クエスト再生
13 クエスト再生
「ふうっ・・・何とか片づけたようだな・・・。」
目の前には透明な氷の細いかけらが、いくつにも重なって積み上げられている。
樹氷が砕け散った残骸だ・・・。
『カチャッ・・・ズザザザアアッ・・・ズザザザアアッ』細かくなった氷のかけらを、クーラーボックスの中へと放り込んでいく。
最後はずいぶんとあっけなかったが・・・苦労した方だったと思う・・・なにせ攻撃を全く受け付けなかったからな・・・。
「念のためにクエスト票を確認してみるとするか・・・なになに・・・樹氷・・・単結晶の氷に精霊が宿った魔物。
非常に硬く頑丈・・・物理防御力・・・特AA、魔法防御力・・・AA。
物理攻撃力・・・Z、魔法攻撃力・・・AA、合成レベルAZとなっている。
要するに防御と魔法攻撃に徹した魔物という事だな・・・物理攻撃力も何も、動かない木だから攻撃なんてしないわけだ。
それで魔法攻撃力をあげて、更に防御力も最大限にあげたわけだな・・・こんなやり方もあるという事だ。」
ううむ・・・考えたな・・・。
「あっ・・・宝箱が出て来たよ・・・。」
氷のかけらをクーラーボックスの中へと移していたら、下から宝箱が出現した。
『カチャッ』「えへへへ・・・、やっぱり乗り物券だね・・・こっちは100コイン券だよ・・・。」
やはり予想通り、金券と乗り物券をゲットできた・・・これで明日は1日遊戯だな・・・。
『バタン・・・パチッ』「じゃあ帰るとするか・・・。」
クーラーボックスを閉じて、山を下る。
「じゃあ、帰りはどうするかな・・・九九の練習でもするか?
中継車の中で授業しておけば、帰ってからすぐに奥義の特訓ができるからな。」
「えー・・・いいよ・・・・まずは2の段だね・・・。」
中継車での移動時間を有効に使うのはいいアイデアだ・・・レイの負担も軽減されるはずだ。
この日は宿へ帰って食事をしながら冒険放送を見て、そのまま奥義の修行となった。
「じゃあ、予定通り本日は休日とする・・・それでも門限は16時だから遅れないようにね。」
「はーい・・・じゃあ、行こうっ!」
レイがツバサの手を引っ張って、遊具の方へ駆けていく・・・おおおお・・・遊具は逃げて行かないというのにな・・・。
「じゃあ・・・、行くぞっ。」
「はいっ・・・頑張りましょう・・・。」
なにせ生活・・・というか、今後の冒険を楽にできるかどうかがかかっているわけだから、かなりのプレッシャーを感じている。
「きゃあっ・・・またきてくださったのねぇー・・・。」
「おかえりなさいー・・・。」
「今日は朝からなんて・・・大感激ー・・・」
カジノにつくと、いつものバニーガールたちに大歓迎される・・・ううむ・・・なんだか、なじみの店に通い詰めているような気がしてきたな・・・。
「じゃあ、僕は今日もパチスロコーナーに行きます。」
源五郎はいつもの通りにパチスロコーナーへ向かっていった。
俺は一昨日と同じ確変機に向かう・・・何せかなり回ったし、当りも軽かったからな・・・今日も同じような調子だといいのだが・・・。
<やったぁ・・・大当たり・・・>パチンコ台の液晶に、555の数字がそろう・・・ようし・・・確変だ・・・。
「きゃあっ・・・やったわ・・・。」
「おめでとうございます。」
「さあっこれからバンバン出しましょうっ」
バニーガールたちの声援をバックに、ハンドルを握りしめる手にも力が入る。
昨日の貯玉を使って2箱分なくなりかけたところでの大当たりだ・・・まあ結構使ってしまったが、これから取り戻していけばいいわけだ・・・問題は、ここから何連荘するかだな・・・。
「やったぁ・・・」
「また大当たりー・・・」
「おめでとうございますぅ・・・」
そこから5連荘して、持ち玉を増やした・・・。
まだ午前中だし、この調子ならアイテムゲットも夢ではない・・・そう考えながら、引き戻しを期待して続行する・・・と、その後も2箱3箱使うと大当たりして、しかもそれが確変・・・順調に出玉を伸ばしていった。
途中、昼飯を食う時間ももったいなく思っていたら、1コインでドリンクのほかに弁当を注文できることがわかり、パチンコをしながら昼食をとった・・・と言っても食べようとした瞬間に弁当箱が空になるだけだが・・・。
「どうですか・・・調子は?」
昼食後も順調に出玉を伸ばしていると、源五郎がやってきた。
「ああ・・・絶好調だよ・・・。」
積み上げたドル箱を自慢げに見せる。
「そうですか・・・僕も昨日の貯玉・・・というか貯メダルですが・・・使い切る前にボーナス引いてARTにも入って、結構継続しまして・・・なんと1万枚出ました・・・。
金券には手をつけていませんから、合計900コインとなりまして・・・あと少しで1000コインだったのですが・・・残念ながら時間です・・・。
それでですね・・・今なら上級者の弓か魔道の杖かどちらかなら頂けるので、どちらにしようか相談しに来ました・・・。」
源五郎が、貯玉のレシートとカードを見せる。
おおそうか・・・もうそんな時間か・・・しまったなあ・・・もう少し時間に気を付けていればよかった・・・。
前回の当たりから2杯は失っているぞ・・・あれを残しておくんだった・・・。
「そうか、仕方がないな・・・じゃあ、今日のところはここまでだ・・・一旦貯玉にしてくれ。」
残念だが、まずは清算をすることにする。
昨日の貯メダルを入れたカードを手渡して、本日分の出玉を加算してもらう。
「今日は朝からだから、仕方がないわね・・・。」
「これからだというのに・・・残念だわ・・・。」
「もうちょっとで、かかったかもしれないのに・・・。」
いつものようにバニーガールたちは不満たらたらなのだが、それでもカウンターへ出玉を持って行って清算してくれる。
「はーい・・・本日分を加えて、貯玉は53280玉になりました・・・すごいわぁ・・・。
貯玉は1年間有効だから、すぐに景品に交換しなくても大丈夫よー・・。」
おおそうか・・・5万発も・・・それでもコインに交換すると500コイン分だから・・・持ちコインと合わせても・・・なんと源五郎と同様900コインしかないか・・・。
「まいったね・・・俺の方も900コインだ・・・ツバサたちとも相談しなければならないから、とりあえずここを出よう。
今晩じっくり使い道を考えればいいさ・・・。」
結構好調だったからもったいない気もするが、レイとの約束の方が大事だ・・・ここは打ち止めとしておこう。
バニーガールと別れるのも残念だが、せっかく調子よく当たっていたので残念だな・・・だが俺が言い出した門限だからあ仕方がない、いずれまた来ればいいさ・・・。
結構時間ぎりぎりだったのでダッシュで宿まで戻り、レイに怒られずに済んだ。
今日はツバサが先生となり、楽器の使い方などの音楽の授業や、俺と源五郎が覚えている限りの漢字の書き取りなどを行った・・・。(無論・・小学生レベルの漢字を選択しているつもりだ。)
なにせツバサが使っていた教科書には、日本語など使ってはいないからな・・・。
国語教育が記憶頼りになってしまい手薄である代わりに、ツバサたちの言語の勉強も取り入れることにした。
郷に入っては郷に従え・・・というか、まあ臨機応変という事だ・・・。
源五郎の知識期待の英会話を加えると、3ケ国言語を勉強するわけだから、レイはスーパー小学生という事になる。
「あたしは・・・カジノへ行かずに遊園地で遊んでいただけですから、アイテムと交換できるならまずはサグルさんに優先的に好きな景品を選んでいただきたいと思います。」
「あたしもー・・・、ダーリンがまずは好きなアイテムを選んで・・・あたしのは余った分で交換できればいい。」
レイの授業が終了して、食事をしながら本日の(・・・というかとりだめた分の)冒険放送みて、いつものように奥義の特訓に入る前に、現状のカジノでの収支状況を説明してみた。
プラスとまでは言わないが、それでもかなり盛り返してきて、あと一歩のところなのだ・・・だがまあ明日には防具の修理も終わるのだから、先へと進まなければならない。
それを踏まえたうえで、景品交換をどうするのか、皆の意見を聞こうとしたわけだ。
まあ・・・復活の指輪の消耗が結構激しいから、復活の指輪ゲットでもいいとも考えていた。
ところが、レイとツバサの意外な答えにちょっと戸惑う・・・もともとレイとツバサの分のコインを使って遊戯しているわけだから、当然皆にアイテム交換の権利があるわけだ、決して遠慮するようなことではないはずだ。
十分に言い含めたつもりではあるのだが、それでも自分たちは次でいいと言い出した・・・それでは困ってしまうのだ・・・500コインで超鋼の剣や上級者の弓に交換してしまうと、後は復活の指輪2個ずつにしかならないのだ・・・。
「ウーン・・・理想は、1000コインまで頑張って、アイテムをひとつづつゲット・・・というか、何だったら2000コインまで粘ってさらに上のアイテムを狙ってもいい。
今日の調子なら、あと2,3日も頑張れば行けそうな気はしている。
うーん・・・どうするかなあ・・・悩むところだな・・・。」
もう1日休んで更に稼いで・・・という事も検討したい気持ちだが・・・流石にストレートには言い出しにくい・・・なにせ遊園地の乗り物券は使ったらなくなってしまうため、恐らく1枚も残っていないだろう・・・そのためにこそ今日1日自由時間としたわけだから、当たり前ではあるのだが・・・。
しかし俺たちがパチンコやパチスロを打ち続けるとなると、レイたちはその間退屈な思いをしなければならなくなってしまう。
かといって・・・己の分だけアイテムをゲットして、ツバサやレイは次の機会だね・・・なんてことは言いたくはない・・、それだったらツバサとレイのアイテムをゲットして、俺と源五郎は次回・・・としてもいいくらいのつもりだ・・・何せその方が励みになりそうだからな。
「とりあえず、カジノは24時間と言っていたから、いつでも景品交換は可能なはずだ。
だから明日の出発前にでも交換すればいいので、それまでお互いに検討しよう・・・どのような選択がベストなのかをね・・・。」
どうするのがいいのかうまくまとめられないので、明日の朝へと先送りする・・・まあ、明日の朝にギルドへ行って、北方方面のクエストを引き受けたらこの地は去らなければならないわけだ。
最悪どのアイテムにするか決められなければ、今回は交換せずに、手の空いたときにまた来て、カジノで稼いでもいいわけだ・・・貯玉は1年間有効だって言っていたから焦ることは何もない。
とりあえず、いつまでも悩んでいても仕方がないので、奥義の特訓を開始して、その後就寝となった。
「あれ・・・?クエストが増えていますね・・・アレヘス東の富士山脈西南洞窟に生息する四菱草の採取・・って、ここで最初に引き受けたクエストと同じじゃないですか。
他にアレヘス南のアンヘス海岸に漂着する流木の撤去・・・これも同じだ・・・アレヘス南西のアンヘス湖に眠る、タコ真珠貝の採取にアレヘス北西のペレヘス峠の樹氷の採取にアレヘス北のアレパカ平原に巣くうアリモグラの女王捕獲・・・ううむ・・デジャブーでしょうか?」
翌朝、まずは修理に出していた防具を受け取り、次の地へ向かうためのクエストを探しにギルドへ出向いたのだ・・・ツバサはもちろんレベルアップしてXBになった・・・が、源五郎が5枚のプラチナクエスト票を手に持ち、首をひねりながら戻ってきた。
「確かに、全て同じクエストのように見える・・・だがよく見ろ・・・最後に2の数字が入っている。
つまり、俺たちがこなしたクエストのセカンドバージョンといったところだろう。
完全に同じクエストではありませんという事だろうが・・・なぜこんなことをするのかは分からないな・・・。
苦労してクエストを完遂したところで、どうせまた遊園地の乗り物券とカジノのコインが宝箱から出てくるだけで、今後の進行に役立ちそうな宝剣とか賢者のトンネルのカギが出てくることがないのは分かっている。
俺たちがわざわざ進行を遅らせてまで、やるはずはないわけだ・・・他にも冒険者たちがいるならまだしも・・・いったいどうして・・・?」
ついにクエストのネタも尽きたのだろうか・・・?
それにしても安易すぎる・・・中央の奴らは、頭悪いのか?
「いやいや・・・そうか・・・これはチャンスですよ・・・。
クエストをもう一度引き受けましょう。」
すると、突然源五郎が目を輝かせた・・・。
「チャンス・・・?」
何がチャンスなのだ?中央の奴らの頭の悪さが露呈したからチャンスという事なのか?
そもそも源五郎は夢に出てくる元カノを見つけ出したくて、少しでも早く先へと進みたいはずじゃなかったのか?
こんなところで足踏みするなんてと否定するならまだしも、喜んでもう一度同じクエストを引き受けようなどと・・・どうして言い出すのだ?
「どうしてー・・・」
「どうしてですか?」
源五郎の言葉に、俺のみならずレイもツバサも怪訝そうな表情を見せる・・・。




