表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
102/202

アレヘス

また少し書き溜まったので、連載再開いたします。

1.アレヘス

『パンパカパーン』「おめでとうございます、ツバサ様はXWにアップされました。」

 1日半かけてアンズ村からアレヘスの町までやってきて、早々にギルドでクエストの清算を行うと、早速ツバサのレベルアップを告げられた。


 クエストの数も多く、更に強敵ぞろいだったから、下手をすると1階級くらい一気に飛び越してW台まで行くのではないかと考えていたのだが、期待ほどは上がっていかなかった。


 よく考えたらツバサは大半のクエストに参加していないのだったな・・・恐らく町長や町長の息子に化けていた中央の奴らとの戦闘に関しては経験値に含まれていないだろうし・・・それでもそこそこ上がっているのは、いかに最終の魔物が高いレベルであったかを物語っているのだろう。


「じゃあ、クエストを探してみますか?」

 源五郎がギルド奥の柱へ向かおうとする。


「まずは防具屋を探してボロボロになった鋼鉄の鎧を修理に出したい・・・源五郎だって射者の胸当てを修理したいだろ?

 武器屋にも寄って、鋼鉄の剣を研ぎにも出したいしな・・・。


 ここへはパラボラアンテナ施設で取得した受信装置を早く引き渡した方がいいと考えて、いの一番に寄っただけだからな・・・清算が終わったから一旦出よう。」

 源五郎が少しでも早く先へと進みたがる気持ちはわからんでもないのだが、やはり武器防具はきちんと整備をしてからにしたいものだ。


「あたしも・・・魔導士のローブがボロボロだから・・・。」

 レイもボロボロになったローブを袋から取り出して、涙目になる。


「あたしも・・・格闘家の胴着にかなりのダメージがあります・・・自分で修復してはいけないと言われたので・・・それと・・・光の爪も研ぎに出したいですね・・・。」

 よく見るとツバサの胴着もかなり損傷が激しい・・・こちらは町長一家に化けていた中央の奴らとの戦闘でのダメージが大きかったのだろうな・・・。


「ああ・・・そうですか・・・僕も胸当てはボロボロですし、矢袋がスースーしてはいます。

 まあ矢の場合は購入するだけなので時間はかからないと思っていましたが、リーダーの鋼鉄の剣は研ぎに出すと一晩かかりますよね・・・分かりました、まずは武器防具屋に寄りましょう。」


 源五郎が仕方なさそうに頷く・・・申し訳ないが、ちょっとの辛抱だ・・・。

 そのままギルドを出て武器屋へ向かう・・・何のことはない、ギルドの隣が武器屋で、そのまた隣が防具屋のようだ。


「ええっ・・・1週間もかかるのかい?」

 防具屋で鋼鉄の鎧を修理に出したら、なんと修理に1週間もかかるというのだ。


「そりゃあそうさね・・・胴回りなんて骨組みだけでほとんど残っていないし、しかもその骨組み自体があちこち痛んでいる始末だ。


 本来なら廃棄で買い換えてもらうところだが、あいにくとうちでは鋼鉄の鎧は売っていないからね・・・仕方がないから材料を手配して修理してあげるんだ。

 これでも超特急の手配なんだよ・・・。」


 防具屋のおやじは、ため息交じりに淡々と答える・・・ふうむ・・・本来は廃棄・・・か・・・まあそうだろうな・・・何度も死にかけて、すさまじく痛んでいたからな・・・。


 だがしかし、この町でもまだ鎧の一番上のクラスで鉄の鎧があるだけだ。

 修理していただけるだけでもありがたいと思わねばならんな・・・。


「分かった・・・、少しでも早く終わるよう、何とかお願いします。」

 防具屋のおやじに深く深く頭を下げる。


「こっ・・・この胸当ての修理も・・・1週間もかかるのですか?」

 さらに源五郎の胸当ても、修理に時間がかかる様子だ。


「ああ・・・これは特殊な素材を使っていてね・・・、破れやほつれなどなら1日あればうちでも修復できるんだが、肩紐から胸当て部分の半分以上を失えているからな。

 うちでは扱っていない防具だからね・・・材料手配しなきゃならないので1週間かかるよ・・。」

 防具屋のおやじが、またも残念そうに告げる。


「はあ・・・そうですか・・・仕方がありませんね・・・。」

 源五郎も力なく肩を落とす。


「あたしのローブは穴と焼け焦げだけなんだよー・・・、それなのにどうして1週間もかかるの?」

 今度はレイの悲鳴のような叫び声が・・・。


「このローブはだね・・・魔法耐性と物理攻撃耐性両方をあげるために、特殊な技法を用いて編み上げているんだ。

 小さな穴の修復程度ならまだしも、ここまでひどいと、ただ穴を修復すればいいのではなく、修復した後に特殊処理が必要となるわけだな。


 そのため修復した後に本部に送って処理してもらわなければ、ただの普通のローブと変わらないものでしかなくなってしまう。


 言ってみれば穴を縫って直した後に、えらい神父さんにお祈りしてもらう必要があるといったところだな・・・だから・・・、どうしてもそれだけの時間がかかるの!」

 防具屋のおやじは多少苛立ち気味ではあるが、レイにもわかりやすく説明してくれる。


「えー・・・、えらい神父さんがお祈り・・・?じゃあ仕方がないねー・・・。」

 レイもがっくりと肩を落とす・・・、結構あのローブ気に入っていたんだな・・・。


「あたしの胴着はまだそれほどでもないようで・・・明日には直るようです・・・。」

 最後に上級格闘家の胴着を修復に出したツバサが、少し申し訳なさそうにうつむく・・・別にツバサのせいではない・・・ツバサを欠いて冒険を継続していた俺たちが、それだけ大変な目にあっていたという事だからな。


「当面は、この地から離れられないという事だな・・・この周辺のクエストが多ければいいのだが・・・。

 まあ、まずは道具屋に寄って薬草に弁当を調達しよう。

 チェーンやロープも買っておいた方がいいわけだろ?」


 パラボラアンテナ施設では弁当が支給されたが、それ以外でも消費しているし、小さな傷の手当てに薬草も結構使った。

 何より、脱出のためにチェーンやロープを消費したので、補充しておく必要がある。

 この辺りは道具屋でそろうので便利だ。


「ここの武器屋には鎖鎌があったので、武器として使う予定はないのですが、脱出用として使えないかと一応買っておきましたよ・・・。」

 ツバサが寄ってきて小声で話す。


「ああ・・そうだな・・・俺も鉄の大ハンマーを先日鏡のトラップの部屋からの脱出に使用しようとして壊してしまったから、買っておいたよ。」


 何に使用できるか、その場になってみないとわからないので、とりあえず武器でも防具でも一通りは揃えておくことにした。

 鉄の斧やナイフなども、無駄とは思いながらも今回購入した。


 当然ながら、道具屋でスコップやつるはしも購入した。

 削岩機などももしかするとコスチューム屋にあったかもしれないので、船に戻ったら確認予定だ。

 流石にそこまでやると、ダンジョン自体を破壊してしまう事になるので、やりすぎとも思えるのだが・・・。


 以前はクナイや短剣などを利用して、地面に穴を掘る訓練をしていたのだが、もはやそんな程度では済まないのだと認識してきたわけだ。


 要するに・・・ただ何の意味もなく様々な道具を販売しているわけではないという事だ・・・何か利用価値があるはずだから準備しておいて、それを利用して冒険を進めるのだという、よく考えてみれば、それこそロープレの基本なのではないかと考えを改めた。


 もともと選択できる様々な職種があって、中には冒険とは全く関係なさそうな職業も多数存在している。

 それらの職種ごとのアイテムはコスチューム屋などで販売していたらしいのだが、そのアイテム一つ一つに意味があるのではないかと考えることにしたわけだ。


 ツバサに言わせると、以前の冒険では特定の職種のアイテムがなければ脱出できないようなダンジョンは一つもなかったようで、これは卑怯だと主張していたが、アイテム自体はどの職種を選択していたとしても購入可能なので、準備さえ怠らなければ済む話だから、決して卑怯とか姑息とか言えるものではないと説明した。


 なにせ道具屋には、以前はなかった高枝切りばさみとか登山用具とか、あるいは剣先スコップに雪かきスコップ・・・果てはつるはしなど販売しているのだ。


 これらは実体化したことにより自我を持った道具屋が、当時一人で戦っていたツバサのためにそろえたものと考えていたのだが、実際はそうではなくダンジョンの難易度が上がるという事を示唆していたのかもしれない。


 恐らくそれは俺たちのように、最高経験値の裏技を使ってやってくる冒険者を想定したわけではなかっただろうが、いつでも移行できるような下準備は行われていたと解釈すれば納得できる。


「まあ今日はもう昼過ぎだから、あえてクエストを探さないで、ちょっとこの町を探索してみないか?

 どうせクエストの情報集めは必要なわけだから、今日のうちにある程度はやっておこう。


 結構大きな町のようだから、手分けしてやることにするか?

 情報を得られなくても、市場とか人の集まる場所の把握だけでもしておけばいいだろう。」


 とりあえず防具の修理が終わるまではこの町に滞在しなければならないため、急いでクエストにかかる必要もないわけだ。

 たまにはゆっくりと町を見て回るのもいいかもしれない。


「はーい・・・今日はお休みだね・・・やったあ・・・どこか遊ぶところがあるといいな・・・。

 じゃあ、ダーリン、行こうっ。」

 いつものようにレイは源五郎と連れ立ってというか・・・無理やり源五郎を引き連れて歩き去って行った。


「じゃあ、あたしたちも行きましょうか・・・。」

 ツバサが、レイたちが向かった反対方向を指さしながら話しかけてくる。


「ああ・・・そうだね・・・まあ今日のところはゆっくりと町の地理把握といったところかな・・・。

 じゃあ・・・夕方になったらギルド前の食堂に集合な!」

 待ち合わせ場所を告げておいてから、ツバサと2人で右方向へ歩き出す。


「アレヘスはあたしが住んでいる次元でも大きな町で、子供のころに何回か来たことがあります。

 確か・・・遊園地などもありました・・・ペレンの街も結構大きいのですが遊園地はなかったので、途中野宿してアレヘスまで来て遊園地で遊んだことを覚えています。


 以前の冒険の旅の時には、この町へ着くなりイベントが発生して大きなクエストになっていたため、ゆっくりと街中を見て回るようなこともありませんでした。

 なので・・・ゆっくりと町を見て回れるというのは、あたしもうれしいです。」


 いつもなら時間があるのなら、これからトレーニングをすると言い出しかねないツバサが、嬉しそうに笑顔を見せる。

 別次元の本体と合体して、ツバサ本来の強さを取り戻した余裕からだろうか・・・?


 それとも今までずっとトレーニング漬けの生活を送っていたことを反省し、少しは女の子らしい生き方をしてみようと考え始めたのだろうか・・・何にしてもいい傾向ではないだろうか・・・。


 騙されたことは非常に悔しいのだが、ペレン町長の息子に言い寄られて、結婚まで真剣に考えたこと自体は、無駄にはなっていないようだな・・・。


「へえ・・・遊園地だったらレイが喜ぶかもしれないな・・・この町のどのあたりにあったか覚えているかい?」


 この星の遊園地というものが地球と同じものかどうかはわからないが、遊戯器具が異なるにしても子供が遊ぶことはできるだろう・・・この星の住民の体形は、我々分身とさほど違わないのだから、観覧車やジェットコースターがあるかどうかはわからないが、乗り物に関してはさほど大きさの違いがあるとは思えないからな。


「ええ・・・確かこの先の方だったと思います・・・結構町はずれにありましたから・・・でも・・・あたしがいる次元でのことですよ・・・ゲームの世界ではありません。


 あたしがいる次元の家やお店にはゲームの世界からは入れないので、恐らく遊園地は外から見ることはできるでしょうが、中で遊ぶことはできないと思います。

 ですから・・・下手に喜ばすとあとで困るので、レイちゃんがいるときには言い出せませんでした・・・。」

 ツバサが、今になって言い出したことをすまなさそうに説明する。


「ああ・・・そうだったね・・・じゃあ期待薄だな・・・、他の商業施設を探そう・・・これだけ大きな町なら大きな市場なんかもあるはずだからね。」

 そうだった・・・肝心なことを忘れていた・・・ツバサの心遣いに感謝して、気を取り直して歩き始める。


 それにしても大きな町らしく道は広いのだが、人通りはほとんどない。

 たまに歩いているのは、犬や猫といったペットくらいだ。


「ペレンはともかく、ヨースルの町でもそうだったのだが・・・街中に人通りがほとんどないね。


 ゲームのキャラたちは・・・もしかするとパラボラアンテナ施設工事が再開されたことで、工事に召集された可能性があるのだが・・・それにしてもこの町の本当の住民たち・・・つまりツバサ本体がいる次元の人たちの姿は、触れることはできないにしてもこちらからは見える筈だろ?


 こんな街中で・・・しかも昼間だというのに・・・人通りが全くないというのは不自然じゃないか?」

 ふと疑問に感じる・・・以前の冒険の時には、街中はゲームのキャラに加えて、この星の真の住民たちがあふれていたように記憶しているのだが・・・。


「そうですね・・・、恐らくテレビ放送の影響だと思います・・・。」

「テレビ放送?」


「ええ・・・地球のテレビ番組が放送されるようになって・・・最初のうちは1日のうちのほんの限られた時間・・・夕方の時間だけしか受信できませんでした。


 今でもそれは変わらないのですが・・・地球のテレビ番組の人気が高すぎて・・・受信できるテレビ局の数が多いものですから、夕方の分を録画しておいて昼間の時間帯にも放送するようになったのです。

 見逃した人のための再放送も含めて、昼間から夕方の時間帯は、ずっと放送されています。


 そのおかげで、この星の住民たちは日中はテレビにくぎ付けで、道場に来る練習生の数が減る一方で、仕方がないので道場にもテレビをつけて放送を流しているくらいです。」

 ツバサがため息交じりに答える・・・ふうむそうか・・・そんなに地球の放送が人気とは・・・。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ