表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
104/202

四菱草

3.四菱草

「ええっ・・・、アンズ村まで戻るのですか?一体どうして?」

 翌朝、いつものようにギルド前で待っていてくれたテレビスタッフに、アンズ村へ戻ることを告げるとたいそう驚かれた・・・それはそうだろう・・・昨晩の状況は伝わっていないわけだからな。


「はあ・・なるほど・・・レイちゃんの勉強のためという訳ですね?

 昨日のツバサさんの呼びかけはその為でしたか・・・。

 それでしたら・・・別にわざわざ皆さんが戻らなくても大丈夫ですよ。


 ご存知の通り、我々はこの星中をネットワークで結んでいるテレビ局のスタッフですからね。

 アンズ村に支局はありませんが、ペレンからスタッフを派遣して、アンズ村のツバサさんの家の道場を訪ねて、教科書や楽器類を受け取ってくることはたやすいことです。


 ペレン支局にはすぐに連絡してスタッフを派遣しますから、上手くすれば明後日には届きますよ。」

 いつものテレビスタッフが、笑顔で快諾してくれた・・・おおそうか・・・そうだよな・・・目の前にいるスタッフだけではなく、俺たちを支えてくれているスタッフは、まだほかにも大勢いるわけだ。

 私的使用だなんて揶揄されてしまいそうだが、愛娘の教育のためなのでご容赦いただこう。


 その後、ツバサがカメラの前で、再度両親あてのメッセージを撮影し、俺たちはいつものようにギルドへ向かう事になった・・・なんだか少し拍子抜けしたが、気を取り直して新たなクエストを探すとしよう。

 ただし・・・アレヘス近郊に限られてしまうのだが・・・



「これなんかどうですかね?アレヘス東の富士山脈西南洞窟に生息する四菱草の採取。

 クエストレベルは、AZとこのところのレベルとしては低めになりますが、1日のクエストですから、中継車を使えば恐らく半日くらいで戻ってこられるのではないでしょうか?


 他は・・・北や南・・・北東に北西方向に1日から2日程度のクエストがありますが、それぞれ単独で同一方向にまとまったクエストはないようですね。」

 源五郎が1枚のプラチナチケットを手に持って戻ってくる。


 本来ならば全てのクエストを一気に引き受けて、野宿でもしながら順にこなしていくところだが、この地を離れられないばかりに、いちいち日帰りで戻ってこなければならないのがうっとおしいが仕方がない。


 それでも1日程度のクエストが複数件あるのをありがたいと感謝した方がいいだろう・・・無駄にただ待っていなくても済む・・・、せっかくテレビスタッフが気を聞かせてくれてアンズ村まで戻らなくてもいいことになったというのに、その間ただひたすらこの町で時を過ごすというだけでは申し訳ない。


「ようし・・・それにしよう。」

 源五郎からクエスト票を受けとり、受付へもっていく。


「富士山脈西南洞窟に生息する四菱草の採取ですね・・・リーダーの変更はございませんか?

 では、頑張ってきてください。」

 かわいらしいタイプの受付嬢が、笑顔で激励してくれる。


『バタンッ・・・ブロロロロロッ』ギルド前で中継車に乗り込み、東へと向かう。


「ああそう言えば・・・昨日レイと一緒に遊園地の占いの館に行ったんだが、その時に遥か東の地に他の世界へ通じる道があるようなことを言われた。


 恐らく賢者のトンネルのことと思うのだが・・・アレヘス東の洞窟となると・・・もしかするとその賢者のトンネルがある場所と通じているのかも知れないね。」

 中継車の中で昨日占い師から告げられたことを話す・・・そういえば昨晩も言い忘れていた。


「うーん・・・そうですね・・・以前の冒険でも北部大陸東部に賢者のトンネルがありましたから、恐らくそれを指しているのだと思います。


 ですが富士山脈というのはかなり大きな山々が連なっていて、向こう側へ抜けるような長い洞窟というのは、あたしが住んでいる次元でも、以前の冒険でもありませんでした。

 ここは北部大陸の中央に位置していまして、東部まではまだまだ随分と距離があるのです。


 ですが・・・今回の冒険ではかなり地形など変わってきていますので、分かりませんね・・・。

 でもまあ・・・先へと通じているようであれば一旦行ってみて、それから様子を見てから戻ってくればよろしいのではないでしょうか?


 向こう側でも町があってクエストがあるかもしれませんし、防具の修復が終わるのはまだ6日後ですから、それまでに戻ってくればいいと思いますよ。


 賢者のトンネルを使って他の大陸へ移動するのは、この辺りのクエストを片付けてからでいいと思いますし、状況に応じて検討しましょう。」


 ツバサが、この大陸の様子を説明しながら答える・・・なにせ地形が以前と大きく異なっているのだから、これから先のことは彼女にも想像はつかないのだ。


「分かった・・、状況を見ながら臨機応変にという事だね・・・。」


『キッ・・・キィー』「到着しました。」

 中継車のドライバーが、目的地へ到着したことを告げる。


 確かに目の前にはうっそうと木々が生い茂った高い山があり、そのふもとに大きな洞窟が口を開けている。

 ううむ・・・ダンジョンへ中継車で横づけとは・・・いい身分だな・・・。


『ガチャッ』「へえー・・・、結構大きな洞窟だね・・。」

 中継車を降りて洞窟の前に立ち、レイが見上げるほど大きな洞窟の様子を見回す。


 確かに、高さは恐らく5mくらい・・・幅は・・・10mはあるのではないだろうか。

 通常だと人1人か2人くらいの幅の洞窟が多く、縦に並んで進むことが多いのだが、これだと横1列というよりも、何だったら中継車のままでも入って行けそうだ。


「いかがいたしますか?

 中継車ごと入って行けそうですが・・・?」

 いつものテレビスタッフも降りてきて、洞窟入り口の様子を見ながら尋ねてくる。


「いや・・・どんな危険な罠が待ち構えているかわからないし、俺たちだけで行くよ・・・みんなは洞窟前で待機していてくれ。」

 スタッフにはこの場で待機をお願いする。


「分かりました・・・これだけ広い空間だと大丈夫でしょうが、先の方が細くなっている場合もありますし、状況に応じて中継ボックスをご使用お願いいたします。」


 そう言いながらテレビスタッフが手提げ袋を手渡してくれた・・・中には中継ボックスが10個ほど入っている。


 それほど大きなダンジョンではないだろうから、大きなリュックは必要ないという考えだろうか・・・若しくは受信状態が悪くなったら、中継車ごと入ってこようとしているのか・・・俺たちが通ったルートは魔物たちは退治されているわけだからな・・・。


「では・・・クエスト票を確認する。

 四菱草・・・・冷気を吐き出す魔法攻撃。

 敵を凍らせて動けなくさせる・・・冷気の魔法攻撃AZ、防御力AZ。


 ふうむ・・・攻撃手法である冷気の魔法攻撃がAZで・・・特にこれと言って強い武器もなさそうだな・・・。

 一体どういうことだ?冷気攻撃だけ特化してAA若しくは特AAなあんていうのじゃあないのか?」

 クエスト票を何度見直しても、書かれている内容に相違はない・・・ううむ・・・何か裏がありそうだが・・・。


「そうですねえ・・・実はすごく巨大で、AZの魔法攻撃でも周囲一面凍り付いてしまうような威力があるとか・・・あるいは凄まじく動きが速くて捕まえられないとか・・・何か今の時点では記載されていない特殊な能力があるのだと思いますよ・・・今までのところそうでしたからね。」

 源五郎が、真剣な表情で頷きながら推理をする。


「まあそうだろうな・・・油断ならない相手という事のようだ・・・みんな慎重にね・・・決して油断せず、敵を倒しきるまでは気を抜かないように。」


『はいっ!』

 全員が気を引き締めるよう、気合を入れる。


「じゃあ、行くぞっ。」

 俺を先頭に・・・というか、4人がほぼ横一列になって洞窟の中へと入っていく・・・間口が広いので、まあこの方が互いをカバーしやすいだろう。


『シュルシュルシュルシュル』『シュパッキンッキンッキンッ』『シュパッキンッ』洞窟へ入ったとたん、前方の薄暗がりの中から、いくつもの小さな影が飛んできて、俺とレイの盾がそれに反応して飛翔物をはじき落した。


「うんっ?なんだ・・・?」

 地面を見ると、それは菱形の鋭い刃が4方についた、いわゆる忍者が使う手裏剣そのものだった。


 刃の色を黒く染めた暗器は、こういった洞窟のような暗がりでは効果的だ・・・天空の盾が呼応してくれなければ危ないところだった。


「みんな注意しろ・・・、どうやら手裏剣で攻撃をしてきているようだ。」

 またもや、ダンジョン自体からの攻撃だろうか・・・?


「鉄の鎧ではあるが、とりあえず一番防御力の高い俺が先頭を行くから、皆は1列になって後ろをついてきてくれ。」

 鋼鉄の鎧を修理に出しているとはいえ、鉄の鎧でも防御力では俺が一番だろう。

 更に一番大きな天空の盾も所有していることだし、この陣形がいいだろう。


「装着型のツバサと源五郎の盾は少し小型だから、レイが最後尾について盾を大きく広げて後方をガードしてくれ。」


「らじゃー・・・。」

 レイが直立して敬礼しながら答える。


『シュルシュルシュル』『キンッキンッキンッ』盾を大きく広げて前方にかざしながらゆっくりと進んでいく。

『シュルシュル』『キンッキンッ』


「うわっ・・・!危ない危ない・・・手裏剣だからか、カーブしながら飛んでくるようですね。

 2番目3番目も油断はできませんよ。」


 振り返ると、源五郎の装着型の盾も大きく広がっているようだ・・・ううむ・・・カーブしながらか・・・結構スピードがあるし暗いから見えにくいし、ちょっと厄介だな。

 そうはいっても戻るわけにもいかないし、ヘッドカメラ用のライトを頼りに広い洞窟中央を進んでいく。


 いつもと同じように、雑魚魔物に遭遇することはないのだが、その代わりという訳でもないだろう、手裏剣の洗礼を受けながら、体を小さくして盾に身を隠しながら進んでいく。


『シュルシュル』『キンッキンッ』『シュルシュルシュルッ』『キンッキンッ』前方から側方からあるいは後方へと回り込んで襲い掛かってくる手裏剣攻撃を、盾で防ぎながら進んでいくと・・・やがて更に広い空間に出た。


「なんだ・・・あれは・・・?」

 見上げるほどに高いドーム状の空間の向こう側の壁一面に何段にも渡って、ゆらゆらと中央の花弁が左右に揺れ続けている花が咲いているではないか。

 あれが四菱草か?


『シュルシュルシュルシュル』『キンッキンッキンッキンッ』さらにいくつもの花弁が舞い上がったかと思うと、放物線状の軌跡を描きながら襲い掛かってきた。


「手裏剣の正体はこれか・・・。」

 花弁が何層にも連なっているのか、その表面部分が剥離して手裏剣となり攻撃してくるようだ。


神の裁き(ライデン)神の裁き(ライデン)神の裁き(ライデン)神の裁き(ライデン)!」

『ゴロゴロッ・・・ドーンッ』『ゴロゴロッ・・・ドーンッ』『ゴロゴロッ・・・ドーンッ』『ゴロゴロッ・・・ドーンッ』レイが果敢にも四菱草に向かって雷攻撃を仕掛け、数体を撃破する。


『シュルシュルシュルシュルシュルシュルシュルシュルッ』『シュルシュルシュルシュルシュルシュルッ』『シュルシュルシュルシュルシュルシュルッ』その瞬間、残った四菱草達から一斉攻撃が始まった。


「うわっ・・・!こりゃ堪らん!」

『キンッキンッキンッキンッ』『グザッグザッ・・・グザッ』雨粒のような密度で降り注ぐ手裏剣を、ひたすら盾で防ごうとするが、完全には防御出来ず、装甲の弱い肘やひざ、腰などの関節部分に突き刺さってくる。


『シュパッ・・・キンッキンッキンッ』仕方がないので鋼鉄の剣を抜いて、盾とともに剣でも払いのけようとする。

『シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ』『グザグザグザグザグザグザグザグザグザグザ』盾で防いでいるだけではじり貧と判断したのか、源五郎はすさまじいスピードで矢を射かけ始めた。


「とうっ」

『タタタッ・・・シュタッ』さらにツバサが数歩の助走の後、華麗に宙に舞い上がる。


『タタタッ』「全体光攻撃(ペカリ)!」『タタタッ』「全体光攻撃(ペカリ)!」

『ぺかーぺかーぺかー』『ぺかーぺかーぺかー』レイは光魔法のグループ攻撃に切り替えたようだ。

 射程が短い分、移動しながら攻撃を仕掛けて行っている。


「ようしっ・・おりゃあっ!」

『ダダダダッ』俺も負けじと壁際へと駆け出し、鋼鉄の剣を振りかぶり、『シュッパパンッパパンッパンッシュパッシュッパン』ひな壇のように幾段にも並んだ四菱草を、当たるを幸いに切り刻んでいく。


「たあっ!」

『シュタッシュパッ・・・シュッシャパンッ・・・シュッパパンッ』遥か上方ではツバサの空中殺法が炸裂している様子だ。


『シュパッシュパパンッパパンッ』飛び道具であるがためか意外と接近戦にはもろいようで、一撃で仕留められるので、数は多かったが、それでも結構楽に倒していける。

 やはり恐れずに踏み込んでみるもんだな・・・、とか感じながらふと思う・・・。


 あれ?四菱草は冷気の魔法攻撃じゃあなかったか?じゃあ、今戦っているのは・・・何者だ?

 ただの雑魚魔物か・・・?とか考えていると・・・


『ゴゴゴゴゴッ・・・ガッシャン・・・ガガガガッ』壁一面に連なっていた四菱草を倒し終わった瞬間、ドーム奥の壁が割れ左右へと広がっていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ