セカンドクエスト実行
14 セカンドクエスト実行
「いいですか・・・カジノのコインはすでに僕もリーダーも900コインずつ溜まっています。
そうして使えそうなアイテムで、最少コインで交換できるのは復活の指輪ですが、まあこれはいいでしょう。
その次は500コインの超鋼の剣や上級者の弓などです・・・つまり後100コインずつあれば1000コインずつ・・・つまり2000コインとなって全員分のアイテムがゲットできるわけです。
これまでのクエストでは、常に400コイン分の金券が出現したから、今回もそうでしょう。
そうなれば、カジノで遊戯しなくてもアイテムゲットでますから、今日の午後は全員で遊園地で遊んで明日出発すればいいという事になりますよ・・・。」
源五郎が笑顔でクエスト票を、見せてくる。
「ああ・・そうか・・・その手があるな・・・。」
流石源五郎だ・・・読みが深い・・・どうして同じようなクエストが再発生したのかは謎だが、それを逆手に利用しようという訳だ・・・アイテムゲットできれば今後の冒険が楽になる。
「やったぁー・・・また今日も遊園地だー・・・」
源五郎の言葉に一番喜んだのはレイだった・・・。
「ツバサは・・・同じクエストを引き受けるのは反対なのかい?」
源五郎の提案に何の反応も示さなかったツバサに問いかける・・・こういったことは全員賛成でなければいけない・・・チームワークが乱れるからな。
「いえ・・・あたしは・・・どちらでもいいので・・・皆さんがもう一度同じクエストをしたいのであれば、それに従いますよ・・・。」
なんだか煮え切らない答えだが・・・まあ反対ではないわけだから良しとするか。
「ではですね・・・どのクエストをこなしても同じなわけですが・・・アレヘス南のアンヘス海岸に漂着する流木の撤去にしましょう・・・、それほど強力な魔物相手でなくて一番簡単に片付いたクエストですからね・・・。」
源五郎が手に持つ中から1枚のクエスト票を選び出し、俺に手渡す。
「ああそうだったな・・・レイの奥義の魔法がさく裂して、瞬く間に片が付いたクエストだったはずだ・・・確かにこれなら楽勝だな・・・よし、これにしよう。」
一度こなしているから、セカンドバージョンでも大きな違いはないだろう・・・レベルアップはしているかもと思ったが、クエストレベルはAZと変わらずだから、難易度も同程度と信じよう。
「アンヘス海岸に漂着する流木の撤去2ですね・・・リーダーの変更はございませんか?
では、頑張ってきてください。」
かわいらしい受付嬢に笑顔で送られ、ギルドを後にする。
「流木を撤去するときに、キノコの胞子を吸い込んで幻覚を起こすんだったな・・・全員防毒マスクを装着してくれ・・・、フィルターの更新を忘れるな・・・。」
アンヘス海岸に到着し、海岸の様子を見ると、確かに先週同様大量の流木が・・・ううむ・・・先週全て焼却したというのに・・・・とりあえず、防毒マスクの装着を指示する。
幻覚さえ起こさなければ、楽勝な案件だ・・・。
「じゃあ、さっさと終わらせてしまおう・・・。」
全員で海岸線に降り立ち、流木をいくつかの島にまとめていく・・・こうしておけばレイの奥義で焼却するときに効率がいい。
『シュポンッシュポンッ』流木を持ち上げる衝撃のせいなのか、キノコがいくつも飛び出してきては傘を広げ、胞子を振りまき始めるが、防毒マスクをしているから全く問題はない。
『チクチクチクチク』手のひらが少しチクチクするが・・・まあ大きな問題はないさ・・・鎧の手袋をしたままでは形がいびつな流木は持ちにくいため、素手で運んでいるから荒れた表皮が刺激しているのだろう。
「おーえす・・・おーえす・・」
おお・・・源五郎は張り切っているなあ・・・いつの間にか防毒マスクまで外して・・・って・・・馬鹿だなあ、いくら息苦しいからって、防毒マスクを外しちゃあいかんぞ・・・。
おーい・・源五郎・・・って呼んでも反応がないなぁ・・・。
「本当に源五郎君はレイのことがお気に入りのようね・・・このところ休みのたびに家へ遊びに来るものね・・・。
社長業は大変でしょうに・・・たまの休みくらいリフレッシュしたいはずなのに、海外旅行とか・・・せめて温泉に行くくらいが普通なんでしょうけど、どうしてレイの相手をしてくれるのか・・・分からないのよね・・・。
レイは今のところ源五郎君のことが大好きのようだからいいんだけど・・・流石に小学生をいい大人が本気で思っているとはとても思えないんだけどな・・・。」
出産を2ヶ月後に控えた妻が、勉強部屋のレイと源五郎の様子を見てきて不思議そうに首をひねる。
ああそうだな・・・源五郎はレイのことが目当てだったわけではなく、忘れられない人を探すために、家へ確認に来ていただけなんだ・・・。
源五郎だったら気心は知れているしまじめな性格だし、もしもレイのことが・・・と期待していたというわけでもないのだが・・・まあ残念だが仕方がない・・・早いところ源五郎の意中の人が見つかるよう協力してやらねばな・・・。
あれ・・・?なんでそんなことを俺は知っているのだ?
この時点の俺はまだ源五郎に意中の人がいる事すら知らなかったはずだ・・・ツバサが夢に出てきて助けを求めたから、倒産した会社に忍び込み違法アクセスまでして冒険世界へ再び飛び込んで、それから源五郎の秘密を知ったはずだ・・・。
そうそう・・・俺は冒険世界に娘のレイと源五郎とともに、一方通行でやってきていたのではなかったかな・・・それがどうして今地球に・・・?しかも過去に戻っている・・・ウーン・・・長い夢でも見ていたというのか?
「・・・さん・・さ・・・る・・・さん・・聞こえますか・・・?目を・・・して・・・さい・・・」
うん?誰かが呼びかける声が・・・妻でもレイでもないが・・・聞きなれたとても近しい間柄の人の声だ・・・。
誰だったか・・・そっそうだ・・・この声はツバサだ・・・!
やはり俺は、ツバサを救いに冒険世界に来ていたんだった・・・そうして今は海岸で・・・。
『ガバッ』反射的に上半身を勢いよく持ち上げる・・・やはりそうだ・・・ツバサが傍らで心配そうな顔をして俺の方を眺めている・・・しかし・・・ちょっと距離があるな・・・なんか、よそよそしい・・・。
今回もツバサは2人分の意識を持っているから、かろうじて幻覚に囚われずに済んだという事だろう・・・ありがたい。
「ああ・・・すまない・・・また幻覚にかかってしまったようだな・・・防毒マスクは効果がなかったのかな・・・?」
防毒マスクを外して、フィルターの取り付けに問題がないか確認する。
『チクチクチクチク』するとなんだか手のひらに軽い痛みが・・・よく見ると、手のひら中に無数のとげが刺さっていた。
「ああ・・・流木を持ち上げるときになんかチクチクするなあと思っていたけど・・・今度のタイプは、キノコの胞子のほかに、とげを使って直接毒を送り込んでくるタイプなのかもしれないな・・・刺激を受けたときにすぐに警戒しておくんだった・・・申し訳ない。
とりあえず・・・毒消し草を食べてから、回復魔法をかけよう・・・もぐもぐ・・・全体回復!」
ツバサとともに毒消し草を食べ、全体回復魔法を唱えると・・・霞がかかったようにもやもやとしていた頭がすっきりとする。
「ようし・・・、じゃあレイと源五郎を海岸から引き上げよう。」
今回もツバサは俺を先に助け上げてきてくれたようだ・・・まあそうだな・・・俺の意識を取り戻しておけば回復魔法は使えるし、残り二人を運び上げるのも2人で行える。
レイは回復魔法を使えるが力がないので、俺と源五郎を海岸から引き揚げるのはツバサ一人で行わなければならないし、源五郎の場合は力はそこそこあるが、回復魔法は使えないからな・・・その両方を持っているのが俺という訳だ。
「岳斗ちゃんはかわいいなあ・・・毎日毎日大きくなっていくから、朝起きて岳斗ちゃんを抱っこするのが楽しみー・・・ミルクもたくさん飲むんだよ・・・。」
またもや生まれたばかりの弟をあやしていることを夢に見ているのだろう・・・レイが満面の笑みを見せながら、何度も体を大きく揺らす・・・こりゃあまた、目覚めたときが厄介だな・・・。
「君は・・・いや君たちは・・・いったいどこで僕を待っていてくれているんだい?
ライト・・・ライトというんだろ・・・?」
源五郎はまたもや夢に出てくる人を思い浮かべているのだろう・・・しきりに首を左右に振りながら周囲を探しまわるようなしぐさを見せる。
「じゃあ、また・・・毒消し草を食べさせよう。」
道具屋で毒消し草は大量購入しておいたから、在庫は十分だ・・・ツバサがレイに、俺が源五郎に食べさせる。
「全体回復!」
そうして回復魔法を唱える。
「はっ・・・岳斗は?岳斗はどこへ行っちゃったの?」
すぐにレイが目を覚まして、当りを見回す・・・。
「ゆ・・・ゆめ・・・かあ・・・うぇーん・・・、弟に会いたいよう・・・ママに会いたいよう・・・。」
気が付いたのはいいが、予想通りレイは地球の家族を思い出して、泣き出してしまった・・・。
「おおよしよし・・・ママが恋しいわね・・・大丈夫お姉ちゃんがいるからね・・・。」
前回同様、ツバサがレイを優しく抱きしめてくれる・・・。
「らいとー・・らいとー・・・いや・・・れふとー・・・れふとー・・・。」
しかし源五郎は一向に目覚めようともしない・・・右だの左だのとつぶやき始めた・・・こりゃあ重傷だ・・・。
いや・・・そうか・・・レイに教えている英会話の授業の幻覚を見ているんだな・・・。
それにしても、なぜかわからないが源五郎は防毒マスクも外してしまっている・・・これではとげからの毒と呼吸で吸い込んだ毒・・・両方からの幻覚症状だから、簡単には回復しないぞ・・・。
「仕方がない・・・効果の保証はないが、一気に大量の毒消し草を食べさせてみよう。」
鼻をつまんで源五郎の口を開け、十数枚の毒消し草を一気に詰め込む。
「全回復!」
そうして、全回復の魔法を唱える・・・これでだめなら一旦戻って治療してもらわないといかんな・・・。
「うわっ・・・に・・・苦い・・・ペッペッ・・・はっ・・・彼女たちは?」
源五郎は跳ね起きて、目を大きく開け周囲を伺う。
「うん?レイに教えている英会話の授業の夢を見ていたのではないのか?
結局今回も幻覚にやられてしまったよ・・・俺もレイもだめだった・・・ツバサだけが何とか頑張ってくれたおかげで、全滅を免れたという訳さ。
どうして防毒マスクを外したりしたんだ?それでなくても流木にはたくさんのとげがあって、そこから幻覚を起こす毒が出ていたというのに・・・マスクを外したおかげで、源五郎はほかのメンバーよりも重症だったぞ。」
流木に生えているキノコから胞子が出て幻覚症状を起こすことは分かっていたのだから、防毒マスクを外して作業することが危険なことくらい、全員が認識していたはずなのだ。
「ああ・・・そうですよね・・・いやあ・・あまりに暑くて息苦しかったものですから・・・、なにせ、あんなマスクを着けたまま体を動かした経験がありませんからね・・・。
そうですか・・・流木にはとげがあって、そこからも毒は出ていたという訳ですね・・・何もわざわざ胞子を吸わなくても・・・申し訳ありませんでした・・・。」
源五郎は深く深く頭を下げた・・・まあ、そんなに反省するようなことでもないさ・・・俺なんかたまに化学工場へ納品に行ったりするから、倉庫に納めるときに安全のためにガスマスクをつけることはある・・・慣れていると言えば慣れているわけだ。
「ようし・・・じゃあ・・・回復したところで・・・流木を片付けてしまおう。
レイはまだ泣き止まないから、先に何カ所かにまとめておくとしよう・・・ただし・・・分厚いグローブをしてからだな・・・。」
冒険者の袋の中から手袋を探す・・・耐薬品性に優れたメッキ業者用のカテロン手袋もいいが、これよりも陶芸家が窯焼きを行うときに使う分厚い耐熱手袋を買っていたのを思い出した。
耐熱の生地の中に分厚い中綿が入っている・・・念のために軍手を付けた上に装着する。
「じゃあ行くぞ・・・防毒マスクを忘れずにね・・・。」
源五郎にマスクをつけさせ、手袋で完全防備してから海岸線へと降り立つ。
その後、ようやく泣き止んだレイの奥義の強烈な火炎の魔法がさく裂し、流木は全て焼却した。
「あれ・・・?宝箱が一個しかないよ・・・。」
レイが海岸をきょろきょろと見回すが・・・宝箱は一つだけのようだ。
『ガチャッ』「やったぁー・・・、乗り物券だー・・・。」
レイが乗り物回数券を取って飛び上がって喜ぶ・・・ううむ・・・100コイン券はどうなったのだ?
しばし待っていたが2つ目の宝箱は出現しなかった・・・どうやら金券はもらえないようだ。
「まあ仕方がない・・・だがいいさ・・・どうせ午後から時間があるわけだから、カジノで稼げばいい。
貯玉は大量にあるから、早々なくなることはないさ・・・。」
そうだ・・・昨日の調子から行けば、別に金券に頼らなくたって行けるはずだ・・・と気を取り直して、カジノへ源五郎と向かう事になった・・・。
「いやーん・・だめぇ・・・。」
「どうして?どうしてあそこで外すの?」
「今日は調子が悪いわねえ・・・。」
バニーガールたちの悲痛な叫びが、何度も何度も繰り返される・・・。
「どうですか?調子は・・・僕は散々です・・・200コイン分くらい減らしてしまいました。」
すると源五郎がやってきて、元気なく肩を落とす・・・。
「そうか・・・俺もそうさ・・・今日は大当たりがたったの1回しかない・・・しかも単発・・・。
追加投資ばかりで、大きく減らしたよ・・・、大体同じくらいじゃないかな・・・。
もう時間だろ?今日のところはもうあきらめるとしよう。」
これ以上やっても調子が上がるとも思えないし、これから当たって連荘したとしても門限があるから、取り切ることはできそうもない・・・早々に退散するとしよう。
源五郎と2人でうなだれながら宿へと帰り、いつものようにレイの授業をして、冒険放送を見ながら食事をして、その後奥義のための特訓をしてから就寝となった。
ううむ・・・このままこの地を離れるのは非常に悔しい・・・。
続く
カジノで稼いでアイテムをゲットするつもりが、当てが外れ逆に貯玉を減らしてしまう事態に。このまま次の地へ向かうのも悔しいところでしょうが、サグルたちはどのような選択をするのか・・・注目の次章は・・・明日から継続連載いたします。




