アリモグラ2
3 アリモグラ2
「大変お待たせいたしました・・・タコ真珠貝を百個及び真珠玉も百個受けとりました。
申し訳ありませんが、稚貝は今回クエストには含まれておりませんので、カウントされません。
それで・・・大変申し上げにくいのですが・・・」
受付嬢が何か言いにくいことがあるように口をもごもごさせる・・・まさか真珠が入っていないからタコ真珠貝ではないなんて難癖をつけてくるんじゃあないだろうな・・・真珠玉だって別途回収して持ち帰ったわけだから、何の文句も言わせないぞ・・・。
「何か問題があるのかな?」
「はい・・・えーと・・・せっかくお持ちいただいた真珠玉ですが・・・表面に無数の傷がついておりまして・・・価値が低く報奨金は減額されるようです・・・。」
受付嬢が申し訳なさそうに伏し目がちに答える。
「ああそうか・・・木刀で叩き落したりボートの底にぶつかったりしたからな・・・傷はついただろう・・・まあ仕方がない・・・クエストは完了という事でいいわけだね?」
「はいっ・・・勿論です・・・。」
『パンパカパーンッ』「ツバサ様はWRにレベルアップされました。」
受付嬢が笑顔で告げる・・・まあツバサのレベルが上がったのだから、今回のクエストも無駄ではなかったと考えよう。
そうして今日こそはと期待しながらカジノへ行きパチンコをするも、またもや貯玉を減らしてしまう。
源五郎も同様に持ちメダルを減らしたようだ・・・2人ともしょんぼりしながら宿へと戻り、それでも気を取り直してレイの授業を終え、食事してから奥義の修行に励んだ。
「もう1日だけ・・・というか、どうせ3つまでセカンドクエストを終えたんだから、残りの2つも終わらせないか?
そうして今週も最後は1日カジノと遊園地で遊戯するというのはどうだろうか?」
昨日の様子では、とても今日1日だけの出玉ではアイテムゲットは難しいと考え、どうせだったら最後までクエストを終わらせようと提案することにした。
「えっ・・・今日明日明後日と、3日間も滞在を延長するのですか?
いくら何でも、やりすぎではないでしょうか?
そんなにアイテムが欲しいのであれば、サグルさんの分だけアイテム交換すればいいのですよ・・・あたしの分はいりませんから・・・だから先へと進みましょう。」
案の定ツバサは猛反対だ・・・俺の分だけアイテムをゲットして、自分はいらないと言い出した。
だがそれでは気が済まないのだ・・・ここまで頑張ったのだから、何とか2人分のアイテムをゲットしたいのだ・・・それに昨日の負けが大きすぎて、俺の分として超鋼の剣をもらってしまうと、ツバサ用に身代わりの指輪すら交換できなくなってしまう・・・それでは不公平感が強すぎる。
「僕はリーダーの考えに賛成ですよ・・・やり残すのはやはり気持ちが悪いですから、セカンドクエストも最後まで完了させましょう。」
すると源五郎は俺の意見に賛成してくれる・・・ううむ・・・このところの源五郎を考えると予想はできていたのだが・・・。
「あたしは・・・勿論まだまだ遊び足りないから、ここに残ることに大賛成ー・・・。」
更にレイまで賛成してくれて、最後までやり遂げることに決定した。
「アレヘス北のアレパカ平原に巣くうアリモグラの女王捕獲2ですね・・・リーダーの変更はございませんか?
では、頑張ってきてください。」
かわいらしい受付嬢に励まされギルドを後にする・・・もちろん捕獲用袋も渡してくれた。
『ブロロロロロロッ・・・キキィッ』「アレパカ平原に到着しました・・・この先に巨大な土の塔が見えます。」
中継車のドライバーが、アリ塚より少し距離を置いた地点で中継車を停車させる。
ほう・・・先週、アリ塚はすべて破壊したはずなのに、最早新しいアリ塚ができている。
よほど働き者のアリモグラと、子だくさんの女王アリがいるのだろうな・・・。
これ以上近づくとアリモグラたちとの戦闘になった時に、中継車に被害が及ぶ可能性があるため、ここからは歩きだ・・・。
「さっさと片付けてしまいましょう・・・行きますっ!」
『タタタ・・・シュタタッ』ツバサはそう言い残すと、少し助走して遥か高みへとジャンプし、「奥義・・・真空の壁!とうっ」『シュタッ』そうして奥義を使ってさらに高く・・・アリ塚よりも高く舞い上がる。
「奥義・・・鰐襲旋風脚!」更につま先まで全身をピンと伸ばし、両手を真横に広げゆっくりと回転し始め、両手を上方へと伸ばし回転スピードを上げ、『ドッガァーンッ』その回転スピードを維持したまま、地面に激突・・・そう、先週同様奥義を駆使して、アリの巣に直接突っ込んでいった。
『ダダダダダダッ』「よいしょ」『ズザザザザッ』すぐにツバサのもとへと駆けより、土砂の中からツバサの体を引っ張り出す。
『シュシュシュシュシュシュシュ』『タタタタタタタッ』すぐに巣を破壊されて怒って出てきたアリモグラたちを源五郎の矢が的確に仕留めていき、
「神の裁き!神の裁き!」
『バリバリバリバリ・・・ガッゴォーン、ドッガァーンッ』続いてレイの雷の魔法がさく裂する。
「ではまた行きます・・・とうっ!」
『タタタタタッ・・・シュタッ』そう言ってツバサはまたもや華麗に宙に舞い上がる。
「奥義・・・真空の壁!とうっ・・・奥義・・・鰐襲旋風脚!」
『ドッガァアーンッ』そうしてまたもや奥義を駆使して、アリの巣にダイレクトに突っ込んでいく。
『ダダダダッ』「よいしょっ」『ズボッ』すぐさま地中深く突き刺さったツバサの体を引き上げる。
ううむ・・・ここまでは先週同様だ・・・しかも、かなりハイペースで進んでいっている。
「ふしゅー・・・」
そうしてツバサが最初にあけた穴から、女王アリが這い出てきた。
「神の裁き!」
『バリバリバリバリ・・・ガッゴォーン』『シュシュシュシュシュシュシュ』『キンキンキンキンキンキンキン』すぐさまレイの雷撃と源五郎の矢が、雨のように降り注がれる・・・が、やはり何の効果もない様子だ。
『ぶっしゅー・・・』女王アリの体の周りが白い靄のようなもので包まれ、やがて靄が広がり始める。
「危ないっ・・・皆さん逃げてください!奥義・・・真空の壁!」
すると突然土に埋まったままのツバサが叫んで、奥義で真空の壁を自らの前面に作り出す。
「おっ・・・おう・・・いかん!えーと、奥義・・・真空の壁!」
逃げようとしたが、白い靄は直線的ではなく、周囲を包みこむようにして猛烈なスピードで迫ってきた・・・間に合わない・・・仕方がないので、俺も急いでツバサの仕草をまね、体の正面を手刀で十文字に切る。
「奥義・・・真空の壁!」
「奥義・・・真空の壁!」
すぐさま源五郎もレイも同様に体の前を手刀で十文字に切ったようだ。
『バシャッ』『バシャッ』『バシャッ』『バシャッ』次の瞬間、すぐ目の前に水しぶきが生じた。
ううむ・・あの白い靄のようなものは、女王アリが作り出した攻撃だったのだ。
そうして俺たちもツバサの奥義、真空の壁を使えるようになったということを理解する・・・奥義の特訓中に、何度も何度もツバサが奥義を放っている姿を思い出し、その挙動を細かく分析してイメージトレーニングを続けていた効果だ・・・ツバサも喜んでくれることだろう。
白い靄はもちろん蟻酸で、恐らくその有効範囲から、何もしなければ俺たちの体は蟻酸に包まれて、溶けてなくなっていたかもしれない。
溶けなくても相当にひどい大けがを負った事だろう・・・ううむ・・・恐るべし女王アリ・・・そうしてありがとう、真空の壁・・・。
『ダダダダッ』『ズボッ』すぐさまツバサのもとへと駆けより、体を引っこ抜く。
「とうっ!」
『タタタタッ・・・シュタッ』ツバサはすぐに宙高く舞い上がった。
「奥義・・真空の壁!とうっ・・・奥義・・・鷲撃泰覇斬!」
中空で2段ジャンプし、さらなる高みへと昇り、そこから急降下でダイブする。
『ビュッ・・・ドッゴォーンッ』そのまま女王アリの背中に大音響とともに激突し、女王アリの背中をV字に曲げ動けなくした。
『パサッ』すぐさま背後から回り込み、女王アリに捕獲用袋をかぶせる。
『シュルシュルシュル・・・ギュギュッ』そうして素早く袋の口を絞って閉じてしまう。
「ふうっ・・・、何とか女王アリは捕獲できたな・・・。」
『ガラガラガラガラッ』遥か見上げるほどのアリ塚は女王アリの捕獲とともに崩れ、その場所に宝箱が出現した。
『ガチャッ』「やったぁー・・・、また乗り物券だ・・・。」
すぐさまレイが宝箱を開け、中身を見て飛び上がって喜ぶ。
ううむ・・・カジノの金券はもう期待することはできないようだな・・・。
「じゃあ、今日も半日は遊園地で遊戯だ・・・俺たちはカジノへ行く。
門限は16時だから、遅れないようにね・・・。」
中継車を急いで走らせアレヘスの街に到着すると、昼食も取らずにそのままカジノへ直行する。
少しの時間ももったいない・・・今日が正念場だ・・・何とか少しでも盛り返さないと、貯玉がゼロになってしまう。
「あら・・・昼食を食べていらっしゃらないの・・・?
ちょっと待っていてね・・・はいこれ・・・。」
いつもよりかなり早い時間にカジノ入りしたためか、専属(俺が勝手にそう思い込んでいるだけではあるが・・・)のバニーガールたちに不審に思われ、昼食も取らずに駆け付けたと話したら、心配してくれたのか、サンドイッチとコーヒーを持ってきてくれた。
「もう常連さんだから、サービスよ・・・はい、あーん・・・。」
そう言いながら俺の隣の席に座り、遊戯している最中に食べさせてくれた・・・と言っても口を開けるたびにサンドイッチが消えるだけなのだが・・・。
「今日は調子よかったわねえ・・・、凄く儲かったわよ・・・。」
バニーガールたちがキャッキャ言って祝福してくれる。
確かに今日は調子が良かった・・・座って100回転も回らないうちに大当たりして、それが連荘・・・すぐさま10箱ゲットして、その後も何度も連荘を繰り返し、箱を積み上げた。
もうちょっと・・・とも思ったが、門限が迫ってきていたので、連荘終了後の時短終了とともに終わらせることにした。
「はいこれ・・・39281玉貯玉出来ました・・・。」
バニーガールが、カードとレシートをもって見せてくれる。
おおそうか・・・あと少しで2人分のアイテムに手が届きそうだな・・・明日は1日のクエストをこなして、明後日が勝負だ・・・午前中にアイテムゲットしてしまうかもしれないが、それでもいいだろう・・・後は遊園地に行ってレイたちが遊んでいるところを見ていればいい・・・。
源五郎も調子が良かった様子で、彼も800コイン近くまで戻したと言っていた・・・この調子なら楽勝だ。
『パンパカパーンッ』「おめでとうございます、ツバサ様はWOにレベルアップされました。」
『パンパカパーン』「おめでとうございます、サグル様は奥義・・・真空の壁を取得されました。
防御力は特AAです。」
『パンパカパーン』「おめでとうございます、源五郎様は奥義・・・真空の壁を取得されました。
防御力は特AAです。」
『パンパカパーン』「おめでとうございます、レイ様は奥義・・・真空の壁を取得されました。
防御力は特AAです。」
翌朝ギルドへ行って清算すると、ツバサのレベルアップのほかに、俺たちの真空の壁奥義の取得を告げられる。
「おお・・・これもセカンドクエストを地道にこなしていた成果と言えるな・・・コインもあと少しのところまで貯まって来たし、決して無駄にはなっていないだろ?」
やはり選択は間違っていなかったと、反対派のツバサに理解を求める。
「そうでしょうかね・・・いくら奥義を取得したりアイテムを増やせたとしても・・・進行が遅れてしまうのはどうかと・・・やはり冒険というのはスピードも大事だと思いますよ・・・。」
順調にレベルアップしているというのに、ツバサは浮かぬ顔だ・・・。
確かに冒険というのは進行スピードも大事だ・・・もたもたして余計な道草を食っていると、別パーティに先を越されてしまったりするからな・・・それでもこのゲームでは後続のグループも魔王や魔神に到達して、最終クエストに向かえるようにはなっている。
更に今回の冒険では冒険者グループは俺たちしかいない、いわば貸し切り状態なわけだ。
冒険を始めた当初は金もないので地道にクエストをこなしてから装備を整え、それから出発というのが常套手段なわけだから、決して今回の判断も間違ってはいないと考えている。
「寄り道は、これで最後にするつもりだ・・・アレヘス北西のペレヘス峠の樹氷の採取・・・今日1日かけてこのクエストをクリアさせ、明日は1日お休みとしよう。
そうしてアイテムをゲットして、明後日出発だ・・・。」
源五郎が持ってきたクエスト票を受け取り、なるべく明るく笑顔でツバサの機嫌が直るように話しかける。
「どうでしょうかね・・・あまり過度に期待しない方が良いかと・・・。」
ツバサはいつになく否定的だ・・・どのようなクエストに対しても常に前向きに対処しようとするツバサには、似つかない態度だな・・・。
やはり、このところ冒険の進行が停滞していることを不満に感じているのだろうな・・・申し訳ないが・・・もう少しだけ辛抱してくれ・・・。




