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再出発

14 再出発

 門下生たちはビルの前に整列したようだが、それぞれ横を向いていたり隣の奴と話をしていたり、動きはバラバラだ・・・。

 恐らく次元の向こう側のゲームキャラたちが会いに来たということを聞いて、やじ馬根性から出てきたのだろう。

 しかし、向こうからこちら側は見えないから、まあわからないわな・・・。


「あたしの両親です・・・父の名はカナリで剣や棒など長物を用いた武術の世界最強で、母の名はテスタで弓矢やクナイ、投げナイフなど飛び道具を用いた武術の世界最強です。」

 俺たちと一緒にいる方のツバサが、目の前の両親を紹介してくれる。


 見た目は両親というより兄弟でも十分通用するくらいだが、両親の外観は後ろにいる道場の門下生達同様、この星の住民の青黒い肌に黒目だけの大きな目をしている。

 両親ともに、まさしく美男美女といえるのだが、どちらかというと日本人的なツバサの外観とは大きく異なる。


 どうしてこのようになっているのか俺にはわからないのだが、俺たちが現実化したときに、ツバサが俺たちと冒険の旅に出ようとした気持ちは、なんとなくわかる気がする。


「どうも・・・、シメンズリーダーのサグルと申します。

 ツバサさんには、日ごろから大変お世話になっております。


 特に今回、ダンジョンに閉じ込められそうになり、まさに命を懸けて最後の挑戦をする間際を救われましたこと、感謝に堪えない気持ちです。」

 ツバサの父の前に立って深く深く頭を下げる。


 まあ、どうせ向こうには聞こえないとはわかっているが、とりあえず感謝の気持ちは伝えておく。


「源五郎と言います・・・、本当にツバサさんに助けられています。

 僕たちの冒険が続けられているのも、ツバサさんのおかげといっても過言ではありません。」

 そう思っていたら、源五郎が今度はツバサの母親の前に駆け寄り頭を下げた。


「えーっとね・・・ツバサお姉さんがいるから、ママのこと思い出しても寂しくはないんだよー・・・、だから、ずっとツバサお姉さんと一緒に旅を続けさせてください。」

 レイもやってきて、両親に向かって頭を下げる。


「ありがとうございます、ありがとうございます・・・皆さんの気持ち、とてもうれしいです。」

 ふと振り返ると、ツバサが大粒の涙を流していた。


「いやあ・・・本心だよ・・・いつも思っていたんだが・・・、どうにも日本人というのは気持ちを伝えるのがへたくそでね・・・、感謝の気持ちを告げるのが恥ずかしいというか、どうにもそんな面がある。

 だから、その・・・ツバサともう一度冒険を続けていきたいわけだ・・・、どうなったかわかるかい?」


 そうだ・・・確かにご両親へ感謝の気持ちを伝えたい思いはあるのだが、何よりも俺たちの気持ちを伝えたかったのはツバサなんだ・・・、俺たちは彼女を助けるためにこの地に来たつもりでいたのだが、本当に助けられていたのは俺たちの方なのだからな・・・。


 ツバサと両親は3人とも笑顔でいるので悪い感じはしないのだが、こちら側の思惑と違う事も考えられるので楽観はできない。


「そうですね・・・、どうやら両親も納得してくれたようですね。

 合体した本体も一緒に冒険の旅に出てもいいようですよ・・・、あたし本体が右手の人差し指と中指を立てていますよね・・・そうして左手では親指と人さし指で丸を作っています。


 あれは2人ともOKの意味です。


 分身のあたしだけ同行を許された場合は人差し指のみ立てて、左手で丸・・・2人ともだめな場合は両手でバツ印を作ると、サインを決めていたのです。」

 ツバサが少し小声で囁くように答える・・・大きな声を出したところで向こうの両親には聞こえないと思うのだがな・・・。


「ああそうか・・・よかった・・・、ツバサと今後も旅を続けられるようになって、本当にうれしい。

 更にツバサ本体と合体して、真の世界最強を手に入れたわけだから、今後の冒険に関してますますツバサの活躍が期待できる・・・あっいや・・・・、別に俺たちが楽をしようという訳ではなくてだね・・・。」


 焦って訂正する・・・、決して俺たちはツバサに対してその強さだけを求めているのではないのだから・・・。


「分かっています・・・、ただその・・・本体との合体は・・・、今後もずっとできるという訳ではないのです。」

 大粒の涙を手で拭いながら、ツバサも笑みを見せたが、その後言いづらそうに口ごもる。


 どうしたというのだ?合体して戦っていられる時間に制限があるとでもいうのか?

 何とかタイマーがピコピコ鳴りだして、それが止まったら2度と立ち上がれないとかなのか?


「それはどういうことなのですか?

 回数制限があるとかですか?合体した状態で戦える回数が限られているという事ですか?


 あるいは分離と合体できる回数が限られているという事でしょうか?」

 すると源五郎が俺に代わって質問をする・・・おおそうか・・・回数制限か?その可能性もあるな・・・。


「いえ、そうではありません・・・、合体と分離は何度でも繰り返しできますし、時間制限もありません。


 本体と合体することにより、あたし本体の考えも伝わってきたのでわかるのですが、合体していられるのはあくまでも、あたし本体が存在する次元にある大陸の北部大陸と、恐らく中央諸島は大丈夫と考えていますが、これだけです。


 このゲームの世界に存在する大陸は、皆さんと再会した場所である南部大陸に三四郎さんがいた東部大陸、他には大西部大陸と小西部大陸がありますが、これらはあたし本体が存在する次元にはありません。


 合体している最中の本体は、ゲームの世界のあたしに引っ張られて移動します。

 そのため中継車で移動する場合でも、また賢者のトンネルを使って移動する場合でも問題はありませんが、移動した場所にあたし本体が踏みしめることが出来る陸地がなければなりません。


 洞窟や建物などのダンジョン内に入るときには、次元の向こう側にいる本体はその中には入れませんが、すぐ近くに存在することで合体状態を保つことが出来ます。


 本体と分身との合体は願う事でかなえられましたが、本体が次元を超えてこちら側に移動するわけではありません・・・次元移動する場合には、当事者があたしだけではありませんから、それを願う事は難しかったのです。


 合体している間、あたし本体は食事も睡眠も分身が行うことで生きていくことは可能です。

 ですが、あたし本体がいる次元に存在しない大陸の冒険時には、あたしは合体してはいられないのです。

 恐らく、自然と合体が途切れてしまうだろうと考えています。


 ですが・・・合体が途切れるだけで、冒険の世界のあたしは引き続き皆さんとご一緒出来ます。


 両親の説得もありましたが、一緒に冒険するにしても、この説明もしたくて、この村に寄ったのです・・・、テレビスタッフに聞かれてしまうと、中央の人たちにも伝わってしまうかもしれませんので・・・。」

 ツバサが申し訳なさそうに頭を下げる。


「いやあ・・・そうだったのか・・・、悪かったね・・合体したツバサに期待をかけすぎていたようだ。

 だが、今まで俺たちが助けられたのは合体する前のツバサだし、何よりツバサが俺たちの大切な仲間というのは変わらない。


 だから、そのままのツバサで構わないから、一緒に来てくれないか?」

 改めてツバサに頭を下げる。


 確かにこの話は中央の奴らには秘密にしておいた方がいいだろう・・・、なにせ奴らの一味の1人をツバサが倒したという事だからな。

 下手に手を出そうとすると、逆襲を食らう可能性があると思わせておいた方が安心だ。


「そうですよ・・・、三人になってどれだけツバサさんを待ち焦がれていたか・・・。

 そのツバサさんがさらに強くなって帰ってきてくれたことは大変な励みとなりましたが、あそこまで強くなくても、そのままのツバサさんで十分な戦力なんです。


 僕たちは最高経験値でやってきましたが、その経験値差を感じたことは今までに一度もありません。

 あっ・・でもそうか・・・、あの奥義も・・・やっぱり本体と合体したときにしか使えないのですよね?


 かっこよかったですよね・・・、ちょとつ・・かい・・・でしたか?鏡の壁を崩壊させた・・・。」

 すると、またまた源五郎がやってきて、フォローに入る・・・よほどツバサのいない冒険が堪えたのだろうな・・・。


「猪突開山波ですか・・・?あれは猪が突進してくる圧力にヒントを得てあみ出した正拳突きです。

 体全体の前に出る力を、右こぶしに集中させるのです。


 奥義に関しては・・・皆さんと一緒に冒険の旅をした後で、身体的な強さのほかにも高度な技の習熟が必要と感じたもので、あたしの本体が修行して身に着けたものです。

 このキャラを設定していただいたときには奥義はまだできていませんでしたので、この体の特性には含まれていませんから使うことはできません。


 ですが・・・これから奥義の特訓をこの体で行うことにより、奥義の使用が可能になるかもしれません。

 ただ・・・そのような特訓を行うには・・・、現状の訓練時間2時間の制限枠では困難と考えます。」

 ツバサがそう答えながら、ちらりと俺の方を流し目で確認する。


「ほう・・・猪ねえ・・・、この星・・・というかツバサ本体が住んでいる次元にも猪がいるのかい?

 地球の動物の猪とは違うのかな?」

 ちょっと意外だ・・・この星の生態系は、地球とは微妙に異なると思っていたのだが・・・。


「ええいますよ・・・ほかの地域にもいるかもしれませんが・・・、少なくともアンズ村の周辺にはいます・・・・。


 父が大空翔さんに地球の生き物や農作物の話を聞いて、それらが生息するよう願って移植したのです。

 日本の農産物と家畜を含めた動物たちが、アンズ村周辺には生息しています。」

 ツバサが自慢げに胸を張って話す。


 ああそういえば・・・日本と変わらない農作物が畑や田んぼに植わっていたな・・・、確か東部大陸の半魚人たちの村の野菜も日本の野菜と変わらなかったから、あまり気にも留めなかったが、あれは地球の野菜を移植したわけだ・・・、まあ、ほんとうに何でもありという事だね・・・。


「ああ、そうだったんですか・・・それから真空の壁・・・あれはすごい・・・空中でもう一度ジャンプするなんて・・・あれはいったい・・。」

 源五郎の場合は奥義の由来よりも技そのものに興味がある様子だな・・・。


「真空の壁というのは、真空波を作り出して空気の層を分断します。

 その分断した層が元に戻ろうとする時一瞬にだけ出来る圧縮された空気の層を蹴って、より高く跳躍するのです。

 鷲撃泰覇斬などの、飛翔系の奥義の時に使うことが多いですね。」


 ツバサが奥義の原理に関して説明してくれる・・・まあ、原理を知ったところで凡人の俺たちに使うことは到底無理なのだがな。


「へえーへえー・・・、特訓すれば僕たちにもできますかね?」

 おいおい・・・、格闘技世界一のツバサだからこそ可能な技であって、俺たちには無理だって・・・。

 源五郎はもしかすると、格闘ヒーローもののファンだったのか?


「恐らく最高経験値の皆さんでしたら・・・可能と思いますよ・・・、ですが先ほども言った通り、訓練時間の制限があるので・・・。」

 ツバサがまたもやちらりと流し目で俺を確認する。


「えー・・あたしも習いたいー・・・、おうぎ・・・しゅうげき・・・なんだっけ?あの空を飛ぶやつ・・・。」

 するとレイまでやってきた・・・、レイの場合は戦隊ヒーローもののファンだからな・・仕方がないか。


 だが、レイがツバサの奥義を覚えたところで使い道は全くないはずだがな・・・、空中を滑空しながら魔法攻撃もできないだろ?


「ですが・・。」

 ツバサは困ったように、顔をしかめる。


「分かった分かった・・・ツバサの合体が出来なくなったとしても、奥義に関しては今後の冒険にも十分役立ちそうだからな。

 そのために必要なら訓練時間の制限は打ち切りだ・・・ただし、一晩中とか過激なものは禁止する、いいね?」

 仕方がない・・・もともとツバサの身を案じて始めた訓練時間の制限だからな・・・必要なら伸ばせばいい。


「はいっ・・ありがとうございます。」

 ツバサが笑顔を見せ頭を下げる。


「それよりも、これで用事は済んだのかい?

 恐らくこの村には、俺たち冒険者が使えるような施設はないはずだから泊るつもりじゃあないわけだろ?

 食堂もないって言っていたものな。


 そろそろ戻ってやらないと、スタッフが気をもんでいるぞ。」

 テレビカメラをつけずに来ているからな・・・いつ戻ってくるかと、恐らくスタッフ連中はずっと待ち続けているはずだ。


「ああそうですね・・・、じゃあ戻りましょう。

 ちょっと待っていてください・・・本体と合体いたします・・・、まだこの大陸の冒険は続きますからね・・・。」

 ツバサはそういうと、数歩前に出てこちらに向き直り、自分本体と体を重ねた。


「じゃあ、行きましょう。」

 合体したツバサは、しばらく両親の方を向いて何か話していたようだったが、すぐに先頭で歩き出す。


 その途端、ツバサの父が笑顔で手を振ってくれ、ツバサの母は悲しそうに目を伏せがちに手を振る・・・そうか・・・別れの挨拶を済ませたという事のようだな。

 ツバサがまた旅立つことを認識したわけだ。


「では、ツバサさんをもうしばらくお借りします。」

 こちらからの声は聞こえないとは知りながら、そう言ってツバサの両親に頭を下げる。


 攻略不能なダンジョンに閉じ込められることを恐れるあまり、冒険への一歩を踏み出せないでいた俺が、みんなに励まされて再出発したように、ツバサもこれからがまた冒険の再出発なのだ。


 人間だから恋もすれば騙されもする・・・、結婚を餌に足止めさせようとするのは本当に卑怯な手だと思う・・・、やはりそんな奴らから、早いところこの世界を開放しなければならないな・・・。


とりあえず 完


ツバサも加わり、再出発となったシメンズ。今後の展開が気になるところなのですが・・・、まったく構想がまとまっておりません。このままつらつらと書き綴っても面白くはならないでしょうから、きりがいいところでいったん終了とします。続けられそうに感じたら連載再開いたしますので、ご容赦ください。もしかすると別の連載を始めるかもしれませんが、まだ白紙状態です。

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