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タコ真珠貝2

2 タコ真珠貝2

「アレヘス南西のアンヘス湖に眠る、タコ真珠貝の採取2ですね・・・リーダーの変更はございませんか?」


「ああ・・・リーダーの変更はないが・・・今回は捕獲用袋を忘れずに出してくれ・・・。」

 そう言って、かわいらしい受付嬢の目の前に両手を突き出す。


「そうおっしゃられましても・・・このクエストには捕獲袋は不要となっていますので、お渡しできません。

 申し訳ありません・・・。」

 受付嬢は笑顔は崩さずに、事務的に拒否をした。


 ううむ・・・そうはいっても捕獲用袋がなくて先週はひどい目にあったのだからな・・・更に2になって他の武器なり攻撃なりが加わるはずだから、なんとしてでも捕獲用袋がほしい・・・。


「だがなあ・・・捕獲用袋さえあれば、先週だって貝の中の真珠を失わずに済んだはずだ・・・真珠目当てなわけだろ?真珠が入っていないからって報奨金減額だって言われたくらいだからな。

 だったら、捕獲用袋を渡すのが当然じゃあないのか?」


 なぜ捕獲用袋を出せないのか・・・理由は明白だ・・・そうでなければタコ真珠貝は暴れることもなくごくごく簡単なクエストに終わってしまうからだ・・・何せ防毒マスクさえしていれば、何の苦労もなくゲットできるのだから・・・。


 だからと言って、別に楽をしたいと言っているわけではない・・・貝の中の真珠をそのまま採取するためにも捕獲用袋は必須ですよと言っているだけだ・・・。


「ちょっと確認してまいります。」

『パタパタパタパタ・・・ガチャッ』受付嬢は速足でカウンター奥の扉の向こうへと消えて行った。

『カチャ・・・パタパタパタ』そうして速足で戻ってくる。


「大変申し訳ありませんが、やはりこのクエストには捕獲用袋は使用できないようですね・・・。

 何とか良い方策をご検討ください・・・。」

 そう言いながら受付嬢は深々と頭を下げる・・・。


「それは、おかしいんじゃないのか?

 生ものだし、そのままにしておけば暴れ出すし・・。」

 ここで引いてはいけない・・・変な風習を作ってはいけないのだ。


「ですが・・・。」

 受付嬢は返答に困ったのか、涙目のまま口を真一文字に結んで何も答えなくなった。


「まあ、いいじゃないですか・・・彼女を責めても仕方がないですよ。

 捕獲袋がなくても、何とかなりますよ。」

 源五郎が、背後から肩をポンとたたいてきた。


 ううむ・・・別に受付嬢のせいではないのだが・・・なんか腹が立ってくる・・・。



『ドンドンドンドンッ』「こんちはー・・・またまたタコ真珠貝の採取に来ました。

 ボートを貸していただけませんか?」

 アンヘス湖に到着して、貸しボート小屋の扉をたたいて呼びかける。

 先週同様、営業していないのか扉には鍵がかかっているのだ。


『カチッ・・・ガラガラガラッ』「おお、あんたたちか・・・何をぐずぐずしているんだい?

 先を急ぐ冒険の旅ではなかったのかい?」

 扉から顔を出した巨乳美女は、不思議そうに首をかしげる。


「いやあ・・・セカンドクエストが発生したようなのでね・・・困っているだろうと思ってきてみた。」

 まさか、カジノでもう少し稼ぎたいからなんて言えないので、クエスト目的にしておく。


「ああそういや・・・先週タコ真珠貝を全て採取してくれたおかげで、湖の表面に立ち込めていた有毒のガスも薄らいできていたんだ。


 そろそろ営業再開かな・・・と思っていたら、今朝になって急に湖の底からブクブクと有毒のガスが噴出し始めやがった・・・タコ真珠貝がまた発生したようだ。

 恐らく稚貝でも残っていたんだろうな・・・残念だよ・・・。」

 巨乳美女は悔しそうにうつむく・・・。


「そのようだな・・・そこでまたまた俺たちが、タコ真珠貝の採取にやってきたという訳だ。

 ボートを貸してくれ。」


「ああ・・・、タコ真珠貝を採って行ってくれるならありがたい。

 今回は小さな稚貝も取り除けるよう、目の細かい籠が付いた駕籠かき棒を貸し出すよ。

 ちょっと待っていてくれ・・・。」


 そう言って巨乳美女はすぐに引っ込んでいった。

 先週の活躍を覚えているから、説得などしなくてもすぐに対応してくれるのはありがたい。


「はいこれ・・・それとバケツもね。」

 長い髪をなびかせ、巨乳美女は長い棒のついた駕籠を4本と新しいバケツを5つ持って駆けてきてくれた。

 先週借りっぱなしになっていたのを持ってきていたので、ちょうど10個になる。


「じゃあ先週同様、ボートは桟橋につないでいるのを勝手に使っていいから、頑張ってくれ・・・。」

 そう言いながら笑顔を見せる・・・ううむ・・・美しい・・・。


「じゃあ・・・頑張ってタコ真珠貝を採取に向かおう・・・防毒マスクを忘れずに・・・。

 特に源五郎・・・幻覚を引き起こすどころか死んでしまうような強烈な毒ガスのようだから、苦しくてもマスクは外さないようにね・・・。」

 防毒マスクの装着を指示して、更に危なっかしい源五郎には注意を喚起する。


「はいっ・・・湖上では絶対外さないようにします。」

 マスクを装着しながら源五郎は真顔で答えた・・・やはり反省はしているようだな・・・。


「それはそうと・・・引き揚げたタコ真珠貝をどうするかだな・・・冒険者の袋に直接入れるわけにはいかないし、かといってバケツのままだと墨は吐かれるは、更に真珠を弾丸代わりに発射されてしまう・・・危険極まりないわけだ。」

 捕獲用袋を奪い取ってでも持ってきた方がよかったと、いまだにそう思う。


「ああ・・・それなら大丈夫ですよ・・・2枚貝は貝柱を使って貝の開け閉めを行いますが、その力は貝を閉じる方に特化しているので、開ける方の力はそれほど強くはありません。


 ですので紐で縛っておけば貝を開くことはできないはずです・・・そうなれば墨どころか真珠の発射も不可能なわけです。」

 源五郎が30センチくらいの長さの紐の束を、袋から取り出して見せる。


 そういや・・・中継車の中で来る途中にごそごそとやっていたな・・・あれは長い紐を一定の長さに切りそろえていたのか・・・その紐で貝を縛るわけだな・・・・。


「分かった・・・その作戦で行こう・・・じゃあ出発だ・・。」



「おーえす、おーえす」

 手漕ぎボートに分乗して、湖中央へと進んでいく・・・組み合わせはいつもの通り、源五郎とレイ、俺とツバサだ・・・湖表面に湧き出るガスの泡を目当てにすればいいので、効率的に漁を行える。


『ザッザッザッ・・・シュタタタタッ』『ガラガラガラガラ』長い竹を操りながら湖底を探り、引き揚げては籠の中身をボートの中に開ける。


 今回は稚貝も回収する目的なので、目の細かな駕籠で掬い取っているせいか、先週よりも細かな石まですくい上げることになり、選別が結構大変だ。

 それでも1度経験があるせいか、先週よりはずいぶんと早く湖中の底をさらい終えた・・・。


「今回も大漁だ・・・親貝だけで50個はあるぞ・・・勿論稚貝も一緒にバケツに放り込んでおいた。」

 稚貝はあまりにも数が多すぎて、100を超えたところで数えるのをやめた・・・こんなに残っているから、1週間で復活してしまったわけだな・・・。


 稚貝は真珠をもっていないのか薄っぺらいのだが、用心のために数個まとめて縛ってある。


「こっちも5つのバケツほぼ満杯ですから、親貝の数は先週と同じくらいですね・・・稚貝も大量に採りました。

 もちろん、親貝は全て紐2本で十文字に縛ってあります。」

 源五郎も先週同様、貝があふれんばかりに詰まったバケツを持ち上げて見せる。


「じゃあ戻るとするか・・・。」

 ボートを漕いで桟橋方向へと戻っていく。


『ガタガタガタガタッ』岸が近づくと、先週同様バケツの中が騒がしくなってくる。

 だがまあ・・・無駄な抵抗だ・・・しっかりと紐で縛られているから、貝を開くこともできないはずだ。


『ガタガタガタッ』『ブチッ』『ブチッ』『ブチッ』『ブチッ』『ブチッ』『ブチッ』『ブチッ』『ブチッ』ところがすぐに不気味な音が、そこかしこのバケツから発生する。


 急いでバケツを覗きこんで・・・いやいやまた墨をかけられるだけだ・・・と思って躊躇していると・・・『ピカッ』バケツ上部がまばゆいばかりに光り輝き、目を開けていられない・・・。


「うわっ、まぶしいっ・・・貝の身が突然光り輝いて目をやられましたが、一瞬でしたがバケツの中は見えました・・・。

 どうやら紐は全て切られてしまったようです・・・貝の足の部分が鋭い刃のようになっているのでしょうね。」

 ツバサの叫び声が聞こえてくる・・ううむ・・今度は墨ではなく光攻撃か・・・。


「分かった・・・先週同様真珠玉を発射し始めるだろうから、ツバサは伏せていてくれ・・・また奥義で対抗する。

 奥義・・・無想斬撃・・・!」

「奥義・・・無想射撃・・・!」

 源五郎たちも同様の状況なのだろう、向こうも同時に奥義発動だ・・・。


『カチカチカチカチッ』『カチカチカチカチッ』『カチカチカチカチッ』『カチカチカチカチッ』すると突然、カスタネットを鳴らすような、乾いた打撃音が辺り一面から鳴り響く。


 ううむ・・・無想攻撃を邪魔するために、貝を開閉して音を鳴らしているようだな・・・だが、そんな程度では俺たちの気をそらすことはできないぞ・・・。


「わっ!」

 腹の底から大きな声を発し、音の反響を確かめる。


 カチカチという打撃音は、恐らく貝そのものから出ているわけだから、バケツで反響してはいるが、奴らは自らの居場所を知らせているようなものだ・・・しかも、音がやんだ時が攻撃のタイミングのはずだ。


『カチカチカチカチッ』『ビュッ』『カチカチカチカチッ』『ビュッ』『ボコボコッドガッ・・・ドンドンッ』カスタネットのような打撃音に混じってくる飛翔音を聞き分け、払い落としていく。

 鋼鉄の剣では真珠が割れてしまうので、木刀で払い落すことにした。


『シュシュシュシュッコンコンコンコンコンッ』隣のボートでも源五郎が快調に、攻撃を打ち落としているようだ。

『ビュッ』『ビュッ』『ビュッ』『ドガバコボコッ・・・ゴンゴンゴンッ』『・・・・』50個目の飛翔体を打ち落として、辺りが静寂に包まれる。


「ふうっ・・終わったようだな・・・。」

 ゆっくりと目をあけると、強烈な光を見た影響できかなくなっていた視界が少しずつ回復してきたようだ・・・うすぼんやりと湖面の状態が見え始めてきた。


 そのままボートを漕いで、桟橋に到着する。

 恐る恐るバケツに目を移すと・・・やはりタコ真珠貝は真珠を放出してしまって薄っぺらくなっていた。

『ガラガラガラガラッ』薄くなったタコ真珠貝を2つのバケツにまとめ、稚貝と区分する。


『ガンッ』『ゴンッ』『ガンッ』そうした後、ボート中に散らばっている真珠玉を稚貝を入れたバケツに集めていく。

 大きな真珠玉は、稚貝込みでバケツ3個分にもなった。


「うまく真珠玉を払い落としましたね・・・僕も今回は矢じりのついていない練習用の矢を使って、なるべく割らないように撃ち落としてみました・・・お陰で、全玉回収できたようです。」


 ツバサとともにバケツを持って桟橋へと上がると、源五郎も真珠玉が詰まったバケツを自慢げに見せる・・・おお・・やったな・・・。


「宝箱が出て来たよー・・・。」

 レイがバケツの中に出現した宝箱を目ざとく見つける。


「やったあー・・・、乗り物券ゲットだー・・・」

 やはり今回も遊園地の乗り物券のみで、カジノの金券は出現しなかった・・・。


『ガンガンガンガンッ』「終わったよ・・・稚貝も含めてタコ真珠貝はすべて回収し終えた。」

 ボート小屋に行き、クエスト終了を教えてやる。


『ガラガラガラッ』「おお・・・流石だねぇ・・・これが稚貝か・・・助かったよ・・・。」

 すぐに肩を越える長い髪をなびかせて、巨乳美女が顔を出した。


「それで・・・ちょっと言いにくいんだが・・・バケツを貸してもらえないだろうか・・・今回は稚貝と回収した真珠玉もあるので、10個のバケツ全部を貸してもらいたい・・・もちろんギルドに行って清算したら、戻ってきてお返しするつもりだ。」


 巨乳美女にバケツの貸し出しをお願いする・・・捕獲用袋さえ持ってきてさえいれば、先週借りたバケツだって返せたはずなのに・・・逆に更に5個も借りることになってしまうとは・・・。


「ああ・・そんなことか・・・いやいやいや・・・バケツなんか返していただかなくても結構だよ・・・先を急ぐ旅なんだろ?

 いちいちこんなところまで戻ってきてもらっちゃあ、こっちが恐縮してしまう。


 あんたたちには本当に感謝してもしきれない位だ・・・バケツくらい進呈する・・・本当にありがとう。」

 巨乳美女は、両手で俺の両手を包み込むようにして、しっかりと目を合わせてお礼を言ってくれた。

 甲冑のコテを付けたままというのが非常に悔やまれる・・・。


「それじゃあ悪いが、10個とも遠慮なく使わせていただくよ・・・もちろん何か機会があれば、返却に訪れるつもりだ。」


「ああそうしてくれ・・・時間があればお礼を兼ねて一席設けるから、寄ってくれ・・・。」

 巨乳美女は満面の笑顔で送ってくれた。

『バタンッ・・・ブロロロロッ』本当に名残惜しいが巨乳美女と別れ、中継車に乗り込み帰路に就く。



『ズザザザザザザッ』『ズザザザザザザッ』『ゴロゴロゴロゴロッ』『ゴロゴロゴロゴロッ』ギルドの受付カウンターに、タコ真珠貝の親貝と稚貝に加え、回収した真珠玉もバケツから開ける。


 この状態は予想されていたのであろう・・・カウンターには大きなステンレストレイが準備されていたので、その中に開けた・・・捕獲用袋を渡さないことへの無言の抗議のつもりが・・・当てが外れた・・・。


「ご苦労様でした・・・少々お待ちください・・・。」

 受付嬢は笑顔を崩さずにタコ真珠貝が積まれたトレイを台車に乗せかえると、そのまま台車を押して奥へと引っ込んでいった。ううむ・・ビジネスライク・・・・。


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