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Anomie  作者: 椎葉
第2章 処刑人
11/40

11:選ばれたのは如月班

 僕は今、1週間後に迫る銀座の施設調査の打ち合わせをするため、会議室に居た。

「まだ内海さんは来てないね」

まだ集合時間の3分前なので遅刻にはならないが、今から来る内海という人物は少し曲者とも言えるので、本当に来るか信用できなかった。

 「大丈夫や、あの人仕事は真面目やから」

そんな僕の不安を察したように、橋根が言った。


 まもなく会議室の扉が開いて、中に2人入ってきた。

1人は少し太めの体系で身長も150cmくらいの女性だった。内海班班長、内海(うつみ) 綾子(あやこ)である。

もう1人はおそらく副班長だろう。


 内海が仏頂面で無言のまま椅子に腰かけると、安いパイプ椅子がギシリと鳴る。

「じゃあ始めるか」

全員が出席したことを確認すると、修也が姿勢を正して会議を始めた。


 「まずは橋根班、研究施設の詳細を」

「はい。うちらの班もあまり踏み込んでは調査しなかったからあんま分からへんけど、見た感じ普通のビルって感じ。場所も目立たんし、近づくまで何かの研究施設だなんて何も分からんかった」

渡部がいないからか、橋根はいつもの口調になっている。だがそれを咎める者はこの場にはいなかった。


 「あんま広い建物ではなかったで。窓が無かったから中の様子は何一つ分からんけど」

「元々動物の生態系?やらなんやらの研究施設だったらしいです」

橋根班の副班長がそう付け足した。

「銀座にねぇ…あまりイメージ湧かないですけど」

今河班副班長、隼人がこぼす。

「銀座言うてもメインの通りから離れとるし、場所も目立たん、こないな場所あったんかいなって感じやった。それに建物全部が全部研究施設ってわけやない。変な感じやけどな、看板とかあって、テナントビルみたいなもんやったらしいで」

「どちらにせよ、今はそういう施設はUCGの管理が必要だ」

修也が言った。


 「連絡もできないし、突然の訪問ってことになるね。今回の任務は」

「いや、実はこの前中の研究員と接触を図ろうとしたんや」

「え!?」

「班長が独断で」

副班長が溜息をついた。

「直接顔合わせて話すのは無理やったけど。なんか口調からは、うちらを避けてる感じやったな。なんか隠してるような」

その言葉に、修也は考え込んだ。

「ではこの任務はかなり難しいな」

「JUCGに、何かを隠している……」

僕は頬杖をついて考えた。UCGの管理下でない実験施設が、いったい何をしているんだ…?


 「ちょっと渡部さんに話を通してくる」

修也はそう言って会議室を出て行った。

「それにしても、本当に何のための施設なんだろう…?」

「いずれにしてもロクなものではないでしょうね」

さっきまで黙っていた内海が口を開いた。


 「内海さん、あなたはこの一件、どう思いますか?」

僕が訊くと、内海は言った。

「これは私の勘だけど、その実験施設とやらにはアンデッドが絡んでいる気がするわ」

僕は驚いた。アンデッドが絡んでいるとは、どういう事だろう?

「もしかしたらウイルスの生産とかかもね」

ウイルスの生産。その言葉に、僕は全身が電流のようなものが駆け巡るような衝撃を受けた。

「何故、そのような考えを?」


 「言ったでしょ、勘だって。それに、UCGに知られたら困るような事をやってるわけでしょ?おそらくだけど。テナントビルみたいっていうのも、カモフラージュしてたのかもしれないわよ?」

考えれば考えるほど実験施設の謎と可能性が浮かび上がる。

 銀座、中央区にアンデッドがいないのも、その施設が関係しているのか?


 「これは、ヤバいことになってきたんじゃないか……?」

橋根を見ると、橋根も汗を浮かべて頷いている。

突然、会議室の扉が勢いよく開いた。

入ってきたのは、修也だった。


 「どうだった?修也」

「任務内容の変更だ」

任務内容の変更。その言葉に、一同が緊張した面持ちになった。


 「今回の任務を、潜入任務に変更する」

「やっぱりね……」

「どういう理由で、渡部さんは潜入任務にすると言ったんだ?」

「その実験施設が、アンデッドに関係している可能性があるからだ」

渡部も内海と同じように考えたらしい。


 「作戦は2つのグループに分けて行う。まず1つは、施設内に潜入する班。もう1つは、施設の外から連絡をとり、施設を包囲する形で可能ならば入口から突入する班だ」

「なるほど……」

「潜入する班だが、どの班が適任だと思う?」


 「はい」

内海班の副班長が挙手をした。

「どうぞ」

修也が言うと、副班長は起立して言った。

「如月班が良いと思います」


 「え?」

まさか自分には来ないだろうと思っていた僕は思わず声をあげてしまった。

「何故?」

「如月班はチームワークが良いし、班員の信頼関係が築かれているので、適任かと思いました」

「し、しかし僕らの班は……!」

如月班のチームワークが良い?どうしてそう思うんだ?遼は勝手に行動するし、晋平は動かないし…。チームワークなんて皆無じゃないか。


 しかしそこで修也が言った。

「そうだな。一緒に戦って分かったが、如月班はピンチをチャンスに変える力がある。任せてみるか」

潜入するのは如月班に決まってしまった。


 「じゃあ俺たちは外のグループだな」

「それはそれで打ち合わせが必要やな」

「ああ。それではひとまずこの会は解散とする。俺たちのグループは残って打ち合わせ。如月班は明日だ。」

 僕は溜飲下がらぬままだがひとまず「分かった」と応え、会議室を後にした。

正直僕には荷が重かった。


 如月班の班室に入ると、相変わらずな光景が広がっていた。

筋トレをする武子、スマホをいじる遼、菓子を食べる晋平。

僕は溜息をついて一歩前に出たときに、気づいた。

「あれ?晋平君お菓子少なくない?」

「よく気づいたなにっちゃん…!田浦晋平は絶賛減量中だ!」

「おお!」

 どうやら武子との地獄のランニングで少しは痩せることにしたらしい。

とは言っても、菓子の量をほんの少し減らしただけである。


 気を取り直して僕は班員に今回の任務の事を教えた。話し始めて10秒後、さっそく晋平の表情が曇った。

「マジか……」

福島の時よりは衝撃が少ないのか、それとも慣れたのかは分からないが、晋平の反応は割とあっさりしていた。

 「任務は1週間後だから、準備しといてね」

「分かりました」

武子だけが応えた。

「おい!2人とも返事をしろ!」

武子が言うが、晋平は「あーい」と言い、遼は何も言わなかった。

「遼!ちゃんと返事をしろと習わなかったか!?」

「うるさい脳筋」

「何ィ!?」


 そしてまた喧嘩が始まる。なんか僕が居る時はいつも喧嘩が起きているような…。

部屋をでた僕は改めて思った。


 本当に僕等の班で大丈夫なのだろうか。

登場人物プロフィール


内海 綾子

40歳 A型

身長:153cm 体重:59kg

誕生日:1月24日

好きなもの:辛いもの、誠実な男

嫌いなもの:鬱陶しいもの

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