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新たなクエスト

12 新たなクエスト

「クエスト票はどうしたんだね?

 まさか、大量の冒険者たちがやってくるまで新たなクエストは作らないなんて・・・。」

 すぐに受付カウンターに取って返して、美人受付嬢に確認する。


「いえ、その・・・現在、この地に見える冒険者様のパーティは、シメンズの方たちだけです。

 そうして有効なクエストは本当にわずかしかございません。

 大変申し訳ございませんが・・・、現在この地に残ったクエストは3件のみです。」


 受付嬢は、言いにくそうにうつむき加減に答える。

 そうか・・・、なにせ初級の冒険者用のクエストだから手ごたえのある魔物など出てくるはずもないし、3人で手分けして全てこなして稼ごうと考えていたのだが・・・、まあ、ないならないで仕方がない。


 事務局側の意向であれば、残されたクエストをこなすだけでも、勇者への道は開けていくはずだ。

 すぐに柱に向かい、3件だけというクエスト票を探す。


「これじゃないでしょうかね?」

 すぐに源五郎が、柱の裏側から声をかけてくる。

 行ってみると柱の一番上に3枚のプラチナ板が・・・、やはり特別なクエストのようだ。


「北の港町への定期便の護衛・・・、クエストレベルは・・・、SUですね。

 西の湖に生息する超凶悪ぬっしーの捕獲・・・、クエストレベルはSX・・・、それから南にある封印の塔に巣くう魔物たちの一掃・・・、これはクエストレベルがRUと上がります・・・まあどれでも引き受けられますね。」

 源五郎がクエスト票を手に取り読み上げる。


 クエストレベルなんか、いくつでも俺たちには関係がない・・というか、AAが最高レベルといっていたから、これ以上のクエストレベルはないという事だ。

 なんか開発したばかりのゲームのお試しで、バグ取りも兼ねて無敵状態でアクセスしているようで、なんともぬるま湯的なクエストなのだが、まあ油断は禁物だ・・・、敵魔物も驚異の経験値を持っているはずなのだから。


「それと・・・、報奨金は9000Gから10000Gですよ・・・。」

 ううむ・・・金がたまってしまうな・・・だが、いま最も必要なクエストは一つだけだ・・・、クエスト票を源五郎から受け取ると2枚は柱に戻し、1枚だけ手にもって受付へ再度戻る。


「このクエストを・・・引き受けたい・・、レベルは十分で問題ないはずだ。」

 カウンターの受付嬢にクエスト票を渡そうとする。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 しかし、受付嬢は目をつぶったまま、反応しようとしない。


「うん?まさか・・・、マネキンロボットっていうわけじゃあないよな・・・?

 電池切れとか・・・?」

 受付嬢の目の前で何度も手を振ってみるが、何の反応もない。


「おーい・・・、大丈夫かい?

 うーんだめかあ・・・すみませーん・・・、あのー・・・受付の子が反応しなくなってしまったんですけど!」

 カウンター奥のドアに向かって大声で呼びかけてみるが、何の反応もない。


「申し訳ございませんが・・・、ただいまはお祈りの時間です。

 どなた様も、この時間はお祈りをしなければならないという決まりですので、クエスト等を取りやめてでも、お祈りを実施してください。」

 すると我慢できなくなったのか、美人受付嬢が小声でささやきかけてきた。


「ええっ・・・、お祈りって何のことだい?何か、宗教的なことなのかな?

 俺の場合は、どちらかというと無神論者なんだが、それでも初詣にはいくし、クリスマスは祝う方なんだがね・・・。」

 取り敢えず、なに教なのか聞いてみる・・・、宗派もできれば聞いておいた方が後後もめなくていいだろう。


「宗教って何のことですか?

 今この時間は、この世界を110年前に戻すようお祈りする時間なのです。」

 受付嬢はなおも小声で、短めに告げる。


「110年前だって・・・?そういえば、10年前の通信障害の時に、魔神は過去にさかのぼったって言っていたけど、それをもう一度やり遂げようとしているのかい?

 いったい何をするつもりなんだ?」


「私にはわかりかねます・・・、これは事務局本部からの指示なのです。」

 受付嬢はなおも真顔で告げる。

『ボーンボーンボーン』すると突然ギルド内の時計が、午後3時を告げる。


「シメンズの方たちですね。

 ありがとうございます・・・、ファブの港町への定期便の護衛を引き受けてくださるのですね・・・。

 リーダーの変更はございませんか?


 ではすぐに馬車が出発いたしますので、正面出口へお回りください。」

 ところが受付嬢の態度は突然通常時に戻り、笑顔でギルドの入り口ドアを指し示す。

 どうやら、俺たちが護衛を引き受けるのを待ち焦がれていた様子だが、あれあれ・・・どうしたというのだ?


「いま、お祈りの時間だって言っていたけど・・・、なにをお祈りしていたんだい?」

「はい?」

 ところが受付嬢は先ほどのことを何も覚えていない風で、首をかしげて笑顔を見せる。


「どうしたんだろう・・・???」

 何がどうなったのか・・・、この場に固まってしまいそうだ・・・。


「恐らく、プログラムのバグか何かではないでしょうか・・・。

 受付嬢に関しては、定常の受け答えをする以外の機能はなく、いわゆる受付ロボットの類ですからね。

 合成した意識を植え付けた、今回の魔物に比べてもロボットに近いような存在と聞きました。


 恐らく、以前僕たちが次元を超えて向こう側の世界に実体化したときにも、関係者の中には受付嬢は含まれていなかったはずです。

 ですから、彼女たちが何か願いをかなえようとして祈るというのは、ちょっとおかしいのですよ。


 ですから、プログラムのバグかノイズが入り込んでのではないでしょうか。」

 源五郎が俺の背後から小声で説明してくれる。


「そうか・・・だったら、まあいいとして・・・クエストを引き受けてファブの港町へ行くとするか・・・。」

 まあ、相当複雑なプログラムでゲームキャラの動きは成り立っているのだろうから、ちょっとぐらいのバグがあっても仕方がないわな。


「そんなわけはありません・・・真剣にお祈りをささげているので、午後3時までの10分間は受付業務を行わなくてもいいと事務局から許可されているだけです・・・その代わり3時を過ぎたら即刻通常業務に戻らなければならないのです。」


 俺たちのひそひそ話の一部が聞こえたのか、受付嬢が顔を赤らめながらまじめな表情で告げる。

 ああそうでしたか・・・バグでもなんでもなく・・・、お祈りね・・・?申し訳ない・・・。


「そういえば、10年前にも同じように馬車の護衛を引き受けませんでしたか?」

 源五郎がなおも、声をかけてくる。


「おお・・・そういえばなんかそんな気も・・・、切り立った渓谷を馬車で進んでいった覚えがある。」

 ファブへ行くには途中で野営をするイメージがあったのだが、あれは馬車で始まりの村から向かった時の記憶のはずだ。


 通信が回復したときに俺たちはファブの港町にいたわけだが、そこへツバサがやってきてくれたのだった。

 だからまた、ファブの港町でツバサが待っていてくれるといいのだが・・・。


『ガチャッ』「よろしくお願いいたします。」

 ギルドから外に出ると大きな馬車が横付けされていて、俺たちが出てきたことに気が付いたのか客車の小窓が開いて、そこから美しいご婦人が顔を出して挨拶をしてくれた。


「あっどうも・・・、こちらこそよろしく。」

 ううむ・・美人の護衛だ・・・ちょっと嬉しい・・・、確か10年前の時もこんな感じだったから、恐らく娘を連れているのだろう。


「では、お乗りください。」

「はいっ。」

 客車の扉を開けようとするレイを押しとどめ、前側の御者席に座らせて、御者を挟んで反対側に俺が座る。


 源五郎は申し訳ないが、後席を一人で守ってもらう。

 攻撃の飛び道具を持つ源五郎とレイは、分散してもらうことになるし、レイは子供だから乗り物酔いをする場合があるため、進行方向を眺められる前向きの席の必要性があるのだ。


「では、出発します・・・はいよー・・・。」

『パチンッ』『カッポカッポ・・・』御者が馬に鞭を当て、馬車がゆっくりと動き始めた。


「えーと・・・、こうげき・・・・・・。」

 レイは早速、先ほど購入した初級の攻撃魔法の教本を開く・・・、馬車に乗っているときなので、これはルール違反ではないわけだ。


「えーと・・・これは?」

「火炎弾だな・・・、大きな炎の玉を高速で敵にぶつけるわけだ・・・。」


「ふうん・・、これは?」

「雷撃・・・雷のような、強烈な電気ショックを与える魔法だね・・・」


「ふうん、じゃあ・・・」


 レイが読めない漢字や意味が分からないことを御者の背中越しに解説してやる・・・、唱える魔法をイメージしなければ効果も薄いだろうから、十分理解してほしい。

 しかし、こんなことしていて大丈夫だろうか・・・、ちょっと心配。



 馬車は村の東側から出て、抜けるような青空のもと東の森へと進んでいく。

 そうして東の森を北へ抜けると、そこは左右が切り立った崖に挟まれた渓谷の底のようになっていた。

 左右を崖に挟まれた狭い道を馬車はゆっくりと進んでいく。


 ううむ10年前の時には、羽の生えた超人が襲い掛かってきたのだったか・・・、結構苦労したような気がする。

 前方を眺めていると、崖の隙間から見える青空に黒い点が・・・、やがてその黒い点はいくつもの小さな点の集まりであることが分かってきた。


「危険危険・・・」

『パチンパチン』御者が馬に鞭をくれ、手綱を握りしめると馬車はスピードを上げた。


『ズッゴーンッ』大きな雨雲でもかかったかのように空が薄暗くなり始めると、不意に馬車の側面に何かが落下してきて地面に突き刺さる・・・、もちろん雨粒や雹とかの類ではない・・・。

 馬車はハイスピードで通り過ぎ、よくは見えなかったが黒い柱のような・・・。


『ドッゴーンッ』『ヒッヒーンッ』今度は進行方向に黒い柱が落下してきて危うくよけるが、馬が驚いて急停車する。


「恐らく羽の生えた鳥人の群れだろう。

 どうやら太いやりを投げてきているようだな・・・止まるとまずい・・・、動いていないと狙われるぞ!」

 すぐに御者に馬車を始動させるよう命じる。


「でっでも・・・馬が・・・。」

『ヒッヒーンッ』「どうどうどうっ」


 2頭立ての馬を御者が手綱を引いて何とかなだめようとするが、馬はよほど恐ろしかったのだろう、後ろ足だけで何度も立ち上がろうとして、落ち着かない。


「仕方がない・・・レイは鳥人たちが近づいてきたら、すぐに攻撃魔法で撃ち落としてくれ・・・、初級魔法より最初に覚えた上級魔導書の方の呪文を使ってくれ。

 源五郎も矢で撃ち落としてくれ。


 俺はここであの槍を防ぐ・・・、馬が落ち着いたら構わないから出発してくれ。」

 そういうと俺は、客車の屋根に乗り移った。

 少しでも高い位置で、槍を払い落としたいからだ。


「おえー・・・、はきそう・・・。」

 しかいレイは、御者席で前のめりに倒れ伏してしまった。


 案の定・・・揺れる馬車に乗りながら、細かい文字に意識を集中していたためか、レイは乗り物酔いで使い物になりそうにない。


『ヒュッ』『ブンッ』『ヒュッ』『ボゴッ』勢いよく投げつけられる太いやりを、客車に当たる寸前に銅剣で払いのけていく。


 この体は動体視力がいいのか、はるか天空から投げつけられる槍を認識して、しっかりと払いのけることができるようだ。

 たしか10年前アンケート用紙の得意球技に野球、エースで4番と書いておいたのがよかったのだと思う。


「癒しの(サワ)!!!」

 とりあえずレイに効果があるかどうかわからないが、10年前を思い出して先ほど初級の教本で確認した回復魔法を唱えてみる・・・。


「きぃー・・・」

 遠間から槍を投げるだけでは当たらないと理解したのか、一部の鳥人たちは急降下してくるようだ。


『シュッシュッシュッシュッ』『カンッカンッカンッカンッ』客車の後ろ側から源五郎が、上空でホバリングのように浮いている鳥人めがけて矢を射かけるが、長いやりを飛行機のプロペラのように鳥人が回すと、矢はすべて弾かれてしまう。


『ブンッ』『キンッ・・・・ダッ・・ズバッ』『ブンッ』『タッ・・・カッキーンッ』急降下してきた鳥人が、長いやりを思いきり振り回してきたのを銅剣で受け止め、槍をはじいてジャンプ一番鳥人の腹をえぐるようにきりつけるが、馬の背に着地したところを別の鳥人の槍に突かれ、危うく銅剣で受け止めた。


全体光攻撃(ペカリ)!」

『ぺかーっ』乗り物酔いが回復したのか、まばゆいばかりの光がレイの掌から放射状に広がっていく・・・、が、鳥人はすぐに上空へ逃れてしまった。


 危ないところを助けられたが、どうやら光の魔法効果は、あまり射程距離は長くはない様子だ。

 うーん・・・全体魔法だからだろうか・・・。


「レイ・・・大丈夫なのか?・・・どうせなら単体攻撃の呪文もあっただろ?

 もし、回復したのであれば狙いを定めて、1匹ずつ狙って呪文を唱えてみろ!」

 馬から御者台へ移り、更に客車の屋根に再び上りながらレイにアドバイスする。


「うん・・・まだちょっと気持ち悪いけど、少し良くなってきた。

 それよりも、たんたいこうげきって・・・なあに?」


 俺の唱えた回復呪文のおかげなのか少しは回復した様子だが、言葉が伝わらずレイが首をかしげる・・・、ううむ、ちょっと言葉が難しいのかな・・・。



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