうな・・・だがその地は恐らく最終局面の南部大陸・・・。
いや・・・各地でのダンジョンも大幅変更のようだから、今回も南部大陸とは限らないわけか・・・どちらにしても暗黒騎士団であるなら冒険ストーリーの最後の方で出会うはずだから・・・長い長い冒険の果てに・・・という事になるのだろうな。
だったらこんなところでぐずぐずしているよりは・・・とも思ってしまうのだが・・・。
『パンパカパーンッ』「おめでとうございます、ツバサ様はWHにアップされました。」
翌朝ギルドに向かい清算すると、早速ツバサのレベルアップが告げられる。
ツバサのレベルアップだけが、せめてもの慰みだ・・・。
「アレヘス東の富士山脈西南洞窟に生息する四菱草の採取3ですね?リーダーの変更はございませんか?
頑張ってきてください・・・。」
翌朝ギルドへ行き、もはやルーチン化してきたように手順通りクエスト票を選択し受付へもっていくと、これまたいつものように笑顔で送り出された。
繰り返しループを続ける俺たちのことを、彼女は不審に思わないのだろうか・・・?
「では・・・これから洞窟へ入っていく・・・。
先週は脛を四菱草の葉で攻撃されたから、竹馬を使って中へ入っていくとしよう。
恐らく、また別の何か攻撃があるかもしれないが・・・その時は臨機応変に対処するとしよう。」
洞窟前で朝会を行う・・・だんだんと言う事もなくなってきた・・・前回からクエスト票を確認することもしなくなった・・・どうせ変化点に関してなど、記載がないという事が分かり切っているからだ・・・。
「じゃあ、行くぞ・・・。」
前回同様、俺が先頭で源五郎とツバサが2列で続き、レイが最後尾で進んでいく。
『ザッザッザッザッザッ』『シュルシュルシュルシュル』『キンキンキンキンッ』『シュシュシュシュ』手裏剣は盾でブロックし、鋭い葉の攻撃は竹馬で避けながら進んでいく・・・。
『グッ・・・ガッシャンッ』うん・・・?と思った瞬間、前につんのめってこけていた。
「うわっ!」
「はあっ!」
『シュルシュルシュル』『キンッキンッキンッ』後方では前方を防御していた俺が居なくなってしまったために、源五郎の悲鳴や、ツバサが手裏剣をはじいている音が聞こえてくる。
『シュシュシュシュシュ』『パキパキパキパキッ』そうして俺の装甲に、細かな衝撃が連続して発生する。
転んだため、鎧の兜や胸にも鋭い葉が飛んできているようだ・・・ううむ・・・何か硬い岩にでも滑って転んだのだろうか・・・?竹馬では靴と違い地面の感覚が伝わってきにくいからな・・・。
『キンキンキンキンッ』盾で前面をカバーしながら振り返る・・・うん?洞窟の中なのでカメラ用のライトを点灯させているのだが、その光を反射する直線が目線の高さに・・・なんだこりゃあ・・・ちょっと戻って手を伸ばしてみると・・・それは硬い針金・・・いわゆるピアノ線のようだった・・・。
振り返って前方に視線を移すと・・・ちょうど膝くらいの高さに、数メートルおきにピアノ線が何本も張られているようだ・・・。
「おーい・・・みんな聞いてくれ・・・どうやら竹馬での歩行をおもしろく思われていない様子だ・・・それはそうだよな・・・折角四菱草の葉を投げナイフのように活用しているというのに・・・何の意味もなくされてしまったのだからな・・・歩行を妨害するための障害物としてピアノ線を張られた・・・。
ちょうど膝の高さ位に張られている・・・ライトを下に向けて注意して見ればわかるはずだ・・・。
皆・・・船で竹馬で木箱を跨いだり、転がってくる樽を飛び上がって避けたりして遊んだことを覚えているか?
あれに比べれば、大した障害でもないはずだ・・・俺は油断してこけてしまったが、皆は注意して進むようにしてくれ・・・。」
『パンパンパンッ』「よっと・・・」土ぼこりを払うと、竹馬に乗り移る・・・。
『ザッザッザッザッダッ・・・ドンッザッザッザッ』盾で前面をガードしながら、隙間から前方の様子を伺い、ピアノ線を見つけたら軽くジャンプして飛び越す・・・確認できればさほどの障害ではない。
『ザッザッザッザッダッ・・・タタタタタタッシュタッ』「とうっ!」
幾つもの障害をジャンプして乗り越え、広いドーム状の空間に出たとたん、ツバサは竹馬を乗り捨て一目散に駆けていき、宙へと舞い上がった。
「待てっ、ツバサ!」
ツバサが飛んでいく先を見て慌てて呼び止める・・・カメラ用のライトに照らされ、ドーム上方が蜘蛛の巣状に何本もの線が絡み合って張られているのが見えたのだ・・・恐らくはピアノ線・・・ツバサの空中殺法封じだろう。
「はい?どうしました・・・。」
ところがツバサは、見上げるほどの高さにピンと張られたピアノ線の一本に器用に飛び乗り、何事もないように振り返る。
「あっ・・・いやあ・・・ドーム上方には幾重にもピアノ線が張り巡らされていて、不用意に突っ込むと体がバラバラになってしまうと言おうとしたんだが・・・。」
ツバサはピアノ線の存在を認識していて、それでも突っ込んでいったようだな・・・危険と感じないのだろうか?
「ああ・・・このワイヤーですか?
あたしが奥義の鷲撃泰覇斬や鰐襲旋風脚の修行をしたときには、これと同じように細いワイヤーを木立の間に張り巡らせて、上空から滑空するときの姿勢制御など取得したものです。
懐かしいと感じてすぐに飛び移ろうとしたのですが・・・いけなかったでしょうか?
これだけワイヤーを張り巡らせていれば、上の方は手裏剣攻撃を受ける危険性もありませんから、かえって楽ですよ。」
ツバサが笑顔で答える・・・なんと・・・ツバサの空中殺法封じどころか、空中殺法のトレーニング場のようなものなのか・・しかも敵の攻撃手段である手裏剣は上空では使えない・・・鋭い投げナイフのような葉の攻撃は、膝より下のみだしな・・・。
「わ・・・分かった・・・じゃあ・・・俺たちも奥義の修行がてら、ピアノ線に飛び乗って攻撃を仕掛けてみるよ。」
『ダッ・・・スタッ』そう言いながら腰ほどの高さに張られたピアノ線に、何とかジャンプして飛び乗りバランスを取ろうと両手を広げる。
「あわわわわわ・・・・。」
ちょっと油断すると、地べたに頭から落ちそうで怖いが、もちろん?まるような手すりなどどこにもない。
両手を広げて重心位置を安定させ、バランスをとっているしかないようだ。
「へえ・・・あたしもやってみようっと・・・。」
『ピョンッ』『グラグラグラグラッ』レイも俺が乗っているのと同じピアノ線に飛び乗ってきた。
おいおい・・・一人でバランスをとるだけでも大変だというのに・・・。
「へえ・・・1輪車に乗っているみたいだね・・・前後に体を少し揺らしながらバランスをとるといいよ・・・。」
レイの奴は平然と、細い細いピアノ線の上で立つことが出来るようだ・・・おお凄い・・・俺なんかアンケートで綱渡りが得意と書いたはずだが、流石にこんなに細いピアノ線ではなかなかバランスが取れないというのに・・・。
そういえばレイの行っている小学校では、1輪車の授業があるんだったな・・・。
「じゃあ僕も・・・。」
源五郎は、肩くらいの高さのピアノ線に飛び乗った・・・今回は高いところが苦手だったのを、克服してきたと言っていたな・・・。
確かにピアノ線の張られた中にいる方が、手裏剣の攻撃も四菱草の葉の攻撃もないので、バランスをとることに集中できる。
「では、攻撃を仕掛けていきますよ・・・。」
『タッ・・シュタ・・シュッパンッシュパッ・・・シュパッ』ツバサは器用にピアノ線を伝って飛び跳ねながら、ひな壇上に並んだ四菱草を攻撃していく。
「あたしもやってみようっと・・・よっと・・・。」
『タッ・・・シュタッシュタッ』「全体光攻撃!全体光攻撃!」
『ぺかー・・・ぺかー・・・』何本ものピアノ線を器用に伝ってドームの壁面へ近づいていき、レイの光攻撃が四菱草に向かって発せられていく。
「じゃあ僕も・・・」
『シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ』『パシュッパシュッパシュッパシュッパシュッパシュッパシュッパシュッパシュッパシュッ』源五郎もピアノ線の上に器用に立って、高い位置から四菱草に向けて矢攻撃を開始して、次々と仕留めていく。
敵が仕掛けた罠を逆手にとっての攻撃だ・・・なかなか気分がいいな・・・俺も負けてはいられない・・・。




