5:到着と
「ヘックション!」
「寒いな…………」
僕らの飛行機は福島県の猪苗代湖に不時着した。なんとか班員は全員無事だが、身体が濡れたため寒い。今は福島県JUCG支部へ向かう途中で、たった30分ほどしか経っていないはずだが、もう2時間は経っているような錯覚になる。
こんなはめになった原因の1つ、最上裕也は疲れを感じていないかのように先を歩いていく。
機内で爆発する武器を使うのは流石にマズかった。しかしあの武器を使わなくては被害はもっと大きかったかもしれない。まさか初日からこんなに疲れるとは思いもしなかった。
僕はあの鳥を心から恨んだ。
「JUCGが見えてきましたよ!」
最上が大きな声で叫んだ。僕が顔をあげると、たくさんのテントが見えた。
「ボロボロだな………」
あのテントで仕事すると思うと、さらに沈んだ気持ちになった。
僕らはひとまずテントに入ったが、まったく生活感がない。一応どれも大きめのテントだが、食料などはゾンビに食い漁られた跡があった。
やはり資料の通り全滅したようだ。誰もいない。
とりあえずは到着したので僕らは疲れをとるために座り込んだ。
しかし遼は外に出ようとしている。
「遼くん?」
「少し最上班の方々と話してきます」
遼はそう言い、イヤホンを耳につけた。
「なんだお前、さては鈴奈ちゃん目当てか!?」
晋平が言ったが、遼は「馬鹿か」と言って出て行った。
遼は最上班のテントまで来ると、「入ってもいいですか」とぶっきらぼうにいった。
「誰?」
「如月班の永洞遼です」
「あー、遼君ね、入ってもいいよ」
「お邪魔します」
中にいるのは最上裕也だけだった。
「他の班員はどうしたんですか?」
最上は「近辺の地形を把握するとかなんとかで出てった」と返した。
「俺は明日で良いと思うんだけどねー。ま、頑張り屋さんたちだから」
「いいことじゃないですか」
遼はめんどくさそうな顔で言った。
「それで、どうしたの?」
遼は最上の正面に腰かけた。
「飛行機で使った武器のことですが」
最上はああ、と頷いて言った。
「あれね。あれは外国のJUCGが開発した最先端の武器だよ」
「どうやって手に入れたんですか」
「どうやってって……上の許可があれば所持できるけど、大抵は班長が決めるね」
如月班では班員全員の武器が刀となっている。透が「刀が一番使いやすい」と言って班員にも持たせているのだ。自分ももっと高威力の武器を使いたいが、透が許してくれないだろう。遼は舌打ちをしたい気分だった。
「分かりました、ありがとうございました」
「おお」
一方、透は外で木刀を使って班員達の稽古をしていた。
「遅い!膝をもっと使って」
「うおッ!」
2人がかりで透に一本でもいれられたら終わりにしてあるのだが、とても終わりそうにない。
武子は大分動けるが、晋平がまるで駄目だ。
「武子くんも、動きが単調すぎる!」
これは遼の言う通り、もっと個人の実力を養うべきかもな………。
「大事なのは足運びで、次の足をどこに置くかを意識するだけでも――」
稽古の後は講習会だ。何故か今回は今河班やその他の班員もいる。
僕はとりあえずいつも通り教えた。
すっかり空は暗くなり、皆はテントで夕食を食べているが、僕は外で任務報告用紙を書いていた。
「よ」
振り返れば、修也が立っていた。
「修也……」
「大変な一日だったな」
「そうだね………」
僕は大きな溜め息をついた。
「明日から本格的に任務が始まるぜ」
「本当にできるのかな………、ゾンビを全殲滅なんて」
修也は声をあげずに笑い、「心配してもしょうがねえよ」と言った。
「今はとにかく休もうぜ」
修也は笑いながらテントへと戻っていく。
ここに来てから誰も一般人を見ていない。探索にいった最上班も見ていないようだ。
やはり、住民も全滅している可能性が高い。それか、他の県、近場の仙台拠点に逃げることができたか。下水道やどこか安全な場所を見つけ隠れている可能性もある。
いずれにせよ、ここのゾンビを殲滅し、住民の安否を確認するまでは帰れない。せめて羽角さんがいれば違ったのかもしれないが。
羽角 秀。25歳でJUCGに入隊し、数々のゾンビ、アンデッドを倒してきた人だ。500体ほどのアンデッドとたった一人で戦い、無傷で生還したという伝説もある。武器が無ければ転がる石で、石が無ければ素手でゾンビを倒すという最上以上の無茶苦茶さを併せ持っていることにより、多くの隊員から憧れを抱かれている。それは僕も例外ではない。
そんな羽角だが、今は他国からの要請で各国を飛び回っている。この間はイギリスだった。休みを与えないUCGもUCGだが、本人も疲れを見せないあたり、アンデッドよりも化け物なのではないかと感じる。
そんなこともあって、日本国内の任務には参加することが少ない。この福島の任務にも参加はできなかったそうだ。
僕もそれくらいの強さがあれば、班をまとめることなんて容易いとは思う。
今度羽角さんが暇な時に稽古を頼んでみよう。あの人に暇な時間なんて無いと思うが。
「………他人に教わるだけじゃ駄目か」
自分でも特訓しないと、強くはなれない。そう思うといてもたってもいられず、僕は木刀でしばらく特訓することにした。
1時間は経過しただろうか。テントの明かりはぽつりぽつり消えていき、辺りは暗くなった。
そろそろ皆寝ただろうか。僕はタオルで汗を拭き、テントに入っていった。
寝袋もないので僕はそのまま横になった。少し肌寒いが、疲れが溜まっていたためすぐに瞼は重くなった。
「にっちゃん!」
翌朝、僕は晋平にたたき起こされた。
「う~ん………もう朝………?」
「如月さん、『もう朝?』じゃないですよ!起きてください!」
武子のただならぬ様子に、僕は飛び上がって起きた。
「どうしたの?」
「外をみてください!」
僕は目を擦って外を見た。瞬間、衝撃的な光景が目に飛び込んできた。
大量のゾンビが、こちらに向かってきている――!
他の班は既に臨戦態勢に入っていた。
「ちょ、ここの班だけじゃん出遅れてるの!」
僕は急いで準備した。
「なんでもっと早く起こさなかったの、晋平君」
晋平の代わりに、武子が答えた。
「俺も晋平もさっきまで寝てました」
僕は溜め息をついた。
「遼くんは?」
「起きたらいませんでした」
また勝手にどこか行ったのだろうか。
「やれやれ、感じ悪い目覚ましだな………」
僕は外にでて刀を構える。
福島に来て2日目、ゾンビどもの盛大な歓迎といったところか。
登場人物プロフィール
最上 裕也
アンデッド殲滅部隊所属 最上班班長
31歳 B型
身長:182cm 体重:83km
誕生日:9月10日
好きなもの:刺激的な物
遠藤 鈴奈
アンデッド殲滅部隊所属 最上班
18歳 A型
身長:160cm 体重:42kg
誕生日:11月11日
好きなもの:少女漫画、恋愛小説
最近思うこと:如月班の武子が凛々しくてかっこいい




